トリオンモンスターって呼ばないで! 作:わー
「あ!修たちが危ない!」
「アステロイド」
車を途中で降りて走っていると、雨取と眼鏡が新型二体に襲われかけていた。後ろからアステロイドを放ち、とりあえず両方とも破壊しておく。
「わ、へ、ふぇ?あんたがやったの今の?」
「…」
「ふ、ふーん…まあ、少しはやるじゃない…」
声が震えてる気がする。
「小南先輩、のんびりやってる時間はないですよ。修、よくこらえたな」
「烏丸先輩…小南先輩も…!」
「レイジさん!」
「千佳、無事か」
どうやら雨取や三雲と知り合いだったらしい。つまりこれは救援か、と弥生は結論付ける。怖い人たちはいなかった。ほっと安堵しつつ、ふと後ろを見ると、そこにはまた黒い球体が現れていた。
「アステロイド」
「えっ」
雨取が驚きの声を上げる中、全力クソデカアステロイドを打ち込んでみる。爆発が起き、その中から人影が二つ現れた。
「ほほほ…まさか急に攻撃を仕掛けてくるとは、なんともお転婆なひな鳥だ…」
「…くっ…」
現れたのは、ヤバい奴だった。
細目、老人、紳士、そして杖…分かる、あれは強キャラだ。下手したらラスボスよりもラスボスするタイプのキャラだ。本気を出すと開眼して、仕込み杖から剣を抜刀して全てを切り裂くタイプだ。絶対ヤバい。奴にだけは近づいたらダメだ。
もう片方は、青年だった。強そうだけど老人と比べるとそこまで圧は感じない。それになんか裏切られそうな面をしている。そしてこちらは先ほどの攻撃の所為か、片腕を失っていた。こちらの事を親の仇のように睨みつけてくる。ひえ、怖い。弥生は大きな人の後ろに隠れた。
「人型が二体か…」
「レイジさん、小南先輩。どうします?」
「当然、ここでやる!」
三人がそれぞれ武器を構え、戦闘が始まった。
戦況は目まぐるしく変わっていく。青年のトリガーが磁力を扱うものだと分かると、即座に編成は二分された。すなわちC級を本部まで援護する隊と、足止めする隊だ。
奴らの目的は弥生達C級だ。C級が近くにいるだけで、狙われて不利になってしまう。故にC級の避難は当然のことだった。
弥生は他のC級達と一緒に走っていた。足止めしてくれているあのデカい背中と美少女に感謝して、少しでも早く基地に辿り着くためだ。
しかし、目指していた通路は封鎖されて動かない。本部との連絡もつかず、加えて空に緊急脱出の光が輝いた。ヤバい、と思った瞬間には、青年と老人が謎の超加速で突撃してきた。しかしそんな二人の更に上から超加速でやってきた白髪とグラサンが、弥生達から引きはがしてくれた。
あのグラサンは一体誰なんだろう。こっち見て首傾げてたのもなんか気になる。
「リーダー、待って!」
「俺から離れるなお前ら!離れたら死ぬぞお!」
何故か弥生に引っ付いて離れなくなってしまったサンバカの事をなんなんだろうこの人たちと思いつつ走っていると、新型が数体現れたのでぶっ飛ばす。
「やっぱツええ!」
「君、俺の部隊に来いよ!俺たちと一緒に、最強のボーダー部隊を目指そうぜ!」
「…」
「え、何その顔」
嫌だよ、なんかそのノリ合わないし。
「君強いな。だけどトリオン量は大丈夫なのか?」
弥生の横を並走しながら、烏丸が話しかける。
「…1割」
「1割しかないのか!?」
三雲が目を剥く。それに弥生は首を振った。
「まだ、1割も減ってない…です…」
「…ならよし!」
烏丸はぶっ飛んだ事を言った弥生を考える事を一旦放棄して、今は目の前のことに集中する。
正直、弥生の砲撃には何度も助けられた。この先ボーダーの基地に行く間、さらに手助けを貰う必要があるだろう。しかしそれでも弥生はまだC級だ。
(相手のトリガーの正体も分からない状態でむやみやたらに先制攻撃をするところも、経験不足が如実に出ている。それにトリガーも訓練用だ。前に出すわけにはいかない…)
