Riddle name   作:Keisan

9 / 12
9.ピッツ・バウンドの惨劇

 

 

 

________ まだ、暖かい・・・・・。

 

パチパチと音を立てる炎、開け放った襖からの熱風、時折何か崩れる音が頭上辺りに聞こえる。

畳の上に伏せられた体のその首に、そっと手で触れていた。

劫火の中にあるこの一室で果てられたせいなのか? 否・・・違う。

絶命したその白拍子の体は依然柔く、肩をお貸しすればその手から剝き身の脇差が抜け落ちた。

 

「・・・・・・・お許しを。」

 

間に合わなんだ・・・。暇を出されたとは云え、

そのお覚悟があったとは云え、決して許されぬように思えた。

 

何とか屋敷の外までお連れすればその背後から、今まで耐え忍んでいたかに

バキバキ、ガラガラガラ!と柱の焼け落ちる音や瓦の崩れなどの激しい音がする。

足元に転がる屍が邪魔であった。流石にそこまで計算しておらなんだ。

折重なる所を避け、段差を踏み越えながら池の麓まで辿り着けば

視界の隅で、焼け落ちる屋敷と点々と続く遺体の数を見遣り茫然と立っているあの忍がいた。

 

「瑠依さん、あんた・・・。」

 

眠らせて来た筈が薬の効きが悪かったらしい。急ぎ、私の跡を追って来たのか。

 

「直に夜が明ける」

「え」

「あの花が咲くのをご覧頂きたくてな。」

 

腰を落として、硬くなってきた白拍子の体をやっと抱きかかえて座った。

初めて嗅覚が戻った気がしたのは衣装に焚かれていたであろう、あの香りを感じたからだ。

 

夜明けと共に、水面が明るく照らされて行けば______

 

 

 

___ジェラ・・・・!

 

「アンジェラ!しっかり気を保て!!!」

『 ・・・・・・・・・・!! 』

 

居眠りから揺り起こされた様な感覚・・・体がギクリとしてる。

今のは何だ____ 目の前の状況は先ほどと何ら変わってはいないと云うのに。

 

「・・・・・!?」

 

ローの腕がキツい程

体に食い込んでいたせいで、した事のない”震え”が伝わってしまった。

いけない、彼を焦らせてしまう。必死にそれを押さえようとすれば呼吸が荒くなる。

 

(息が・・・・!)

 

ドカン!!!

 

「 「「「 !? 」」」 」

「アンコ!トラ男!ゾロ!!どこだァー!!!」

「来たな・・・、麦わらァ!!」

 

壁向こう、爆音の次にルフィの怒鳴る声が聞こえた。

バカだな____なんで来たんだ・・・・?

 

「≪ROOM・・・!≫」

「チ!たしぎ!お前はアッチで奴らと合流、麦わらを迎い討て!」

「は、ハイ!」

 

煙になるや、ローの”部屋”から部下であろう女を追い出し、

その背後から襲い掛ろうとするスモーカーをロロノアが阻んだ。

十手との鍔迫り合いでは相当な力が加わっているかの耳障りな激しい軋む音がしてる。

 

「ロロノア・ゾロ・・・!!」

「邪魔はさせねェ・・・!残念だが俺は能力者じゃねェぞ・・・!?」

「≪タクト・・・!≫」

 

メリメリと音を立て次々と水槽が地面から剥がされ、天井にブツケられて行く。

分厚い筈のガラスが小気味いい位に次々と割れ、砕け散って行った。

 

「ジャマだ!海軍!!どけ!!!」

「ルフィ・・・!気を付けろ!こっちにはスモーカーもいる!」

「解った!!」

 

雪崩れ込む麦わらの一味。ロロノアがそう叫ぶと、だだっ広い工場内の反対側で

ロビン、チョッパー、ブルック、ウソップが海軍を足止め、

ルフィが大きな拳を叩きつけ、フランキーが爆撃し、ナミが雷を落とし、サンジが蹴り回してた。

 

「アンジー!!」

『 ・・・・・!? 』

 

ベポ、ペンギン、シャチ、・・・それにジャンまで。

派手に飛び込んで来たウチの連中は海軍を蹴散らしながら怒鳴ってる。

 

「お前な!俺達が寝てる間に何やってんだよ!」

「仁義の意味をはき違えてんじゃねーよ!少しは頼れ!バカ!!」

「お前の作ったホットワインが呑めなくなったら俺は困る!!」

 

それを横目に、ニヤリとするロー。あ・・・・・何だろう。味わった事のない、何か。

同時にそれが何であるか言葉で表現できない、このもどかしさ・・・・。

 

「乱暴な事をする・・・流石は海賊・・・・!」

「 『 !! 』 」

 

ザッ・・・と湧き出て来た女剣士達は___この何年かの・・・ヤツの集大成?

