『 二陣は幾分レベルが高いようだ 』
「・・・数もな。」
___アンジェラは刺客ではあったが元々は純粋な剣士だ。
相手の技量を推し量る事には長けている。
サク・・・!と土を踏んだ音が聞こえたかと思うと
背中を向き合わせてた俺達に一斉に黒い塊が獣の如き速さで襲い掛った。
ザッ・・・!! ドッドッドッ! ザッ・・・、キン・・・!!
その位置に残った俺がギラリと一閃を放つ。
僅かな時間差で彼女とゾロ屋は左右に別れナイフと斬撃をそれぞれ見舞った。
成程、動きはアンジェラに近いものがあるが瞬発力、動体視力、太刀筋も断然劣る。
「な・・・!?」
増殖する気配に向きを変え柄に手をやった俺は、奴らの風貌に眼を見開いていた。
黒い塊に見えた奴らは全員が彼女と同じ、”仕事着”の黒いコートを着用してる。
『 良く出来てるじゃないか 』
「チッ、紛らわしいナリしやがって・・・!」
そればかりか似た背丈、髪型とその色、
以前のエメラルドグリーンの瞳の色で無理やり似せたL・ロゼッタ風と言った所か。
良く見ないまでもフェイクと判別は付くがゾロ屋が舌を打ったのも無理はない。
似た姿の女たちがごちゃ混ぜで所狭しと立ち回るせいで俺も能力を使いソビレちまう。
俺は最初アイツを診た時から、”意識のある間”には一度もそれを使った事がねぇ。
ヤツも同じ想いか、ムゲに大技が使えないと考えてはいる様だ。
堪り兼ねたかゾロ屋がとうとう苛立ちを吐き出しやがった。
「オイ!もう十分に温まったろ!?そのコート脱いじまえ!」
『 ・・・だな 』
彼女はそこから一刀のナイフも残さぬ様、後方に跳ねとびながら八方に投げ放つと
その身から一気にコートを脱ぎ捨てた。トン!着地したアンジェラの胸元がプルンと揺れる。
今度は俺が舌打ちだ。
(あのバカ・・・・!!)
「ンガッ!!! おま・・・!なんちゅう格好だァッッ・・・!!」
『 お前が脱げと云ったんだろ。急いていた、仕方あるまい 』
俺は眉間に皺よせ、これから起こるであろう事態を予測すると頭痛を覚えた。
アイツもまさかコートを脱ぐハメになるとは思ってもみなかったんだろうが
あんな格好をもし黒足が見たら別の流血騒ぎになるのは必然だろう。
それにあの女達にも余計な詮索をされそうで・・・・・、ここはサッサと片づけなければ。
「▽@▽#・・・!!」
「!?」
案の定・・・ゾロ屋の怒りの矛先が俺に向いた様だ。何が云いたい?
クルッと、真っ赤な鬼の形相でこちらを向いたかと思えばアイツの姿を指差し口をパクパクさせ、
俺に何か云おうとしてるんだが。どうも頭の中で言葉を組み立ててる最中か。
「ぐッ・・・・・テメェ!!アイツにあんなシコたまロリエロい格好させやがって!!
実はいろいろ着せ替えさせて楽しんでやがんだろ!!!!このエロ医者がッ!!!」
「ムッ! ・・・戦闘中だぞ、集中しろ。≪ROOM・・・!≫」
「しゅーちゅー出来るかァ!回し蹴りとか、回し蹴りとかッ!!!」
ヤツが憤怒してる、アンジェラのその”なんちゅう格好”というのが
スケスケな、薄いラベンダーカラーでホルターネックのベビードールなのだが
横から見れば、成長途中のDカップの胸のラインが露わになってて
背骨がクッキリと強調されて美しい背中、その右肩には___
タトゥでは発色不可能な紅い華とツタをあしらったかの大きなアザがあった。
チラチラ見える上向きの小さい尻もそうだが、後ろ姿がさすがにエロチック過ぎたか。
『 そんなに気になるなら金を払え。後でガッポリ頂く❤ 』
「テメ!エロの押し売りかーーーッッ!?」
無表情のままアア云うアンジェラには、その類の恥じらいがない。
しかし___あの様子じゃ、ヤツはあの華を知っていたと見える。
奴らの女達の露出度には何ら反応示さない男が・・・彼女のそんな姿には激怒すんのか。
(どんな関係だったんだ・・・?)
