転生先をミスった羽衣狐が居るらしい、まぁ妾なんじゃが…   作:山吹乙女

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 ちょっと時間が空いてしまいましたので初見です。
 拙い文章で1話を書かせていただきましたが、大変反響をいただき本当に嬉しい限りです!(まさか日間得点ランキングに載るとは思いもやりませんでした…)
 羽衣狐様の人気で成り立っている本作ですので妖しくも美しい羽衣狐様の魅力を出して行けるように頑張りますので応援のほど何卒よろしくお願いいたします。
(文章構成を修正いたしました2021.1.18)


妾は可愛いものも好きじゃ-弐話-

 

領域展開ー無量空処ー

 

 [領域展開]それは術式を付与した生得領域を呪力で具現化することであり、言わば心の中を具現化させる呪術の極地である。

 五条悟が発動した[無量空処]は簡単に説明すれば脳が処理するには多過ぎる情報量を一気に相手の頭に流し込むものである。それ故に、生き物であればまず間違いなく脳の処理が追いつかずその場で動けず放心状態となる。

 

 『ふむ…深層意識の具現化とは興味深い。良い余興であったぞ』

 

 五条悟はこの時知る由もないが、今対峙しているのは転生を繰り返す羽衣狐、人間の寿命で死ぬことが縛りであるが本体が無事なら際限なく転生を繰り返す都合上、脳の処理領域はそれに耐えられるようになっており、他の攻撃技であればつゆ知らず多すぎる情報量の処理は転生の際常に経験していることであるので十八番と言っても差し支えない。

 

 「いや5秒は僕の領域内にいたのに平然としすぎでしょ…」

 

 『?…何を不思議がっておるかは知らぬが、約束は約束じゃ妾を待たせたことはこれで許そう』

 

 五条悟との戦闘が一段落ついた。

 そう思われた矢先、五条悟と羽衣狐の間を割って入るように虎杖悠二、もとい両面宿儺が拳を振りかぶりながら突如現れる。

 

 「ふん!」

 

 振りかぶった拳は空を切り、羽衣狐の顔面を捉えるようにして放たれるが15ある尾の一つに塞がれる。

 

 『こやつと話している途中じゃが…待てぬか?』

 

 「はっぬかせ!この俺に殺気を放ったのだ。タダでは済まさんぞ』

 

 『まったく、これだから不良者は手が早くて困る…』

 

 両面宿儺に向かって不良と言い放ち尾の一つを宿儺の頭に向け上からしならせるように(はた)くと、両面宿儺はその衝撃から軽い脳震盪を起こし抵抗する暇も与えず白目を剥きながら膝から崩れ落ちる。

 

 『いかん、思わず温厚な妾でも手を出てしもうた』

 

 「お狐様自分で温厚とか言います?」

 

 『殺しておらぬのだから温厚じゃろう』

 

 伏黒恵が見た虎杖悠二と両面宿儺の多重人格の役を演じる一人芝居のように、羽衣狐の声色がコロコロと変わるのを再度確認した後、五条悟は口を開く。

 

 「ところで君、いや君達は何者?僕たちの敵?」

 

 それは当然の疑問であった。

 うつ伏せで倒れている両面宿儺は当初の優先事項であるが最強の呪術師五条悟を動きの制限がある状況下ではあったが軽くあしらい、呪いの王両面宿儺を受肉したばかりではあるが瞬時に無力化したその存在に疑問を持たないのは無理な話であり、気絶している両面宿儺もとい虎杖悠二よりも優先すべき内容であった。

 

 「お狐様、私たちのこと聞かれていますけどどうします?」

 

 『おぬしがこの学校の生徒と言うたからのう…直にわかるがせっかくじゃ、ここで名乗っておけ』

 

 「あっ、それもそうですね私は[羽衣 妖子(はごろも ようこ)]先程貴方と対峙したのは私に転生している羽衣狐様です。もっとも私も分類的には羽衣狐ですし、羽衣狐様も[羽衣妖子]ですので呼び分け程度の違いですけど」

 

 『フフ…これはただの余興じゃ、この世で大それたことをする気は起きぬし、野望も宿願も今の妾にはない』

 

 殺気を放ち生物としての格の違いを見せつけた相手に敵かどうかの是非を問うのは、答えが分かりきっているようなものではあったが事実先程の五条悟の体術を2つの尾のみで凌いでいたのなら、残り13つの尾で攻撃することができた。が、そうしなかったのは相手が完全に下に見ているか殺す気がなかったかの2択であり、絶対的な強者である五条悟が他人を見下す目線に気づかないはずはなく、殺す気がなかった場合少なくとも話し合いができる相手であることが分かり、これ以上無用な争いをせずに済むと判断した結果である。

 

