戦記系NTR物エロゲの親友に転生した俺。 作:胡椒こしょこしょ
瞼を何かが照らす感覚。
眩さを感じて、意識が覚醒しようとするも身体は怠さからまだ眠りたいと叫んでいた。
悶えるように身じろぎをする。
微睡みの中で転がると、背中にジワリとした痛みが走る。
すると、カンッと何かを叩く音がした。
その音で一気に意識は表層へと持ち上げられて、慌てて瞼を開く。
「....朝でございます。支度が出来れば申し上げてください。御当主様の下へと案内いたします。」
横の方向から男の声が聞こえる。
しかし、男の姿は見えない。
それ以前に、俺の視界には一杯の肌色。
ゆっくりと視線を上へと滑らせる。
目の前には幼いながらも端正な顔をした少女。
少女は目を閉じて、静かに寝息を立てるも呼吸で胸が微かに上下している。
『....私..連れ...して。』
「っっ!!」
その少女を見た瞬間、昨夜の記憶が断片的に蘇る。
俺は、この目の前の少女....咎姫を貪った。
撫麗香を吸い込んでしまって、我を失ってしまった。
目の前に居る少女は...咎姫は言うなれば危険人物だ。
原作知識で分かっていて、それでいて今自分が居るのは原作知識の埒外。
何が起こるか分からず、目の前の少女の地雷や考えも分からない。
それが分かっているのにも関わらず、彼女と交わってしまったのだ。
慌てて起きると、彼女の両腕を後頭部が掻き分ける。
どうやら、俺は彼女の腕の中に眠っていたらしい。
まるで母親に甘える子供のようにこんな幼子の胸に縋りついていたのか...俺は。
記憶はあるが朧気だ。
だからこそ、戦慄している。
今、俺はどうなっている。
どういう状況だ....?
嵌められてなんか薬を盛られて、この座敷牢に入れられてラスボスである帝華王国を弱体化せしめた悪女の幼い頃と同じ牢の中で案の定追っていた撫麗香を吸い込んでヤッちゃって.....。
状況を整理しようと、思考を巡らせるも頭が凄く痛い。
これが香を吸った後の副作用なのだろうか?
そう考えると、不意に目の前の少女がむくりと起き上がる。
昨日のこともあって、咄嗟に身構えてしまう。
しかし身構えるこちらとは対照的に目の前の少女は目が合うと微笑を見せる。
「ぁ....ふふっ....おはよう、ございます、異人さん?」
「っ..あ、あぁ.....。」
警戒しながらも一応彼女に挨拶を返す。
すると彼女はそんな俺の様子がおかしいのかクスクスと口元に手を当てておしとやかに笑った。
まるで昨日、何もなかったかのような....初めてこの牢の中で出くわした時となんら変わらない様子だ。
上気した彼女の肢体と首元に刻まれた噛み跡が昨夜の出来事が確かに起きたことだと痛いくらいに物語っていた。
彼女を見ていると、はだけた襦袢の隙間から彼女の下腹部に何か紋様のような物が目に入る。
その紋様はうっすらとピンクの淡い光を放っているあたかもエロ同人とかで見るような淫紋。
あんなもの、昨日あったか....?
「...起きたのであれば、速く支度をしなさい。御当主様は貴方のことを今か今と待っているのですから。」
檻の外、覆いのような物で顔を隠した男が棒で檻を小突いて俺達を急かす。
まぁ支度と言ったところでこんな座敷牢の中でどうしろって言うんだか....。
取り敢えず立ち上がると、腰に鈍痛が走る。
途切れ途切れではあるが、腰を酷使した記憶がある。
まったく...頭も痛いし、腰も痛いとか...。
加えてこの状況の元凶は俺の事を待っていると来ている。
朝から気分が重くなる。
しかしこうして俺を呼びだすところから考えるとこのまま座敷牢の中に拉致するとは考えにくい。
それなら呼び出さずとも、自分からここに来るのが確実だからだ。
なんにせよ、どういうことか説明してもらわなければ。
なにせ奴は俺が意識を落とす前に手伝えと言っていた。
あれは一体どういう意味か、今の状況がそうなのか。
聞きたいことは沢山あった。
なんにせよ今は指示に従うしかない。
ゆっくりと立ち上がる。
大人しく立つ俺を見て男はゆっくりと檻の鍵を開錠して戸を開く。
戸の前には男物の着物が一つ置いてあった。
....咎姫の分はない。
「こちらです。そこのも連れて来るようにとのことです。」
そう言って歩いていく。
ついてこいということだろう。
しかし、それにしたって咎姫のことをそこの呼ばわりとは。
彼女は俺をここにぶち込んだ男のことを兄と呼んでいた。
そして奴は当主だ。
本来はそんな呼ばれ方はあり得ない。
それでも、そんな呼ばわりをされていることがこの座敷牢が部屋であることも含めて彼女のこの屋敷での扱いが少し見えてきた気がした。
元々着ていた服は無造作にそこらへんに置いてある。
たぶん記憶はないが、している途中に邪魔くさくなって放り捨てたのだろうか?
着物に袖を通して、なんとか着付ける。
そして彼女の方へと視線を向けると、彼女は笑みを崩さない。
慣れているのか.....それとも表情に出さずとも思うところはあるのだろうか?
ただ、行為の直前に彼女はここから連れ出すように言っていた。
....だったら、何も思っていないと言うのはあり得ないんじゃないか?
「....そんなこと、今はどうでもいい...か。」
やめよう、今はあの男がどういうつもりでこんな凶行に出たのかを考える方が得策だ。
奴がこの状況の元凶であると考えれば奴に対して警戒を示しておかないと。
仮にも他国の使者であるこの俺にこんな真似をした、その理由。
彼女が自分を縛りつける為の人身御供と言っていたが、それが彼の行動に強く関わってきているように感じる...。
そう考えながらも一歩踏み出す。
すると、袖口を引っ張られる。
振り返ると、後ろから咎姫が身を乗り出して袖を摘まんでいた。
「....なんだ。」
どういうつもりか。
目の前の少女の行動に強張りながらも、尋ねる。
すると、彼女はこちらの顔色を伺うように口を開く。
「その...申し上げにくいのですけれど、腰が..震えて歩けそうにありませんわ。昨日のがちょっと響いてしまって....。よろしければ、その...手を貸していただけませんか?」
彼女も共に呼ばれている。
であれば、彼女も連れて行かないといけないだろう。
身体を許したからといって、心を許したわけではない。
なんなら彼女も俺にあの香を吸わせるために、口を押さえるのを邪魔したりした。
将来、とんでもない人間になると確定している少女。
そんな少女に歩み寄るつもりは毛頭ない。
...だけど、手を貸す程度なら別段構わないよな.....?
