車椅子を押すためのグリップを握り歩みを進める。
ゆっくりとした歩みとは裏腹に心の中はスキップ状態だ。
何故なら今からジョゼとデートだから。目の前に座る彼女の可愛く纏められた髪からなのかふわりとサボンのような香りがした。香水?は振ってないと思うのでこれは彼女の香りそのものなのだろう。やばい。正直興奮してる。多分俺は匂いフェチなのだろう。さっきから甘い香りが鼻腔を刺激してくらくらする。
それに対しジョゼはこれから行くお店のことや、道中気になったことなどをとても楽しそうに語っている。その笑顔もさることながら時々チラチラと俺の顔を確認して微笑んでくれるのがこれまた最高に可愛い。店着く前に昇天しちゃうよ。
そんなこんなワイワイ楽しく道を進むとジョゼが「ほら!あそこや!」と目的地であろうお店を指さした。
「おぉ、すっごくお洒落だな。」
「せやろ!一度行ってみたかったんや!」
そこはエレガントで瀟洒な雰囲気のcafeだった。古い洋館のような建物に鬱蒼と茂った庭のある素敵なオープンテラスでは軽快なピアノがまるでその空間だけ別世界を創り出している様だった。
「恒夫!あっちや!あそこのテラス席に行こ!」
ぐいぐいと俺の服の袖を引っ張る。目がもうものっ凄くキラッキラしていた。
「分かった、分かったから袖そんなに引っ張んなって伸びるから。」
袖を離すように促し俺たちはテラス席に向かった。
ラッキーなことに席はピアノのほぼ真横の席だった。この近くで生演奏を聴けるのは気分が上がる。
「恒夫!何頼む?あ!これ美味しそうやぞ!{サーモンのセルクル仕立て}?あたいこれにするわ!あぁでもこっちの{豚肉のシャルキュトリー風}も捨てがたいわぁ~。ぐぬぬぬ迷ってまう。」
メニューの記載された紙を両手で持ち上げうんうん唸りながら選ぶジョゼ。
俺も何か選ばなきゃなぁと思ったものの特にこれが食べてみたいといったものも無かったので一つの提案をジョゼにする。
「じゃあ俺がそっちの{豚肉のシャルキュトリー風}にするからシェアするか?」
「ええんか!?じゃあそないしよ!早速注文せな!」
どっちも食べられるぅ~~と感嘆の声を口の端から漏らすジョゼを見て”お子様”だなと思ったがこれを言おうものならブチギレ案件なので黙っておこう。
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「かしこまりました。暫くお待ちください。」と丁寧にお辞儀をしたウェイターさんが注文を厨房に持っていく。料理が来るまでの間少し暇になるなと考えピアノの演奏を聴こうとジョゼに促し、俺達はピアノの演奏に耳を傾けた。何かのクラシック曲のアレンジだろうか。ジャズ調になった素敵な曲だった。
数分そのまま演奏を聴いていると音が止む。あぁ演奏が終わったのかと思い、いつの間にか閉じていた目を開くとピアノを演奏していた人がこちらを見ていた。
「演奏を聴いて下さり有難うございます。何かリクエストがあればお弾きしますよ。」
そう言われたものの、クラシック曲とか全然知らないし何をお願いすればいいのやらとあたふたしかけた時、ジョゼが代わりにリクエストを送った。
「愛の夢その曲の第三番をお願いできますか?」
演奏者はにこりと微笑み「ええ、かしこまりました」と一言告げピアノに向き合う。
演奏が始まる。ゆったりとしたメロディーの中には儚さの様なものを素人ながらにも感じる。幻想のように、泡のように溶けて無くなってしまうかのようなそんな儚さが。曲も終盤に差し掛かりジョゼがどんな表情でこの演奏を聴いているのか気になり横を振り向く。同時に周りの景色は視界から薄れ俺の目は彼女のみが映る。かすかな風に揺られ木々の隙間から漏れ出る光に当てられた彼女は眠るように息を潜めている。周りの緑はさながら彼女を支える揺り籠に見えた。まるで彼女はかの物語に登場する眠り姫の様だ。そんな幻想のような現実は曲の終わりと共に元の形に戻る。
「ジョゼ」
考えるよりも先に声が出た。確認せずにはいられなかったのかもしれない。それが例え紛れもない彼女自身だとしても。
すっと目を開き薄く優しく微笑んだ。
「ええ曲やったやろ?」
「、、、あぁ。」
一体何だったというのか。この曲が見せた幻なのかそれとモこの演奏者が?
演奏者はこちらを向いた。
「どうでしたか。お気に召します演奏は出来たでしょうか?」
「あ 、はい。とても素晴らしかったです。」
出てきたのはこんなありふれた誉め言葉だ。
「あたいの心が体現されたような、そんな演奏でした。」
パチパチパチと拍手をするジョゼ。それに習い俺も拍手をする。
演奏者は立ち上がり深々と紳士のようなお辞儀をして「では私はこれで。」ともう一度礼をして去っていった。不思議な体験だった。まだうつらうつらしている俺とは反対に、ジョゼはいつも道理の空気に戻っていた。
それから料理が届き、自分たち以外誰もいないことを確認しでこっそり食べさせあいっこした。今日は色んな意味で驚きの連続だったデートだった。
あとがき
(途中で何描き始めたのか自分でも訳わかんなくなってます。毎日投稿を目指していますが時間が中々取れないため深夜帯に書き上げ投稿するというのがずっと続いていたため体の方が先に悲鳴を上げ始めてるかなぁと感じます。
昨日は投稿できずにすみませんでした。 Naruya)