転生先をミスった羽衣狐が居るらしい、まぁ妾なんじゃが…   作:山吹乙女

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 花粉と静電気が怖いので初見です。(まんじゅうこわいではありません)

 今回オリ技、オリ術式が出てきますが苦手な方は…頑張ってお読みいただけると嬉しいです
 すみませんあと、今回キリのいいところで終わるために少し短めですがご了承お願いいたします!

 領域名を変更いたしました(2022.9.10)


私たちの術式は…-拾話-

 領域展開ー自閉円頓裹(じへいえんどんか)

 

 空間を無視して上下左右のあらゆる方向からから幾多もの腕や掌が私たちを覆う。その手は雛鳥を手で囲むような優しさも、母が子を抱き抱えるような暖かさもない血の気も引き身の毛もよだつような青白さである

 

 虎杖くんやナナミンと呼ばれていた多分虎杖くんの付き添いの一級術師は標的ではなく、あくまで私たちだけを狙った領域展開のようである

 大方、私たちさえどうにか出来れば残り二人は対処可能と思っての行動なのだろう

 

 「今はただ、君に感謝を」

 

 幾重もの掌からなる足場に佇む。辺りは暗いが、つぎはぎ顔の姿がハッキリと視認できる不思議な空間で彼は大らかに微笑む

 

 『フム…この感覚、前にも似たようなことがあったのう』

 

 お狐様はつぎはぎ顔の言葉は何処吹く風な様子である。事実、自身の愉悦に浸っている人物の話ほど退屈なものはない

 

 「五条先生と最初に会った時に食らいましたよ」

 

 『ふふ…そうだったかのぅ』

 

 因縁がなければ意外と天然気質で忘れっぽいお狐様はいつも通りとして、確か五条先生のレクチャーでは領域内での相手の攻撃は必中で絶対に当たる上に環境によるバフもかかるのだとか

 それと領域が展開された時の対処法が2パターンあり、1つは内側から穴を開けること。五条先生の話ではこれはあまりオススメしないらしい

 そして2つ目の対処法がこちらも領域を展開するということであるが、残念ながらお狐様は領域をあまりわかっていない様子なのである

 

 『この程度の封印で妾を封じることなんぞ無理なんじゃが、このまま普通に出るのも華がないのぅ。そうじゃ…妖子よ、おぬしが覚えたという技を見せてやればよいではないか』

 

 お狐様は前世から扱えてた[尻尾の数に付随した武器]を使えますが、それに対して私は何もなかったのが玉に瑕でした

 しかしこのままではダメだということから何かしらの技を習得するために努力をしようと思っていましたが、元々のお狐様のスペックが高すぎて私が何もしなくても問題なさそうでしたが折角なのでと一つの技を習得した"あの技"のようです

 

 「何をやっても無駄だよ、これから君を新しく生まれ変わらせてあげるんだから。新しくなった君を見たら宿儺も俺たちに手を貸してくれるかもしれないしね」

 

 少しの不安はあるけどお狐様にご指名されたので今できる全力を尽くすしかないです

 しかし、「新しく」ってこの人の術式は転生系の術式なんですかね。その術式が必中って怖いにも程がある…

 

 「私たちの術式は"(おそれ)"です。呪術師以外の人々から発せられる負の感情が溜まり、呪霊となるその過程のエネルギーを自分のものとして取り込み使えます。そのエネルギーは自身の呪力にも変換可能であり、鉄扇や刀など形あるものとして具現化出来る上に一定時間残すことができます。この日本に人間が一人でも居れば理論上呪力切れは起こりません」

 

 お狐様の前世であった妖怪の成り立ちから私たちの術式は[畏]で間違いなかった。その上での術式の開示

 

 「へぇ、それはすごい。まるで呪霊達の主のような術式だね…でも今更術式の開示をしたところでここは俺の領域の中だよ」

 

 そう、術式の開示をしたところでつぎはぎ顔の領域内なのは変わらない。しかし、領域展開されたのならその対処は単純明快…自身も領域を展開すればいいということである

 