「...俺だって、腰が痛いんだけどな....。」
「フフッ...それもそうですね。それじゃ失礼致しますね?...わぁ...やっぱり手、おっきい....。」
彼女を見ずに手を差し出す。
すると、彼女は俺の手を取るとまるで初めて手を繋いだかのような反応をして繋いだ手とは反対の手で俺の手の甲を撫でた。
そんな彼女を立ち上がらせると、不意に彼女がよろける。
そしてそのままこちらの腰に縋りつくような形になる。
「ごめんなさい...こうじゃないと..歩けないみたいで....。」
「別に、構わない。...良いから行こう。外で待っている人が居る。」
ぶっきらぼうに彼女に答えると、そのまま牢の外へと出た。
そんな俺達に一瞬案内役の男は視線を向けるが、特に何も言うことなく視線を戻すとそのまま廊下へと出て行く。
転ばれても困るので、彼女の背に手を添えて俺はゆっくりと目の前の男についていく。
幼い少女特有の高い体温がほんのりと腰から伝わってきた。
「君は...俺のことを、人身御供と言った。」
呟くように口にする。
すると彼女は身長の都合上、こちらを上目遣いで見ながらも首を傾げる。
「はて....そんなこと言いましたか?どうにも昨日は色々ありましたから....。」
笑顔を向けながらも惚けるような口調で答える。
彼女が言ったのは確かだ。
記憶が断片的になるのは彼女を組み伏せた後、おっぱじめたらへん。
それより前に、彼女は僕のことを人身御供、可哀想と言った。
....本当に覚えていないのか、それとも誤魔化しているのか。
昨日、意味深なこと言われまくったせいでどうにも判断が出来ない。
「...別に覚えていないなら、それでも良い。ただ、人身御供というのはどういう意味か。それが聞きたかっただけだ。」
どっちにしろ現状が変わらないのは確かだ。
ただ気になったことを聞いただけ。
第一本人である彼女の兄に妹と同じ座敷牢に入れてどういうつもりかを聞けば良いだけだ。
だから別に彼女が答えなくても構わない。
それでも、彼女の口からどんな答えが出るのか。
それが気になった。
「そうですね....まぁ、人身御供かはともかく。」
彼女は言葉を切る。
どうしたのかと彼女を見ると、目が合った。
その笑みはどこか渇いていた。
自分に人の笑顔を見て、何が分かるのかと言われれば言葉に詰まるがそれでもそう感じたのだ。
「...ただ、忌むべきはずなのに縛り付けておかないといけない存在を貴方が来てくれたお陰で手放せると兄は喜んでいるだろうと。....巻き込まれて可哀想ってそう意味で言ったんでしょうかね?昨日の私は。」
そう言い終わると彼女は前へと視線を戻す。
俺が来たお陰で手放せる。
それはつまり、俺に彼女を連れて行かせようとしているということか?
何のために?
...そう言えば、彼女は忌子、角付きと呼ばれているとかなんとか言っていたっけ?
それが何か関係ありそうな気がする。
忌むべきはず....やはり角がある人など見たことないし、もしかしたらこれが不吉の象徴とか?
なんにせよ、たぶん彼女はこの家で存在することが望まれていない。
前を歩いている使用人であろう男の彼女への呼び方や彼女が部屋として座敷牢を宛がわれている所からも想像には難くない。
こんな少女がだ。
見れば見るほど、なるほど確かに不思議な...目を引くような感じはする。
幼いながらに落ち着いて、どこか妖艶さすらも感じさせる物腰。
だけど、実態として今のところは国一つを潰すような魔性の女とはイコールにはならなかった。
勿論幼いからもある。
しかし、それ以上に実感はないのは多分...俺が彼女のことを何一つ知りはしないからだ。
確かに彼女が将来、帝華を滅茶苦茶にするのは知っている。
でも、それは設定集...それもビジュアルと文字しか公開されていない薄い情報からだ。
昨日の夜、僕は設定集ならもっと詳しく書けと嘆いたが、それ故にその設定集での彼女の情報量なんて高が知れている。
そもそも彼女自体、帝華での弱体化イベントの裏に彼女が居ると公式が示唆しただけ。
掲示板で出す機会失ってるだろwと言われる程なのだから。
今までの原作知識....ゲームをやってきたうえで知った情報とはわけが違う。
幼い頃の彼女について知らなければ、好物も知らないしそもそもがどのように滅ぼしたのかも王が代替わりするようなことをしたとしか知らない。
俺は昨日まで、そんな薄い知識で目の前の少女を恐れた。
知ってはいるけれど、今までのように何もかも知っているわけではない。
それが普通だ、本来は。
初対面なんだから。
「何やら考え込んでいるようですが、何かございますか?」
「..いや、なんでもない。頭が痛いだけだよ。」
彼女は俺の顔色を窺う。
そんな彼女の疑問を誤魔化した。
なんということはない。
ただ、昨日も感じた自分が今居るのは原作知識の埒外。
何が起こるか分からない領域に居ると言うことを再認識させられただけだ。
「おはようございます、使者殿。いやはや、その様子を見るにお楽しみだったみたいですな。どうですソレの具合は。角付きではあるけれど、見た目は良いですし性処理としては中々だったでしょう?」
奴の前へと案内された俺は用意された座布団に腰を下ろす。
隣では彼女は畳の上に正座をしている。
彼女にだけ座布団がなかったり、発言内容だったりとここまで露骨だと見ているこっちがドン引きである。
そして彼はただ俺に対して笑いかけながらそう尋ねる。
ただそれに笑い返せるほどの胆力は俺にはなかった。
当たり前だ。
元凶がニコニコと笑いながら女の使い心地とか聞いてきているのだから。
「....昨日のあれは一体どういうことですか?一国の使者である私に薬を盛って、あまつさえ...撫麗香だったか?あんないかがわしい物を吸わせて理性を失わせるなど。これは国際問題になり得るのでは?」
目を細めるも、彼はまったく顔色一つ変えやしない。
まるで端からそう言われるのは分かっていたと、それでいてそんなことはまったく問題ではないと言った様子だ。
笑みを崩さずに俺の言葉を聞いて彼は口を開く。
「確かに無理やりでしたね。それは申し訳ない。...しかし、私と致しましてはただ手伝ってもらうつもりだったのですよ。ほら、飲んでいる途中に懸案事項があると私言ったでしょう?共感してくれたから手伝うことに了承してくれたのかと、申し訳ありません友達が少ない物で人様との交流が少し下手なのでございましょう。それと...まぁ、私が作ったわけでもないですし撫麗香の効能を実感してもらうついでになし崩しに私の懸案事項を片付けてしまおうと思いましてね。」
まるでコミュニケーションに齟齬があったかのような物言いであるが、要するに自分のしたいことをする為に俺に撫麗香が充満する部屋の中に放り込んだということだろう。
先に謝れば責められないと思っているのだろうか?
