繋ぎ目の光陰   作:蛙野 心

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閑話 モブ兵日記

 モブ兵くんプロフ

 男、21歳。実家は果樹栽培をやっている農家。しかし次男だったことと、戦争の煽りを受けた不景気から軍へ。一応職業軍人。訓練所での成績は中の下。桃が好き。

 

 

 ✕月3日

 

 今日、実家から桃が届いた。めちゃくちゃでかい大箱で、だ。確かに俺は桃が好きだが、だからと言ってこんなにあると困る。仕方が無いので、同室の奴らにも振舞った。評判は上々だった。当然だ、俺の故郷の桃は旨い。

 

 が、それでもやはり半分が限界だった。男6人でも、甘い桃となるとまぁこんなものかもしれない。オオムラはいっぱい食ったんだがな……てかあいつ、あんな食った後にめっちゃ晩飯食ってたな。どーなってんだ。

 あ、そうだ、良い事を思い付いた。明日、新兵の部署が発表になる。配属される部署はまだ分からないが、そこの人達に桃を振舞ったらどうだろう。部隊ともなればかなりの人数が居るんだろうし。

 それにしても、俺はどこの部隊に配属になるのだろうか。第一大隊はまぁ無いだろう。あそこは特に成績の良かった奴が行く所だ。俺は平々凡々を絵に書いたみたいな成績だったし、第一夜間演習でとんでもない事をやらかしたりもした。あん時の教官、怖かったな……

 工兵がメインの第三大隊も面白そうだ。俺の得意な機械いじりも存分にできるだろう。ただ、あそこは変人が多いらしいからな。上手くやって行ける自信はあんまり無い。

 ただ、死亡率で言うなら第二大隊が1番ましかもしれない。そもそもあの隊はあまり戦地に行かないしな。噂じゃ、高官の娘が居るから依怙贔屓されているとかなんとか……ま、根拠の無い噂だろう。噂好きのオオムラが話していた事だし、正直信用はできない。しかし、他の奴まで第二大隊を嫌がっているのは意外だった。何でも、随分厳しいらしい。確かにそれはちょっと嫌だ。

 でもまぁやっぱり、男なら夢見てしまう。もし俺が第一大隊に配属されたらなんて──

 と、消灯時間だ。今日はここまでにしよう。

 

 

 ✕月4日

 

 配属先が決まった。勿論、第一大隊では無かった。俺が配属されたのは第二大隊だ。意外とほっとしている自分がいる。まぁ、死にたくないのは当然だ。しかし驚いたのは、配属先が第二大隊の中の第二部隊だったことだ。部隊長はカンザキ少将。例の高官の娘だ。依怙贔屓は多分、噂だけだと思う。少なくとも、甘やかされて育った感じはしない。まだ一目見ただけだけど。

 何でも、カンザキ少将は今特別任務に就いているらしい。そしてその上で普段の業務までこなしていると言う。良く考えると、結構凄いかもしれない。だって、こう言っては失礼になるんだろうが、カンザキ少将は俺の妹より年下だ。最初は普通に大人なのかと思ってたんだが、全然そんなことは無かった。18歳、バッチリ未成年だ。

 一緒に配属されたオオムラはちょっと不満気だった。まぁ、あいつは結構プライドの高い奴だから、年下の女子にあれこれ指図されるのに思うところもあるのだろう。ただ、カンザキ少将の方が大村より強いと思う。これは勘だけど、一応大村にそう忠告しておいた。

 あ、桃、配り忘れた。忙しくてそれどころじゃなかったからな。まぁいいや、今度にしよう。腐る前に捌ければいい。

 

 

 ✕月7日

 

 今日、ようやく桃が全部捌けた。結構ギリギリな奴もあったから、一安心だ。部隊内でも評判は上々だった。オオムラなんて、丸々一個平らげたのだ。部屋でも食ったくせに。親父に教えたらきっと喜ぶだろう。が、また大量に送られてきたら困るな。

 それで、桃で騒いでいたらカンザキ少将に怒られてしまった。仕事が終わってからにしなさいという事だ。なので、仕事を終わらせてからカンザキ少将にも勧めてみた。しかし、まだ仕事があると断られてしまった。手伝おうと思ってその仕事が何か聞いたのだが、教えてはくれなかった。機密事項らしい。例の特別任務だろうか。

 しかし、仕事が終わっても仕事か。彼女に残業代は出ているのだろうか。ちょっと心配だ。でも、俺が心配すると言うのも逆に失礼に思える。年下の女の子だが、上司だしな……いや、上司の心配をするのも部下の務めか? 

 まぁ、カンザキ少将の分の桃は別の皿に取っておいてあるし、今度余裕のある時に食べて貰おう。桃は塩水に付けると変色しにくくなるのだ。勿論、何もつけなくても旨いが、ちょっとしょっぱい桃と言うのもこれはこれで旨い。

 

 

 ✕月12日

 

 今日はオオムラがボコボコにされた。カンザキ少将に、だ。

 事の発端は書類作成中に起こった。俺はその場に居なかったのでこれは先輩からの又聞きだが、ちょっと反抗的な態度を取ったオオムラを、カンザキ少将が軽く煽ったらしい。そして、「不満があるなら、実力で黙らせてみなさい」と言い放ち、決闘ということになった。先輩曰く、焚き付けて実力差を思い知らせる意図があったそうだ。有り体に言えば、オオムラは見せしめにされたって事らしい。まぁ、軽い挑発だけで上司との決闘に臨むあいつもあいつだと思うから、同情はしないでおく。

 で、その決闘は俺も見たが、なんというか、流石だった。

 オオムラは男の中でも結構大柄な奴なのに、カンザキ少将の動きに綺麗に翻弄されていた。で、最終的にあいつは手も足も出せずにボコボコにされたのだ。ちょっと可哀想なぐらいに。と言うか、訓練所で散々上下関係を叩き込まれたのにどうして逆らおうと思うかな。意外と反骨精神の強い奴なんだろうか。

 まぁ、そんな訳で華麗な勝利を飾ったカンザキ少将は最後、地面に転がったオオムラに手を差し伸べ、「これで、私が貴方の上に立つ訳が分かりましたね」なんて言ってた。いや、もうなんか、もう、めちゃくちゃカッコよく見えた。凄い。凄すぎて語彙力が消えてしまった。まさか妹より年下の女の子にカッコイイなんて思う日が来るとは思わなかった。でもカッコよかった。この部隊に配属された事を神に感謝した。俺の家無宗教だけど。

 しかしちょっとウザイのは、ボコボコにされた筈のオオムラがカンザキ少将の話ばかりする様になった事だ。確かにカンザキ少将はかっこいいが、そんなに話しかけられると書類が全く進まない。そして案の定、口ばっか動かしてたのでタカダ先輩に怒られてた。外周5周、いい気味である。

 が、あいつがタカダ先輩に引きずられていく前に言っていたことが気になる。ふぁん……なんちゃらだ。ファンヒーターかな? 

 

 

 オオムラ

 モブ兵くんの同期で同室の仲。家は肉屋。子供の頃近所でガキ大将をやっていたので体を動かす事には自信があった。が、ボコボコにされた。憐れ。セツさんは無自覚部下タラシだといいなって。彼しか同期が出てこないのは考えるのが面倒だか((




こんな緩いのもたまにはいいよね(ネタ切れ)
仕事してるセツさん絶対かっこいいと思う。
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