戦記系NTR物エロゲの親友に転生した俺。 作:胡椒こしょこしょ
「うっ...おえっ.....うおえっ......」
晴れ渡った空。
洋上を船で渡る中、俺はただ揺れに耐えきれずに吐きそうになっていた。
この世界に来る前から乗り物系統は苦手だ。
船に乗ったことがなかったので分からなかったが、自動車の時より酷いなこれは....。
まるで胃の中を掻き混ぜられたかのような感覚になる。
正直、凄いキツイ。
これを数日繰り返しているのだ。
嫌になると言ったものだ。
膝を突いていると通りがかりの船乗りの兄ちゃんが笑って背中を撫でてくれる。
「なんだ旦那ァ!まだ慣れねぇか!?まぁ丘の人間にゃ舟の上はキツイもんだしなぁ!元気だしなって!!」
「本当、済まない.....」
俺は彼に謝罪する。
すると、彼は「良いってことよ!」と元気よく返答して持ち場へと戻っていく。
彼ら船員には持ち場があり、仕事がある。
正直、俺の体調で手を煩わせるのは申し訳なさすぎる。
...だけど、正直これは体質だからなぁ。
酔い止め薬とかあれば良いけど、この世界にはないからな....。
もしかしたら似たような物がどこかにあるのかもしれないが、少なくともこの船にはないようだ。
日ノ本に行くことは決して悪いことではない。
それは分かっているが、まさかここまで辛い物とは....。
あの時はエルダードを諭したり、村雨やエルに釘を刺したりすることしか考えていなかったからな。
船旅のことなんか微塵も考えていなかった....。
空でも見て落ち着こう。
いや、海を見た方が良いのか?
景色を見た方が良いのは分かるが....。
絶えず襲い来る吐き気に対してどのように対処するか思案していると、船員の一人が駆け寄ってくる。
「旦那旦那ァ!見てみろよアレを!!」
なんだいきなり....
正直、今は悪いけどそのテンションにはついていけないぞ....。
「どうした....何かあったのか....?」
「良いから来てみなって!ホラホラホラ!!」
船員は俺の質問には答えず、俺の腕を引く。
なんだ...ちょ、いきなり手を引くなって.....。
今凄いキツイから、周りの風景を見てなんとか吐き気を抑えているから.....!
そんな俺のことなど知ったこっちゃないと言わんばかりに腕を引く兄ちゃん。
流石船乗りだけあって屈強だな。
腕を掴まれて船乗りの兄ちゃんのがっちりとした手の感触を実感する。
いや、そんなの感じたところでって感じなんだが。
兄ちゃんの手を見ると、自分自身の腕も目に入る。
改めて見ると、国に居た頃よりも焼けたものだ。
健康的な小麦色というのだろうか。
これが女の子だったらエロイんだろうなぁ.....。
吐き気でぼんやりとしながらもそう考えていると、俺の腕を引いていた兄ちゃんの足が不意に止まる。
そして兄ちゃんが振り返って良い笑顔で言ってくる。
「ほら旦那、日ノ本の地がこんなに近くに見えるぞ!....このまま無事に行けば今日中に日ノ本に辿り着けると思うぜ。」
「おぉ....。」
目の前には日ノ本の大地が見える。
海賊とか色々海の上では危険が一杯あると事前に聞かされていたが、まさかそれに会うなどのトラブルが起きずに、何事もなく日ノ本の地をこの眼に収められるとは....
