シャンフロ学園   作:ミヤムラゾロ

1 / 4
転校生!その名は咲洲サイナ

「突然ですが今日は転校生を紹介します」

 朝のホームルーム。

 教団に立つ我らが担任斎賀仙先生は、静かな威圧感を放ちながら教室全体を一瞥して黙らせた後、前方の扉に向けて「どうぞ」と声をかけた。

 数秒後、静かにスライドする扉。そして歓声の声をあげる男子達。

「マジか」

 俺も思わず困惑の声をあげる。

 整った端正な顔立ち。透き通るような青髪、蒼玉(サファイア)を想起させる吸い込まれるような瞳。

 髪の長さは変わっているが、見間違いようなどあるものか。

「はじめましてみなさん。私の名前は咲洲サイナと申します。以後お見知り置きを」

 ピンと背筋を伸ばした状態から丁寧な所作でお辞儀をする少女。

 咲洲サイナ。彼女は中学時代に我が家へホームステイでやってきた女の子だ。

 当時はカタコト混じりの日本語だったが、今は流暢な日本語で話している。

 かなりの時間をかけて日本語を習得したのだろう。まぁ生真面目っぽかったからなぁ。

「咲洲さんは海外からの転校生ですが、日本語に関しては何も不自由はありません。皆さん、仲良くするように」

 再び湧き上がる歓声。今度は女子の声も混ざっている。

 まあ見た目は世間が認めるようなアイドルに匹敵するレベルである。

 確か親が元アイドルだったとかなんとか。

 父親が父さんと仕事先で知り合い、なんやかんやあってウチにホームステイすることになったがまあなんというか、これ今クラスで口にでもしようものなら、質問攻めと審問会送りになるから黙っておこう。

「席は陽務君……ええと、後方の空いている席ですね」

「! ……、はい。わかりました」

 咲洲と目が遭った。おいやめろ微笑むな。

 クラスメイトもそれに合わせてキャーキャー騒ぐんじゃない。

 やめろほら斎賀先生お怒りになって、あ。静まった。

 細目の奥から垣間見えた鋭い一瞥に級友達は一瞬で萎縮する。

 糸目キャラは強キャラの法則。なお恋愛に関しては考慮しないものとする

「それと斎賀さん。あとで咲洲さんに学校施設内を案内してくださるかしら」

「は、はい!」

 隣に座る斎賀先生の実妹。我がクラスの学級委員を務める斎賀玲さんが、今日も今日とて赤面しながら返事をする。

「それではホームルームの続きです。本日は――」

 斎賀先生が今日の連絡事項を伝えていく。

 咲洲が静かな足取りで俺の座る方向へ歩み寄ってくる。

 おい馬鹿咲洲が通った後を鼻呼吸してんじゃないよ雑ピお前馬鹿ホントやめろ恥ずかしい真似するんじゃない。周囲の女子見ろよドン引きしてるじゃねーか。

 SNSで周囲の反応伺ってるクセにリアルの周囲に対する反応の鈍さなんなの。

 暁ハート先生しっかりしてくださいよ。

 

 雑ピから離れて徐々に近づいてくる咲洲。

 俺の隣を通り過ぎようとしたところで、咲洲は小さな吐息と共に言葉を零す。

「……楽郎、お久しぶりです」

「らくっ!?」

「おい馬鹿今は話しかけるな。斎賀先生の白槍(チョーク)が飛んでくる」

「そこ、私語は慎みましょうね?」

 白槍(チョーク)を構えた斎賀先生にペコペコと平謝りしながらなんとかやり過ごす。

 咲洲もペコリと小さく謝罪の会釈をするが、俺は見逃さなかった。

 重力に従い目線を隠すように垂れた青髪と、僅かに釣り上がった口角を。

「……いま野郎、咲洲さん会話しなかったか……?」

「……『楽郎、お久しぶりです』とか聞こえたぞ……?」

「……処す……? ……処す……?」

「……逸るな。……が、疑わしきはギルティだ。異端審問会の準備が必要だな……」

「……場所はいつもの空き教室でいいな……?」

「「「…………御意」」」

 御意じゃねぇんだわ。丸聞こえなんだわ。

 斜め先の男子の集団で繰り広げるられる密会も、俺が聞こえるということは斎賀先生も聞こえるということで。

 四本の白槍(チョーク)がそれぞれの机に刺さった。

『次は当てる』という言外の意味を込めて。

 

 ――今すぐ学校バックレてクソゲーがやりたい。

 小鳥が囀る快晴を窓際から見上げた俺は、心の中で奈落に沈みたいと願った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。