転生先をミスった羽衣狐が居るらしい、まぁ妾なんじゃが…   作:山吹乙女

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 シンエヴァを観れたので初見です
 
 多くの方に私の投稿を読んでいただけているので、もしかしたらランキングに載っているのでは?と淡い期待をしていましたが…二次創作日間ランキングにて14位という高順位を見ることができました!(初めて載っているのを拝見しました…)
 これも全てお読みいただいている読者の方々のおかげでございます!ありがとうございます!


おぬしらの為にならぬじゃろう-拾壱話-

 「なんで皆手ぶらなの⁉︎」

 「なんで皆さん手ぶらなんですか⁉︎」

 

 二つのスーツケースがゴロゴロと石畳を転がる音がするが、その音が掻き消されるほどの驚きの声も二つあった

 

 「おまえらこそなんだその荷物は」

 

 ポカンとしていた釘崎野薔薇と羽衣妖子に対してパンダは質問を質問で返す。パンダの目に映るのは2泊3日を想定しているキャリーケースと手荷物を持った釘崎と羽衣だ

 

 「何って…これから京都でしょ?」

 

 パンダの質問に答えた釘崎だが、この場では羽衣がウンウンと頷くだけで他の者の頭にはハテナマークが浮かんでいる

 

 「京都()姉妹校交流会」

 

 「京都()姉妹校()交流会だ。東京で」

 

 二人の齟齬を確かめるようにオウム返しの要領で返すパンダ

 前日の夜からウキウキで京都に行けると準備をして楽しみにしていた羽衣と釘崎だが、パンダの東京で交流会をするという言葉一つで二人は膝から崩れ落ちていた。なまじ期待していただけに思い間違いであり自業自得ではあるが、この何者かに裏切られたようなショックは想像を絶するだろう

 

 『フフ…良き余興であったぞ』

 

 「え⁉︎お狐様知ってたんですか!」

 

 「ちょっと!知ってるなら早く言ってよねお狐様!」

 

 二人で地面に崩れているところに羽衣狐が立ち上がり微笑む。他人からの印象としては悪戯好きの姉とその悪戯に引っかかった妹の構図だろう

 しかし交流会の正しい場所を理解していたのはほとんどの者で、思い違いをした二人が悪いというのは言うまでもない

 

 「ごめんごめん、荷物多くて遅れちゃったー」

 

 さらに遅れてやってきた虎杖悠二も「なんで羽衣と釘崎以外そんな手ぶらなの?」と口にし、2泊3日を想定した肩掛けのバッグを持ってきている。交流会が京都ではなく東京で行われることを知り、彼が二人と同じように膝から崩れ落ちたのは想像に固くない

 しかし虎杖悠二に関していえば交流会の件を教えたのは五条悟であるので、彼の性格を考えればある意味正しい情報が伝わらなかったのは仕方がないのかもしれない

 

 「おい、来たぜ」

 

 膝から崩れ落ちている虎杖を傍目に禪院真希が京都校からの交流会メンバーが来たことを知らせる

 

 一言で言えば色もの。東京校側もパンダがいるがそれに負けず劣らずの色濃い6名からなる集団である

 

 「あら、お出迎え?気色悪い」

 

 「Ms.羽衣直々の出迎えとは光栄だな」

 

 (「一年…だよね?誰かわからないけど、東堂先輩が慕うってことはすごい人なのだろう」)

 

 先月一足先に現れ顔を合わせた禪院真依、東堂葵に加え楽巌寺嘉伸の付き添いで顔は合わせていない三輪霞

 

 (「東堂くんに好かれてるなんてあの子可哀想…」)

 

 手に持ったホウキと見た目から一世代前の魔女のイメージを連想させる三年[西宮 桃(にしみや もも)

 

 「人数が同じはいいとしテ、一年3人はハンデが過ぎないカ?この際もう1人も参加させればいいじゃないカ」

 

 一際目を引くのは端的でも比喩でもなくそのままの意味でのロボット二年[究極(アルティメット)メカ丸]

 