「なし崩しって.....ただ単純にアンタがしたいことを押し通したかっただけだろう。そもそも撫麗香がどういうものか聞いて実際に浴びてみろっているのがおかしな話だ。そんでもって...アンタの懸案事項っていうのが俺とアンタの妹をまぐわわせることに何の関係がある?」
あんまりにもあんまりな奴の言い分に少し感情的になってしまった。
すると、彼は俺の言葉を聞いて嗤う。
「何がおかしい....?」
「ふっ...ふふっ...くくく....あっ、すいませんすいません。決して馬鹿にしているわけではないのですよ。ただ...ありのままの貴方はそのような話し方であると思うと...フフフッ、いやはや良いですね砕けた口調というのは。これはこれはさっそく私と貴方様の距離感が縮まったと言うべきでしょうか?」
「っ.....なぜそうなるのか理解に苦しみますね。」
いけない、つい感情的になるあまり素が出ていた。
昨日からの頭痛と疲労で頭の回転が鈍くなって、ついボロが出た。
慌てて取り繕う。
それにしたって、コイツが急に分からなくなった。
出会って飲んだ時は自分と似た境遇で親近感を抱いていたが、それももはや昔の話だ。
どこに距離感が縮まった要素があったのか。
寧ろ開いているよ、かつて無い程に。
クスリ盛って座敷牢にぶち込んで意味も分からず撫麗香浴びせた相手に心が近づくはずがない。
ヘラヘラと笑っているイケメン面が今は不気味に映って仕方がなかった。
「まぁ真面目に答えるとすれば、その通りですよ。流石使者殿は軍師もやっていらっしゃるだけある。私と致しましてはそこの餓鬼に頭を悩ませておりましてね。国交樹立の暁には貴方様にそこの餓鬼を連れてこの日ノ本の外へと出て頂けるととてもありがたいのです。」
「それは...この子が忌子だから?」
俺が言うと、彼は笑みを崩さずに一瞬咎姫へと視線を向けた。
「へぇ、まぁそうですけど。アレに聞いたのでしょうか?随分とお喋りなんだなお前。まぁ、別に構わないよ俺は?ここから出たいって思えばそりゃ出してもらえそうな男に媚びるのは当然だ。こちらとしても助かるよほんと。」
こちらに向けていた笑みとは違った嘲笑。
それを彼女に向けたまま嫌味ったらしく言葉を紡ぐ。
それに対して彼女は何も言わず、表情も変えない。
なんというか、あまり見ていたい光景ではなかった。
「それで私とそこの子に肉体関係を結ばせたと?そうすれば手放しづらくなるからとか?」
正直、彼女の今の現状に思うところがないわけでもない。
でもそもそも、彼女をここで自分の国に連れ帰るとどうなるか。
そもそも原作知識の埒外なのであまり明言はできないが、もしかしたら帝華の連中に出会うことなく帝華の弱体化イベントも起こらなくなるかもしれない。
そうなると強い帝華相手に戦わないといけないので大変まずい。
弱体化できるのならした方が良いに決まっている。
そしてそれだけならまだしも、そもそも帝華の弱体化イベントの裏に咎姫が居るのなら彼女を自分の陣営に引き入れた場合、もしかすればそのイベントとやらが自分の陣営で起きかねないのではないか?
確かにこの世界が完全にゲームであると高をくくるのは止めようとは思っている。
しかしだからといって今まで俺の知るイベントは事実起きているわけであって、その可能性を頭から排除するのは軽率だ。
はっきり言って連れ帰りたくない。
なんとか断れないものか.....。
「うーん、ちょっと違いますねぇ。角付きというのは神道において胎に穢れが集まったことで生まれてしまったまつろわぬ者であって人に非ず。波はあれど常に加虐衝動を抱いている危険な獣なのです。それでいて身体が丈夫で腕力も強い。だからこそ、角付きを生み出してしまった陰陽師の家系は寿命を迎えるまで家に縛り付けます。ですが術式や霊力などの消費も馬鹿にならないのです。だからこそ、今回貴方に引き受けてもらうことになりました。それも外に出たがっていますし、そもそも自分の家で化け物が妹面してたら気持ちが悪いでしょう?」
まつろわぬ者とかよく分からないが、なんというか酷い言い草である。
神道的には隣の咎姫のような存在は所謂人間判定ではないということだろうか。
まぁ頭から角が生える人間なんか居ない。
確かに加虐衝動を抱えていて危険というのは、奴の言葉通りであるとしたら危ないだろう。
それに身体が丈夫で力も強いから殺せない....ということか?
そんなのが自分の家に居て、怖いと思うのは自然なのかもしれないな。
でもさ、本人が居る所で言うことじゃなくない?
取り繕うこともしない所が、余計に隣の彼女の扱いを言外に示していた。
それと自分が気持ち悪いと思っている者を他所から来て事情も知らない他人になんか押し付けるんじゃないよ。
アレか?日ノ本で自由にさせると散々虐めて来て復讐されるかもしれないからそれなら外国のどこか遠くの土地にでもやろうってこと?
無責任にも程がないか?
しかも嫌であったとしても妹なわけだし。
「その角付きを特定の個人に縛り付ける為にはお互いに精気を交換させることで互いの陰部近くに刻まれた紋様を活性化させる必要があるのです。そうしなければ...もしかすればその角付きが貴方を傷つけるかもしれない。だからこそ、貴方を傷つけることが出来ないように複数項の契約で縛ったのです。」
どうやらその術式とやらを活性化させることで俺に彼女を縛り付けるっていうことか。
つまりは昨日の性交は俺に撫麗香の効能を実際に体験してもらう為みたいなことをさっき言っていたが本当に自分の利益のために俺を利用する為にやっていたことになる。
お互いの精気を交換することで互いの陰部近くに刻まれた紋様を活性化させる。
なるほど、だから彼女の下腹部らへんに出会った時にはなかった淫紋が刻まれていたのか。
....ん?『互いの』...?