本当に運が良い物である。
「港に泊めるからすぐではないけど、それでもこの海上生活とはおさらばだぜ、嬉しいだろ?いつもその有様だもんなぁ....。」
「日ノ本....か......。確かに嬉しいけど、でもこの船での生活も、悪くはなかったよ。」
ラム酒が飲めたり、魚食ったりなどあの宮廷内では絶対にありつけなかった生活だったからなぁ。
なんなら生前でもこんな生活をしたことがなかった。
これでも都会生まれだったからな。
そう考えると貴重な経験が出来たと言えるだろう。
「そう言ってもらえるなら嬉しいよ。まっ、アンタは必ずあの日ノ本に送ってやるから、大船に乗ったつもりで居てくれや。...ってもう大船に乗ってる!?ってな!!」
「あははは.....。」
彼の渾身のギャグに愛想笑いで応じると、その大地を見据える。
一応、日ノ本には前段階で日ノ本へ向かった商船に書状を渡してある。
それはオズワルドの書状を真似た物。
もちろん彼に書状を寄越した勢力に対してである。
ゼルケルにはこの件でかなりお世話になったものだ。
帰ったらその献身に報いたいものだが....。
そう考えながらも、ただ母なる海の潮騒に耳を傾ける。
そして邪魔にならないところに移動すると海を見下ろしてそのまま胃の中をぶちまけた。
正直、辛抱出来なかった。
あんな風にいきなり移動させられたからね、しょうがないね。
まぁこの海上生活が終わると思うと、寂寥感と共に安堵するのだった。
◇
「ここでお待ちください。」
そう言われて応接間?であろう場所で待たされる。
外は既に暗く、虫の鳴く声が聞こえてくる。
部屋の中は行燈の光が辺りをぼんやりと照らしていた。
日ノ本に着いた頃には既に遅くなっており、どうするかと思っている矢先に大名行列のように提灯を持った烏帽子の集団が来たから驚いたものだ。
どうやらこちらを迎えに来てくれたらしい。
オズワルドの密通が功を奏していたのか少なくとも歓迎している様子である。
そして彼らの屋敷に通されて現在に至ると言った感じだ。
まぁちゃんと贈り物的な物は持ってきているし、ご機嫌を取らないといけなくなってもある程度は対応できるはずである。
それにしても....これが寝殿造りか。
厳密には違うのかもしれないが、確かそう言う感じの設定だったような気がする。
うん、確かそうだったわ。
てかそうじゃなくてもどうでもいいか。
暫く待っていると、襖が突然開く。
そこには狩衣に身を包んだ顔の良い男が遠くの方で座っていた。
そして彼はこちらを見ると、微笑んで口を開く。
「遠路はるばるどうぞ我が国へとお越しいただき有難うございます。...エルアーダからの使者、で間違いありませんね?」
彼はそうこちらに聞いてくる。
はえ~、すっごいイケメン。
なんかすげぇしっとりした声してんなこのイケメン。
女に困らなさそうだなぁ....
ダメだ、船上で兄ちゃんの猥談ばっか聞いていたからそういう思考に行ってしまう。
今は大事な外交相手の前だ。
気を抜くな.....。
「えぇ。オズワルド卿経由で書状を送ったからこそ、港にまで迎えに来ていただいたものとばかり思っていたのですが.....。」
そう言うと、彼は笑って返答する。
「いえ、ただ念のために聞いておこうと思っただけでございます。存じておりますとも。オズワルド卿の手配であるなら安心だ。」
彼はただ笑う。
ゼルケル経由で書状を出したからそういう認識なのだろうか。
しかし安心されるって裏でどんだけ交流したのだろうか。
まぁ彼が内通してくれたおかげでここまで円滑に接触出来たが。
そこは感謝しよう。
精々俺が居ない間に何かしようとしてればいい。
まぁ打てる対策は打ったのだが。
「これを......。」
そこで俺が横の襖に座っている布で顔を隠した女中の人に目で合図する。
すると彼女が頷くと部屋から出て、彼の目の前に俺が持って来たものを運んでくる。
「ほう....葡萄酒とそのあてですか....、フフッ..私、一度そちらから送られてきた葡萄酒に嵌りましてね。エルアーダの酒は大層美味であると聞きましたが、まさかあれほどとは....。ささっ、どうぞ奥へとついて来てください。そちらの国の酒や料理に比べると程度が低いかもしれませんが、心からのおもてなしをさせて頂きますよ。」
微笑を湛えたまま立ち上がると、後についてくるように言ってくる。
なんだ....こんなにも円滑に行くものなのか?
流石にオズワルドが事前に繋がっていたとしてもおかしくないか?
俺が気にし過ぎなのだろうか....?
