戦記系NTR物エロゲの親友に転生した俺。 作:胡椒こしょこしょ
当面の活動方針を決めた俺だが、正直戦いよりも気にかけるべきことが何個もある。
一つは今やっているこれだ。
他の部署の報告などを聞いて、内容を整理して最終承認することだ。
正直この運営作業が一番怠い。
何故ならこの作業はゲームではもっと気楽に本来用意されている指標に従って部下が渡してくる報告書を承認する為、ボタンをポチポチすれば済んだ話なのである。
しかし現実では実際に部下が渡してくるし、内容を把握するにも親切なシークバーもない。
おまけに自由度が上がっている分、少し自分の頭で考える必要が出てきたという物だ。
これ、官吏教育受けてなかったら詰んでたな。
そう思いつつ、印を押したり押さなかったりする。
「えーと、何々...新兵器の開発案だって?....これは現実的なコストに合っていないんじゃないか?この装甲鉄車?鉄血国の技術を見て思いついたのだろうが推進力はどうするのだ?」
目の前の男に問うと、男は答える。
「鉄血国の術士を捕らえて能力の研究を行おうと思っております。あの鉄車は今後の戦争を大きく変えます!どうぞ、ご判断を.....。」
男はこちらに熱弁を振るって訴えかけて、部屋を出た。
あー、このイベントか。
このイベントは技術者イベントとして偶に起こるもの。
言うなれば的外れな物やコストが嵩むなど非現実的な物をこれからの戦争の主役であると言ってプラン提案してくるといったイベントだ。
このイベントは言うなればまともな開発プランを妨害してしまうお邪魔イベントだ。
大抵まともにこれを聞くと、非現実的なプランによってプラン自体が破綻して金ドブになるか、出来ても他国の術などの下位互換にしかならないといったことが起きる。
そしてこの装甲鉄車。
これから推進力になる術士を研究するなどバカげたことを抜かしている以上、大した物は作れそうにない。
ここは却下だ却下。
「....取り敢えず一筆したためるか。」
ここでそのまま却下と書類をポイするのは簡単だ。
しかしそうなると、技術者側はどう思うだろうか。
これはゲームなど関係ないが、あそこまで妄執に囚われた人間は理由の説明もなしにいつまでも予算が降りないとなればあらぬ誤解をしかねない。
そのような誤解は人に広まりやすい。
だからこそ、理由をこじつけでも良いから言ってやらなければな。
...あー、めんどくせ。
かったるさを感じながらも、俺は紙を出して筆を走らせる。
内容としてはプランの提案と彼の情熱に理解を示すが、国庫の都合などを考えるとコストが高すぎることを理由に挙げて、罠のような物であればコストも低く収まる為、予算は出しやすいがどうだろうと提案をするものだ。
まぁ後半は俺がゲームやってて罠強と思っていたので、書いた言葉なのだが。
言う事聞いて罠のプランを持ってきたら万歳だし、無視してもまぁ構わない。
ていうかこういうのが一番面倒くさいんだよなぁ。
ゲームでは表現されなかったメインキャラ以外の心情。
そんなものはメタ知識で何とかすることが出来ない。
俺の唯一持っている武器が通用しないのだ。
だからこそとても気を遣う。
モブキャラの名前も憶えないといけないのが地味に苦痛だったりするのだ。
そりゃ当たり前なのだが。
ゲームではなく、俺にとっては現実なのだ。
やるべきことが増えて複雑化するのが普通である。
「伝達係がこの部屋に来るまで他の書類もやっておくか。」
当然ながらこの世界には携帯なんて便利な物はない。
術であれば似たような物があるが、この段階ではエルアーダにはそんな手段はない。
だからこそ伝達係が城内を交代制で一定間隔で巡回しているのだ。
すると、ドアが叩かれる。
誰だろうか?
そう思いつつも、俺はその扉を叩いた主に入る様に言う。
「入ってよいですよ。」
すると、ボブカットの快活そうな見た目をした少女が入ってきた。
「これはこれはフォーロライト様。一体なんの御用で?」
俺が問うと、彼女は微笑む。
なんだ.....何かイベントか?
現状植民地がないので植民地の方に指揮に行くと言い出すイベントではないだろう。
一番の地雷イベントは起こらないのだ。
ならば、まぁ少し安心だったりする。
すると彼女は口を開いた。
「前回伺った孤児院の件なんですが....、そのっ有難うございました。これで孤児の子供たちにも教育を受けて、しっかりと暮らす基盤が出来ました。」
そう言って彼女は頭を下げた。
あぁ。その件か。
それは以前彼女に打診された建設案だ。
孤児院を創ると言い出した時は警戒したが、まぁ特段孤児に教育や生活の場をと言った説明は悪い物とは思えない。
それにかかる費用もさっきの鉄車と比べれば屁みたいな物である。
だからこそ深く考えずに承認していたのだ。
というよりお礼を言ったということはもう完成したということか?
