より良いハッピーエンドの導き方   作:後藤さん

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第三話『この世界の同期達』

「えー、という訳でして俺達付き合う事になりました」

 

「唐突過ぎない!? 辛昇進したって聞いたから祝いに来たらこれとか唐突過ぎない!?」

 

「……まさか鋼一郎と真菰がな」

 

「も、もうっ恥ずかしいよ……」

 

 時は少し進み前世の記憶が戻って一夜明け、翌日の昼間。

 正式な昇進報告を受けた後義勇含めた同期全員が非番になっていたので呼び付けサプライズで真菰との付き合った事を言い今に至る。

 あと真菰の赤面が可愛過ぎる、天使かな?

 

「でも真菰から告白して来たんだろ?」

 

「あうう……」

 

「何なのこれ……いやまあおめでとう? 付き合い長い同期同士の恋人とか何か違和感しかねえな……」

 

「……守れよ」

 

 二人の反応はというと吾郎は困惑気味だが祝福してくれていた感じで、義勇は相変わらず言葉は足りないがしっかり祝福してくれている。

 全く、義勇に関してはもう少しちゃんと言葉にしないと同期以外には伝わらないだろうに……まあ俺には伝わるから良いんだが。

 

「ああ、真菰の事は何があっても守ってみせる……って言っても俺はようやく吾郎に追い付いて辛、真菰は戊だから守られそうな気しかしないんだけどね……」

 

 真菰は本当に強いからなあ。

 何せ当時最終選別試験受験年齢は義勇や錆兎の13歳ですら異例だったのに真菰は当時11歳、俺と吾郎の15歳でも若い方って言われてたのにこの世代規格外過ぎて……。

 思えば本来真菰は錆兎より後に受験するはずだったんだしそれが前倒しになったら年齢も若くなるわ。

 15歳の彼女に守られる19歳……才能の差とはいえ胃痛が……。

 

「そんな事言わないでよ。今の私があるのは鋼ちゃんが最終選別で助けてくれたからだよ」

 

「そ、そうは言っても手鬼の時は俺と吾郎で何とか救出と陽動して適当に逃げ切っただけだし……」

 

「それでも。助けてくれたのは事実でしょ? 自信持ってくれないと困るよ? 鱗滝さんも自信のある人じゃないと認めてくれないと思うし」

 

「ああそれは困るなあ!? 真菰の師匠である前に養父だもんなあ!?」

 

 いや確かに鱗滝さんに認められるには真っ当な自信な必要なんだろうけど手鬼から逃げたのは事実なんだよなあ……実際あの場に居たの冷静さを欠いて機能半停止してた真菰と、少なくともあの当時基準で所詮は本編じゃどこまで行っても階級下っ端の平隊士にしかなれないセンスしか無かった俺と吾郎だし逃げないと殺されたんだろうけどさ……

 

 でも彼女が、真菰がそう言うならちょっとは頑張らないと……陰の呼吸とか、決意とか、昨日決めたんだし。

 

「そうだぜ、俺達んとこのゲンさん曰く鱗滝さんは『俺なんかが菩薩に見えるくらい厳しい』って話だしな」

 

「義勇も私も錆兎も凄く厳しく育てられたからね。でも修練の時も厳しいけど優しくて、だから頑張れたの」

 

「……そうだな」

 

「やっぱり噂通りの良い人なんだな、鱗滝さん。まだ会った事無いけど……会いたくなってきたな」

 

 原作でもその厳しさと心優しさに胸を打たれた読者、視聴者は数知れない人格者なんだよな。

 確かに怖いけど、真菰が朗らかな笑顔で話すその人に会ってみたいと純粋に思うのは恋人かそうでないか以前に、付き合いの長い大切な人が大事にする人だからか。

 

 ところでチラッと出たが俺達は同期であるが俺、吾郎と義勇、真菰、錆兎とで育手が違う。

 周りには何故か義勇や真菰、錆兎の事を話してる連中にも最初はその三人との方が付き合いが古いんじゃないかと十中八九言われる。

 だが吾郎以外とは寧ろ最終選別初日が初顔合わせであり、何なら錆兎との親交は六日しか無い。

 それでも何でここまで親しく、錆兎との思い出も深いかと言ったらまあその選別で一緒にピンチを何度も乗り越えたから……って感じだろうか、言わば戦友みたいな絆が生まれたから吾郎とは別の友情があるんだよな。

 

 だからと言って吾郎とそこまで絡みが無いと言ったら嘘だ、寧ろ吾郎とは運命共同体みたいな存在である。

 

「ゲンさんの恩人でもあるみたいだしな。お前が行くなら同じとこで育ったもんとして挨拶くらい俺もしとかねえとな」

 

 川端源内……俺達川端門下の通称で行く『ゲンさん』は元水柱・鱗滝左近次の水柱時代の継子であり鱗滝さんの次期水柱と呼ばれた、歴代水の呼吸使いの中でも十の指に入る強さと言われる事もある。

 俺と吾郎の育手であり大恩人だ。

 

