戦記系NTR物エロゲの親友に転生した俺。   作:胡椒こしょこしょ

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王に寄り添う軍師の話法

「二人きりで話すなんて久しぶりだね。それで何かな?ベゼル?」

 

夜。

俺は仕事を終えると、宮中でも最も守りが厚い場所に赴く。

それもそのはず、王であるエルダードの私室。

そこに赴いているのだから。

 

彼に内政の報告をする際に部屋に訪ねると声を掛けていたから良かったが、本来は自分であっても簡単に入れる所ではない。

まぁ彼が招けば話は別だが。

彼は久しぶりに話せたことに嬉しそうな顔をする。

 

考えてみれば来たるべき日に備えて色々下準備をしていただけあって彼と私室でプライベートな話をするようなことはなかった。

...まぁ、正直俺はここにプライベートな話をする為に来た訳ではない。

所謂王手を打ちに来ていると言っても良い。

 

話す内容は決まっている。

見せる物も。

後は反応を見るだけだ。

 

「....いや、俺としては君に...伝えないといけないことがある。もしかしたら....この国の内政に関わることだ。」

 

俺が神妙な顔で言うと、彼もそれに付随して表情を引き締める。

 

「それは...どういう.....。内政に関係あるなら昼間でも....」

 

「...いや、昼間では支障が出るかもしれない。まだ確定した情報じゃないんだ。でも....君には知っていてもらいたい懸案事項だ。親友として...そして、一人の王として....。」

 

そう言うと、エルダードは猶更真面目な顔になる。

まぁそうなるだろう。

彼は親友という言葉に弱く、また彼自身が先代にも負けないような立派な王にならないといけないと思っていることがある。

そんな彼にとってこの言葉は食いつかずにはいられないだろう。

 

それにそれこそ、この話は二人きりでないと意味がない。

口を出す人間が居ては都合が悪いのだ。

俺が出すのは一枚の紙。

 

それには調度や品物、書物等が取引相手の名前と共に事細かに記されている書類。

それを手に取ると、彼は一人声を漏らす。

 

「これは.....?」

 

疑問符を浮かべるエルダード。

まぁその反応は当然だ。

いきなりこんなものを渡されても理解できないだろう。

 

「それはある貴族の今までの交易記録だ。取引相手を見てくれ。」

 

「これは....全て同じだ。全て....これがどういう....」

 

まぁ、そう言うだろうな。

俺は更に持っていた書類を彼に見せた。

 

「...これはアドリアヘッテン会社、この国で二つある日ノ本との交易を行っている商人の一団の一つだ。この商人と独占的に交易を行っている貴族が居る。」

 

そう言うと、彼は首を傾げた。

 

「誰だ...?そのっ、日ノ本と言えば最近の君が思い浮かぶんだが....」

 

彼は俺に対して困り顔でそう言ってくる。

....宗教のことについて激推ししてたもんな、俺。

正直、今になって考えれば軽率だったとしか言えないが。

 

「そうだ。でも俺ではない。俺はアドリアヘッテンではなく、ウィーズネールから交易を受けていた。そのことは分かるな?」

 

彼には一度経典が欲しいと相談した。

その際にウィーズネールから交易したら良いのではないかという話をしてたはずだ。

まぁそれもアドリアヘッテンよりもウィーズネールの方が俺の家と付き合いが深いからと言ったしょうもない理由なのだが。

それを彼が覚えていれば話が早い.....

 

俺がそう言うと、彼はアッと声を出す。

 

「た、確かにそう言ってたな...。ならこれは....。」

 

彼がそう言うと、俺は彼に顔を寄せて神妙な顔をする。

彼に信じてもらわなければなるまい。

だからこそ、出来る限り真面目に、深刻な様子で口を開く。

 

「あぁ。俺も日ノ本に興味があって、物品の交易をしようとした。だからこそ、俺以外にも日ノ本と接点を持とうとする....いや、既に接点がある人物が一人居ると分かったんだ。信じられないかもしれないが....その人物は、オズワルド卿だった。」

 

俺が言うと、彼は信じられないといった様子で口を開く。

 

「お、オズワルド卿...?そんなバカな!言い方悪いけど...少なくとも東国の文化なんか受け入れられるとは思えない頭の硬そうな老獪だよ?なんか父さんが死んでから常に母さんのそばに居るから偶に話すこともあるけど....そんな素振りなかったような....。」

 

部下のゼルケルの時も思ったけど、コイツも中々言うな....。

まぁ確かにエルダードは母親イケるもんね....そんな母に父親が死んでからずっと男の影があったら心中は穏やかじゃないだろう。

まぁ今はエルダード自身がそのことに気づいているといった様子ではないが....。

なんというかあまり面白くない程度か?

まぁそれならそれで助かる。

 

「確かにな。だがこれはオズワルドの下で文官をしている信頼できる筋からの情報でもある。覚えているか?ゼルケルを。」

 

そう言うと、彼はあまり浮かない顔で返事をする。

 

「あぁ...居たな。君がよくつるんでいた後輩か。そういえば君の働きかけもあって貴族直属の文官に就いたとか聞いていたけど....」

 

な、なんだ....?