何故か、その事の方が俺をイラっとさせやがる。
『 ロー! 』
「・・・!!」
ガシャン!
ハッとなる、能力にかまけていた俺に目がけて手錠が飛んで来てた。
海楼石製のソレを、残っていた小柄で彼女が弾き飛ばして注意を促す。
「あァ・・・!」
___ゾロ屋も覚悟してるだろう、どれだけ湧いて来ようと
どうせ皆殺しだ・・・!
_____________
「________あッ!」
「なんだ!お前ら!?」
女の死体を担ぎ急いで通り過ぎようとしたベポが声をあげてる。
ルフィが声を掛ける間もより早く、そのヒト達は彼の行く手を遮ってた。
担がれた、うつ伏せ状態の女の肩から覗くのはあれは・・・タトゥー?
「見ろ・・・!このクマ、鬼っ子を担いでるぞ・・・!」
「「 「 ”鬼っ子”・・・・!? 」 」」
ざわめいたその連中は一斉にベポと私達を取り囲むとブルックを指差し慄いてる。
今度は”南蛮のバケモノだ”と口ぐちに云っては退いていた。
「オイ、ベポ!そりゃなんだよ!鬼っ子とかって言われてんぞ!?」
彼は私達同様、目つきの変わった連中にじり寄られながらもその遺体を放さず、
焦った様に周りを見渡し小声で云った。
「これはさっきアンジーを襲ったクローンだよ、キャプテンは解剖して調べるつもりなんだ。」
「なに!?アンコを襲った?アイツはどこだ!」
「えっとー;;;」
ベポは言っていいものか悩んでる内に、ついその方角にチラリと目をやった。
動物的なカンも持ち合わせてるルフィに解らないワケはない。
「いくぞ!ロビン!ブルック!」
「あ、待って!!」
「先に行って下さいな、すぐ追いつきますから。」
「ええ・・・!」
ベポの制止を振り払ってルフィは走る、私は暴走する彼を追った。
ブルックの”眠り歌”が後方で聞こえ出し、これでベポも船に帰れるだろうと
ホッとしたのも束の間、雑木林から響くあの物騒な音は刃のぶつかり合う音か。
「________メス・・・!」
取りだした沢山の心臓をルーム内で浮かせたまま一刀両断。
私達が駆け付けた時にはもう・・・そこは血の海で、ローがフィニッシュを掛けていた所だった。
ルフィが茫然と棒立ち___なぜか下着姿のアンジェラスを見て言葉を失っていた。
彼の仕事を横目にもせず、
平然と佇み、紫縮緬で手早く小太刀の刃を拭って鞘に納めてる彼女の姿だ。
彼らと背を向けてていたゾロでさえ、あんなに苦々しい顔で納刀してると云うのに。
「おい、早くこれ着ろ。」
『 ___ああ 』
ゾロが、あの模様を隠させるかに拾ったコートを手渡した。
(あれはもしや___だけど、一体なぜ?)
その、後ろ肩にはさっきの女と同じモノ・・・いや、デザインが多少異なるのと紅の色が別物か。
もっとも大きな違いはアンジェラのそれは右にある。
私たちにも気がついたか彼女はコートに袖を通すとこちらにやってきた。
『 迷惑を掛けた、ロロノアにも引き返せない状況を作ってしまった・・・申し訳ない 』
「テメェ!それ以上言いやがったら・・・!!」
「ゾロ・・・!落ち着いて。」
「オイ!トラ男・・・!なんでアンコにこんな事!!!」
「ルフィ・・・!!」 「よせ!アンジェラ!!!」
「「 !! 」」
私の声とローの声が重なる。
勢いづいたルフィの右腕が、ローへと一直線に伸びていたからだ。
居合わせた中の、彼女以外全員が言葉にならない驚きと一瞬の声にならぬ悲鳴が上がる。
「お前ッ!?」
ルフィを上回る速さでローの前に立ちはだかったアンジェラに
いくら途中で力加減したといっても一旦付いたゴムの反動は止まる訳もなく。
バキッッッ!!