 「えぇ、領域内という事は変わりません。しかし領域が展開されたのならその対処法は知っています」

 

 つぎはぎ顔はまさかと少しの驚きの後に笑みを浮かべる。抵抗できるなら面白いと思っているのだろう

 

 「いいねやってみなよ。その美しい顔が残っていたらね、無為転…」

 

 つぎはぎ顔の術式が発動する直前、左手がスクールカバンで塞がっているので右手で人差し指と中指を立てた形の印を結ぶ。"これ"は恐らくお狐様の生得領域を私が具現化したものだろう

 

 領域展開ー絹裂魍眛池(けんさきもうまいのいけ)

 

 瞬間、私たちとつぎはぎ顔を覆う空間が一変する。正確に言えば辺りは暗いままであるが、幾重もの腕が重なり合って作られた檻を突き破るかのように鍾乳洞(しょうにゅうどう)を連想させる岩肌が姿を表す

 掌で出来ていた足場も黒い水に侵食され、足は膝ほどの高さの水に浸かっている

 ピシャリピシャリと純粋な何一つ混ざっていない漆黒の水が天井から突き出た岩肌を伝い、半径5mほどの池に落ちる

 

 「これは…俺の領域が押し負けた⁉︎」

 

 自分の領域が競り負けない自信があったのだろう。その顔は笑みを残してはいるが、少し引き攣っているように見える

 

 「この水は怨念の塊。日本全土の負の感情が溜まり、水を黒く染め上げ出来た池」

 

 驚愕の表情をする相手に能力の説明するのは結構癖になりそうな優越感を感じさせます。お狐様が余興を追い求める気持ちが少しわかったような気がしました。いや…まだ半分は人間なんですが、ちょっと危険な兆候なんですかね…

 

 『フフ…やはりここは懐かしい。妾がやや子を2度も産んだ思い出の場所じゃ』

 

 お狐様の爆弾発言は気になるけど今は我慢して目の前のつぎはぎ顔に集中する。前世の話で長くなるかもだけど聞いてみることにする

 

 「は、怨念?そんなの呪霊に通用するわ…け…‼︎」

 

 領域が押し負けた瞬間ではなく、少し経ってから"効き始めた"ということは自覚するのに時間がかかったのでしょう

 この領域[絹裂魍眛池]の効果は単純明快、この池に触れた相手に恐怖を与えるというものただそれだけである。際限なく人の世の1000年分の怨念を一気に味わうようなものであり、領域特有の必殺はないので殺傷能力こそないが、一度食らってしまえばむしろ死んだ方がマシと思うのは想像に固くない

 

 「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァ!!!」

 

 目の前のつぎはぎ顔は両膝をつき、頭を抑え上半身を震わせ悶える。相手が呪霊であっても脳に本能に魂に直接語りかけ、鳴り止まない阿鼻叫喚は不快を優に通り越す

 事実、五条先生の無量空所と同種の精神に作用する攻撃は効果的面である

 

 「実戦で使ったのは初めてでしたが、なんとかなったのでよかったです」

 

 『妾の依代なんじゃ、この結果は当然じゃのぅ』

 

 素直に褒められて少し上機嫌になったところで領域を解除する

 

 「羽衣!無事か⁉︎」

 

 「ありがとう虎杖くん、なんとか無事ですよ」

 

 虎杖くんが開口一度に安否確認をしてくれる。自分自身も結構傷ついているはずなのに友達思いで優しい虎杖くんは母親目線で甘やかしたくなってしまう。お狐様が虎杖くんを気に入っているのも同じような理由な気もしてきた

 

 「人形呪霊はどうなりました?」

 

 ナナミンと呼ばれていた七三分けの術師は私の安否がわかった後、その私を領域内に引き摺り込んだ張本人であるつぎはぎ顔について聞く。領域の展開ができる呪霊なのだからその生死は知っておきたいというのは当然だ

 目の前のつぎはぎ顔は両手で頭を抑えながら膝をつきながら顔を伏せている上、身動き一つしていないので側から見ても生死が分からないので尚更聞いておきたいのだろう

 