それ以前に忙しいのでそんなことは頭から抜け落ちていた。
「その様子では出来上がったようですね。すみません、私は連日ここに籠りきりになることが多く、陛下と話す時と仕事以外は外に出る機会も乏しいのです。それに私は承認しただけ。お礼を言われるようなことはしていません。」
取り敢えず目の前の少女の機嫌を取っておく。
主人公周りのヒロインには特に気を遣わないといけないから嫌いだ。
NTRイベントをぶっ潰すのもそうだが、俺自身の好感度が高くないと足を引っ張られたり、言う事を聞かなかったりするかもしれない。
ゲームではプレイヤーが神のような視点で指示出しをしていたが、今は俺もこの世界の一人の人間。
面倒な人間関係からは逃れられない。
唯一救いがあるのは主要キャラの設定は把握している。
だからこそ、それぞれの地雷も避けることが出来るのだ。
バーダー教の敬虔な信徒である彼女は社会的に立場の弱い人が不当に搾取されるなど迫害されるのを良しとはしないだろう。
だからこそ、逆に媚びを売りたければそういう政策は通せばよい。
それに、孤児にも教育を受けさせられるのは普通に良い。
何故なら親がいないガキも兵士などの国力の一部として育て上げることが可能だからだ。
「いえ....それでもあなたが承認してくれなければ建つことはなかった。だからお礼を言わせてください。....というか、こういう堅苦しい話し方やめない?ベゼル君だってエルと同じく私の幼馴染なんだし。」
彼女はそうやって提案してくる。
エルというのは主人公であるエルダードの愛称だ。
幼馴染である彼女だけが唯一この作品内で彼をエルと呼んでいる。
まぁ公的な場所ではエルダード呼びなのだが。
しかしなんにせよ同じ幼馴染でもエルダードは愛称で、俺は君付けと考えると距離があるな。
まぁ構わない。
ヒロインには主人公とくっついてもらわなければ困る。
くっつけば今みたいな異性関係にほんわかで簡単にNTRされるような典型的鈍感主人公からそういうのに敏感な男に変わるからだ。
それに主人公とくっつくと両者の性能が上がるのだ。
「...私は軍師になった瞬間から、この椅子に座っている間ベゼル・アベヌスを捨てようと決めました。申し訳ありませんがそれには応じられません。」
距離を縮めるわけにはいかない。
今くらいの距離感が一番楽なのだ。
すると、彼女はどこか寂寥感を感じさせるような笑顔でそっかと言うと、話題を切り出してくる。
「そっか...。それじゃ私だけ。あのさ!ベゼル君ってエルと偶に話したりするでしょ?あの....エルは私の事どう思っているかとか分かるかなぁ~って。」
彼女は恐る恐る俺に尋ねる。
なんだ、そんなことか。
正直、まだ仕事があるからやめてほしいんだが....。
いや、でもこれは良い傾向だぞ。
ここで後押ししてさっさとくっつけよう。
少なくとも相手側に回復が渡るのは結構きつい。
「エルダード様にはいずれ他国の王女と結婚して頂きます。そうすればこの国は更に領土を拡大することが可能になるからです。それは分かっていますね。」
エルダード君にはロリ王妃を別国から取ってくることになるから多少はね?
抱こうと思えばロリから熟女幅広く抱けるの才能だと思うわ。
流石エロゲの主人公。
まっNTRされるときは容赦なくされるんですけどね、初見さん?
彼女は複雑そうな顔をする。
まぁ昔から好きって設定だからね。
はえ~すっごく一途。
こんな健気な子がNTRされるわけないじゃないですか!
されるんだよなぁ....。
植民側で慰安要員になるのはまぁ良い。
だが、最悪なのは彼女が敵国の勢力になることだ。
回復を駆使するのもそうだが、最終的には敵側に寝返って暫くすると彼女は敵国王子の子供を産まされながら首を斬られてマミる。
それを術で見せられて主人公メンタルブレイクして4週間寝込む。
すると部隊全体の士気が著しく下がってしまうのだ。
最初のヒロイン二人がトラウマ要因と言われるのも納得だろう。
加えてフォーロライトは死に方がえぐいしな。
「...うん。分かってる。エルを、この国の皇太子を好きになった時点で分かっていた。私は....」
暗い顔で二の句を継ごうとする彼女の言葉を遮るように口を開いた。
勘違いしてもらっては困るのだ。
本妻にはなれないだろう。
だが、本妻以外では?
