" ・・・・・・傷が癒えたら_______ ラフテルの空へ、逃げるかもしれないぞ "
" ああ、逃げて見せろ・・・そん時はまた捕まえてやる "
あれからもう2年________
_____ 『こっちへ!』
俺は我耳を疑い、その・・・音とも、声ともいうべき?声がした方向を見上げた
ツナギを着た連中と(クマ含む)もう一人
他の連中とはあきらかに違う動き,そうあれはまるで演武
逆光の中、煌めく柳葉刀2刀で軽やかに舞い踊ればいつか見た濃紺のアオザイが翻る。
あの女が俺の前ではあまり使わなかった”柔の剣”だ。
「女の子________?」
「確かにシルクの服みたいだけど・・・あれが?」
ロビンとナミが走りながら云った。
「ああ・・・!」
( 何が”絹の美少女”だァ・・・!? )
俺は、なぜココにいる?という疑問と・・・そして
________ まだ、生きていやがった
あいつだ・・・!と確信した途端
心の中が何かで、ジワーと一気に浸み上がって行くのが解る____俺は歓喜してるのか?
「フアー、アブネー! ヘヘッ。楽しちまったなー、おーい!アリガトなーお前ー!」
トラファルガーの船に乗り移る際、雑魚処理をしてくれたおかげで
俺たちは奪った軍艦からこっちへ、すんなり乗り移れたんだ
ルフィは麦わらを押さえ、上機嫌に逆光で影になってる相手に手を振ってやがる
口元を覆う長いスカーフを外すシルエットに向かって・・・。
______________________
それは数時間前のこと。
朝食を取りながらゾウ近くにいる、ローの仲間の話題・・・。
「ウフフ、噂じゃ紅一点がいるんですって?」
最近手に入れた情報だった。
私がそう言うと彼はなぜか言葉を失い、帽子で表情を隠したように見えた。
「・・・あぁ。いるにはいるな。」
「へぇー、意外!ね!どんなコなの?」
「なにぃ!かわいいのか!?」
彼がなんて答えるのか、ルフイ、ゾロ、フランキーを除いて皆興味深々ね。
ローはなぜか、黙々とサンドイッチを頬ばってるゾロにちらりと目をやった。
「体は弱いが気が強い・・・ある意味、鉄のような女だ。」
「プッ・・・!鉄? なぜ”絹の美少女”呼ばれてるのかしら。」
「おお!美少女!!?クソ羨ましい!!!」
「・・・外見と中身は違うってことだ。」
「”絹の美少女”・・・!ぱんつ、見せてくれるでしょうか・・・。」
ぼか!いい音でナミが骨を砕く勢いで殴ってた。
ローがその様子に密かに小汗をかいていたのは黙っておくわ。
「”絹の美少女”は知らないが・・・
昔、”魔性のロリータ”とどこかの船長が云ってたのは知っている。」
「「「 ・・・魔性? 」」」
意味深ね _____どこかの船長ってことはその彼女も
船から船と・・・渡り歩いているのかしら・・・。
「ところで____ニコ屋、その情報の出所が知りたい。」
「海賊が立ち寄りそうな酒場で偶然耳にしたの。」
___ オイ聞いたか、死の外科医の船に女が乗ってたそうだぜ
___ 人質かなんかじゃねーのか?でなきゃありえねェ。
___ なんでも、写真とろうとした海軍のヤツがその場で
胸をギュっとわしづかみにして死んじまったらしいぜ____?
___ まるで九蛇の女帝じゃねーかよ、こえーな!
「________ってね? どう?」
「・・・あながち間違っちゃいねぇ。」
「人質!?ちょっとあんた!どういうことよ!?」
「お前・・・!
どこから攫って囲ってやがる!答え用によっちゃ許さねェぞ・・・!?」
フェミなコックさんは背後に炎を背負ってローに迫った。
カワイイ子を攫って囲うなんてきっと羨ましいのね。フフ
「落ちつけ、黒足屋・・・確かに攫っては来た。治療目的でな・・・。」
「ぁあ!? 治療!? って・・・お前。」
「借りもある・・・仕方ねぇだろ。」
「そ、そんなに悪いの? あ・・・!?」
「!?」
「おわ!」
朝食時を狙ってくるなんてね。砲撃で船が大揺れ。
肝心なところは海軍に阻まれてしまって、そこから先は聞けなかった。
_____________________
『 余計なことをしたか? 』
「____________!?」
「なに___ あの・・声・・・・?」
そのメッセージに彼らが違和感を覚え、
ルフィが手を振ったその影を凝視したのは言うまでもなかった。
「アンジー!こっちもOKだよ!」
(アンジー・・・?)