 「…その言葉、信じていいんだよね?」

 

 『くどい…妾はその気はないと言うておるのだから心配せんでよい。小さい事ばかり気にしておると女子にはモテぬぞ』

 

 最強の呪術師五条悟と呪いの王両面宿儺を軽くあしらえる存在が敵かどうかの質問を小さい事と扱うのは、両名を知る者からすればあり得ない事態である。

 

 「ふぅ…とりあえず話の通じる人物でよかったよ。君たちを敵に回しても、僕らには損でしかないからね」

 

 五条悟は緊張の紐を幾分かは緩めると、体の中の温かい空気が口から漏れる。

 汗で湿った首筋を拭い、当初の目的に触れる。

 

 「それで僕らはそこの彼を引き取るつもりだし、君たちが敵じゃないのなら出来れば監視対象として同行してもらいたいけど、構わない?」

 

 五条悟からの同行の問いかけに対して、羽衣狐は自身の尾の一つを椅子のように使い足を組みながら腰掛け胸の前で腕を組み答える。

 

 『別に良いぞ、お主らについて行けば余興には困らぬじゃろう』

 

 「お狐様が良いのでしたら私もいいですよ」

 

 五条悟は自身で同行を口にしたがこうもすんなりと要件を受け入れるとは思っておらず、いい意味で拍子抜け、悪い意味で何を考えているかわからないといったところであったが『ただし…』と羽衣狐は言葉を付け加える。

 

 『妾のことを上の者に報告する場合多少の力を持った()()()()として報告し、監視も付けぬことじゃ』

 

 ()()が抑えれるかどうかわからない危険人物を普通の人として扱うこと、その条件が意味するものとは言わば爆弾、爆発を恐れながらもその対処をすることができず抱えることを強制する事に等しい。

 両面宿儺より話の通じる人物であったが、より狡猾でタチの悪い人物とも言える。

 普通であればこのような条件飲める訳ないが仮にここで断り力ある呪霊と結託でもされるとそれこそ取り返しのつかない事態であり、高専側は羽衣狐の条件を飲むしかなかった。

 

 「仕方がない…その条件飲むよ」

 

 「ちょっ!五条先生、いいんですか?」

 

 「いいも悪いも仕方がないでしょ。要件を提示したのはこっちで、向こうが条件付きで折れてくれたんだからさ」

 

 伏黒恵の疑問は当然であるが、ではどうするのが最適であるかと伏黒恵自身に質問してみてもいい答えは返ってこないだろうことから五条悟の答えが最適解であると信じるしかなかった。

 

 『決まりじゃのう、さて妾はどこに案内されるのじゃろうか』

 

 「東京都立呪術高等専門学校、君をそこの生徒として受け入れるよ」

 

 一般的に見ても呪いを祓える力のある人は少数派であるが故に、高専関係者なら高専に推薦して生徒として受け入れるようにしている。

 

 『ふ…まぁ妥当なところじゃのう』

 

 「そういえばこの子はどうするつもりですか?」

 

 「うーん、彼には宿儺の器の可能性があるけど…恵、ここでクエスチョン彼をどうするべきかな」

 

 「呪術規定にのっとれば虎杖は処刑対象です。でも、死なせたくありません」

 

 「…私情?」

 

 「私情です。彼女も受け入れるのですからなんとかしてください」

 

 「かわいい生徒の頼みだ、任せなさい」

 

 五条悟は親指を立て伏黒恵にビシッと決める。

 

◆◆◆

 

 結果から言うと虎杖くんは死刑であるが執行猶予が付いた。

 気絶している虎杖くんを五条さん…五条先生が何処へやら運び、そこで虎杖くんが宿儺の器であるかどうかと今後についての話をしたそうだ。

 

 ところ変わり私はというと両親が存命なので転校することとその手続きを済ませ荷造りを纏めた。

 両親には高専関係者から前もって聞かされていたこともあり、すんなりと了承された。

 流石に私たちを一人で行かせたくないらしく五条先生も同伴で高専へと向かうようで、駅で待ち合わせをしていると何やら土産袋を片手に五条先生と虎杖くんが近づいてきた。

 

 「いやーごめんごめん、待った?」

 

 普段のお狐様ならお土産の購入で集合時間に7〜8分遅れた五条先生に少なからず苛立ちを覚えていたところだが、むしろ上機嫌であった。

 私たちが気配でわかるような監視は無くそれでも試しにとここへ来る途中、裏路地に髪が綺麗だった若い女性を連れ込み生き肝を頂戴してみた。

 唇と唇をくっつけてキスのようにしてポンプのように肝を吸いこむ、蛇の丸呑みのように胃に到達するまでの喉は一部膨れ上がり味わうことはせずゴキュゴキュと小気味良い音を奏でながら嚥下する。