思考しながら、弥生に言葉をかける。
「神崎とか言ったか。トリオン兵は君に任せる。だが人型には手を出すな。もし対面したら、逃げる事だけ考えるんだ」
「…」
こくりと返事をする弥生に、烏丸はよしと一つ頷くと、前を向いて駆けだした。しかし弥生の頭の上にははてなマークが浮かんでいた。体力のない弥生はトリオン体ですら疲労感を感じていた。酸素が本体に回らずにきつい事この上ないのである。正直唐突に話しかけられて話を聞く余裕は弥生にはなかった。
重要な話だったらどうしよう…そんなことを思いつつ、空から降ってきた新型に弥生はまたアステロイドをぶち込むのだった。
均衡が崩れたのは、弥生の腕が吹き飛んだ瞬間からだった。
「くっ!」
三雲が咄嗟にレイガストで弥生の前に出る。今まさに弥生がさらされていた新型の放つ光弾が、レイガストによって阻まれる。
しまった、と弥生は苦い顔を浮かべる。相手も徐々に学習してきていた。弥生が直線的な攻撃しかできないことを看破し、避けようとしてくるのだ。面倒だ、と弥生は思った。
三雲の後ろから新型を破壊する。逃げ惑うC級達の半分殿になっている状態だ。早い所片付けて、他のC級達のサポートに行かないとまずい。
微かに弥生が焦っていると、上から三つの影が下りてきた。二つは新型の顔を叩き、もう一つはアステロイドで爆撃する。
「よお、先輩が助けに来てやったぞ。泣いて喜べ」
弥生の真横に、チャラ男が降り立った。
「泣きはしませんがありがたく手を借りますよ―――C級を本部へいち早く避難させたいです。敵を引き付けてください。これ、迅さんの指示ですんで、よろしくお願いします」
「迅さんの!?」
新しいショタも現れた。それからもう一人は…弥生は見たことがあった。というか、昨日会っている。確か眼鏡をカツアゲしていたヤンキーだ。
「アステロイド!」
隣では、三雲が雨取と手をつないで何かをしていた。どうやら雨取と手をつないで、雨取のトリオンを借りているようだ。弥生は少しだけ羨ましい。
それを見て、チャラ男が「おいおい、マジか」と苦笑いを浮かべる。
「アステロイド+アステロイド…ギムレット!」
二体目の新型の動きを止め、三雲がまた雨取アステロイド…雨取ステロイドでとどめを刺した。弥生の放つものと同じで、一瞬にして新型はバラバラに引き裂かれ、全形を留めず消滅した。
「おいおい、眼鏡君、お前何者だ!?トリオンすげえな!」
「え…あ!いや、今のはこっちの…玉狛所属の、雨取千佳のトリオンを借りて、僕のトリガーで撃っただけです!」
「なるほどな…それじゃあ、新型の数が少ないのはお前ら二人のお陰か!」
「それも違います!道中の敵を減らしてくれたのは、彼女です!」
「んん…?」
チャラ男がこちらを見てくる。え、何…?と陽キャに対しては全方位へ恐怖を持つ事が特徴の弥生は視線をそらして敵と戦い無関心を装う。
「…そうか!お前ら最近噂のトリオンモンスターか!」
え、何その不名誉な名前は。弥生は思わず振り返る。雨取は何故かニコニコしていた。君それでいいの?
「俺は出水。本当は撤退戦のつもりだったけど…俺らで新型片付けようぜ。お前らがいるなら新型全部殲滅ってこともできそうだしな」
「! はい!」
つまりは共闘の誘いだった。弥生としても不安はあったので是非はない。眼鏡も雨取も猫目もいるので多分何とかなる。そう思った弥生だったが。
「…!」
「? 神崎さん…どうしたんだ?」
弥生が空を見上げた。警報が鳴り響く。
「…鳥…」
雨取も呟いた。
「敵の攻撃が来ます。備えて」
アステロイドを起動しながら、空を睨みつける。
弥生の視線の先を追う三雲や出水。その先では、数えきれないほどの不気味な鳥が空を舞っていた。
昨日2,3時間だけランキングに載ったみたいで。
感謝です。