Riddle name   作:Keisan

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8.夜明けの蓮

 

 

 

”本当にいいんだな?___ロロノア”

 

急ぎ、苦々しい顔で応急処置を終えたトラ男が何かの薬を手渡してる。

それを呑み込んでたアイツが俺に声を飛ばして再確認しやがるんだ。

 

”あァ。・・・お前まさか、あんな三文芝居でロビンが騙せると思っちゃいないよな?”

”そうだな、だがお前にとっては大義名分がたったんじゃないか”

”お前____?”

”その性格だ、どうせ最後まで付き合うだろうとは思っていた”

 

相変わらず食えない女だ___

ムカツクぐらい・・・ただ単にトラ男を庇っただけじゃねえってのか。

よほど俺達の手を汚させたくないらしい・・・。

 

『 時間を取らせた、これでいい 』

 

昔、俺がやった黒いスカーフで左目を覆ってからまた歩き出す。

恐怖心が足らないせいで、この女はこんな事でも平然とやってのけるのだ。

感情が薄過ぎて俺の方が痛みを覚える時さえあったモンだ・・・。

 

「ところで、トラ男。アテはあるんだろうな。」

「・・・・ガセじゃねぇ事を祈っとけ___ 」

『 ・・・ 』

 

さっき夜が明けたばかりだ。

しかも類似クローンしかうろつかない様な森で一体どうやって・・・?

 

「男の名はサモン・ハルベルト、俺が探り当てた人物と一致してる。ここまではアタリだろう。」

『 ・・・・サモン 』

「・・・どうした、アンジェラ。」

『 どこかで聞いた様な名だ・・・ 』

「・・・・・・・・、アレを見ろ。」

 

ヤツが指さした先に、工場らしき建物が見えて来た。

アレは___リサイクル工場???ピタ、と彼女が足を止める。

耳を澄ましてる様だった。

 

『 監視カメラが作動してる。330m先、400、500・・今の所そこまでだ 』

「別にかまわねェ。ココをぶっ潰して、ヤツを消すだけの事だ___行くぞ。」

 

なんとなくだが・・・俺にはヤツが焦っている様に見える。

まぁ、ルフィたちの足止めもそう長くは持たないと踏んだか。

どうせあの2人も何か、脳内で会話してやがるんだろう。アイツの意を汲んでの事か。

 

「ダレの気配もしねぇな・・・。」

「あァ・・・。」

 

堂々と建物正門から入り、。その小奇麗な会社には警備員さえいない。

早朝のせいでもなさそうだ、定休日なんて看板が下がってる。

回転ドアを潜る、罠丸出しだと承知の上でだ。

 

「?」

 

朝に似合うBGMの流れる社内、簡易ドアの着いた各部屋にも誰もいない。

廊下をまっすぐ行くと、俺達はおかしな看板のドアに辿り着く。

 

【工場内、社長以外立ち入り禁止】

 

普通【関係者以外】って書くもんだろ。どんだけ関係者いねーんだ;

あまりのわざとらしさしさに、俺達がそこに立ち入るのは当然だろう。

 

『 「 「____!」 」 』

 

不自然に重いドアを押し開けると一変、薄暗い水族館の様だった。

人が2人が入れそうな大きさのカラの水槽がいくつも並んでる。

実験室から聞こえてきそうな、コボコボと音が静かに鳴り重なる以外なんの音もない。

 

『 以前のイヴの、3分の1の大きさだな 』

 

アイツがそう云う。生き残りである男は量産率を優先したのか?

それに何だ、___甘い感じのこの匂い?

工場内は常識的にどこでも火気厳禁のはずがあちこちに煙を上げる香炉がある。

水槽のブルーライトと煙のお陰で部屋は更に不気味に出来上がってんだ。

咄嗟に自分の手拭いを、横にいるアイツに突き出した。

察してそれを受けと取ると直ぐに目の下からそれで覆ってる。

 

「お待ちしておりました。あぁ、まずはお礼を言わなくては___。」

「 「 『 ・・・!? 』 」 」

 

奥まで進むとデスクが1つ。誰か座ってやがる___気配はなかった筈だ。

 

「サモン・ハルベルトか・・・礼を言われる筋合いはねェだろ・・・!」

 

トラ男が声を発すると男は静かに席を立つ。

細身の体に、礼服であるかの真っ白いスーツ、切れ長の涼しい目。長い黒髪を束ねてる。

科学者と云うイメージが似合うというなら色白な、女の様な顔立ちってとこだけだ。

 

「貴方がたに差し向けた女たちの処理をしてくれたでしょう?」

『 不良品処分か、リサイクル工場が聞いて呆れる 』

「おぉ・・・・・・・。」

 

「「 ・・・! 」」

 

そう云ったアイツに感嘆の声をあげて近づこうとしやがるから俺もトラ男も前に出てた。

パッと、ライトが着く・・・ただ、空の水槽の数だけが目立つ室内。

ヤツの頭上には大きなこの島の地図がある、点滅してる赤い点がかなりの数で集中している。

あれはどうやら女達に付けていた発信機か。それは俺達が居た場所で絶命した事を示してた。

 

「好みが変わったのか?お前の好きな香を焚いたんだが・・・顔色が優れぬようだ。」

「アンジェラ!?」

 

ヤツから目を放せなかった俺達は彼女の異変に初めて気付く。

フラついてる・・・意識を保とうと双蛇丸に唯一残った小柄に手を伸ばして・・・!