 生き肝を吸い出された女性はガクガクと痙攣した後、糸が切れた人形のように崩れ落ちる。

 

 私やお狐様曰く、半妖なので普段の人間の食事だけでも問題ないがこの行為事態、人間でいうところの酒やタバコなどの嗜好品と同じような扱いなのでやはり定期的に味わいたいとのこと。私自身もお狐様と同じ感覚なのでむしろ好きなことではあったが、もしバレた時に現代では動きにくくなると懸念して夜やこういった女性が1人でいたところを狙うなどしていた。

 道行く女性を襲ってみたがその事に気づいていない様子なのでお狐様はご満悦である。

 

 『フフ…いや、待っておらぬぞ』

 

 「そう、じゃあ出発だね」

 

 新幹線で2時間弱かけて東京にある東京都立呪術高等専門学校、通称高専へと着くと、そこは東京都は名ばかりの山に囲まれた辺鄙なところに校舎はあった。

 

 「とりあえず、悠二と妖子はこれから学長と面談ね」

 

 「学長…」

 

 「下手打つと入学拒否られるから2人とも気張ってね」

 

 虎杖くんは入学できなかった時のことについて騒いでいるが、流石にそんなことはないだろうと思っていると虎杖くんの頬にぐぱっと口が開く。

 

 「なんだ貴様が頭ではないのか…力以外の序列はつまらんな」

 

 虎杖くんは自身の口の開いた頬に向かって平手打ちをするが平手打ちした手の甲に同じように口が出来上がる。

 

 「貴様と、そこの女には借りがあるからな…小僧の体をモノにしたら、真っ先に殺してやる」

 

 『返せぬ借りを易々と作るものではないぞ…昨晩もその少年と無理に変わり自由が利いておらぬではないか』

 

 お狐様は宿儺の図星を付いたのか、本当に自由が利かないのか分からないけどそれから宿儺が口を開くことはなく目的地へと着いた。

 

◆◆◆

 

 『のう、このぬいぐるみ妾にくれぬか?』

 

 「お狐様も()()ですからこういうの結構好きですよね」

 

 私達は高専の学長[夜蛾正道]先生の面談を虎杖くんの後に終えたばかりである。

 お狐様の条件通り学長にも私達のことは多重人格で人格がコロコロ変わるが普通の人という認識であり、虎杖くん同様入学の面談の「何しに来た」の問いかけに対してもお狐様の『退屈は心を蝕む、故に妾は退屈をなくす為ここに来た』という一声で合格であった。

 

 羽衣狐様はつぶらな瞳のイモムシのような形をしたぬいぐるみを両手で抱き抱え、夜蛾学長に目で訴えかけながら見据えている。

 

 「なに?…お前もこの良さがわかるか」

 

 『むしろこのかわいさがわからぬ者は感性が死んでおる』

 

 「フッ、ならばお前にやろう入学祝いだ」

 

 片やサングラスをかけ目元を隠し、片や常にハイライトが消えた瞳ではあったがお互い嬉しそうにしているのが見て取れる。

 お狐様はいつもは高貴に振る舞っているけど、こういう可愛いところがあるのはギャップがあって大変和む。

 

 案内された部屋は女性寮であり、人数が少ないと聞いていたがちゃんと男女別の寮があるのは関心である。

 

 1人の時間となり、監視盗聴類の細工がないことを確認するとそういえばと、感じていた疑問をお狐様に問いかける。

 

 「お狐様はよく人間と共に行動することを選びましたね」

 

 『なに、妾とて悪鬼羅刹ではないからのう、元より野心も野望もないのじゃからその時の出会いを大切にしたいだけじゃ』

 

 「そうなんですね、ところで本音は?」

 

 『ここにいれば昨晩のような情報も入りやすいじゃろうから余興に困ることは無いからのう…ああ、それとこのような機関なら現場で原因不明の女性の犠牲者が1人増えたところで誤差として処理されるところじゃのう』

 

 欲望に忠実なのは素直で可愛いと思うのでした。

 

 




 お疲れ様です。お読みいただきありがとうございます!
 うまく羽衣狐様を動かせず、キャラ崩壊を起こしてしまう事に対して懸念しておりましたが思えば公式のコミックに載っている4コマ漫画で、羽衣狐さまはすごいキャラ崩壊をしているので…うん、大丈夫かもしれない!と開き直る残念な作者ですのでどうか許してくださいなんでもし(ry
 ご意見ご感想共々随時募集しておりますのでよろしくお願いいたします。

本作での羽衣狐様のあなたのイメージをお聞かせくださいませ

  • イメージと違う、こんなのお姉様ではない!
  • ええと思うよ、羽衣狐可愛らしゅうて

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