互いってことは一方じゃなくて、両方ってことだよな....。
あれ.....なんか嫌な予感が.....。
「...その紋様ってこの子だけじゃなく?互いって要するに....。」
「ええ。互いっていうのは縛り付けられる側と縛られる側。つまりは貴方様とそこの角付きですね。」
ふむ....つまりは紋様は俺と咎姫に確かに刻まれているということか。
咎姫の淫紋は確かに確認済みだ。
「そんでもって確か陰部近くって言ってませんでした?あの...それって...私も?」
「?はい。そうですけど。」
.......あー、そういう。
え、でも起きた時は裸だったけど変なのは見なかったはずだぞ。
陰部ってことはつまり男性器の周辺であって、そんな変なのが刻まれていたら流石に気づく気が....。
だって自分の体なんだから。
でも彼は別段嘘を言っている様子ではない。
「.....すみませんが、少し背を向けさせて頂いてもよろしいか?」
「えぇ。確認する御積りですか?であれば別段背を向けなくても私は構いませんよ。」
面白がるような声を発する彼を無視して背を立ち上がると背を向ける。
そして結んだ紐を解いて、着物の前を開く。
.....パッと見...そんな変なの刻まれていないんだけど。
下腹部はいつもと変わらない。
昨日の酷使で少し赤くなっている棒の方を精査してみてもないしな.....あっ。
棒を持ち上げて見ていると、それがちょっとだけ目に入った。
棒の下に付随している二つの袋。
それをゆっくりと手にのせて、覗き込む。
そして、そこにそれはあった。
ちょうど見下ろす形では死角になる場所。
玉の下らへんにになんか変な文字みたいな淫紋が両袋にそれぞれちゃんと刻まれていた。
そしてピンク色の淡い光を放っている。
....俺の金玉、淡く光っているんだけど。
自分の体に起きた変化に一瞬思考が空白になる。
しかし、着物をまたゆっくりと着ると振り返る。
「確認はお済ですか?日頃から目に入ると目障りでしょうから気にならないであろう場所に刻ませてもらいました。」
笑顔で俺にそう言ってくる男。
...いや、金玉に淫紋刻まれてるって事実でもう気になって仕方ないだろ。
見えなくても変わんねぇよ、寧ろ見えない方が今もなお俺の金玉光ってるんやろうなぁって思ったら落ち着かないわ。
要らない心遣いやめろ。
つーかさ。
「アンタ、人が寝てる間に人の体になにやってんだ....。」
無茶苦茶だよ、こんなの。
こんなの刻まれた人前に立てないよ。
公衆浴場にもいけないし、そもそも立ちションも憚られるわ。
「...これ、取れる奴?」
俺が尋ねると、彼は笑いながら首を横に振る。
「そこの餓鬼が貴方様に危害を及ぼさないように縛る紋様なのに取れたら困るでしょう?取れませんよ、一生。」
さらっととんでもないことを言ってくる。
えーと、つまり俺はこれからの人生ずっと淫紋を股間に宿して生きて行かないといけないってこと?
....なんてことしてくれてるんだコイツ!!!
「な、なんてことを...!もう流石に言わせてもらいますが、ふざけるのも大概にしなさい!こんな金玉に一生取れない物付けて挙句の果てに国交樹立の暁にこの子も連れて国に帰って、撫麗香の流通ルートになれと?」
「えぇ、私共と致しましては国交樹立においてそのように貴方様側には要求致します。」
彼は何喰わぬ様子でそう要求してくる。
面の皮が厚いのなんの...。
逆にここでこんな風に要求できる図太さというのが外交では必要なのかもしれない。
「であれば条件を見直すことをお勧めしたいですね。」
俺が言うと、彼は溜息を吐いた。
そしてこちらの目を見つめると、ゆっくりと口を開く。
「まぁ、そちらに利益がないと思われればそりゃ断られるのは至極真っ当な理。ですが...貴方は直ぐに帰れるというわけではないのでしょう?確か最低でも...一月か。次にエルアーダの船が来るのは。それで私としましては、貴方と友好的な関係でありたいと思っているので断られても理解は示しますが、果たして他の者はどうか.....。私は当主であるが故に忠誠を誓う者も多いので、そんな者どもから見れば私の要求を撥ねつけたというのはよく映らないかもしれませんなぁ。」
「...脅しているのですか?」
彼は濁しながらも他の者がこの話を断った場合は危害を加えてくるという可能性を匂わせる。
そりゃそうだ。
若干ながらここまで来た経緯を恨めしく思う。
半ば追い出されて来たからこそ、身一つ。
体裁としては宗教についてのお勉強なので付き添いは邪魔だろうというクソジジイの嫌がらせが光った瞬間だ。
こちらとしてはゼルエル経由であの爺の伝手を利用する以上はそれに乗っかったのだが。
俺が尋ねると、彼は目を細める。
「とんでもない!私はね、貴方と友人になりたいのですよ。私と貴方はあの夜、似たような境遇で通じ合えた。お互いの苦楽を分け合える人間というのは私からしてみれば貴重なのです。だから私は...まぁ化け物だけど仮にも妹を貴方と繋ぎ合わせたのは見た目の良い性玩具を渡したつもりなのですよ。だって男だったら嬉しいじゃないですか。」
通じ合えたと言っている人間にアンタは薬を盛るのか.....。
そんでもってかなり危ないことを言っている。
僕は別に嬉しくないです。
どんな教育を受けてるんだコイツ....。
「友人になりたい相手を座敷牢にぶち込むのかアンタは。自分の胸に手を当ててみても同じことが言えるのか?」
俺がそう言うと、彼は律儀に胸に手を当てる。
そしてこちらへと向き直った。
「えぇ。言えますよ。私と友好関係を結べば日ノ本でも自由に動けるようになるでしょう。支援はさせて頂きますよ。どうでしょうか?悪い話ではないですが。」
彼はそうのたまう。
しかしクスリ盛られたり、座敷牢にぶち込まれた挙句に金玉キラキラさせられていることに対しての反発はあるものの正直言うと結構おいしい条件ではあると思う。
というより、この状況下で選べるのはこれしかない。
隣の咎姫は別として、確かに彼の申し出を断るとこんなアウェーの土地で居るかも居ないかもわからない刺客に怯えなければいけない。
買った覚えのない怨みに怯える必要が出るのかもしれない。
それならば、形だけでも奴との友好関係を築くと言うのはもしかすれば日ノ本でこれから過ごすには必要かもしれない。
確かにエルアーダからの船がここに来るには一月。
しかしもしかすればあの爺のことだ、可能な限りこちらが帰ってくるのが遅れるように根回しするかもしれない。
だとしたらちゃんと一か月後に来るかもわからないのだ。
それならば敵よりも味方を作ることに走った方が良いだろう。
凄く気が進まない。
すると不意に手の甲に誰かの手が載せられる。
見れば、隣の咎姫。
彼女が手を伸ばしていた。
目が合うと、にっこりと彼女は微笑む。
「私のことか兄のことか...迷いがあるのであれば、追々決めて行けばいいのです。時間はまだまだあ....」
何を言わんとしているか分かった。
確かに最低でも一月。
今決めなくても、その間に考えれば良いと言っているのだ。
自分を連れ出してと言っていた彼女が。
しかしその言葉は途中で、目の前の彼がお茶を彼女にぶっかけたことで途切れた。
こちらに向けていた視線とは打って変わった冷たい目線。
言うなれば蔑みを感じさせる視線。
「人間様の会話に割り込むな。人擬きが。現時点ではまだ貴様を縛っているのはこの家だ。貴様の動向の決定権は私にある。...失礼、お見苦しい物をお見せしましたね。」
冷たくそう言い放つと、再び俺の方へと向き直って微笑を見せる。
本当に見るに堪えないよ....。
反対に、彼女はなんら反応することなく目線を下に向けている。
髪の先っぽからポタポタと水滴が垂れていた。
彼女がここから抜け出したい気持ちが分かった。
昨日のアレは要するに彼女からしてみても、目の前の男からしてみても利害の一致だったんだろう。
ここから追い出す為に誰かに押し付けたい彼とここから抜け出すために誰かに縋りつく咎姫。
こんな有様を見て、少しだけ同情した。
国に連れ帰るのは問題が出かねない。
それなら....、帰る際に途中のどこかで彼女を降ろして解放するというのはどうだろうか?