確かに、私と力比べをさせた様なさっきの連中とは違う。

私もやっと呼吸が落ち着いた。そして、いつもより余計に血が踊るの感じてる。

 

此処の、味方であろう全員に声を一斉に飛ばした。

 

”これより、女達とのケンカに一切の手出し無用____”

 

「アンジェラ・・・・!!」

「....止めろ、アンコ!!なんか他に・・・!ねェのか・・・・!!」

 

ロビンとルフィの声が微かに耳に届いた。

 

”この技術を一片でも残せばベガパンクの新しい武器に利用される。解ってほしい”

 

「コイツにエモノを・・・!!!」

「・・・・アイアイ!キャプテン!!!」

「駄目だ・・・、やめろ!」

「殺らせてやってくれ・・・!!ルフィ、皆!」

 

「 「「「「 ゾロ・・・! 」」」」  」

 

「コイツは・・・そいつら科学者に、涙腺イジられて泣く事も!表情筋に手を加えられて笑う事も!

感情の70%削られた上に・・・声さえ奪われてんだぞ・・・!!! そんな事、許せンのか!!?」

「・・・・・・・・・。」

 

ゾロの叫びがコダマする・・・・一瞬海軍でさえ戦う手を止めてる。

ふとローを見上げれば、眉間に皺寄せ何か感情を押し殺してる様にも見えた。

 

「酷過ぎる・・・・!!! そんな事が・・・・・!?」

「なんて酷ェ話だ・・・!」

「何だよ、それ・・・!女の子の特権ゼロじゃねーかよ!!!」

 

たしぎと云う女が呟き、G-5の連中があちこちで鼻をぐずらせてる。

私にとっては普通な事が、人には時折”憐れ”と映るらしいのは知っていたが・・・。

 

「アンジー!これ!!!」

 

彼らの声が沈黙したと同時にローの叫びにベポが応えたかと思えばブン・・・!

ベルトごと飛んで来た私の柳葉刀である対の”龍鳳”は多勢向きだ、気が利いてる。

ローが腕を解き、それを素早く肩に装着してくれた。

 

「此処で散る事は許さねェぞ・・・、行って来い・・・!!」

 

可笑しく思う・・・ローはそれを誰から聞いたのだろう?

そう云えば・・・、あの船で誰かに教えて来たっけな。

 

《剣士たるもの、花であり雑草でなければならないんだ。

"敗北"と云う旱、"自信"と云う水があってこそ育ち、散る事を恐れずに咲ける》__と。

 

私がいざとなれば彼女らと心中しかねないと読んだのか。

 

『 まだ蕾もついていない 』

「フ、肩にデカいのが咲いてるじゃねェか。」

『 フフ、そうだな 』

 

意味シンだな、この花が散るとは。だけどまだ・・・死ぬ訳には行かない。

剣士としては同等だと測り得た相手だ、油断と過信は己の最大の敵・・・。

全神経を集中させる___

 

『 _____ 参る 』

 

「 「 !! 」 」

 

ザ!と走り出す。一気に”龍鳳”を引き抜くと彼女らの目の前、

少し姿勢を低く頭を下げ両刀を前へ、ブン・・・!と大きく振り払う。

 

『 《Samael Edge》・・・!! 』

 

スモーカー、そして対峙していたロロノアが一瞬、こちらに目をやった。

横一閃、一瞬だけ黒い煤の様な影が大鎌に見える・・・スパン!スパスパスパ!スパッ・・・!

 

「ヘッ・・・!やるじゃネェか・・・!」

「・・・・・・・!!!?」

 

ノーマークの所業にスモーカーは顔色を変えた様だ。僅かな隙にロロノアが弾く。

一度に十数人の色のない表情をした女達の首が、鈍い音であちこちに転がり落ち

その1つが彼自身の足元にまで及んだせいか。

 

己の体にも負担を招く、滅多に使わない技・・・あまりに残虐で好んでは使わない。

だがこれで3分の1は減っただろうと思われた。

 

体力を温存する為、敢えて”剛の剣”は使わない。

オンナジ体の作りだとすれば自ずとその弱点も見えてくる。

彼女らは”それ”しか知らない、”オリジナル”の女がそうであった様に。

だが、私は違う。

 

"その闘争心がアダになる"と・・・・

まだ幼い頃、あの人が私にそう教えた事をこんな時に感謝しているとは。

 

 

_______________

 

 

 

"・・・柳に風折れなし、柳の枝に雪折れなし・・・あれがロゼッタの柔の剣だ "

 

俺はこんな時に、赤髪屋の言葉をふと思い出していた。

どんな豪剣でもサラリと受け流す技量、受けた力を逆に生かす技・・・。

見た目の優美さとは裏腹にその刃は冷たく、迷いがない。

いつもながら寒心するのは殺気がねェことだ___

 

一度だけシャ!!と血を振り払うと素早くまた元の位置でスイと構え、間を詰めた。

軽く、柔く、ムチの様な撓りでその手と一体化したかの柳葉刀を見事に操る。

 