 「残念ながらまだ祓えていません」

 

 『あやつはそう易々と動けぬからのぅ。口を利かすのも面倒じゃし、殺すなら今じゃ』

 

 私とお狐様が交互に入れ替わるのを見て若干驚いたのか肩が動いた。話には聞いているだろうけど、実際二重人格者を見たのは初めてなのだろう久々の反応だった

 

 「では今のうちに祓いましょう。私が援護しますのでダメージを与えれる虎杖くんと羽衣さんがトドメを刺してください」

 

 ナナミンの指揮の元、つぎはぎ顔の人形呪霊は祓われた。虎杖くんが渾身の拳を頭部に、お狐様が太刀で心臓を一指しする

 一番血が巡る臓器を狙ったので人形呪霊の周りには赤黒い血がドクドクと音を立て広がる

 虎杖くんは拳に血がついても止まらず殴り蹴り踏みつけ、グチャグチャと不快な音を立てて人の形をしなくなった辺りでピタリと止まった

 

 「終わったよ。順平…」

 

 虎杖くんはこの人形呪霊に誰かを殺されたのだろう、帳が上がった青空を仰いで頬には血ではない一筋の線が入っていた

 ここで虎杖くんに気の利いたことを言った方が良かったのかもしれないけど、今この空気では話しかけれないような気がした

 

◆◆◆

 

 下水道を歩く小さな足音

 歩幅からして子供、しかも不規則にそれでいて何かに怯えるように息を荒々しく立てていた

 

 「はぁはぁはぁ…ハハハ、羽衣妖子が、これほどの実力だったなんて…」

 

 声の主はつぎはぎ顔の人形呪霊真人。虎杖と並びに羽衣に祓われた真人は、体と臓器類を真似て作られた真人のダミーであった。体は肉の塊で臓器類は血袋であったが殺されることは確定的に明らかであったのでバレる心配もなかった

 本体の真人はというと幼児の形で地面から既に逃走に成功しており、心臓と脳の体組織は真似てあるので出血などの要因によって逃走ルートをある程度隠すことも出来る算段であった

 

 「あれほどの実力者と宿儺が同格とは、宿儺が化け物なのか羽衣妖子が化け物なのか…魂の格が違う。しかしこれは確信だ、俺たちが全滅しても宿儺さえ復活すれば羽衣妖子と五分のところまで持っていける」

 

 真人は震える肩と足を壁に這わせながら長く暗い下水道を歩く

 

 「…しかし参ったな。俺はどうしようもなく虎杖悠二と羽衣妖子を殺したい。虎杖悠二の方は体は殺せないが魂は何度でも殺せる。問題は羽衣妖子の方だ、並大抵の方法では彼女を殺せない」

 

 殺したいが殺す方法が思いつかない羽衣妖子のことをもどかしく思いながら、真人は楽しそうに卑しく微笑むのであった

 




 お疲れ様です
 今回、アニメで言いますと無事1クールまでを書き終えることができました。これも偏に皆様からの応援や感想などなど励ましていただいた結果であります。ストックもなく始まった小説ですが多くの方に読んでいただけて大変嬉しく思います!
 今後ともアニメ2クール分も続けていく次第でありますので何卒よろしくお願いいたします!

 ちなみにですがぬら孫世界の羽衣狐様の技が問題なく使えたのは全部この[畏の術式]で解決できるってことで納得していただけないかなぁと、思います…

 前々からありました「生まれた時から半妖であった」というのは元々人間として生まれるはずであった羽衣妖子が、羽衣狐様の依代となって半妖に変化(受肉)したことによる天与呪縛でバグのような強さの正体である伏線だったりします(本人は知らない)

 もし「羽衣狐様の領域展開が出るとすればアレだろうな」と考えられていた方がいらっしゃるのであればその"アレ"で合っておりました(確かぬら孫本編でも二条城は羽衣狐が産んだ幻想の城とか言われていたはずですので問題ない…よね?)
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