なんにせよ気にしないわけにはいかない。
気を引き締めるぞ.....。
◇
「良い食べっぷりで安心致しました。それに....中々イケる口なのですね使者殿。お口に合わないかもしれないと思っていたのですが....。」
「いや~マジで旨いですよ!こういうの良いっすよね!!もっともらえますか!?!?」
そう言って日本酒を呷る。
いや~マジでかなり久しぶりに日本食食べたな。
細部は違うと言えど、やはりちゃんとした日本食。
この世界に生まれてからこの方、故郷の味を食べられなかったのだ。
これが日本食、和食だ。
口にしてからの安心感がダンチだ。
テンションも上がるという物。
彼との話も中々に合う物である。
なんでも彼もこの賀茂家の当主として最近、頭を悩ませる懸案事項があるらしい。
俺も最近は村雨やオズワルド、エルレージュなど悩まされることが多かった。
それに彼自身も内務が多いという点でも親近感が湧く。
なんとなくだが良い関係を築けそうだと漠然と思ったものだ。
少し酔っててテンションが上がってるのかな....。
他国の、しかも外交相手の館で酔うのはまずい。
そう思ってるとまた杯に酒を注がれる。
「あっ、えっと...これ以上は.....」
「何をおっしゃいますやら....まだまだ行けそうですぞ。ほらっ、くいっと.....」
彼はこちらに飲むように促す。
ここで飲まないのは勝手だが、そうなれば彼が機嫌を損ねるかもしれない。
俺がぐいっと飲むと、彼は笑顔で口を開く。
「お互い大変でございますね。正直、親近感を抱かずにはいられません。飲まずにはやってられませんよねぇ....」
どうやら彼も俺と同じ気持ちだったようだ。
見ると、彼も頬が紅い。
少し酔っているようだ。
「まったくですよぉ.....んぐんぐ....かぁ~、こっちの気にもなってみろってもんですよぉ!!」
「えぇ、こちらの苦労を分かってくれる人など一握りも居ない。悲しいけどそれが現実なのです.....。」
お互いに笑いあう。
話は上手いこと運んでいる。
雰囲気も和やかだ....。
これならいける。
そう思って口を開く。
「それで...国交樹立の件ですが.....。」
俺が口にすると、彼は笑顔を俺に向けた。
「えぇ。その件については私も構いませんよ。こちらとしてもエルアーダからの物品を国家間での太いパイプで輸入できるのであれば私にとっても国にとってもこれ以上ない話です。それに.....。」
彼の笑みは深まる。
しかし、その目にはどこか剣呑な光が灯っていた。
「こちらとしても撫麗香を西へ流通させるルートが欲しかったのです。今回の件は私に取って見れば天啓に近い話でしたよ。本当に感謝致します。」
撫麗香....。
オズワルドへの書状でも書いてあった品。
奴がエルアーダ国内に入れようとした代物だ。
原作知識がある俺でも聞いた覚えのない名前。
村雨に聞いたところ、彼女も知らないと言っていた。
まぁ彼女は元々サムライ勢力側の子だし、なんなら姫だ。
他の勢力のことなんか知らなくても当たり前だ。
しかし、ここでさっきのようになぁなぁにしてとんでもない物を国内に入れてしまったらそれこそ責任問題だ。
幸い、ゼルケルの手配によって俺のこともオズワルドの息がかかっていると思い込んでいる。
ならば、ここで聞いてみるのも悪くないだろう。
「その....オズワルド卿から名前を聞いては居たのですが、詳しくは話してもらっていないのです。撫麗香とは一体どういう物なのでしょうか?」
そう言うと、彼は目を細める。
そして鈴を転がすように楽し気に声を出す。
「おやおや...まさかお聞きになっていないとは....。少し、難しいですね。かなり手間をかけた分、複雑な代物であります故。しかし....。」
すると彼が口元に手を当てる。
そして目だけを凶暴に見開く。
まるでこちらの様子を余すことなく捉えようとするように。
なんだその目は....。
そう戸惑っていると、身体から力が抜けて座っていられなくなる。
な、なんだ...力が.....。
「ふぇれ....ふぁにこふぇ......」
戸惑って声を上げようとするも呂律も回らない。
なんなんだ一体....。
これはお酒では絶対にない。
ここまで急激に身体から力が抜けるなんておかしい、泥酔状態ですらないのだ。
彼を見ると、彼はどこか申し訳なさげにこちらを見つめていた。
「すみませんね....さっき話始めに言ったでしょう?頭を悩ませている事があると。あなたも共感してくれたはずです。なので手伝ってくださいよ。安心してください、悪いようにはしませんよ。....それに、こうした方が撫麗香のことがわかりますから。...おい、あの部屋に運べ。忘れず性器に紋を描いておけよ。」
彼はこちらに礼儀正しくそう言うと、女中の方を向くと仏頂面で指示を出す。
すると女中が複数人出てきて俺を複数人で持ち上げる。
クソッ....何か、盛られたか....
