旅人「刻晴さんがなんでも一つ言うことを聞いてくれる!?」 作:瑠川Abel
店員「おっと綺麗なお姉さん、今日はいい《かんざし》があるけど見ていかないかい?」
刻晴「そうね。蛍、見ていきましょう」
旅人「……はい」ムスー
刻晴「もう、まだヘソを曲げているの?」
旅人「曲げてません。刻晴さんが一枚上手なだけでスネてませーん」ムスー
刻晴「拗ねてるじゃないの」ナデナデ
旅人「ん~……もっとなでなでを要求します」
刻晴「ふふ、わかったわ」
店員(瑠璃百合の花が咲いてる……っ!)
刻晴「店員さん、その金色と紫のかんざしを一つずつ貰えるかしら?」
店員「え、あ、はい! 毎度あり!」
刻晴「ほら蛍。これでお揃いよ」
旅人「わ、私に紫のかんざしなんですか?」
刻晴「そうよ。金色はあなたの色なんだから私が身につけるべきでしょ?」
旅人「~~~」マッカッカ
旅人「私も! 刻晴さんにプレゼントしたいです!」フンスフンス
刻晴「あんまり気を遣わなくて良いのよ?」
旅人「いえ! プレゼントさせてください!」
刻晴「……そう。ならありがたく頂くわ。一緒に選ぶ?」
旅人「ここは私に任せてください!」エッヘン
刻晴「それじゃあ一時間後に待ち合わせしましょう。そうね……玉京台で待っているわ」
旅人「はい!」
旅人「……何にしよう。刻晴さんに似合うのがいいなぁ」
旅人「……」
旅人「……何でも似合う!!!!」ジュルリ
旅人「」ッハ
旅人「いけないいけない。刻晴さんはこんなにも綺麗なかんざしをくれたんだから、私も負けないくらい凄いモノを送るんだ……!」フンスフンスフンス
パイモン「なにやってんだ?」
旅人「どっっひゃぁ非常食!?」
パイモン「オイラは非常食じゃねえ!」
旅人「あはは、ごめんごめん。考え事してて気付かなかった」
パイモン「まったく、最近刻晴とばっかり過ごしててオイラのこと忘れてるだろ! 相棒だぞ!」
旅人「アハハー」
パイモン「まったく。稲妻へ向かう手段がなくて滞在してるからしょうがないが……で、旅人は何を探してるんだ?」
旅人「刻晴さんへのプレゼントです!」
パイモン「」ムシャムシャ
旅人「清心いきなりかみ始めてどうしたの!?」
パイモン「……甘ったるい空気を感じたら噛むようにしてるんだぞ」
旅人「パイモンも知らない間に進化したんだねぇ」ウンウン
パイモン(こいつ、自分が原因だって気付いてねぇ……!)
旅人「パイモン、刻晴さんって何をあげたら喜んでくれるかな?」
パイモン「旅人が全裸にリボンを巻いて『私をどうぞ(はぁと)』とかどうだ?」クシシシ
旅人「もうした」
パイモン「え?」
旅人「私は刻晴さんの
パイモン「」
旅人「それでもやっぱり刻晴さんにはプレゼントしたいからねー。じゃあパイモン、次の案はある?」
パイモン「」
旅人「おーい?」
パイモン「もうお前が心を込めたモノならなんでもいいんじゃないか?」ゲンナリ
旅人「そう? それが案外難しいんだよね。うーん……」
パイモン「……オイラはとりあえず甘雨の様子でも見てくるぞ」フラフラフワフワ
旅人「あ……行っちゃったよ」
パイモンと分かれた旅人は夜の璃月港を練り歩く。とはいえプレゼントに焦点を絞ればめぼしい店は思ったよりも少ない。
店先に並んでいる色とりどりの反物やアクセサリーを見てはため息を吐く。
どれも刻晴に似合いそうだが、今ひとつ何か物足りないのだ。
旅人「はぁ。何がいいかなぁ」
「お、旅人さんじゃないですか」
旅人「あ、お久しぶりです」
旅人「……」
旅人「……っ!」
旅人「これだーっ!」
………
……
…
旅人「刻晴さーん!!!!!!!」ブンブンブンブン
刻晴「随分時間が掛かったのね」
旅人「はぁ、はぁ……お待たせしました!」
刻晴「汗びっしょりじゃない。はい水」
旅人「ありがとうございますっ」グビグビグビプハー
旅人「…………」
旅人「刻晴さんっ!」
刻晴「なに?」ニコニコ
旅人「これ、受け取ってください!」
刻晴「ええ、ありがとう」
刻晴は旅人から受け取った布包みを開く。
中に入っていたのは、綺麗に加工された石珀のネックレス。
けれど普通の石珀とは違った。透き通る石珀ではなく、中心に何かが入っている。
刻晴「これ……雷蛍かしら?」
旅人「はい、石珀が雷蛍を取り込んでそのまま加工されたそうです!」
刻晴「へぇ、随分珍しいものじゃない」
旅人「しかもこれ、雷蛍の雷元素がそのまま使えるらしいんです」
刻晴「そうなの?」
旅人「はい。ですから、刻晴さんにピッタリかなって!」
刻晴「そう。……えぇ。とっても綺麗」
刻晴は月明かりに照らしながら雷蛍の入った石珀をしげしげと見つめている。
刻晴「雷元素……それなら……」ブツブツ
旅人「こくせーさん?」
刻晴「ねえ蛍。これを私にくれるのよね?」
旅人「はい! 私からのプレゼントです!」フンス
刻晴「そう。それじゃ――」
微笑んだ刻晴は石珀のネックレスをそっと旅人の首に付ける。
刻晴「ねえ蛍。あなたはいつか稲妻に――そして、テイワットの他の国にも行くのよね?」
旅人「……はい。それが私の旅ですから」
刻晴「その旅に、私は同行できない。私は璃月七星だから」
旅人「……はい」
刻晴「でも私は、本当はあなたの旅に付いていきたい。もしくは、あなたにずっと璃月に残って欲しい」
旅人「それは……できません」
刻晴「そうよね。出来ないことだわ。だから、このネックレスを私だと思って持っていって欲しいの。あなたが『私に似合う』と思ってくれたからこそ」
旅人「刻晴さん……」
刻晴「ねえ蛍。ここから見える璃月港の景色はどう?」
旅人「とっても、とっても綺麗です。みんなが笑顔で、賑わっていて……」
刻晴「ええ。私はこの景色を、ここで暮らしている皆を守りたいわ」
旅人「はい。はい……っ」
刻晴「私は璃月七星、玉衝の刻晴。そして……あなたの『特別』よ」ギュッ
刻晴「ねえ蛍。いつかあなたの旅が終わったら、また璃月に戻ってきて。私はずっと、ここで待ってるから」
旅人「刻晴さん……。はい、はい……!」
泣きじゃくる旅人をあやすように、刻晴は優しく抱きしめる。
柔らかな抱擁と暖かな温もりが旅人の心を落ち着かせる。
そっと身体を離した二人は見つめ合い、そして旅人はそっと目を閉じる。
先ほどよりも強い抱擁を交わし、二人の影が重なった――――。
おまけ。
甘雨「シゴト……シゴトハドコダ……!」
パイモン「お、おおおお落ち着け甘雨! ほら、清心! 清心を喰って落ち着くんだ!」
甘雨「シゴ……シゴト……シゴトオオオオオオ……!」バリバリムシャムシャ
パイモン「だ、誰か甘雨を止めてくれぇぇぇーーー!」