そもそも、彼女が帝華に行くことになっているきっかけが分からないしな。
もしかしたら、彼女が解放された後に帝華に渡って双子の王に自分を売り込んだのかもしれないしな。
どちらにせよ俺には彼女をこの国から連れ出す以外には国交樹立する手段を持たず、それは俺自身のこの日ノ本での安全にイコールで直結する。
「....彼女をここから連れ出せば、後は好きにして良いんだよな。」
俺が尋ねると、彼は笑顔を見せる。
「えぇ。そもそも私は貴方に友好の証として下僕を贈ったわけですから、煮るなり焼くなり好きにしてください。持ち運びが楽な自立する性処理道具として傍においても構いませんし、好みでないなら重りをつけて海に投げ込んでも構いません。」
あいかわらず笑顔でとんでもないことをのたまっている。
しかし、今の俺にはその言葉はありがたかった。
好きにしていいと言ったのなら、何をしたって構わないはずだ。
俺は、手の甲に置かれていた彼女の手を確かに握った。
お茶を掛けられて体温が下がったからかほんのり冷たさを持ったその手を、しっかりと握った。
やってやる。
どうせ、原作知識の埒外に来たということは分かっていたんだ。
だったら、腹くらいいくらでも括ってやる!
それに撫麗香のルートを俺が掌握することで、オズワルドがそんなものを使えないようにしてやれる。
そうすれば、奴のエルの母親の調教も遅れに遅れるはず。
そして、あんな危険物をあの野心溢れる老いぼれから取り上げることだってできるんだ。
なんせ奴は秘密裏で取引していて、反対に俺は使者として表向きに取引することになるのだから。
「...良いだろう。なってやるよ、アンタの友達とやらに。アンタが求めるようにこの子も連れて行ってやるし、撫麗香...あれの流通ルートにもなれば良いんだろう?その代わり、アンタには俺の日ノ本での活動を全面的に支援してもらう。人脈作りとか、技術提供。逆に、そちらから断るのなら今の内だ。」
真っ直ぐに彼を見据えて、そう断言する。
最後で少し揺さぶりをかける。
すると目の前の男は目を丸くした後にニヤリと笑みを浮かべた。
「へぇ...なるほど。覚悟を決めた....といった感じですか?面白い。であれば、友人同士なのですから私の名前をお教えいたしましょう。私の名前は賀茂唯粋。賀茂家の13代目当主でございます。どうぞ気安く唯粋とお呼びください。....貴方は?」
「...ベゼル。ベゼル・アベヌス....エルダード国の軍師にして現状使者をやっているベゼル・アベヌスだ。呼び方はなんでもいい、以後よろしく頼む。」
俺は頭を下げるも、目線だけは奴に向ける。
これは俺の警戒心の現れだ。
最初、座敷牢に入った時に事前知識から咎姫の方を警戒していた。
でも、違う。
真に警戒するべきはこの男だった。
咎姫は言うなれば奴の手元に居る間は現状ただの迫害されている異形の子供に過ぎない。
であれば、真に心を許すべきではないのはこの男。
なれば、逆にこちらから距離を詰めつつ絶対的な線引きはさせてもらう。
体よく利用できるように立ち回る。
自国では原作知識などを使って、ヒロイン相手にそれをやっていた。
だからこそ、なんの手がかりもない今出来るのかと言われれば微妙だが。
出来るではなくて、やらなくてはいけないのだ。
その段階に今、俺は居る。
横を見ると、彼女と目が合った。
俺は彼女から目を逸らす。
勘違いしてくれるな、これは自分の為だ。
日ノ本における十分な影響力を得る為にもお前を利用させてもらう。
そっちもここから出る為に俺を利用するのだから、おあいこって奴だろう。
唯粋は俺の言葉を受けると笑顔を見せて手を合わせた。
「そうですか!よかったぁ~これで拵えさせていた赤飯が無駄にならずに済みました。それではそこの角付きを連れて行ってくれると言いますし、さっそく儀礼から済ませてしまいましょう。...おい、右の戸から出て行け。」
こちらに嬉しそうに話すのも束の間、咎姫へと突き放すような言葉を投げかける。
すると彼女はするりと握った掌を放すとそのまま立ち上がって右の戸から出て行く。
それに付随して後ろでこちらを見ていた唯粋の部下たちがずいっと前に出てきて俺の横に並んだ。
なんだなんだ、なんのつもりだ。
「失礼。それではベゼル殿は左の戸からお出になってください。そこで着付けを行いますので。」
「着付け?着付けって....なんの?そもそも儀礼ってなんだよ。彼女を連れるにはもうやることやったんだからそれで良いはずだろう?」
まぁやることやらされたのだが。
俺が言うと彼は笑って首を振った。
「確かに実務的な手続きはあれで終わりですが、儀礼的手続きがまだでございます。異国の御方からしてみれば、面倒に映るかもしれませんが日ノ本の文化というのは儀式のような手続きが大好きでして...お付き合い頂けると幸いです。日ノ本での関係性を円滑にしたいのであれば、こういう儀礼に参加すれば大体は角が立ちませんよ。」
いや儀礼だったらエルアーダも好きだし、こちらでもそうなんだけど....。
まぁ、なんにせよ取り敢えず立たなきゃ何も始まらなさそうなんで立ち上がる。
彼と表向きでも友好関係を築くと決めたのだ。
だからこそ、言う通りにしても問題ないであろう部分は言う通りにしてやる。
「では、こちらへどうぞ....。」
彼の部下に案内されるままに俺は左の戸から出て行った。
◇
大きな大広間。
そこには祭壇のような物があり、俺は紋付袴を着て座布団の上にあぐらを搔いている。
股間に淫紋つけられた奴が紋付の袴を着てるってなんか面白いな。
そして近くで冠に、単で白の袴を着た宮司然とした唯粋の姿。
息を吸うと、声を高らかに発した。
「これより、隷譲の儀を執り行います。」
....あれ、なんかこれ結納みたいじゃね?
