より良いハッピーエンドの導き方   作:後藤さん

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第二話『プロローグ・後~黒歴史と超展開と~』

「……落ち着いた?」

 

「アイ、オチツキヤシタ」

 

 俺最大級の黒歴史こと鬼滅の刃オリジナル呼吸・血鬼術ノートを突きつけられ発狂してから体感十分後くらい、漸く落ち着いてきた。

 鬼にとっての弱点が藤の花の毒であるように俺の弱点は成人してから書いてしまった厨二病の詰まったノートなのだ。

 

 だがそれが鍵を握る事もまた俺は把握していた。

 

「さあここにいられる時間ももうあんまり無いからな、村田に適合するオリジナル流派を探すぞ」

 

「……成程、俺と俺の記憶が溶け切った時がタイムリミットって事か。……これは無の呼吸……サイコロステーキ先輩用の呼吸か……今は同期の吾郎君にタイミング見て教えてあげるか。……っと、あったあった」

 

「流石俺、探すのが速いな」

 

「まあ、俺の書いたものだからな」

 

 オリジナル呼吸なんて見つけたとして使いこなせるのか、という不安は無かった。

 何せサイコロステーキ先輩である現・才木吾郎以外に関しては適性と能力値を見極めて作った代物だ、どうにかなるなる。

 

「陰の呼吸……」

 

「我ながら俺の扱い酷くね?」

 

「残当、村田らしい扱われ方」

 

 陰の呼吸……その名の通り影の薄い村田にしか使いこなせないだろう気配を遮断しながら扱うそこまで物理的なパワー面を必要としない流派だ。

 うん、これは酷い、いくら前世の俺だとしても今の俺の認識が酷い。

 

「ま、まあ良いや……それより今は基本の壱の型と弐の型のやり方即興でやれないと死ぬって言う地味に嫌な展開に腹痛しかしないのがキツい」

 

「しかも相手目の前だからね……陰の呼吸って大体認識外からの発動で効力アップする、それを前提にしたような呼吸だからねえ」

 

「壱の型が影縫い、弐の型が影打ち……運が良かったのは厨二病成人の俺がその二つをコンボで使える様にしてた事だろうな……よし」

 

 壱の型・影縫い……その名の通り相手の影に日輪刀を刺し身動きを取れなくする型。認識外からの成功で効力アップ。

 弐の型・影打ち……自身若しくは相手の影を日輪刀に纏わせカマイタチの様な斬撃として中範囲に攻撃する。認識外からの攻撃で威力上昇。

 

 正直影打ちは真正面から打っても威力なんてそんなに無いが、今やれる通常攻撃以上の攻撃力を持つ技はこれしか無い。

 つまり何としてでもやるしかない。

 やれるかやれないかじゃない、やるんだ。

 

「覚悟、決めたか?」

 

「お陰様でな。家の家訓はチャレンジ精神の塊みたいなもんだし、村田家最後の人間としてその魂だけは忘れちゃいけないからな。……あと、真菰に会いたいし」

 

 思えば義勇とは原作以上の友人関係が築けているとはいえアイツは柱だから話す時間も最近は余り無い。

 それに比べると真菰は同じ隊士として、四年間ずっと傍にいてくれた唯一の同期だ。

 それだけでも癒されるがやはり真菰は女の子、しかも年下で四年前から背丈も顔もほぼ変わらないと来た。

 そりゃあ、もう癒しだろ。

 

 で? 死んだらその真菰を悲しませる訳だ。

 そりゃ死ねないって話だ。

 

「真菰を泣かせる事は許されざる行為ッ……! 例え自分でも許されないッ!!」

 

「さっすが俺、分かってんじゃんかよ……さあ、そろそろ時間だぞ」

 

「おうよ、ここからが俺の始まりだ」

 

 意識が霞んでいく。きっと次意識が覚醒したらもう二度とここには戻って来れないのだろう、そう思うと一抹の寂しさもあるが前世の俺は今の俺でもある。

 いつだってきっと俺達は共にあるんだ、勇気を持って、絶対にこの世界をハッピーエンドに導いてやる。

 

「行くぜ、俺!」

 

 

 

 

 

 意識が再び覚醒してくる……と、同時に俺の頭に落ちてきていた氷柱を間一髪で避ける。

 事前にあっちで意識活性してなかったら今頃俺の頭は氷柱の餌食だったと思うと怖過ぎてチビりそう。

 

「っぶねー……」

 

「仕留め損なったか……だが次は無い!」

 

「それはどうかなッ! 陰の呼吸・壱の型『影縫い』!」

 

 避け切った瞬間あっちも油断はしてないらしく一息入れさせてくれる余裕も与えないまままた氷柱を作り出し投げてくる。

 が、今の俺は即興にはなるが適性値の高いオリジナル呼吸がある。

 それこそ基本の二つの型だが、覚悟を決めた俺ならばこんな鬼相手これで充分!