これが撫麗香か?
いやだが名前的にお香だと思うのだが....
いや、そんなことより....意識が.....
懐かしい故郷の味、そして同じ境遇であると語る青年への共感。
それに絆されたか....俺をどうするつもりだ......。
オズワルドと通じていたんじゃないのか?
いや、もしくはそれすらも奴らの計算の内?
分からない...思考が纏まらない.....
意識が....まずい......
意識をなんとか手放さないようにするも。現実は非情。
泥のような底に意識が沈んでいくのを感じながら、微睡む様な感覚と共に目を閉じてしまう。
一人の陰陽師が廊下を歩く。
その顔はアルコールで上気しており、一仕事終えたような達成感を窺わせた。
その名は賀茂唯粋。
この賀茂家の若き当主である。
「よろしかったのですか?せっかくの使者でございますが....」
側近の一人がそう言うと、彼は笑う。
「構いません。彼女は見た目は愛らしいですから。彼もきっと気に入ってくれます。」
「異形のような美しさでございますからなぁ。まぁ異形に違いないのですが。それに、どうせ彼が気に喰わなかったとしても撫麗香がありますから関係ありませんね。あの鬼を厄介払いが出来て私も安心ですよ。」
「その通りです。それにアレを直接感じれば彼も気に入るはずです。」
彼はそう自信ありげに言う。
それを聞いて「それもそうですな」と笑う側近。
そして側近は不意に口を開く。
「そう言えばよかったですな。使者が若い男性で。あの鬼を押し付けるに打ってつけではありませんか。」
その言葉に微笑みを浮かべる唯粋。
「えぇ。彼の存在は天啓です。あの忌子の扱いにも困っていたところですから。男でなければ今回の手段は取れず、若くなければ長い間縛り付けておくことが出来ずに、あの忌子を外の世界で枷もなく解き放ってしまうことになる。どの条件にも合っていて、尚且つ良い関係を築き上げればこちらにも利益がある。彼との出会いは神の恵みであると私は確信していますよ。」
すると、側近が不安そうな表情になる。
「ですが....このように強引な手を打ってよろしかったのですか?もしかすれば彼がこちらとの関係樹立を拒むかも....」
「それはないですよ。私は彼に私の見目麗しい妹をどうとでもして良い存在としてくれてやろうと言うのです。性処理にも使えるような奴隷を貰って嫌な顔をする殿方は居ません。そういう意味でもこの話は両者共にうまみがあるのです。それにここは彼にとってはアウェー。無事に帰りたいのであれば穏便に済ませようとするはずですよ。その間に、この国を好きになってもらえば良い。」
「....なにやらとても楽しそうでございますね。」
側近は話している唯粋を見て、そう言葉を発する。
すると唯粋は一瞬キョトンとした後、彼は笑みを浮かべる。
「ふふ....私はただ仲良くなれそうだと思っただけですよ。彼には...内に獣性を感じる。私と同じ、人を人とも思っていないひとでなしの匂いがしますから.....。」
「唯粋様が愉快なようで私も嬉しく思います.....。」
唯粋は獰猛な肉食獣のような笑みを口元に刻む。
側近は恭しくそう言うと、彼の顔を見ないように半歩後ろを歩くのだった。
◇
何やらぼんやりと柔らかい光を感じる。
それとなにやら甘ったるい香り。
しかし、それと同時に草っぽい匂いも同時に鼻を掠めた。
この匂い....屋敷中から漂っていた物と同じ.....
なんだ....?
そう頭の中で疑問符を浮かべるも、瞬間さっきの出来事が思い出される。
何か盛られたのか身体から脱力していき、相手の思惑によってどこかに連れていかれたこと。
そのことを思い出すと瞼を開ける。
すると、美しい顔の少女が至近距離にある。
位置的には俺が見上げる形。
状況を理解する為に周りを手で探ると頭の後ろに柔らかい感触がした。
これは...一体!