白クマの声を合図に彼らもパラパラこちらに戻ってきている
そしてようやく・・・その姿がはっきりとわかった
クルリとエモノの持ち手を変え、耳障りな音がせぬ様に静かに背中の鞘に納めた女は。
相変わらず袖なしのアオザイ姿、濃紺に映える白いパンツが実際より背を高く見せていた。
栗色だった長い髪は心なしか前より色がうすくなった気がする。
ふわりとかぶさる前髪から伏せがちな目が見えた・・・なぜ、俺を見ない?
「全員揃ったようだな・・・ベポ、用意しろ。」
「アイアイ!」
トラファルガーがクマにそう言った後、チラリとアイツに目をやった。
「・・・アンジェラ、案内してやれ。」
『 こちらへ 』
スタン、と俺たちの前に降りてきて中へと誘導する・・・ヒト違いか???
エロコックが彼女の前に立ちふさがろうトコロ、スイと事無げな足運びで先を行く。
「アンジーちゃん、足速ぇ・・・!」
「オイ・・・・!」
「なんだ!テメー!」
「アイツにストレスを与えるな・・・!」
「ぁあ!?どういうことだ!」
もう勝手に名前を覚えやがって。
コソコソとヤツに云った声など丸聞こえだろう。
案の定アイツは斜めに顔を向け、俺だけに声を飛ばしてきた。
”ロロノア、心配するな。前よりは少し、丈夫にはなってる”
間違いなくアイツだ。
前を向いた勢いで、かぶさり気味な前髪が一瞬浮く。
その違和感がなんであるか2,3秒解らなかった。
「お前・・・・その目!?」
『 ____! よせ、見るな・・・! 』
つい、腕を掴んで前髪を手のひらで掬いあげていた。
咄嗟のことでアイツも俺の目を___見開いて見ちまったんだ。
「あ・・・・・・・!」
瞳の色が違う_なんて浅く・・・”美しい”としか言いようのない紫色。
「なんで・・・!ウ・・・!?」
「あぁ・・・・・!見えちゃったーーーーーーーーーーー!!」
認識するかしないかの僅かな間、胸が鷲掴みにされたように痛み思わず膝をつく。
俺だけじゃねぇ、
エロコックなんぞは鼻血で逆行、甲板に吹き飛んでアタマ打って大の字になってやがる。
(いつものことか!?)
『 見るなと言ったのに。目を閉じて、呼吸を整えるんだ。残像を消せ。まだ間にあう 』
「どういう・・ことだ・・・・!?」
云われた通り、やってみると少しは痛みが治まってきた。
サンジが甲板に打ち上げられた音で気づいたか、
更に青い顔でアゼンとして見てる仲間をかき分けて外科医が戻って来た。
俺は痛みより怒りの方が先立ち、何かを知っているであろう男の胸ぐらを掴んだ。
「てめェ・・・!一体アイツに何をしやがった・・・!!」
「・・・!」
『 よせ、ローは私を救っただけだ・・・怒るな 』
__________________________
ロロノアが激昂したのは仕方ないのかもしれない
ローが・・・独断でしたことは、私にとって有益なのだろうが
リスクがないわけでもない__それもまだ解らないが・・・。
恐らく、ロロノアの怒りはこういうことだ
まかせた筈の男がいたにもかかわらず・・・なぜ、
最悪の世代と言われるうちの、最も危険な男の元にいるんだ?と。
「・・・どこかで会ったような気がするわ?えっと・・・。」
『 アンジェラスだ、ここでは病み気味な船長のオモリと鍼師をしてる 』
「お前な・・・!」
ダイニングに入った一行の、黒髪の美女が訊ねたので云っといた。
ローはギリリと口を歪ませたが、それはいつものことだ。
それより、
女2人のイスを素早く引いているサンジという男の鼻の下の長さ気になって仕方ない。
『 記憶にはないが、おそらく手配書を見たのかもしれないな 』
「オイ・・・!アンジェラ・・・!」
「なによ、トラ男君。隠すことないじゃない?どうせ賞金首・・・エ?手配書?」
かわいい人が、私を制止したローをジロリと見てからキョトンとしてる。
向こうの船長もえらそばって彼の肩をバン!と叩いて鼻息を荒くした。
「そうだぞ、トラ男!同盟なんだから隠しごとはすんなー?」
「ほーら云わんこっちゃねぇ。忠告した通りだろ!?」
長い鼻を持つのは・・・・なるほど。ふふ、そっくりだな。
何やら・・・賑やかな海賊らしからぬムードを持つチームで、
ローが苦虫をつぶした様な顔をしていた。
ペースを乱される事が嫌いな男だ、仕方ない。
「手配書って、まさか!この子、よその船から攫ってきた訳じゃないでしょうね!」
「違う・・・!」
「・・・そういえばゾロ。どういうお知り合い?」
「昔の知り合いだ・・・!」
”どうした、ハギレが悪いな。ロロノア”
”うるせぃ!お前絶対余計なこと云うんじゃねぇぞ!?”