 「呪術師に歳は関係ないよ、そこの一年は4人掛ではあったが特級の討伐もほぼ無傷でこなしている。特に伏黒君、彼は禪院家の血筋だが宗家より余程出来がいい」

 

 ちゃんと前が見えているのか一目見ただけでは判断できない糸目で、衣服は陰陽師を彷彿とさせる三年[加茂 憲紀(かも のりとし)

 そしてその加茂憲紀の言葉に舌打ちをする禪院真依の構図は京都校では見慣れた光景であった

 

 「はいはい、内輪で喧嘩しない」

 

 その口論に発展はせずともバチバチとした空気を和ますのが京都校の引率である[庵 歌姫]…であるのが恒例のはずなのだが、そこに現れたのは上下で白と赤に分かれたツートーンカラーの女性用袴を着た"五条悟"であった

 

 「えー…庵歌姫デース」

 

 「こらぁ!五条悟‼︎」

 

 奇抜なポーズを取る五条悟の後に数秒遅れて登場する庵歌姫

 彼女を揶揄(からか)うためにわざわざ彼女と同様の女性用袴を用意して着込み大勢の前にその姿を晒す努力は果たして認めるべきか否かだが、教育者という点ではやはり認めるべきではないのだろう

 現に東京校、京都校の生徒共々この瞬間この場所での想いは「何やってるんだこの大人」の一つに纏まっていた

 

 「ハイテンションな大人って不気味ね」

 

 五条悟を見ていた釘崎野薔薇の言葉に、皆そろえて頷いていた

 

◆◆◆

 

 「今年の交流会1日目は、まぁ概ね予想通りの団体戦だな」

 

 現在パンダ先輩の切り出しから始まった交流会のミーティングです

 京都姉妹校交流会は計2日の日程で行う様で基本1日目は団体戦、2日目は個人戦と決まっているそうで今年は[チキチキ呪霊討伐猛レース]という題名で毎年色々変わるらしい

 指定された区間内に放たれた二級呪霊を先に祓ったチームの勝ちになるシンプルなもの。ただ区間内には三級以下の呪霊も複数放たれており日没までに決着がつかなかったら討伐数の多いチームの勝利となる様で、その区間はなかなかに広大な森林や湖の一角など時間切れも視野に入りそうである

 ちなみにこのルール説明をしたのは夜蛾学長だったけれど、説明をしながら五条先生をアームロックしていました。自業自得ですね…

 

 「そんで一応作戦通りに進められるが、このまま行くか?」

 

 「おかか」

 

 「そりゃあその作戦は悠二の前評判で決めてるからな、本人次第だろ。何か新しく出来ることとか増えたか?」

 

 「いや、変わらず殴る蹴るだけ」

 

 禪院先輩と狗巻先輩とパンダ先輩を中心に作戦会議が始まりました。私たちは参加しないけど、聞いてるだけでワクワクしてきます

 

 「やっぱり作戦通りになりそうだなぁ…」

 

 「虎杖が個別特訓している時、何をしてたかはあまり知りませんが東京校・京都校含めて"全員呪力なし"で()り合ったら羽衣と同格ですよ」

 

 「てゆーか東堂と闘り合えるぐらい強いのならなんで羽衣が交流会出ないんだ?」

 

 虎杖くんの話だったのにどういうわけかこちらに話が向いてきました。やはり東堂さんが強さの指標となっているのでその東堂さんを軽くいなしたのが大きいようです

 

 『ふふ…妾が出てしもうたらおぬしらの為にならぬじゃろう?それに妾が出たところでおぬしらなら結果は変わらぬ』

 

 「でもお狐様は東堂と闘り合ってる時『呪術師同士の闘いが見たい』とか言ってましたよね?」

 

 確かに東堂さんと対峙した時に近くにいた伏黒くんだけど、その助言は予想外です。でも距離感は近づいてきてるようなので嬉しいです

 

 「オマエ結構いい性格してるよな」

 

 「すじこ、おかか」

 

 「いや私はそういうつもり言ったんじゃない、呪術師としてはそれくらい曲がってた方が適切だって言いたいんだよ」

 