そう思っていると、真ん中の戸が開く。
そしてそこには....巫女服のような物を纏った咎姫。
いや、それは最早巫女服というのかすら分からない。
かなり短めに作られていて、上半身は胸の大事な所が隠れていない。
それどころかなんか綺麗な石とか勾玉みたいなので飾り付けされてる分、それが強調されている。
紅いふんどしで隠してあるだけだ。
なんかこれもう、ほぼ裸っていうか裸に布と装飾品付けてるもんじゃん。
やば....なんだこれ、なんだこの衣装。
まともな精神してたらこんな意匠思いつかないだろ。
そして彼女の体には筆で書いてあるの一つ二つ文字が掛かれていた。
下腹部には『淫売』、頬には『痴呆』。
これもう悪意込めたノリでいってんだろ。
「調伏の儀は昨夜無事に執り行われました。次は敗北宣言の儀、敗北宣言の儀ぃ~!」
敗北宣言の儀?
なんだどうした、急に四字熟語になったけど。
儀礼の場に到底相応しくない言葉だけど。
いや、彼女の恰好も相応しくないけどねっ!今更だけど!!
「....やれ。」
「はい」
唯粋は冷たく何かをやるように告げる。
すると彼女は三つ指揃えて、こちらの目をしっかりと見据えた後に額を床に擦り付けた。
背中に大きく『人間失格』と書かれていた。
ほんとやめて欲しい。
アンタらは人間ですらない異形っていう意味合いで、今の無様な状態と彼女の生まれを合わせるような形で嘲る落書きをしているのだろうけど、俺から見たらそういう感じの有名なの知っているから。
それが被って、集中できなくなっちゃうから!
なんならちょっと風評被害行ってるからこれ!
「私めはこの世で生まれ散らかし、今まで人の目を盗んでのさばり跋扈した取るに足らぬ矮小な餓鬼畜生でございます。そして昨夜、貴方様という御方に狼藉を働こうとしてその御魔羅によって討伐せしめられました。ワタクシ目の小さき脳味噌でも貴方様には勝てない、遂に御器嚙のごとく浅ましく生きてきた年貢の納め時で私は鬼でもなんでもなくただの股割れ、敗け雌だと女陰の奥底、子宮の中から理解致しました。」
確か御器嚙って...ゴキブリのことだよなぁ....?
なんかすごい自分を卑下しまくってる...。
え....これ儀式なんすか?
えぇ....。
そもそも御魔羅で討伐されたといっているけど、撫麗香の効能で俺意識なかったし。
なんならあの子に煙吸わされてるし、普通に主導権あっちが握ってなかったっけ?
実際の状況とは乖離した宣言だなぁと思っていると、彼女は言葉を続ける。
「しかし、私はまだ死にたくありません。魔羅に殺されたくありません。なので命乞い散らかす所存にございます。お願いいたします、私を貴方様の下僕にしてくださいませ。暇な時には手慰みに弱点を弄り、催せば壊れる程に抱きせしめ、お好きにお扱い下さいませ。主である貴方が求めれば小水も飲んでみせます。御傍においてくださいまし。貴方様にど嵌りした糞餓鬼変態淫売敗雌の主様となっていただけないでしょうか?お願いいたします、私の尊厳も権利も何もかも貴方に差し上げますから。人権要りません、尊厳要りません。私は魔羅に負けて男に人間として生きるのに必要な基本的な物全て投げ捨ててしまうような馬鹿女でございますので、貴方様のような飼い主が必要なのでございます。どうか、何卒...。」
こんなのを年端も行かない女の子が言わされてるっていう事実がもう戦慄なんだよね。
尊厳要りませんって...やっべぇ....。
卑下の究極系じゃんこんなの....。
そんでもってそこまで声に抑揚がないのが怖い。
感情籠ってないだろこれ。
...いや籠められてもこっちが困るんだけど!
「それでは、ベゼル殿。近くまで歩き寄って頭を踏みにじりなさってくださいませ。」
「...ん?頭を踏む???」
頭を踏みにじりなさるって日本語生まれて初めて聞いたぞ。
俺が困惑を露わに唯粋を見ると、笑顔で手で促す。
「これも儀式の手順でございますので、特段深い意味はありません。ビシャモーンによって調伏された悪鬼羅刹どもは皆かの神によって踏みにじられたのございます。その逸話から由来している由緒正しい儀式ですので....。」
なんかそのエピソード...実際に仏教の四天王とかでなかった?
いや、そりゃこのゲームでいうシントゥーは神道と仏教が混じった感じの設定だったけどさ。
ずっと促されているので、イヤイヤと粘るわけにもいかずに立って彼女の近くまで歩み寄る。
土下座をしている姿はまるで縮こまっているようで、尻などもあらわになって無防備だ。
こんな姿勢を子供が取らされているなんて悲しくなってくる。
ゆっくりと頭に足を乗せた。
「もっと力を込めてぐりぐりと踏みにじってください。安心してください、それは結構丈夫なんで。手荒に構いません。」
「えぇ...いや、でも.....。」
俺にそう促す唯粋。
いや強度とかの問題じゃなくて、倫理的にちょっと....。
「構いませんよ、異人さん。それが決まり...みたいですから。」
葛藤していると、咎姫がそう言ってくる。
...まぁ本人がそう言うなら....。
俺は足に少し力を込めた。
「お、おら..おらおら....」
何だろう、俺なにしてんだ....?
自分がしていることの意味が分からなくなってきていると、唯粋はそばで控えている部下に目線を飛ばす。
すると、その部下は盃をこちらへと手渡して来た。
...なんだこれ、酒?
「そこの角畜生から足をどけて、髪を掴み上げて顔を上げさせてください。そして酒を顔面に吹きかけるのです。」
「え、それも手順?由緒正しいのそれ。」
「はい、清めの意味合いがあります。鬼を従えるわけですから、その鬼畜生から最低限穢れを取り除かないとということです。」
本当かよ....。
そんな清め聞いたことねぇぞ...。
そう思いながらも、言われるがままに髪をおっかなびっくり掴む。
さらさらとして、艶やかな銀髪だ。
あんな環境下でもこれを保てるだなんて、驚きである。
こんな綺麗な髪を引っ張るのは気が引けるな.....。
「異人さま....。」
「わ、分かっている!」
髪の綺麗さを見て指で撫でていると、急かすようにそう咎姫から言われる。
本当はやりたくないけど...やらないと進まないっていうんだから....。
まず酒を口に含んで髪の毛をむんずと掴み、持ち上げる。
なんか抜ける気配がなくて、結構丈夫な事が分かる。
そして顔を上げさせると、彼女と目が合った。
にっこりと笑う。
「数分ぶりに目が合いましたね?異人さん?」
「....」
口に酒入ってるから喋れねぇんだよなぁ....。
俺が黙っていると、彼女も黙る。
....かけろってことか。
「ブッーーーー!!!」
酒を吹きかけた。
目を閉じて、もろに酒の飛沫を顔に食らう。
顔が酒で濡れてびっしゃびしゃ。
うわぁ...俺だったら絶対に嫌だなぁ。
しかし、彼女はゆっくりと目を開けると微笑む。
「お恵み頂き恐悦至極でございます...。」
なんていうか...凄いね。
儀式とはいえ滅茶苦茶やられてるのに、笑顔でお礼言えるのが凄い。
俺だったら我慢できるかわからないもん。
プロ根性的な何かを感じたな。
「それでは、次は宣誓の儀へと移ります。ベゼル殿、髪からお手を放しになって。...おい、屈服の姿勢を見せろ。言われずともさっさとやれ。」
唯粋に言われて、手を放すと彼女はゆっくりと横になる。
そして仰向けになると、まるで犬などの四足歩行の動物が屈服した時に見せる姿勢を取る。
なんだこの絵面....。
「それでは、まずはベゼル殿には紋様の部分をお踏みになってくださいませ。」
「え、この淫紋のところを?足で??踏む????」
マジで??