ヤツだけに声を飛ばすとギロ!と睨みつけそう思ってる。
私はベポが配りに来たラテを受け取ると、
ちょうどヤツは時間差でコーヒーを口に流し込んでいた。
”無理やりキスした事がお前の云う、余計なコトか?”
ブーーーーーーーーーーーーーーッ!!
「ちょ!何やってんのよ!キッタナ・・・!もー、シミになるじゃなーい!」
「どうしました、ゾロさん!?」
「な!なんでもねぇ・・・!すまん・・・・。」
キレイな霧だった。我ながらいいタイミングだ。
しかし勝手に人の唇を奪っておいて、それが”余計なこと”だとは。
”フツーのジョシなら傷つくトコだぞ。それは。”
ヤツのオデコから湯気が出てるの知らんふり。ラテを啜りつつ
軽くかかったローへの疑いも否定しなければならなかった。
『 そうじゃない、もうリタイアしていたんだ 』
正確に云えば、あの人にリタイアさせれれていた。だが、
意識が戻らなかったんだ、無理もない。
__________________________
アンジェラ、ゾロ屋と何を話してやがった。
俺が気付かないとでも思ったのか?
今はベポと皿洗いをしてる、アイツの後ろ姿を俺は眺めて思った。
「でー?あいつー、アンコは何の実を食ったんだー?」
「アンコ・・・。 アンジェラスだ・・・!」
もごもごとテーブルのクッキーを頬張り続ける麦わら屋。
云っても理解できるんだろうか?
聞く気はあるんだろ・・半分諦めながら一応は云ったんだ。
「心臓を活性化させる”ドキドキの実”を食わせた。」
俺が、リタイアした彼女を診た時にはもう手の施しようがなく・・・
アレは最後の手段にと・・・手に入れて置いたものだった。
「寿命は知っていたが・・・持ち直すか、イチかバチかの賭けだった・・・。」
「 !? 」
___俺にはそれに逆らう必要があった。
「今のは聞き流せ、アイツはもう一命を取り留めたんだからな。」
それに関して、ゾロ屋だけが動揺せず目を瞑って聞いていた。
聞けば、奴が海賊狩りと呼ばれだした頃の知りあいとか・・・。
互いに昔の通り名を知った仲か。
アイツはいつも肝心なトコロを云わないから・・・興味はある。
「それにしても・・・あの子、あまり笑わないんだな。」
「 「 ・・・・! 」 」
黒足屋の言葉につい反応したのはヤツも同じか。
「鉄の女といったろ・・・? だが・・・あの実を食べて以来、
昔よりは笑うようにはなったぜ? ゾロ屋、そう思わないか?ククッ・・・」
「・・・・。」
解るヤツしかわからねぇのさ。
アイツが笑っているか・・・なんてな。
_____________________________
・・・あれを果たして笑うっていうのか?
刀を肩にダイニングから出て行った男の背中から、アンジーちゃんの方に視線を移す。
前髪で目を隠してるせいか、返って解りにくい。
さらっさらの、艶やかな栗色の髪
そして横から見えた、紫色した大きな瞳とあの・・・
マシュマロの様なぷっくりした唇だ
ナミさんやロビンちゃんの持つ魅力とはまた違う、
なんていうか・・・大人になる前の仄かなエロチックさがタマラン・・・!
「顔が崩壊しきってる上に鼻血でテーブルを汚すんじゃねぇよ!エロコックが!」
「ああン!なんだと!そういやお前!どーやってあんなコと知り合った!」
今思い出しても・・・ああ・・
胸が音を立てる。残像がかすかに残ってるだけでこうだ。
真近で見たクソ剣士なんかは思い出して股間がやべぇコトになってんじゃねえか?