 まだ狗巻先輩の語彙から読み取る力はないけど、禪院先輩から色々フォローしてくれていたのかもしれない…多分

 まだ「しゃけ」が肯定意見、「おかか」が否定意見だろうという目星しかできていないので先は長そうです

 

◆◆◆

 

 「開始1分前でーす。ではここで歌姫先生にありがたーい激励の言葉を頂きます」

 

 試合が開始されるので虎杖くん達参加メンバーと分かれて、先生たちがゲームが開催される区間内を観察している部屋に来ていた

 扉を開いた瞬間、五条先生がマイク前で歌姫先生にすごい想定になさそうな無茶振りをしていたけど五条先生の方が後輩らしいんですよね。逆ならわからなくもないですけど…

 

 「あー…ある程度の怪我は仕方がないですが…そのぉ…時々は助け合い的なアレが…」

 

 「時間でーす」

 

 あまり想定されていない生徒の観戦でも部屋の広さは十二分に広く、1人ずつのソファが人数分用意されていたので空いていたものに座る

 

 「ちょっ五条‼︎アンタねぇ」

 

 「それでは姉妹校交流会スタァーートォ!!!

 

 「先輩を敬え‼︎」

 

 歌姫先生の声がハウリングされてマイクが切れたけど、あまり締まらない始まり方だなぁ

 

 「あなた四級なんだって?そうは見えないわね」

 

 隣の席にいた妙齢の女性と見て取れる、長く太い三つ編みを前髪に垂らすなかなか見たことのない髪型の女性から話しかけられた

 

 「あー冥さん、その子は色々と訳あり」

 

 歌姫先生のジャブを傍目に顔だけこちらに向けてきた五条先生。側から見ると歌姫先生とイチャイチャしているように見えなくもな…いや、歌姫先生は割と本気で五条先生を嫌ってそう

 それはそうと五条先生がさん付けするってなかなか聞かない気がする。若そうなのに五条先生より年上なのかもしれない、お狐様は1000歳以上だけど私は若いから…私ももしかして実質1000歳以上なのかも?

 

 「妖子、彼女は[冥冥]さん。一級術師でこの部屋のモニターに映る映像は彼女の術式を通して見えているんだよ」

 

 「はじめまして、羽衣妖子です」

 

 「何かあれば私に連絡してきなさい。依頼料によっては結構色々やるわよ」

 

 依頼料の強調の仕方からなんとなく守銭奴のようにも感じます

 

 「彼女に依頼する時は覚悟しておいた方がいいよ。結構取られるから」

 

 

 冥冥さんと軽く話す程度の時間しかたっていませんが、モニターを見るといきなり東堂さんが虎杖くん達6人に突っ込んでいました。区間内は結構広いなはずなので開始直後一直線で向かったのだと思います

 東堂さんの対応を虎杖くんだけで行い、残りのメンバーが2:3に分かれて呪霊を探すような形を取っているけど、これはミーティングで話した通りです

 

 初撃を入れたのは虎杖くんだけど、それからは防戦一方で東堂さんの攻撃を受けた時はちょっと大丈夫なのか心配しましたね。無事に立ち上がって安心しました

 それと虎杖くんと東堂さんの交戦中に壁に貼られてあった11枚あるお札の一つが燃えたことだけどこれは五条先生曰く、エリア内に放たれた呪霊には呪符が貼り付けられていて呪霊消失と共に対になっている観覧席の呪符も消滅する仕組みらしい

 東京校が祓ったら赤く燃え、京都校が祓ったら青く燃えるとのことで先程青く燃えたので1ポイント京都高に入ったとのこと

 それから東堂さんがいきなり虎杖くんとの戦いの手を止めたかと思ったら全てのモニターから虎杖くんと京都校の人たちが見えなくなりちらほらと伏黒くん達が映ったり何もないところを映したり、監視カメラのように固定じゃなく冥冥さんの術式なので仕方がないのかもしれない

 でも露骨に見えなくなったのはなんとも違和感を感じる。虎杖くん大丈夫だろうかな?

 




 お疲れ様でした
 今週は珍しく時間があったはずなんですが…やはり金曜日の夕方にほぼ全部を書くことになっていました。何があったのだろう…

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