 

「伽羅か・・・!? この匂いだ・・・!」

「なにィ?」

 

トラ男は声を荒げ、今にも自分の太ももを刺そうとしてる彼女の手を掴んで肩をキツく寄せた。

俺達にはただの強い匂いでしかないが、嗅覚もいい彼女にとってこれがどう作用してるのか。

まったく非道さを感じさせない、爽やかな笑顔のハルベルトを俺は睨みつける。

 

「一体何をしやがった!?」

「いいえ?何も。私はただ・・・DNAの記憶に呼び掛けただけ・・・!」

 

トラ男の顔色が変わった___

 

「何だと・・・・・!?」

 

_________________

 

 

奴らの船も危ないってんで夜明けまで留守を任されたが

アンジーちゃんが心配で居てもたっても居られなく、

帰って来たベポをを散々脅して彼女らの向かった先とその目的を聞き出したんだ。

船はヤツに任せて俺とナミさん2人は飛び出して来たんだが・・・追い着いた現場の酷い事。

 

「こっちだ!ナミ!サンジー!!」

 

何かトラ男とモメたのは一目瞭然、あの野郎!ロビンちゃんまで!!

バラバラのルフィ達をくっつけてる最中、

空から現れたフランキー達。クード・ブーで此処まで飛んできた。

 

「ヨー、待たせたな!足止めくらっちまった。」

 

着地すると慌てた様子でウソップ、チョッパーが降りて来て言う。

 

「クサ!!!? なに?」

「みんな!大変だ!G-5が来てんぞ!!」

「 「「「 海軍!? 」」」 」

「あぁ、どうも嬢ちゃんが俺達と一緒だとバレてんじゃねーか?」

「まーたアイツらかよーヒツケェなぁー;」

 

もうやっちまってるかもしれねぇ・・・俺達は急いでそこへ向かう。

そしてやっとあの惨事後の経緯をやっと聞き終え、俺もベポに吐かせた事をやっと話せた。

 

「アイツ・・・!先走りやがって!!」

「じゃぁアンジーは自分のケンカに手を出させない為に?」

「トラ男にさえ黙って出て行ったのもそう云う事か。全く、どこまで頑ななんだ・・・。」

「ここに来る途中、物騒な格好した村人が話してるのを聞いたわ…!」

 

ナミさんはさっきあった事を思い出すのも腹立たしい様に顔を険しくしてる。

怒りに燃える、そんなナミすわぁんもステキだ___!

 

”鬼っ子を退治すりゃ、一体10万ベリー貰える上にハルベルトさんの力になれるんだ。”

”よそ者に手柄を横取りされてたまるか、あの人に寄付をケチられると困るからな。”

 

「殺してまでお金が欲しいなんてどれだけ浅ましいのよ!ここの人間は・・・!」

「まるで落ち武者狩りね・・・。」

 

此処の貧しい村人にとっちゃ10万はでかい額なんだろう。

【ハルベルト・リサイクル工場】の経営者であるその男こそが

焼き払われた研究所の、たった1人の生き残り・・・ワノ国出身の高貴な家柄の男だと云う。

島への莫大な寄付で”イイヒトだと”信用を買い、村人を騙してやがるとは・・・。

退治=殺すって事だと察したナミさんの逆鱗にふれ、奴らが黒コゲになったのも当然だ。

 

「あの子もトラ男もゾロもどうかしてる!何も殺さなくたっていいじゃない・・・!」

「ナミ・・・、アンジェラはイヴに関わる物全てを封印したいんじゃないかしら。」

「ああ・・・俺もそう思うな、解らなくもねェ・・・。」

「俺もロビンちゃんやフランキーと同意見だ。

アホ剣士だって理由のない殺しを手伝うほどバカでもないだろうしな・・・。」

 

ルフィが神妙な面持ちで呟いた。

 

「なぁ・・・アイツ、悪いヤツなのか?」

「アンジーには・・・時々こう云う事が必要なのかも・・・。」

「え・・・?チョッパー?」

 

つい、立ち止まる。あの惨状を見てた時もいつもと様子が違うとは思ってたんだが・・・

皆の言葉にさっきから口を食い縛ってたチョッパーがやっと言葉を発した。

 