「...どうやら、お目覚めのようですね。異人さん。」
「っ!?す、すまない。」
子どもでありながらも妖艶に目を細める少女を見て、飛び起きる。
あれはどう見ても膝枕であった。
この世界に来るまで長らく夢見て、そして叶わなかった膝枕。
それが何故か少女ではあるものの、叶ったのだ。
いや、そんなことはどうでもいい。
寧ろ、彼らに運ばれた先でどうしてこんなことになっているのかそれが重要だ。
周りを見渡すと、一番最初に目に付くのは木の格子。
そして古い畳にぽつんとある行燈。
これはどう見ても....座敷牢だ。
俺は今、座敷牢に軟禁されていると見て良いだろう。
「マジかよ....どうすんだよ.......」
頭を抱えていると、後ろからクスクスと笑い声が聞こえる。
見ると、彼女が口元に手を当てて笑っていた。
「ふふ....災難ですね。」
微笑む彼女を見る。
日ノ本の人々、特に陰陽師では考えられないような白磁のように白い髪。
腰にまで掛かる長さであり、座り込んでいる分髪が布団の上を広がっている。
肌は少し日に焼けた俺とは対照的に、真っ白だ。
手も触れれば折れてしまいそうな程儚く、身体の線も細い幼い少女。
そしてこちらを見透かしたかのような琥珀色の瞳とこの世の物とは思えない程美しい顔貌。
しかし最も目に付くのは、彼女の頭からちょこんと生えている小さな角だ。
それは彼女の美貌も相まってまるでこの世の物ではない、異形のような怪しい魅力を幼いながらに湛えていた。
「...えっ、あっ...そ、そうだね。」
あまり生前も女性に慣れていなかった。
ましてや幼い女の子と二人きりなんてあるわけがない。
どのように対応して良いか分からない。
...いや、これはただのごまかしだ。
俺は見惚れていたんだ。
どう見ても危機的な状況であるのにも関わらず、年も離れた幼子に見惚れていたのだ。
俺はロリコンじゃない。
こんなことあるわけが....。
と、とにもかくにもここを出ないと....。
そう思った矢先に、彼女は笑みを浮かべて言葉を続ける。
「そう慌てなくても大丈夫ですよ、いずれ出られます。貴方も、私もね......。」
そう確信を持った様子で言ってくる彼女。
そんなこと言われたってこちらは状況が分かってないんだ。
納得できるわけがない。
「そう言われても....、そうだ、君も閉じ込められているのだろう?君は一体.....?」
まずは同じく閉じ込められているこの子のことを聞こう。
彼女は俺が倒れている間も起きていた。
彼女の方が状況を理解している可能性が高い。
俺が質問すると、相変わらずこちらの全部を見透かすかのような底の知れない目で俺の目を見つめる。
「えぇ、というより厳密にはここは私の部屋なのです。」
「君の部屋に....なら、君は普段からこんな所に閉じ込められていると言うのか?」
「えぇ。」
笑顔でそう言ってくる彼女。
ますます解せないし、相手がどんな人間か分かった。
奴らはこんな小さな子供をこんな所に軟禁するような連中であるということ。
俺も軟禁して本当にどうするつもりなのか.....。
...それにしてもここ、暑いな。
空気でも籠っているのか?
いや、でも木の格子もあるし風通しは良い筈だよな....
見ると彼女も火照っている様子で襦袢の襟を開いている。
白い素肌が見え、汗が伝っているのが何故かこちらの目に焼き付く。
すると、不意に彼女は微笑む。
「...そろそろ時間ですね。なら作法ですので、....私は咎姫と申しますわ。以後お見知りおきを....」
彼女は居住まいを正すと布団の上に手をついて、頭を下げる。
その振る舞いは格式高く、上品という言葉以外には見つからない
....が、俺にとってはそんなことよりも彼女の名前の方が重要だった。
咎姫。
原作でも出てこず、設定資料集で名前が一度ビジュアル含めて出た存在。
ラスボスである帝華王国を弱体化させた化生の悪女と書かれており、終盤における帝華王国の弱体化イベントの数々の裏には彼女の存在があると明言されている。
しかもゲームでは存在を匂わせる程度でビジュアルすら出てこない。
続く次回作でも暗躍しているような記述があり、掲示板ではこれ出す機会見失ってるだろwwwと笑われていたりする。
ただ弱体化イベントがえぐく、君主が死亡してちゃらんぽらんな弟である暴虐王が帝位に就くなど彼女のせいで帝華の国力はずたずたになり、しかも次回作でも他の国をずたずたにしている為、半ばプレイヤーにとってお助けキャラとなっており、親しみを込めて殺生石にされなかった玉藻の前や傾国と畏怖されていたりするキャラ。
彼女はビジュアルでは妖艶な美女として描かれていた。
目の前に居るのは幼女。
幼い頃の彼女に会っているというのか?
