戦記系NTR物エロゲの親友に転生した俺。   作:胡椒こしょこしょ

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NTR系ゲーみたいな国に住んでる軍師はどうすりゃいいですか?

『盗辱のエルアーダ』。

俺が高校2年くらいに出たエロゲで、未だかつてないほどの本数が売れて続編が出続けていたゲーム。

 

なぜそこまで売れたのか?

このゲームの持ち味は硬派な戦記物シミュレーションとその時のフラグによる抜き。

特徴としてヒロインが何人も出てくるのだが、大概のヒロインがバッドの条件を満たしてしまうと他国に捕虜にされたり、臣下に手籠めにされたりなど皆例外なくNTRされるのである。

 

幼馴染だったり、武人系の凛々しい剣士のお姉さんだったり、嫁に迎えたうら若いほぼロリなんじゃね?ってくらいの妃だったりまでが竿役にやられてNTRされ、敵国に寝返ってしまう。

そうすると、シミュレーションパートでも自分側のクッソ強いヒロインのユニットが向こうに丸々パチられるので相手側の戦力が上がってしまうのである。

この抜きとシミュレーションのバランスがオタクたちに受けたのだ。

 

このゲームにおいてヒロインやヒロインの側近のイケオジ以外はほぼ主人公陣営では出てこない。

だからこそ....。

 

「ベゼル、親友として...そして軍師として意見を聞かせてほしい。君は相手の出方、...どう思う?」

 

玉座に座る顔の良い青年。

彼の隣にはポニーテールで凛々しい表情の少女と、ボブカットの快活そうな少女が立っている。

そして俺と彼の間にはテーブルとその上に広がる地図。

シミュレーション画面で腐るほど見たこの世界の地図だ。

本来のゲームでは軍師など、存在しない。

 

だからこそ....俺の存在はこの世界においてはイレギュラーなんだ....。

 

交通事故に遭ったかと思えばこの世界で生を受けて暫く経つ。

最初は現代よりも文明レベルが低いのを痛感しつつ、家柄は良くて安心したものだ。

自分はどうやら転生している。

しかし、境遇としてはマシなようだと。

 

だが、成長して物心もついて正常な思考能力を手に入れると段々と察してきた。

教科書に出てくる国の名前が、どこかで見たことがあるものであると。

自分の居た世界とは明らかに違う名前。

でも見覚えがある。

 

それに、自分が古くから付き合っている親友の名前もだ。

その感覚はずっと続き、そして考えて考えてようやくこの世界は自分が昔やっていたゲーム『盗辱のエルアーダ』世界であることが分かったのだ。

 

自分はこの国、エルアーダの世襲制の名家に生まれた。

それに気づいた時、唖然としたものだ。

このゲームは、ヒロインがガンガン引き抜かれて戦力が下がる。

そしてノーマルエンドで亡国化、バッドエンドルートでは大概国は植民地と化して男はみな処刑、女は慰み者とかいうエロゲ特有の極端な植民地支配をされるのだ。

グッドエンドしか救いがないのである。

なんだこの鬼畜ゲームは、たまげたなぁ....。

 

そして、俺の家柄は軍師の家柄らしい。

このゲームに軍師などは出てきていない。

居るのかもしれない、てか国や戦闘の指示をする以上居るのだろうが話にも出ないのだ。

まぁそりゃシミュレーション部分の指示だしはプレイヤーがしているのだから、プレイヤーが軍師と言えばそれまでだが。

 

幸い、軍師になるに辺り必要な勉強や試験はスムーズに終わっている。

しかしそこにも何かの意思を感じざるを得ない。

俺はこのゲームのプレイヤーだった。

だが、流石に一国の軍師にすんなりなれるほど勉強が出来る方でもない。

なのに一つも挫折無くしてなれるのはおかしいのではないか?

勉強した内容も頭に染みわたる様に入る。

まるで誰かがそう調節したような感じだ。

例えるなら、そう俺をこの世界に遣った奴。

ソイツはこのゲームを俺がやっているのを知っていて、退屈まぎれにプレイヤーらしい立ち位置に持っていこうとしてるのではないかとか思わざるを得ないのである。

 

まぁなんにせよどうせ会えもしない奴のことを考えてもしょうがない。

どっかの誰かが持っている手札で勝負するしかないと言ったように、俺も今この現状に向き合い続けるしかないのだ。

逆に言えば軍師になれたのは幸いであったと言える。

幸い原作知識はあるし、世界情勢は原作の通り進んでいる。

それに....自分がグッドエンドに導かなければどうなるか?