 

 直線的に飛んでくる氷柱を右に左に避け、次の血鬼術の起動までの隙を見計らい影縫いを飛ばす。

 

「あ? ……なっ……なんだこれはッ……!? 身体が……動かない、だと……!?」

 

 よし、どうやら上手く行ったみたいだ。

 って感心してる場合じゃないな、今の影縫いは効力強い訳でも無いし。

 さっき間抜けに転んだ事への渾身の恨み節をぶつけながらフィニッシュブローを放つ。

 

「まだデコが痛いんだよクソが! 悪いが八つ当たりの為に死んでくれ! 陰の呼吸・弐の型『影打ち』ィ!!」

 

 地面、鬼の影に刺した日輪刀を抜かずに手に持ち影を纏わせる。

 そして吸収しきったところで横に薙ぎ払い、頸を落とす。

 うん、完璧だ。

 

「お、俺がこんなところで死ぬなんて……」

 

 絶望に顔を歪めた鬼は、そう言って消えていった。

 全く胸糞悪い……鬼にならなきゃもう少しまともに死ねたはずなのに。

 

 しかしこんな所で立ち止まる訳には行かない。

 例え山の様に殺すのだとしても、各キャラの原作の末路を知っている以上助けられる者全て助けて、ハッピーエンドを迎えるんだ。

 

 

「――くどいくらいこの世界の人達の死は見てきた。前世でも、今世でも。だったら救ってやるさ! どんな手を使っても!」

 

 決意を胸に、夜月に輝く日輪刀に誓う。

 死んだ者、敵味方関係無くその無念を背負って。

 

「…………それは良いけどここ何処だよ」

 

 この後竹内が偶然見つけてくれるまで立ち往生していた事は秘密だ。

 締まらねえ……

 

 

 

 

「バカ、バカバカ!」

 

「わー悪かったって真菰! でも俺もこれで辛に昇進だろうし結果オーライだから、ね?」

 

「ね? じゃないの! 鋼お兄ちゃんが居なくなったって聞いてほんとに心配したんだから!」

 

 今まで使った事の無い呼吸で、今まで倒した事の無い比較的強い鬼と戦ったせいで身体が大きく疲弊し竹内に肩を借りながら帰ってきた俺は別働隊だった帰還済みの真菰に遭遇するなり真菰に抱き着かれていた、因みに竹内は既に居なかった。

 

 ……ま、可愛くて付き合いも長い年下の女の子に抱き着かれて悪い気はしないし何なら俺から抱き着きたいくらいだったから良いんだけど。

 と言うかホント真菰って初めて会った時から殆ど変わんないよなあ……

 

「俺が真菰を泣かせる事すると思うか?」

 

「うー……しないけど、しないから好きなんだけど……でも心配だったの」

 

「……ありがとな。真菰がいるから俺は頑張れるんだ」

 

 前世の記憶が入ったから客観的に自分を見れるんだけど、これで付き合ってないんだもんな俺と真菰って。

 ……ちょっと待て今真菰俺の事好きって言ったか?

 え、嘘でしょこんな急展開ある?

 

「……ところで真菰さん?」

 

「なぁに、鋼お兄ちゃん?」

 

「いや上目遣い可愛いな……じゃなくて、今俺の事好きって……」

 

「……」

 

「真菰さん?」

 

 因みに上目遣いが可愛いのは事実である、初めて会った時からあんまり変わってない身長と童顔で見つめられたらそりゃドキッとしちゃうでしょうよ。

 

 って今はそうじゃないんだけども、真菰が無言でこっちを見ながら近付いて来てるんですけど? 何この展開? 顔近っ可愛いなおい……

 

「……やっと気付いてくれたんだ」

 

「そ、それって……むぐっ! 」

 

 異性としての意味なのか……聞く前に真菰の唇と俺の唇が重なっていたのが答えだった。

 

「――これが答え。鋼ちゃんの答えは?」

 

「ハハハ……全く。付き合うなら真菰以外有り得ないと思ってたけど、まさかこんな積極的にアプローチされるなんてな。俺の方こそ、こんな俺で良かったら是非」

 

 冷静に考えて超展開だなこれとか、キスの味って甘いんだなあとか考えながら夜は更けていくのだった。

 

 人生初の恋人が出来たという実感が湧くのは多分もう少し後になると思う……




今作における義勇世代・一覧

冨岡義勇
錆兎(故人)
村田鋼一郎(村田)
真菰
才木吾郎(サイコロステーキ先輩)
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