「俺・・・アンジーの前の船医が書いた記録、トラ男に見せて貰ったんだ・・・。」

「シャンクスんトコのか・・・・?」

 

《" 獣道を歩ませたくはなかった "___養父でもあるあの男が船長に漏らしたと聞いた。

それもアドレナリンが、丈夫じゃない彼女の栄養剤になっていると疑うまでの話しだ。

確かに逆説かもしれなかった。

本人にとっては不本意極まりない話であり、

彼女を慕う者達にとっては絶望的な仮説に過ぎないと前置きする。

以前は___ストレスを溜めていたんじゃないかと思う。

ピッツバウントで一度目の破損を経験した彼女にはそれ以降、リハビリ程度の依頼しかなく

暗殺者として1人1人片付けるだけではあの遺伝子の事、足りなかったと云う事か。

この船に居れば程ほどの戦いが出来る。彼女の血は今の所、満足しているのではないか__?》

 

「《もし事実であるならば・・・この先も、あの娘に平穏な日々は送れないだろう》・・・って・・・。」

 

「 「「「「 !!? 」」」」 」

 

「じゃあ・・・アイツが暗殺者ってのは本当なのか・・・!?」

「チョッパー!!お前、なんでそんな事黙ってたんだよ!!」

「バカ!チョッパーは医者だぞ、守秘義務ってやつだ・・・だが、これでハッキリしたな。」

 

 

俺は煙草に火を灯し、想う。彼女にとっては不本意極まりない・・・そうだろうとも。

好きで人殺しなんてするわけがねぇ・・・!

不幸にもそんな風に創られて生れ、体も、運命をも弄ばれたアンジーちゃんが願うのは

自分の様な人間をもう一体たりとも造らせない事、それは即ち”第二のイヴ”の破壊だ・・・!

 

「あれか__。」

 

走り、行きついた俺達が見据える場所___

 

【ハルベルト・リサイクル工場】がその先に見えて来た。間違いはねぇ。

 

 

_____________________________

 

 

 

「お前は一体・・・!?」

「ウフフ、嬉しいな。彼女の純粋な血のDNAはしっかり引き継がれてる・・・。」

 

___俺にはヤツの云っている意味がわかった。

 

マズイな、肺が弱いアンジェラをこの場に長居させられねぇのも当然だが

痛い、苦しい、とも云えない彼女が腕の中、肩で呼吸をしてる。

それだけじゃない____今コイツを苦しめてるものは

”オリジナル”である女の記憶だ。あの香りを引き金に細胞の中で暴れ始めてるんだ・・・!

 

だが”オリジナル”を知る存在だと?

馬鹿な、あの流行り病の治療法が見つかったのは50年ほども前だ。

ハルベルトはどう見たってせいぜい30前半そこそこで、知っていると云うには若過ぎる。

 

仮にそうなら、今この状態でヤツに触れられればアウトだ___

この状態じゃ無意識に読み取ったアンジェラは完全に覚醒する・・・!

 

「・・・・・・・!?」

 

最悪のシナリオを頭の隅で想定してると、香炉じゃねえ煙が俺達の間に割って入る。

なんでここに・・・・!?たちまち煙はその姿をゴツイ人間へと姿を変えた。

 

「白猟屋・・・!」「スモーカー!?」

「・・・随分大事そうに抱えてるそのケガ人はなんだ?トラファルガー!」

「ロロノア・・・!アナタには場違いなリサイクル工場で何するつもりだったんですか!」

「クリーンじゃなくて悪かったな!!つか、オメーに関係ねーだろがッ!」

 

とんだ邪魔が入ったもんだ・・・、白猟屋はグリーンピット以来、行き先は知らない筈。

とすれば、2重に情報を流した者がいる。・・・どう云うツモリか知らネェが、やってくれたな。

 

(青キジ・・・!)

 

「うるせぇぞ、たしぎ。ほう、科学班からの手配者とも早速会えるとはな。」

「サモン・ハルベルトですね・・・!?」

 

俺も丸っきりヤツを信用してた訳じゃない、想定内ではあった。

幸いアンジェラの顔は今、片目も、目から下も布で覆われすぎて人相が解らねぇ。

奴らのあの様子だと青キジは俺達だけの情報を流したか?

 

「海軍のG-5・・・フフ、だがこれは一族の問題・・・。放っておいて頂こう。」

「・・・・・!?」

 

科学者達が、あのアザに拘った理由がそこにあるのか???

俺の手は彼女を放すまいと一層強固になる。

ヤツは自分以外、全て無視してアンジェラに向き直り、こう云った。

 

「あの夜明けの蓮は___特に美しかったな、紅鬼(コウキ)、いや、瑠依よ・・・。」

 

「「 「「________!? 」」 」」

 

その言葉を投げ掛けられたアンジェラの体が・・・・ガクン!と揺れた・・・・!?

 

 

 

 

 

to be continued

 

 

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