もしや....帝華王国に行く前の彼女か?
鬼の角で一瞬頭の隅で引っ掛かったが、名前を聞いて思い出した。
そして、同時に恐怖する。
彼女は守られているはずの国家首相を事実上、手段は分からないが殺してみせた女性だ。
そして本来はこのようなイベントは存在しないはず。
ならば....今俺が居るのは原作知識の埒外。
何が起きるか分からない領域なのだ。
まずい....本当にまずい。
彼女がどんな人物か、どのような思考でどのような地雷があるのか。
それが分からない。
俺の知っている彼女はゲーム自体にはほとんど出てこないが、自由に色んな国を陥れている。
少なくとも今のように軟禁されているわけがない。
確定しているのは彼女は大人になれば帝華に居るはずであると言う事だけだ。
目の前の彼女は今、何を考えている......。
警戒していると、彼女は愉快そうに笑う。
「フフッ...面白いですね、あなた。お兄様とも違う怯え方...。」
「何が言いたい....。」
彼女から距離を取りつつ、尋ねる。
彼女はそんな俺を見ても笑みを崩さない。
「私は...忌子と呼ばれていますの。この角とこの力....これはあってはならない不浄な物。だからこそ、ここにいる皆は私の角を見て、私のことをこう呼びますの“角付き”と....。」
そう言って彼女はゆっくりとこちらに近寄ってくる。
相手は幼いとはいえ、自分が詳細も知らない危険人物。
警戒...しなければいけない。
だが、なぜか、息が上がり....彼女の肌を視線がなぞる。
どうした....どうしたんだよ.....、警戒を崩すな。
俺はロリコンじゃないはずだ。
自身の視線の動きに戸惑う。
「ですが、貴方は角を見てではなく、私の名前を聞いて怯えた....貴方は私の何を知っているのか.....初対面であるにも関わらず、なぜこのような幼子を恐れたのか....とても興味が湧きますわ......」
彼女はそう言って笑みを深くする。
その笑みを見ていると、なぜか下半身が熱を持ち、怒張していく。
なんだ....なんだこれは.....
これが奴の力?
いや...だが.....くそっ、分からん。
資料集なんだからもっと詳しく書けよ!!!
生前持っていた資料集を忌々しく思っていると、もうすぐ傍まで近づいていた。
彼女はこちらの顔を覗き込んでいる。
琥珀色の目。
それはさながらこちらを誘うようにこちらを見つめ続ける。
「...ふふ、やっぱり眠っている間に見たのは正しかった。あなたも私と同じ。この世界に居てはいけない存在。異物ですわ。見ればわかります....あなたは世界から爪弾きにされている.....。」
「なにを....ッ!おい、何してる!!!?」
彼女の意味不明な言葉に戸惑っていると、彼女は自分の襦袢に手を掛けて衣服を自ら脱ぎ始める。
慌てて彼女の手を掴んでその手を止めた。
柔らかく艶やかな手触りの肌。
そして僅かに見える彼女の鎖骨に目が吸い寄せられる。
って、なんでそんなところに目が寄せられる。
本格的におかしいぞ....今日の俺は.......。
いや、これもこの餓鬼のせいだ。
何もかもこの不可解な餓鬼のせい。
男の前で衣服を脱ぐなどどこまで色ボケなんだこのエロ餓鬼は....
それがどういう意味かわからせて....違う!!!
思考が変な方向に....一体、なんで.......。
自身の変化に戸惑っていると視界が少し曇っていると分かる。
甘い匂い。
これを嗅いでいるとどこかに思考が持っていかれるような....。
「これは....この匂いは.....」
「撫麗香....なんでも東で流通する時は愛善と呼ばれているそうですよ。まぁ私にとってはただの煙とそう変わらないのですが。」
愛善....?