主人公にとってのヒロインユニットはどれも一定水準を超えている奴ばかりだ。
だからこそ誰一人取り逃したくない。
目指すはハーレムエンド。
全てのヒロインを運用できるこのエンドが一番強いのは言わずもがな。
フラグ管理は難しいが、それを目指すに越したことはない。
「ですが、彼は貴方を一人の女性として意識しているのです。それに....英雄色を好むとも言います。歴代の王でも本妻以外に妻を持つのは珍しい事ではありません。だから...そのように悲観的にならないでください。私は貴方を応援していますよ。私も幼馴染ですからね。」
勿論俺はエルダードと最近話す機会はなかったし、彼女の話もしていない。
しかし、こちらは設定的に知っているから事実ではある。
だから大丈夫だろう。
それに勝手に諦められるとこっちが困るからな。
コッチの都合も考えてよ.....。
俺が言うと彼女は一瞬ぽかんとした後に口元に手を当てて笑う。
「ふふっ...その椅子に座っている間はベゼル・アベヌスを捨てる。そう言ってなかったっけ?」
は?何言ってんだこのアマ。
....あっ、そうだった。
そう言えばそんなこと言ってたわ。
ただ距離感縮めない為の方便だったんだが。
やっべ、なんか意味分からん所でボロ出しちゃったよ....。
内心ハラハラしていると彼女は笑みを浮かべた。
「ふふっ、ごめん。困らせちゃったね。それと....ありがと。エルが認めた軍師さんが応援してくれるなら...安心した。」
どうやらそこまで俺のボロを追及するつもりはないらしい。
しかし、こう言っているところ悪いが俺はアンタ以外の女も応援するぞ。
正直アンタの恋心なんてどうでもいい。
俺は自分が生まれたこの国が、ひいては俺自身の安全を保証する為にハーレムルートに持って行かなくてはいけないのだから。
「なら良かった。掴みたければ積極的に、攻撃は最大の防御とも言うのですよ。」
「ありがと、私...頑張るねっ!」
がんばえ~。
そういう心持で部屋を出る彼女を見送る。
これで積極的になった彼女にサムライが焦る。
そこで俺が折れる前に焚きつけてなんとか二人を保持する。
完璧な作戦だぁ.....。
....俺なんで主人公の異性周りのフラグ管理してるんだ?
いやバッドエンド、ノーマルエンドを避ける為ではあるが、それにしても釈然としないのは事実だ。
どれもこれも積極的に恋愛していかない主人公のせいだろ。
あー、だからヒロイン周りって面倒臭い。
ゲームなら選択肢選ぶだけだけど、こちとら会話内容で誘導したりしないといけないんだぞ。
苦行だよ苦行。
半ばぶっつけ本番みたいな物じゃん。
頭おかしなるで。
とにかく、日ノ本に行くのであれば準備を整えておくに越したことはない。
俺がやりたいことをやるにはまず日ノ本に行かなくてはいけない。
すると王国で俺が暫く居なくなってしまう。
そうなってもヒロインが離脱せず、国がちゃんと運営できるように考えないとな。
まずは、いきなり日ノ本に行きたいと言い出したと不審がられてはいけないからあの猪武者娘に故郷の話でも聞くか。
流されてきた身なので話さない可能性もあるが....いや、案外エルダードの為と言えば話すか?
まぁ色々試行錯誤してみるか。
◇
彼の部屋からの帰り道。
私はどことなく笑顔を浮かべていた。
止められるかもしれないと思ったこの思い。
それを彼は応援してくれたのだ。
「...思えばずっと私とエルの手助けをしてくれたっけ。」
幼馴染のあの軍師は幼い頃も何かと私とエルに目を掛けてくれていた。
私達を最も分かっているのは彼であると言っても過言ではない。
だからこそ....。
「あなたは一体どこを見ているの?」
会話している時も一瞬見せたどこか焦るような顔。
何か遠い所を見るように考え込む姿。
エルも心配していたが、その心配は杞憂でないと私は思う。
軍師になってから彼は何かを抱え込んでいる。
エルは自分から言うまで触れるべきではないのではと言っていた。
それには賛成だが、それでももし言えないのだとしたら。
無理にでも聞かなければいけない日が来るのかもしれない。
この小説のサブタイトルはエロゲのタイトルのパロディだったりします。
今回の主人公にガバはないです。
まぁそりゃただの運営パートですし。