文字通りの破滅だ。

国はガタガタ、戦場では負け続きの弱小国。

それにならないように振る舞わないといけない。

少なくとも、この国で生まれ育ったのだ。

愛着はあるし、バッドエンドルートに入って処刑もされたくないからな。

 

さて、地図の情報を見てみるか。

近隣の鉄血国が仕掛けたこの戦。

連中は、何師団かに分かれていて、術士とツヴァイへンダー部隊、弓矢部隊。

序盤の戦争だ。

この戦争は勝てはしないものの、数ターン粘るか戦力を半分に削れば向こうから退却したはず。

まぁチュートリアル的な物だな。

ギフト持ちも居ない平和な戦場だぁ.....。

 

そう考えていると、ポニーテールの凛々しい表情の少女が隣の顔の良い男に言う。

 

「であれば、この村雨が一番槍を努めさせてもらう。私が切り込んで活路を拓けば、兵も後に続けるからな。」

 

日ノ本から流れてきた落ち武者の少女、村雨。

目の前の青年、言うまでもなく原作主人公に傷ついた所を拾われて、その卓越した武芸を買われて将軍に任命された主人公に忠誠を誓っている武人系のヒロインだ。

日ノ本勢でありながら、同盟無しで序盤に使えるキャラであり、日ノ本のサムライ勢が持つ強力なスキル「首狩り」とギフト『先駆け』を持っている有能ユニットだ。

しかしこの女、正直一番嫌われているまである。

 

それはなぜか?

一定確率でイベントが発生して勝手に敵の多い場所に飛び出していくのだ。

サムライは騎士と比べると攻撃力は高いが、防御性能では劣る。

だからこそ、数で囲んで殴られると死にかねないのだ。

そして落とされると大体、敵の首領の下にまで連れていかれて直々に調教され、そいつの女にされて向こう側の戦力になるのが様式美だ。

これは序盤にも起こりうるイベントであり、序盤からクソ強スキルを持った元味方と戦わなければいけなくなる。

だからこそ掲示板上ではコイツもう敵だろwwwとか駄犬みたいな扱いを受けていたキャラだ。

 

ちょうど今みたいにな。

だが、一つ違うのは判断が俺に委ねられているという事。

ならば無理やりにでもコイツには中に籠ってもらう。

勝手な出撃は困るんだよ!!

 

「いえ、あなたには中継拠点設営後にそこの守りをして頂きます。出来れば、中継拠点に相手が来る前に兵卒で撃破を目指します。」

 

俺がそう言うと、村雨は眉根を顰める。

 

「...それは、どういうことだ。軍師殿。私の武芸を貴方は知っているはず。であるのにまるで戦いから遠ざけるかのような指示....軍師殿もっ!私が女だから戦うなと言うのか!?それとも...この国の者ではないからっ!??」

 

詰め寄ってくる村雨。

テメェをポンポン戦場に出したら一定確率で乳首弄られただけでイキ狂うド変態裏切者になるからだよ!そんな奴を将として現場の指揮なんかさせられるか!

しかし、このままの文脈で言っても伝わらないだろう。

なんとか言いくるめなくては....。

 

「この程度の国力の敵に貴方を出すのは徒に他国に貴方の武芸の情報を流す原因になりかねません。強者でありギフト持ちである貴方を使うのであれば、それ相応の相手に。中道、これが兵法の基本です。基本は兵卒でなんとかなる戦場はそれで済ませたいのです。断じて貴方を軽んじているわけではございません。理解してくれますね?」

 

「しかし....。」

 

歯噛みする村雨。

そんな村雨を心配そうに見つめる少女。

すると、間に座っていた原作主人公が彼女に声を掛けた。

 

「俺も、ベゼルの言葉に賛成だ。相手側からギフト持ちが出ていない以上、ここで出るのは相手にただで君の情報を得るというアドバンテージを与えてしまう。俺からも頼みたい。」

 

彼が言うと、彼女は逡巡した後に溜息を吐いて原作主人公に言う。

 

「この身全ては貴方の物。あなたが言うのであれば、私は聞き入れます。....しかし、私を出さない以上、兵卒だけで戦果を挙げてもらうぞ軍師殿。」

 

彼女はこちらに鋭い目線を送る。

はえ~すっごい忠誠心。

こんな奴が堕ちたらアヘ顔で原作主人公のことを粗〇ン馬鹿君主とか呼んで馬鹿にしだすと考えるとおかしくって面白いな....いや、面白くはない!