その言葉には覚えがあった。
確か帝華の暴虐王に自分の所のヒロインが捕まった時に、調教の際に使う道具の一つとして挙げていた物だ。
知らないのも無理はない。
流通する際と本来の名前が違ったのだ。
なら....今、俺の意識が溶けていくのは......!
「ッ....!!」
これ以上吸わないように手で口元と鼻を押さえようとする。
しかし、目の前の彼女に手を押さえつけられる。
振り払おうとするがびくともしない。
腕の細さと見合わぬ力の強さ。
こんな力....どこから......
「なりませんわ...ちゃんと吸ってもらわないと。じゃないと、私が外に出れないでしょう?」
「なにを......」
彼女はこちらをジッと見つめる。
その目はまるで獲物を見つめているかのような、そんな捕食者の目。
そうしている間にも目は彼女の衣服の隙間を滑り、息は荒くなっていく。
ただ嗅覚は甘い匂いを感じ取っている。
「貴方は存外鈍いのですね、私が災難だと言ったのはここに閉じ込められたことじゃありません。私を縛り付ける為の人身御供にされて...可哀想、ということです。」
彼女の言葉を聞きながらも何かに流されようとしている意識を感じる。
ダメだ、流されちゃ....
香を吸わないように息を止める。
しかしその瞬間、彼女の顔が近づいて来て.....
「んむっ...!?」
口づけをする。
いや、それはただの口づけのような生優しい物ではない。
舌が中に入って、絡んでいく。
口内に唾液が入り込み、彼女の香りが口腔内を蹂躙する。
こちらを内側から食い破ろうとするかのごとき動き。
そして次第に息が苦しく....。
まさか....香を吸わせるために......。
彼女が口を離した瞬間、反射的に息を大きく吸い込んでしまう。
人は酸素がなければ生きていけない。
彼女の思惑通り、酸素を求めて息を吸ってしまった。
意識が....溶けていく。
彼女から目が離せなくなってしまう。
彼女の身体を見て、至らぬ思考が首をもたげる。
よく分からない危険人物、そうじゃなくても相手は子供なのに.....。
彼女は熱に浮かされたように自分の肢体を視姦し始める男を見て、嗤った。
「何も気にしなくても良いのです。全ては香のせい。このまま二人、褥で溺れてしまいましょう?」
誘うように目を細めて笑う餓鬼
裸に剥いても同じ目が出来るのか見物だ....な、なにをかんがえて...
彼女が手を自分の衣服へと導いていく。
自制心が手の震えという形で表れている。
しかし、正常な思想は溢れ出す情動に飲まれて消えんとしていた。
ダメだ....俺は、俺はここに何しに来た.....
それを思い出せ....
おもい...だ.....
彼女の衣服をぎこちないながらに剥いでいく。
彼女の未成熟で病的なまでに白い肢体を目に収めた瞬間。
理性が、飛んだ。
何かを喚き散らしながら俺は彼女を押し倒して力一杯押さえつけている。
しかし、彼女は表情一つ変えずに蠱惑的な笑みを浮かべる。
その様子はさながら獲物を引っかけた食虫植物だ。
こちらを溶かして食さんとせんとしているように見えた。
「あらあら....褥はそこですよ?まさか畳の上だなんて.....」
彼女の言葉が...頭に入ってこない。
意識が流されて、獣欲が顔を出す。
これが香の効能....あの爺、なんてものを国内に持ち込もうと......
纏まらない思考の中、喚き散らす自分に彼女は一瞬だけ縋るような表情で懇願した。
「___私を、連れ出して。」
飲まれゆく意識の中、それを見て狂ったのかこう思ってしまった。
震える程、綺麗だと.....。
虫の音しか聞こえぬ夜。
彼ら以外誰も居ない座敷牢で2人の獣は盛り始める。
倒錯した夜は、まだ始まったばかりだ....。
彼女の匂いを感じる時、草のような匂いと言って、屋敷でも嗅いだような主人公が言っていますが、厳密に言えば菖蒲の葉と柊の匂いのする香が屋敷と彼女の衣服に焚かれています。
この二つは鬼が嫌がる草花です。