もっと「あぁー!!懐かしいなぁ!!」みたいな反応かと思ってたが。

存外塩反応である。

ま、まぁ良い。

そこはそこまで重要では....いや、重要だな!

 

「ど、どうした....?なんか芳しくない様子だが....。」

 

俺が言うと、彼は笑顔を浮かべる。

 

「いや、ただそんな人が居たなぁと思ってね。それで...直属の部下からの情報か.....」

 

彼は考え込むような仕草を見せる。

おぉ、まぁちゃんと考えてくれてるなら良いが....。

なんだったんだアレは.....。

 

「あぁ。そしてこれは彼が俺に渡してくれた物だ。」

 

ポケットから書状を渡す。

そこにはこの国の貴族ではない家紋と共に墨で書かれた書状。

そこには『毘沙では至らず、人は聖にはならず。であれば縋るのは万物のみ』という言葉と共に、近々撫麗香を10袋を送ると書かれていた。

 

「ゼルケルによるとこの書状は彼は誰にも見えないように処分するように言っていたらしい。そしてこの言葉は....日ノ本の経典にも載っていた。そしてヘッテンの一人に話を聞いて、確かに日ノ本からの書状である証言を得ている。」

 

「...つまりは、君の言いたいことはオズワルド卿が日ノ本と既に繋がっている可能性があると?」

 

彼は俺にそう聞き返す。

そうだ。

俺はそう言いたい。

しかし、それにしては説得力はない。

確かに証拠を見せているが、俺自身も日ノ本の宗教を推していた人間だ。

日ノ本についてそこそこ詳しい。

そして逆に彼はそこまで知らない。

それはつまり俺がこの書類を仕立て上げたと思われてもおかしくはないのだ。

この話題において、俺は説得力はないと言っても良い。

 

「あぁ。そうだ。彼は危険かもしれない。」

 

だが、敢えて危険であると主張する。

こちらも怪しまれるリスクを承知で肯定する。

俺がしたいことは彼を経由してオズワルドに手出しすることではない。

あくまでオズワルドに直接手を下さずに、彼の思惑を妨害する。

 

「....俺は、君を信じたい。だけど、君は前に宗教に興味があるとか言ってたし....それに第一、そのゼルケルは信じられるのかい?幼馴染でその...親友、である私のように君の事を大事に思っている人間なのかな?存外出世の為につるんでるだけだったりして....。」

 

な、なんだろう....ゼルケルに対しての評価がなんか厳しいな。

でもまぁその気持ちも分からなくもない。

ゼルケルが彼の直属の部下である以上、もしかすればゼルケルとあの親爺が繋がっていて、誤った情報を握らされている可能性も無きにしも非ずだ。

そのことを心配しているのだろう。

だが、俺は彼の言葉が正しいと分かる。

 

俺はエルダードに対して口を開く。

 

「確かに彼の情報の信憑性に疑いの目を持つのも普通だ。...だが、君がこの言葉を聞けば彼の言葉に多少なりとも信憑性があると言えるはずだ。....君は、母親に俺を日ノ本へ使節に出すように言われたかい?」

 

その言葉を聞いてエルダードは目を見開く。

 

「そ、そうだけど....なんで君が知ってるんだい?あの時は後宮の方でその話をしていたけど.....」

 

その言葉を聞いて、俺は笑みを心中で浮かべる。

話が早くて助かる。

どうやら既に相手は手を打っているらしい。

俺を厄介払いさせるための手筈は整っていると言った所か。

 

「ゼルケルから、俺を厄介払いする為に使節という形で日ノ本へ送るってオズワルドが君の母上と話していたと聞いたよ。俺が日ノ本の宗教に興味があることを良い事にね。...どうやら君の母上からは快く思われていないようだからね、私は。」

 

「それはっ....っ!!」

 

どうやら彼にも心当たりがあるらしい。

そう考えると、良く俺の友達やってくれてんなコイツ。

仮にもコイツ、母ちゃん大好きだろうに....。

それか母ちゃんが表に出してないだけかな?

それにしてはオズワルドには言うんですね....。

息子には誰かに悪感情を持っているような一面を見せたくないとかかな。

 

「...もし君が快く思われていないから日ノ本へ送られるなら、私は母上に逆らってでも止める。ただ....私も一国の王だ。君が示した根拠が正しいか、それが私には....断じられない以上、君に過度に肩入れするわけにはいかない。すまない....。」

 

彼は顔を伏せる。

それもそうだ。

自分でも根拠が薄弱なのは自明だ。

だからこそ.....。

 

「いや、逆だ。俺にとって日ノ本へ行くのは良い。寧ろ良い。さっきの宗教もそうだが、撫麗香という物が気になるからな。」

 

「さっきの書状か....お香の名前、なのかな?」

 

彼が疑問符を浮かべる。

正直、俺も知らない。

日ノ本にそんな物あったっけ?って感じだ。

原作知識を持つ俺が知らないのだから大した物ではないと思うが....、だがあの内通者爺が態々こちらの国に入れようとしている時点できな臭い。

それを調べるのも、下準備をしている間に出来た目標の一つだ。

まぁ日ノ本での一番の目標はしっかりとした国交を樹立して強いユニットをこちらに招くことなのだが。

 