淫紋のところって下腹部だよな....。
...それやったら男として終わりじゃない?
女の人のそこを足蹴にするって。
「えぇ、どうぞ。」
どうぞじゃないよ、まったく....。
しかしやらないと進まないのだろう。
俺は足を上げると、淫紋の所に足を乗せた。
指摘される前に踏む力を少しだけ強める。
すると、淫紋の光がほんのりと強まっていく。
「んっ...んんっ.....。」
すると彼女が何か甘い声を微かに発した。
「ちょっとまって。」
明らかに今までとは違う。
なんか淫紋光ってるし。
それになんか変な声出してるから、今までとは絶対違うやつだから!
「これまずい奴じゃ....。」
「構いませんよ。ほら身体が痙攣して小刻みに震えてるじゃないですか。きっと喜んでいるのですよ、なんて浅ましい。恥を知りなさい。」
恥を知った方が良いのはしきたりがあるとはいえこんな子供虐めて、そんでもってこんな儀式やらせてるアンタらの方だろ。
喜んでいるっていうかこれただ単に淫紋が何かやってるだけだよね?
「んっ...なにも、もんだっ...ありませっ...異人..さ..っぁ....。」
笑顔を作って取り繕うも、度々身体が小刻みに震える。
若干肌が赤らむ顔。
目を逸らした。
昨夜は薄暗い中だったが、今日は明るい中だ。
流石に思うところはあるのだろう。
「それじゃ次で最後の行程と相成ります。顔を踏みつけて指を舐めさせて良いと一言言ってください。そうすればそこのが宣誓をして儀式は終了となります。」
「え...顔を、踏む....?」
えっと...この顔を?
足で??
えーっと...鬼畜か?
「あ、足袋は御脱ぎになってください。素足で踏むからこそ、完全なる調伏と相成るのでございますよベゼル殿。」
しかも素足で!?
女の子...しかもうら若い子の顔を踏むとかどうかしてるだろ。
なんだその儀礼。
しかも足の指なめさせるとか...ばっちぃだろ。
こんなことやられたらと思うと屈辱以上の何かだろ。
流石に人としてそんなことをやりたくはない。
彼女への同情とかではなくて、自分の倫理観の問題だ。
凄く躊躇われる...。
「おや?どうなされましたか?」
モタモタしている俺に疑問符を浮かべて尋ねてくる唯粋。
俺は目を泳がせながらも答える。
「いやぁ...流石にこれは気が引けて....」
「そうですか...ですが困りましたねぇ...そうなると儀式が進まなくなってしまうのですが。」
そう言われてしまうと弱い。
これを終えなければ彼との国交樹立も友好的な関係の構築もなにもかもが滞ってしまう。
うぅぅぅ...これはやらないと、いけないんだろうなぁ.....。
「良いのでっ...す、異人さぁ...っん.....。」
彼女は上気した体で、息を切らしながらも俺に声を掛ける彼女。
それに気づいて、唯粋から咎姫へと視線を向ける。
「だって...んぁ...貴方は、わた...っ..しを...連れ..ふっ...出してくれるの..でっ...しょう?」
...そうだ。
唯粋の要求を飲むことで、こちらでの動向を取りやすくすると決めた。
それはおのずと国に連れ帰るとかは別として彼女をここから連れ出すことにしたということ。
ならば、彼女からしてみてもここでもたつかれるのは本望ではない。
「...そうだ。」
そう口にするとゆっくりと左足の足袋を脱ぐ。
そしてゆっくりと足を上げた。
人の顔面に足裏乗っけるなんて初めての経験で、なぜだか緊張していた。
しかしそれでもゆっくりと仰向けの彼女の顔を踏んだ。
顔の左半分が俺の足で隠れている。
こんな光景、初めて見た。
力は怖くて入れてない。
頭とは違って顔だから、危ないからな。
それでもこれに関してはそれでも構わないようで唯粋は何も言わない。
「...これで、良いのか....。」
俺が呟く。
すると、踏まれている彼女の右目が細められると口を開く。
唯粋の視線がこちらへと刺さる。
たぶん、舐めさせるために口の方に足の指を持って行けと言うことだろう。
おずおずとそれに従う。
「私、賀茂咎姫は賀茂家としての苗字と名を捨て...れろっ....咎として...ぇぉ...んれろぉ....貴方様に傅き、ちゅ...れぉ,,,んぼぉ..ふかへることほ...じゅるるる...っぽ!...誓います。」
足を口元に持っていくと、ゆっくりと一本ずつ舐めていって遂には突っ込まれるのに為されるがまま親指を咥えてしゃぶる。
なんというかいかがわしい物を見ている気分だ。
正直気まずい。
そして口から離すと変な音が響いた。
....これで、良いのだろうか?
「以上を以て、隷譲の儀を締めくくることと致します。....これで終わりです。本当にありがとうございました、これで私の頭を悩ませていた問題が解決した。ベゼル殿、貴方が来てくれて本当によかった。」
「...はぁ。」
唯粋は笑顔で俺にお礼を言う。
しかし、問題が問題故にコイツにお礼を言われてもと言った感じだ。
そして、唯粋はそのままさっさと出口へと歩みを進めていく。
「おい、どこに行くんだよ。」
「...どこって祝いの席の準備を。私たちの関係が始まった日なのですから、出来る限り豪勢に行きたいのです。あっ、それはもう賀茂家の人間でもなんでもないのでどうぞご勝手に。貴方様の飼い犬なのですから好きに扱ってください。」
唯粋はそう言い残して部屋を出る。
...そう言い残して、彼女に視線を向けることなく。
彼女のこの場所での立場結局のところ徹底されたものだった。
「...立てるか?」
「えぇ、大丈夫....でございます。ふふっ、これで手続きは全て終わったってことですね。」
彼女に手を貸して、立ち上がらせると彼女は口元を手で押さえて上品に笑う。
...まぁ、咎姫の方も彼女に対しての彼と同じくこの家に関しては何も感傷がなさそうである。
それがまぁ救いであろう。
しかしそれにしたって....改めて二人きりになると凄い気まずい。
だって頭踏んで、アッチの方踏んで挙句の果てに顔踏まされた相手と相対しているのだ。
なんて話せば良いのか分からねぇよ。
「...結構スムーズにやっていたけど、前からこのれいじょうの儀?っていうのの練習してたのか?」
俺が尋ねると彼女は首を傾げる。
「いえ?あの人達が私に時間を使うはずないじゃないですか。色直しの時に全部教えてもらったんです。」
「へぇ~....。」
あの待ち時間に着替えと並行して詰め込まれたのか。
それであんな風に落ち着いてやれていたのは彼女の順応性の高さ故だろうか。
....アレ踏まれた時は流石に落ち着いていたとは言い難かったけど。
「....それで、いつまでその服で居る気だ。儀礼用か何かは知らないが、明らかに生活する際には合わないだろう。着替えてきたらどうだ?それか服がなければ....まぁ、俺がもらってきてやる。」
いつまでもそんな風なほぼ裸みたいな服装で居られるとこっちが落ち着かない。
でも、多分ここのことだし彼女には着替えとかないんだろうな。
彼女が言っても絶対くれないんだろうし.....。
だからまぁ客人の俺が言うしかないか。
それに、なんというか良し悪しは置いといて現状彼女の所有権?