「いっておくぞ、アイツは見た目とは真逆の女だ。」
「だーからどーした!ギャップも魅力のウチじゃ!アホ剣士が!!」
「チッ・・・心臓発作で逝っちまえ、色欲コックが・・・!」
「今、コソっと、なんつったー!テメー!!」
『 ん 』
「今の・・・なんの音だ?」
キュ!と水道を止める音と、あの子の声、チョッパーの声が重なる。
「 「 !? 」 」
見れば彼女、コックに手をやったまま動作を止めているんだ。
『 まずいな、大渦か 』
「えっ!? まさか!」
ナミさんが天候の変化に気づかない訳はない。
チョッパーと2人して慌てて外に飛び出していった。
俺たちはあの子の後ろに続き、甲板にでたんだが・・・。
「・・・・? アンジー、何ともないみたいだけど・・・。」
『 ログポースを見て 』
「あ!?な、なにこれ!」
『 強力な磁気を帯びてる。この海域の大渦はさして天候も変わらず起るそうだ 』
三つの指針はぐるぐると回りっぱなし。無表情なまま云う彼女と
あのログポースにまだ慣れていないナミさんはパニックになってた。
「 あ!? 」
「うぉ!!?」
「間に合わないよ!キャプテン!みんなー!しっかりつかまって~!」
潜水艦が急に向きを変えたらしい。
さっきの今だぞ・・・どうなってんだ・・・!?
「このまま突っ切って一時避難する!」
バン!
ドアを開けてローはまっ先にアンジーちゃんの腕を掴む。
「来るぞ。絶対、放すな。」と
切羽詰まった様子で自分の体の内側に彼女を囲い入れ、首に抱きつかせやがった。
その手があったかぁああああああああああ!!!!
「どこでもいい!しっかり掴まってろ!」
「ナミさん!ロビンちゃん、こっちだ!!」
「いやぁああああああああああああ!!」
トラ男が叫んだ後すぐに、船尾あたりに何か力が加わって大きく揺れ始めた。
俺は___手を伸ばしたが。
「なァに。俺につかまっときゃ~スーパー大丈夫!!」
「・・・あ。」
「エロコック!なにボーッとしてる!早くフランキーにつかまれ!」
ロ、ロボに負けた・・・・・。
「俺なんて、俺なんて・・・くそぅ!」
「床叩いてる場合か!サンジ~!!早くしろよっ!!」
_____________________________
「やたら急だもんな・・でも、なんとかなったみてぇだ・・・。」
「あァ・・・。」
「シシシ!なんか面白かったな!」
「よかった・・皆無事なんだな!っと・・・・・。」
おれも毛がビショビショになったけど、それだけで済んだんだからな。
でも___ その場でガックリ落ち込んでる、ナミとサンジ。なんでだ???
「うう・・・この先、またコレがきたら・・・!」
「ロボに負けるなんて。。。ぐそう・・・!」
アンジーがローから離れて膝を着くナミんとこへ行ってる。
何か云った後、おれの方を見たんだ。
『 心配いらない。動物的な耳があれば察知できる。タヌぽんに協力してもらえばいい 』
「え。そうなの!?」
「おれかーっ!?そのタヌぽんて!!!おれはタヌキじゃねぇ!」
『 だって・・・カワイイから___ ダメだったか? 』
ズキュン・・・!
あぅ! な、なんだこれ・・・!
コキっと首を傾げたアンジーがキラキラ、やたらカワイク見える・・・!
「バカヤロー、カワイイいうな!タヌぽんでも何でもいいぞ、コンニャロウ❤」
「しっかし、いい耳してんだなー。スゲーな、アンコ!」
「アンジェラスだ・・・!」
『 フフ、お褒めいただいて光栄だ 』
でも___けして顔は緩まなくて、言葉だけが笑ってるんだ。
さっきのローの言葉も気になる。”寿命”って言葉だ。
それと、アンジーが呟いたすぐ後で船が向きを変えたなんて。
「アンジェラ。いいから早く着換えろ、話はその後だ。」
『 そうだな。取りあえず部屋に行こう 』
女に気遣うことのないローが、神経質なぐらいにアンジーに構う。
今も話ながらゆっくり船内に戻って行く彼女らをイラついた目で見てるんだ。
「俺、あんなに女に優しくするローを初めて見たよ。」
「バカ言え__ 」
照れるでもなく、脱いだシャツをジャーっと絞ってる。
そして何か思いついたように俺を振り返ったんだ。
「トニー屋。同盟を組んだトコの、
医者であるお前には一応は云って置く。こっちへ来い。」
上半身ハダカのまま、ローは俺を船長室へといざなった。
奥からTシャツをかぶりながら戻ってくると
ソファーに座ってた俺の前にバサリ、いろんな資料を置いたんだ。
「俺にもし何かあった時、お前が診てやれるようにしとけ。」
云い方に不安を覚えた俺は兎に角、アンジーのカルテを手に取った。
15歳からの記録か、そこにはロー以外の医者の手記も加わってる。
「え・・・・・!?」
そこに、衝撃的な文字の数々を俺は見たんだ。
正直・・・こんなカルテも初めてで、気持ちも考えも整理できないでいた。
「アンジェラはまだいい___
アイツの、遺伝子上の姉でさえ15になる前に死んだ・・やはり肺炎でな。」
「・・・・・・・・・!」
to be continued