 

「えぇ。それが私の仕事ですから。」

 

なんかそれっぽい感じの返事をして俺は話を済ませた。

さて....どうするか考えるか。

周回プレイしているからこそ、相手の術師の手の内などは知っている。

確か鉄血国の術士は鉄車操作だったか。

なんか鉄の塊みたいな奴を念動力かなんかは知らんが動かしてくる奴だ。

これで敵を轢き殺す的なサムシング。

ガチ蛮族じゃねぇか殺すぞ。

 

序盤でトラウマを植え付けてくるアイツだ。

序盤の内はまともに兵を差し向ければ勝つ!と思っていた萌えゲしかやったことない兄ちゃんたちの兵士を1ターンの内に蹂躙しつくして、このゲームがどんなゲームか思い知らせるある意味チュートリアルな存在だ。

この鉄車に対しての最適解は、進路上に爆弾をしかけて足を止めている間に弓矢兵を馬に乗せて術士の傍まで急行させて弓を数撃って殺す。

 

確かこの進路に来るから....ここら辺に爆弾を設置しておくか。

こちらの術士は序盤では回復しかいない。

強力ではあるものの、攻撃には使えるはずもない。

であれば他は兵士で済ませるか....。

間を取り囲んで補給を絶って弱体化させるか。

 

ツヴァイへンダー部隊もその師団以上の数差し向ければ倒せるはずだ。

弓矢部隊は言わずもがな、進路上に森があったはずだ。

コイツの動きは森の外の高台を目指す。

そこに爆弾を仕掛ければ運が良ければ半分は削れるだろう。

半分削れれば後は兵士で待ち構えて数で攻める。

まぁ今回は半分削った時点で勝ちみたいなものだが。

 

このゲームは質よりも数だ。

如何に強力なユニットでも連戦すれば疲労がたまるし、蓄積したダメージは馬鹿にならない。

現実はゲームのようにはいかない。

しかし、俺はこれがゲームだと知っているのだ。

であればこのセオリーでなんとかなるはずだ。

 

まずは爆弾の為にも工作兵科に声を掛けないとな。

それとマジであの女が勝手に出撃しないように見張りを置いておくか。

 

 

 

暫く経って戦場。

中継拠点にて、俺は椅子に座っている。

同じ部屋には立ち上がって落ち着かない様子でうろうろする村雨。

そして近くにはボブカットの少女が居心地悪そうにしている。

 

「だ、大丈夫なのでしょうか?」

 

原作主人公の幼馴染であるエル=フォーロライト。

貴族の娘であり、術士長でもある。

彼女の回復魔法はレベルによるがHPとスタミナを回復させる。

他ユニットと一緒に動かせば戦い続けることが可能。

だが、AIにも依るが術士はとても狙われやすい。

兵が多い中盤であればデコイにしても良いが、少ない序盤では出せばそこを突かれて侵攻されてアヘ顔ダブルピースで相手側に勇んで協力するようになってしまう。

 

だからこそ、彼女も序盤はまだ出すわけにはいかない。

少なくとも彼女にヘイトが集まってもなんとか出来る算段が決まらない限りは出せない。

 

「...やはり、私が出た方が.....。」

 

「それはなりません。ご自身の重要性を理解してください。」

 

そう言いだす彼女をなだめすかす。

この自信は自分がギフト持ちであるからなんだろうな。

俺も欲しいよギフト。

正直俺には何もない。

ゲームの経験しかないのだ。

 

すると、ドアが強く叩かれる。

 

「入りなさい。」

 

すると一人の若そうな兵卒が息を切らしながら入ってくる。

彼は俺の顔を見ると口を開いた。

 