「まぁよく分からないが、態々書面で送るとある以上は調べてみるに越したことはない。...て、そういうことじゃなくて。俺が言いたいのは、君に頼みたいことがある。」

 

「頼みたいこと?」

 

彼が首をひねる。

まぁそりゃそうなるな。

厄介払いされそうだからなんとかしてくれならまだしも、厄介払いは良いからお願いさせてくれとか訳が分からん。

俺が頼みたいのはただエルレージュのNTRフラグを潰し、尚且つエルダードをしっかりとさせることだ。

 

「あぁ。俺が頼みたいことは....オズワルドは信用できない。だから君が母上に頻繁に会いに行くんだ。」

 

「母上に?....それはどういう.....。」

 

彼は戸惑う。

まぁ友達におっさんが信用できないからお母さんに一杯会いに行くんだよ?とか言われても困惑する。

俺もそうなると思う。

 

「俺は君にオズワルドは信用できないと言った。だが、君は俺の言い分が正しいか断定できない以上、俺に肩入れは出来ない。だが、君もオズワルドが父上が死んでから君の母上と妙に一緒に居るように感じているのだろう?俺を厄介払いする事のように母上に何かを吹き込むかもしれない。それに....風の噂ではあるが、君に会えないことを母上は寂しがっているというじゃないか。」

 

「は、母上が....。」

 

彼は考え込む。

やはり身内のことになると甘いな。

まぁエルレージュが彼に会いたがっているのは事実なので、何も問題はない。

風の噂というのは嘘だが。

 

「あぁ。別にオズワルドに何かをするわけではない。ただ君が母上に会えばいいだけだ。そうなれば俺も安心するし、君の母上も君に会えてうれしい。ウィンウィンの関係だ。」

 

「...確かにそうだな。それだけなら....それで君も安心するなら私は構わないよ。思えばここ最近は母上の所に赴く機会が少なかったな....。」

 

彼はそう呟く。

まぁエルレージュが気を遣っているからな。

王であるのは息子であるから、元王の妻でしかない自分が息子の政治の邪魔をしてはいけないと思って自重している的な事を彼女のルートで彼女自身が言っていた気がする。

 

そして更に拍車をかける。

 

「それに...君自身も、息子である自分を差し置いて父でもない男がエルレージュ様の近くに居るのは面白くないだろう?」

 

俺がそう言うと、彼は一瞬動きを停止させた後、露骨に慌てた様子で否定する。

 

「な、なにを!!そんなことっ.....」

 

「おっ、そうか?悪かったって....そうムキになるな.....。」

 

彼は言葉に詰まる。

まぁ図星だからな。

俺は慌てて否定する彼を笑いつつ、宥める。

意識させることは成功だ。

 

さて次は彼自身の意識の問題だな。

 

「それと...これはオズワルドだけでなく、俺の時もそうだが....人に意見を聞くのは良い。ただ最終的な決定権は王である君だ。君は、人の意見を鵜呑みにするのではなく、しっかり自分で考えて欲しい。」

 

そう言うと彼は不安げな表情をする。

 

「...分かってる。分かってるんだ。...けど、情けないかもしれないけど、不安で....もし私の決断で国が傾いたら......。」

 

「君はちゃんと父上の才覚を引き継いでいるさ。自信を持て、エルダード。我が友よ。」

 

俺が彼の手を取る。

すると、彼はその手を見て顔を上げる。

 

 

俺は時計を見る。

既に時刻は夜遅く。

こんな時間になってしまったが伝えるべき言葉は伝えられた。

後は彼次第だ。

これで彼自身が政策などについて判断し始めれば、今回のような俺の過干渉による母親の不興を買わずに済む。

それと同時にもしオズワルドが俺が居ない間に自分に都合のいいように国政を動かそうとしても彼自身が何とかしてくれるだろう。

というかなんとかしてくれないと困る。

お前主人公なんだろ?頼むよ。

 

「もうこんな時間か....俺が帰ってきた後に、君が俺の言葉なんて必要ない程の賢君となっていたら、親友としてそれ以上に嬉しい事はないよ。」

 

俺はそう言うと部屋を出ようとする。

すると、急に後ろでエルダードが声を出す。

 

「あのっ....俺、なるよ。君が言うような賢君に。君にだけ負担をかけない。そして今回みたいなことにならないように君を守ってみせる。そんな賢君に。」

 

「....そうか、楽しみにしている。」

 

....いや、俺を守られてもどうしようもないんだけどな。

まぁでも俺の言う通りに概ねしてくれるっぽいから良いか。

さて、明日は村雨とエルに不必要に戦場に出ずに近くでエルダードを支えてろってことをオブラートに包んで言うか。

その為にも今日は早めに寝よう。

 

背後で若き王の決意を感じながらも、次の日のことを考えて俺はエルダードの部屋を後にするのだった。

 

 




これ名前の由来のエロゲ分かる人居るのかな.....?
次回から日ノ本送りになります。
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