 俺達二人はどちらが兄、弟と言う事はなく、時を同じくして10歳で両親をそれぞれ俺が上弦の肆・半天狗、吾郎が下弦の伍・累に殺された後路頭に迷っていた時に出会い二人で一ヶ月くらいボロボロになりながら生きていた。

 そんな折にボロボロになっていたところに話し掛けてきてくれたのがゲンさんで、事情を聞くなり拾ってくれたんだっけ。

 あそこ、実は育手としてでもだが単純な孤児院としても成立してて家事、肉体労働、その他稼ぎになる仕事と鬼殺隊士以外の道も示してくれるんだよ。

 

「何なら稽古も付けて貰いたいしな。厳しいからこそ」

 

「おうよ!」

 

 俺達にも違う道もある事を前提に話してくれてたんだが、生憎と俺達は可能性があるなら鬼殺隊士以外の道は要らなかった。

 吾郎も俺も即断即決だったから兄弟って感覚じゃなくて『相棒』で、一番軽く付き合っても良いと、お互いがそんだけ心を許してるから多分超親密とは思われないんだろうな。

 

 ま、そこはこの関係の良いとこだけど。

 

「ふふっ」

 

「ん? どうしたんだ真菰?」

 

「んーん、ただ鋼ちゃんがやる気になってくれて嬉しいなーって」

 

「そ、そうか……まあ俺だって真菰の彼氏だからな! やれる事は全力でやるさ!」

 

 昨日までの俺だったらそんな事言えたかどうかも分からないけど、今の俺は自分に一番合った呼吸が使える様になったしそれで割かし強い鬼も打ち倒した。

 もしかしたらだが、原作に辿り着くまでに原作の階級を超えられる可能性も見えてきてる。

 やれば出来るんだ、だったらやるしかない。

 

「っつってもまだ怪我は治ってねえんだからちゃんと休めよ?」

 

「わ、分かってるって。これが終わったら暫くは蝶屋敷で治療と養生しろって亀戸さんも言ってたし」

 

「……身体は資本だ。ゆっくり休むと良い」

 

「そうだな、彼女出来たしな。尚更無理も出来ない」

 

 実は何気無く話してはいるが結構身体はボロボロだったりする。

 見た目はそうでも無いが、帰ってきてから応急処置と簡易治療は受けたとはいえちゃんと蝶屋敷で治療を受ける様にと俺の隊のリーダーである階級『丙』の亀戸さんに言われてるしまあまあ上空から地面にダイブしたから多分骨数本はイカれてると思う。

 

「……それじゃあ今日はこれくらいでお開きにしよっか」

 

「そうだなァ、早いとこコイツ休ませないとダメだろうし」

 

「……ああ」

 

「悪ぃな。また治ったら祝おうぜ」

 

 そんな訳で特に義勇とは久々に会って、呼吸の事とか積もる話もあったんだがまた怪我を治してから話す事にしよう。

 吾郎とは隊が同じだから気にしなくてもすぐ会うだろうが……真菰は心配だ。

 

「なぁに、鋼ちゃん? ……お見舞いなら毎日行くから安心して?」

 

「あはは……」

 

 いや心配なのはそうじゃないんだが……とは言えず、解散した。

 

 

 ところで心配と言えば蝶屋敷関連で何か忘れてる気がするんだが……はて、何だったっけか……凄く大切な事だったはずなんだが……

 

 

 

 

 

「あらあらしのぶ、男の人連れ込んだの?」

 

「はぁ~……姉さん、この人は患者よ……しかも彼女持ちですから誤解しないでください」

 

「そうなの? ごめんなさいね~」

 

「へ? あ、い、いえっ!」

 やべぇマジで重要な事忘れてたよ俺。

 蝶屋敷でしのぶさんとカナエさんの顔見た瞬間思い出したわ。

 今の俺は骨折やらなんやらよりもそれを見た瞬間に思い出したとある事による腹痛と頭痛の方が酷いまである。

 

 それもそうだ、何せ俺や義勇が隊に入って四年目、つまり今年原作時系列的に考えるなら……

 

 

 

 

 

 カナエさんは、童磨との戦闘で命を落とす事になっているのだから……




オリキャラ紹介

☆川端源内
・使用呼吸:水
・立ち位置:村田、才木の師兼養父 鱗滝左近次の元継子
・概要
 主人公村田と才木の師であり恩人
 元隊士で現役時代最盛期は当時の水柱・鱗滝左近次の継子も務めており次期水柱、歴代水呼吸使い十傑と言われる程の力の持ち主だったがとある事情から柱にはならなかった
 性格は修行には手を一切抜かない厳しさもありながら普段は笑顔の多い豪快な性格で親しまれている
 年齢は鱗滝の10程下
『歴代最強の平隊士』として鬼殺隊に知られている

☆亀戸吉兆
・使用呼吸:岩
・立ち位置:村田、才木の隊の隊長
・概要
 村田、才木の隊を率いる隊長
 階級は上から三番目の『丙』
 岩柱・悲鳴嶼行冥の一つ歳上の兄弟子隊士であり世話焼き

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