人間に所有権って正しいのか?
まぁなんか飼い主とか言ってたし、好きにしろって言ってたから服くれやって言ったらくれるでしょ。
「まぁ、私は別にこのままでも構わないのですが....もしかして、貴方が選んでくれるのですか?」
彼女は揶揄うような視線をこちらに向ける。
しかし、取り合ってやるつもりはない。
彼女はあくまで国外に連れ出してやるだけ。
世話をしてやるつもりはない。
ただ単にこの日ノ本での交流構築に置いて利用できたから利用しただけなのだから。
「悪いが俺にはその点でのセンスがなくてね、そんなつもりない。」
これに関しては本当である。
服のこと一切わかんない。
正直軍師やってる時、官吏服を着ることになってるのが凄い楽でいつも着ていたいくらいである。
「それは残念。それじゃあ一つだけ気になっていたことを聞きますね?」
「唯粋が用意しているようだし、聞くなら手早く頼む。」
俺がそう言うと、彼女はもちろんですと前置きを置く。
そして、ゆっくりと自分の下腹部に手を置いた。
「これってぇ....『インモン』というのですね?」
「...は?それってどういう.....?」
何を言い出すのかと思えば。
それはどこからどう見ても淫紋で.....いや、違う。
そういうことではない。
なんだ....この引っかかりは。
「いや、ちょっと気になりましてねぇ?宣誓の儀の際に、お兄様に私の下腹部のここを踏むように言われてましてね?その際に、確か....『え、この淫紋のところを?足で??踏む????』でしたか。」
「あ、あぁ....それがどうした。」
なんというか悪意を感じるモノマネだ。
なぜだか心が騒めいている。
何かを見落としたようなそんな感覚。
すると、そんな俺の顔を見てクスクスと笑う。
「そのインモンって言葉はどこから来たのかな~って。私のこれに関してはずっとあの人は一貫して紋様と呼称していたのに。」
そう言われて、身体が強張った。
だらりと急に汗が背中を流れる。
そうだ.....あの時、唯粋は最初からずっと紋様と呼称していた。
ただ、俺は頭の中ではどう見ても淫紋だったから淫紋と呼んでいただけ。
でも、おかしな話だ。
一度たりとも淫紋なんて言葉が出ていないのに、紋様と言われてるのを淫紋に呼び間違えるなんて。
....例えば、元々そんな言葉を知っていない限りは。
予想外の連続に混乱していた。
だからこそ、ポロリと漏れてしまったなんでもない取るに足らない一言。
しかし、それが少し違和感に思われても仕方ないと自分で感じられた。
「貴方の国では~、こういうのを淫紋と呼ぶのですかぁ~。ということは前に見たことがあるとかぁ~?」
ニヤニヤとしながらこちらににじり寄ってくる咎姫。
対して、こちらは息が切れていた。
何を追い詰められたように振舞っている...こんなのいくらでも言い訳が効く。
「...あ、あぁ。俺の国では...そういうのは、淫紋っていうんだ。見たことは....ないけど、書物では知っている。」
「へぇ~?こういうのってそちらの国では書物に記される程にありふれた物なのでしょうか?だとしたら気になりますわ。まぁ、その割には私のコレに対して少しおっかなびっくりだった気が致しますけど。」
「実際に、それに該当するのを見たのは初めてだったから....驚いただけだ。」
言い訳に言い訳を重ねる。
彼女は俺の国の事を知らない。
だから、追及のしようがない。
すると、彼女は諦めたように目を閉じて笑顔を浮かべる。
「まぁ、そういうのであれば...嘘は吐いてないのでしょうね。だって貴方、取り繕う時に俺から私って言い換えますもんね?」
....そんな癖は、ないつもりだ。
それこそ、そんな所作を見せたのは唯粋にしゃべり方を突っ込まれた時だけ。
それでも、そんな言葉は俺の鼓動を早まらせるのには十分だった。
彼女は、何が言いたいんだ....。
これじゃまるで探っているかのようだ。
何を....俺から探り出そうとしている.....?
そして、何よりも背中をじっとりと湿らせているのは彼女がずっと俺を見ていたということだ。
まるで分析するかのようにずっと。
咎姫の今の言葉から察するに兄に軽蔑されて罵倒されている時も、宣誓の儀でアレを俺が踏むことになって顔を赤らめていた時もただ俺の行動を捉えていたというのか?
あんな風な振舞をしておいて、痙攣して小刻みに震えている時も俺の言葉をずっと頭に残していたというのか。
それでいて、俺の癖やらなにやらを考察していた?
それじゃまるで.....。
「咎姫、君は....」
「いいえ、違いますよ。」
君は、こちらの行動に目を光らせていたのか。
あんな振舞いをしておいて、心の中では冷静にこちらの行動を精査していたのかと。
それを聞こうとした瞬間、彼女に腕を掴まれる。
凄い力で引き寄せられる。
足がもつれそうになるのも束の間、彼女は引き寄せた俺をそのまま抱き寄せた。
がっちりと、まるで離したくないぬいぐるみを抱きしめる幼子のように。
そして、彼女はゆっくりと顔を上げた。
「もう私は咎姫ではありませんよ。今は貴方様の咎、咎とお呼びください?フフッ...これからよろしくお願いしますね?『主サマ』。」
その瞳は吸い寄せられる程にそこが知れず。
その声はまるで蟻の大群を眺める子供のように残酷な喜色を湛えているように感じた。
不安の種が心に芽吹いた。
タイトルの由来はソシャゲにもなったあのエロゲです。
こいつの執筆でイブを全部潰しました。
こんなクリスマスプレゼント作れたから僕のイブと性の6時間は誰がなんと言おうと充実していたと思います。