相手の背丈も似通ったもので、その内の一人の肩を軽く踏み台に跳べば斜めに1回転、

両手首でぐるりと回された刀はきれいな弧を描き、着地するまでにまた首を刎ねて行く。

 

「誰の影響だ・・・?太刀筋が全く違う・・・・!」

「カビの生えた様な昔の女と一緒にするんじゃねェよ。」

 

俺は此処にある全ての水槽を叩き壊すと呆けているハルベルトをより一層睨み付けてる。

 

姫袖の黒いコートで舞い踊る死神は

_____"シビトバナ"と謳われた政府スジの暗殺者には相違なく

 

間違っても、テメェの求める女じゃねぇって事だ___

 

「貴方が今の飼い主か・・・・!?」

「バカ云ってんじゃねぇ・・・それよりテメェは何者なんだ。」

「主、とでも申しておきましょうか・・・。」

 

イカレてる____つい口元が緩んじまった。その女がどんな女だったかは知らんが

アイツが俺に飼われる様なタマに見えるとは、ますます不憫なヤツだ・・・。

 

「質問に答えろ。なぜ・・・、あのアザを全員に付けさせた?」

「・・・我一族の医療班が開発した治療薬を使い”オリジナル”はその試薬で救った第一号。

財政難を抱えていた我一族を復活させたシンボル、繁栄の象徴でもあったからですよ。」

 

ハルベルトは一枚の写真を手に、語る。

 

「あの研究所にはそういう依頼で多額の出資もしていた。ところがオタクな所員達は

”完璧ではない”と云訳し、何体ものイヴの子を創りだした。魅入られたのかもしれない。」

 

ピッ!とそれを俺に弾いてよこした。

 

「・・・・・!!!」

 

軽石の様な岩に全裸で横たわる少女、その体には全身にあの紅い華が咲いていた・・・。

顔までペインティングされたアートかと思うぐらいゾクリとする・・・美しさ。

 

「そして一族の意に反して勝手に商品化するという暴挙にでた。

自分達の偉業を世に知らしめたくなったのでしょう、だから始末したんです。」

「・・・・・お前が村人を焚きつけたか。」

「フフ、だが予想外の事が起きた、彼女を連れだす筈の男まで殺されたお陰でね・・・。」

 

『 私をどうするツモリだった・・・分解か 』

 

アンジェラは全員を始末し終え、フラリとこちらに向き直った。

 

「オイ!テメェッ・・・!!?」

『 ・・・・・・・・・グ! 』

「「 !! 」」

 

煙りがゾロ屋から彼女の背後に移ると羽交い締めする形で喉元に十手を付き付けた。

ハルベルトが初めて顔色を変えた、スモーカーの乱入。

 

「成程な・・・・、MISSINGの正体はイヴの子だったか・・・・!!」

「スモーカーさん!!!?」

「わぁ!?スモやん酷ェ!!鬼だ!!」

「黙れ・・・!お前ら、コイツが何者か知ってんのか!?」

 

「 「「「 エ・・・・・。」」」 」

 

「CP9候補生だった当時12歳、ピッツ・バウンドでは異教徒200人余りを暗殺・・・!

あの事件が惨劇と呼ばれるのはコイツが自分より幼い子供達まで手に掛けたからだ・・・!!!」

 

「 「「「「「「 ・・・・・!! 」」」」」」 」

 

海軍の奴ら殆どが何故、彼女が探されているかその理由を知らされてはいない。

ましてピッツ・バウンドに関わった事など。

 

「だからなんだ。ヒトとしてその女を許せないって云うワケか?可笑しなもんだな・・・!」

 

麦わらの一味や海軍が驚愕してる中、俺は独り呆れて大きな溜息をロコツに吐いていた。

そんなのは知っているウチには入らねェ・・・。

大将クラスでも権限がないと云う資料だ、所詮はその程度か。

 

「知らネェなら教えてやる・・・あの事件に”L・ロゼッタ”を指名したのは五老星達だ・・・!」

「・・・・・!!!?」

「マズイぞ、スモやん!!その子を放してやれよ!」

「そうだぜ!アンタが処分を受けちまうよ!!」

 

「・・・・部下の方が利口だとは笑わせる。

政府公認の委託暗殺者が何人殺そうがそれがお前ら海軍の云う正義なんじゃねェのか。」

「コイツも今や海賊だろうが・・・!?」

 

「その前に、俺の患者だ・・・!! コイツが今、俺の治療を受けてる事も、

嘗ては赤髪の船に乗っていた事も、センゴクや五老星らはとっくに知っている・・・!」

「何・・・・・!!?」

 

そうだ___知らないのはお前ら下っ端だけ・・・。

奴らはどう云うワケかベカパンクにその情報の開示を伏せてるフシがある・・・・。

 

「まだ解らねェか? MISSINGに関しちゃ、お前が私情を挟む余地のねェ話だって事だ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定