「申し上げます!!森林や谷に仕掛けた爆弾によって敵全師団半壊につき、敵軍が撤退していきます!!」

 

「防衛成功ですか....。報告ご苦労です。下がりなさい。」

 

「はっ!」

 

恭しい様子で下がる兵士。

すると、エルが声を上げる。

 

「やりましたね!流石エルダードが認めた軍師です!」

 

エルダードとは原作主人公の名前な。

目の前で目に見えてはしゃぐ術士。

だが、こちらとしては勝って当然と言わざるを得ない。

メタ知識ではあるが、今回鉄血国が差し向けたのは占領した国の兵士で構成された部隊だ。

だからこそ、鉄血の強いユニットはいないし、士気も低い。

チュートリアルなので序盤の兵力でも勝てるのだ。

それに、相手のやろうとしていることと言えば情報収集だ。

こちらが爆弾を多用したと知ればそれ相応の対応を本国軍側は取るだろう。

 

ちなみに植民地にした国の軍を使う場合はこちらが指揮官として出した本国のキャラには注意をした方がいいよ!

目を離すと嵌められて慰安させられている場合があるからね!

負けた士官は威厳が下がるし、何もしなくても少しづつ下がっていく。

威厳が下がるとそうなりやすい。

勝たなければ威厳は上がらないのだ。

回復系の術士であるエルなんか送ろうものなれば、彼女は攻撃能力もなく基本的に敵を倒せないのですぐ慰安コースだ。

その癖植民軍が出来ればそちらを率いようとするし、もうわけわかんねぇwww

 

「....確かに今回は上手く行った。だが、それは向こうに強力な術士やギフトを持つ者が居なかったからだ。」

 

拗ねたような様子でそう呟く村雨。

まぁそんな分かり切ったこと言われたところでって感じなんですけどね。

お前どんだけ戦場に出たいんだよ頭おかしいんじゃねぇーの?

 

「えぇ。その時が来れば...あなたのお力添えが必要になりまする。是非ともお力をお貸しください。」

 

そう言って下げたくもない頭を下げる。

やっぱほら、俺コイツのエロシーン見たことあるからさ。

ちょっと頭を下げるのに抵抗感あっても仕方なくね?

しょうがないよ、実際下げてる分俺は偉いなぁ....。

 

「....エルダード殿もそうだが、軍師殿もおかしな人だ。拾われただけの根無し草、それも小娘に対してそのように頭を下げるなど....。ふっ...そうだな。貴殿の指揮で戦うのを楽しみにしているぞ。」

 

そう微笑んで部屋を出た。

多分城の方に帰っていくのだろう。

それにしてもなんかご機嫌だったがどういう事だろう.....。

...いや、多分気分だろうな。

この世界の女連中なんてこんなもの。

何の拍子に寝取られて敵国側になるか分かった物じゃない。

信用すべきじゃない相手なのだ。

程ほどの距離感で付き合うのが一番なのである。

 

ただ確かに術士が回復だけではすぐに詰みかねないし、今回爆弾で上手く行ったのは防衛戦だからだ。

このゲームは守ってばかりではいずれ磨り潰される。

だからこそ、強力な術士かスキル持ちの部隊を揃えてどこかと同盟を組むなりして戦力を増強せねばならん。

 

そして、俺にはその当てがあるのだ。

村雨の故郷である日ノ本。

そこに行って同盟を組む。

あの国は沢山の小国に分かれているし、『サムライ』、『シノビ』、『陰陽師』と3つの勢力があって日夜争っているような蛮族国家だ。

 

だが勢力ごとに違う性質を持っていて強力なスキル持ちが多いため、同盟を組む価値はある。

同盟を組めば向こうの技術、上手く行けばユニットがもらえるのだ。

それに.....試したいこともある。

当面の目標は日ノ本との同盟締結だな。




戦記系を書いたことなかったので難しい。
R-18には現状するつもりはないです。


<『拾われただけの根無し草、それも小娘に対してそのように頭を下げるなど....。ふっ...そうだな。貴殿の指揮で戦うのを楽しみにしているぞ。』
これ実は、ゲーム設定的にあるイベントで好感度が上がった主人公に言う言葉と似ているんですよね。
はて、どういうことやら?(すっとぼけ)

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