重い扉を体全体で押すと、ぎぃっと低く軋む音がした。扉の向こうから明るい明かりが差し込んできて、モニアは思わずその目を瞬く。
「おかえりー! あ!! モニアちゃんだ!!」
ヨツバの元気な声が聞こえた。身を滑らせるようにしてバーの中に入ったポティーの後に続き、モニアはカウンターの方へ歩いていった。
「ただいま、です。ヨツバちゃん、梨香さん」
ヨツバの声に比べると随分小さく聞こえてしまうが、モニアの声はきちんと2人に届いた様だ。おかえり、と梨香も言う。
が、その手は忙しなく動いていて、何やら忙しそうだ。邪魔にならないようにと思いながら、モニアは2人の方をじっと見つめた。
しかし、見ても何をしているのかはよく分からない。梨香の手の中にあるのは、膝の上に座っているヨツバの髪の毛だ。何時もならツインテールに結ばれているそれは、解かれてそしていつもと違う形に変えられている。
「何、を、してるんですか?」
梨香は忙しそうだからと、モニアは楽しそうにしているヨツバに聞いた。
「三つ編みしてもらってるの!」
すると、ニコニコ笑顔での言葉が返ってくる。三つ編み。そんな髪型もあるのか。モニアは興味深く思いながら、再び梨香の手元を見つめた。柔らかなヨツバの髪を、梨香は手馴れた様子で動かしている。何だか魔法みたいな動きで、見ているとわくわくしてきた。
「ヨツバちゃん、そこの髪ゴムとって」
「できた!?」
「後ちょっとだから、動かないでね〜」
ヨツバから髪ゴムを受け取って、梨香は三つ編みの先端をくくる。ヨツバの付けてる白い髪飾りは、いつもと違う位置に収まって揺れ動いた。終わり、と合図されて、ヨツバは待ちかねたように梨香の膝から飛び降りる。
「できた!! 可愛い!?」
「やっぱり似合うわね」
「可愛い、です」
2人に褒められて、ヨツバはえへへと笑う。そして部屋にいるセツに見せに行こうと、小走りでバーから出て行った。
その後ろ姿を見送るモニアの目が、何時になくキラキラと輝いている。
そのことに気付いて、梨香は反射的にモニアの髪の毛に視線をやった。モニアの桜色の髪は綿毛の様にふわふわとしていて、柔らかく、何と言うか……三つ編みをするには、少々長さが足りない。
「あの、髪型、三つ編みって、言うんですね」
「そうね。3つの束で編むから、三つ編みって言うのよ」
「難しいん、ですか?」
「ううん、簡単では、あるんだけど……」
梨香は、思わず言い淀んでしまう。その視線はやはり、モニアの髪の毛に向けられていた。できるだろうか……しかし、モニアをガッカリさせるのは非常に胸が痛む。どうしよう、と悩む梨香と、わくわくと未だ目を輝かせているモニア。
「……モニアちゃん、このピン留め付けてみない?」
その後、子供の気が移りやすいことに、梨香は感謝した。
〈オマケ〉
ヨ「セツ見て見て!! 可愛いでしょ!!」
セ「そうですね」
ヨ「セツもやってもらいなよ!」
セ「遠慮しておきます」
リ「あら、ちょっとやってみたかったんだけど」
セ「………………遠慮しておきます」
※最終的にやられた
ごめんなさいね短くて。しかも図らずもまた同じ2人がメインですね……
三つ編みって可愛いんですよ