___ ズサァァアアア!!
勢い良く後退する細い体、ふわりと浮く両腕。ローが咄嗟に庇い、
その体ごと後ろから抱き止めてブレーキを掛けなければ間違いなく吹き飛んでいた。
「・・・アンコ!!!そんなヤツ庇うなよ!!お前にこんな事させて、何が医者だ!!」
例え命の恩人であろうと、どんな状況であろうとルフィの怒りはただそれだけなのだ。
それよりもローはそっと解いた自分の腕の中の彼女を見やりワナワナとその体を震わせてる。
アンジェラスを片腕で抱いたまま、無意識であるかの様子で右手を浮かせ構え出した。
「・・・!」
気を失っても当然だった筈。その手首をガッ!と掴まれたローは瞳孔を開ききってる。
「少し待ってくれ」と言わんばかりに、硬い彼の腕を・・・彼女はやんわり解いたのだった。
『 彼は私の趣味に付き合ったまで・・・殴るなら悪趣味な私を殴ればいい 』
「アンコ・・・!?」
「 「 ・・・!? 」 」
ふらり、前に出たアンジェラスは前髪を掻き上げる。守った彼の腕も秒差で間に合わなかったか。
左目を腫らし、切れたコメカミから滴る血が目に入っているのにその目を閉じようとはしない。
いや寧ろ、見開いている。彼女の顔色は変わる所か、異様なある種の輝きをおびていた。
ルフィでさえそんな、まるで別人の威圧感を見せるアンジェラスに後退りしているのだ。
『 趣味を兼ねた
「「 !!? 」」
『 元を辿れば"萌えたがりのロリータ愛好家チーム"が創った
私は人を殺める事など何とも思っちゃいない、寧ろ、好き好んでいる 』
今、周りを見渡して言った彼女の言葉におかしな反応を示したのはゾロとローだ。
ルフィはその場に踏ん張って口を噛締めながら「ンググ・・・」小さく唸ってる。
「お前が殺し屋とか・・・そんな訳あるか!」
『 全く・・・、シャンクスの見る目を疑う 』
「シャンクス・・・!?お前知ってんのか!?」
『 知らなくはない。私の”前の飼い主”だ 』
「かい・・・ぬしだと・・・?」
飼い主と聞いて私は闘犬を想像してしまう。
四皇の所にいたと云うだけでも驚くのに飼われてたと云うその言い草もそうだ。
『 だが、こんな甘ちゃんな男の為に左腕を落としたとは・・・あの男がそこまで
アンポンタンだとは知らなかった。こんな
「シャンクスの悪口云うな!!いくらお前でも許さねぇぞ!!!?」
『 悪口?ホントの事だ。おまけに___大嘘つきだ 』
「・・・・!」
表情が全く変わらない彼女がバカにしてるかに顎を斜めに上げてる。それが伝わったのか。
______本気なの・・・!?
ルフィはそう云い放ったアンジェラス目がけて拳を振り上げた。
避けないツモリだ・・・彼女がグイと体を右に傾けたのに気付いて私はハッとする。
「やめて、ルフィ!!アッ!?」
「≪ROOM・・・!≫そこまでだ、もういいだろ・・・!」
その言葉はルフィではなくアンジェラスに投げかけられたのか。
私が声をあげた時にはもうローの術中に嵌っていた。
「あ・・・ああ!」
3等分にされた私達はオカシな感覚に見舞われ軽いショックを受けてる。
さらにショックなのは彼が、何故かゾロだけは手に掛けなかった事だ。
「ゾロ、お前!?」
「・・・アイツは俺にとっちゃ大事なダチだ。ちょっとばかし力を貸してやりてぇ。
お前が殴っちまった借りもできた。直ぐにナミたちが来る。それまで我慢しててくれ。」
すまねェ・・・! と、ゾロがそう言い残すと彼らと共に先へと行ってしまった。
ゾロの名前を叫ぶルフィに私は手を咲かせ、まず彼の口を塞いだ。
「いい加減、落ち着いて頂戴。アンジェラはわざと貴方を怒らせたのよ。」
「バニ!?(ナニ!?)」
to be continued