転生先をミスった羽衣狐が居るらしい、まぁ妾なんじゃが…   作:山吹乙女

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 今週は祝日がちゃんとあったので初見です
 え?いつもですか………。

 前回の続きの話になっていますので短くなってしまったのは本当に申し訳なく思います。ユルシテ

 (話数は大字の方が登場キャラなどに合っているのでは?と、考え変更いたしました)


呪術師同士の争いじゃぞ?-捌話-

 涙を流しながら天を仰ぐ東堂さん。その口からはCDの追加購入というこの場では関係ないことを口走るが、何を想像していたのだろうか

 

 「Ms(ミス).羽衣…今までの非礼を詫びよう」

 

 まるで掌を返すかのようにこちらに向けての態度を一変する東堂さん。何かしたわけでもないけど…何かしたかな?

 

 『フム…おぬし、よほど人を見る目に長けておるのぅ』

 

 お狐様の反応的に何もやっていないのに私たちの実力、もしくは正体が東堂さんに知られたがための評価なのだろう

 

 「フッ、君のような人に誉められるとは光栄だな。君が交流会に出るのだからここで暴れるのはやめておこう、楽しみというものは寝かせて置いておくとよりその旨みを出すからな」

 

 『…勘違いしておるようじゃが、妾は交流会に出るつもりはないぞ』

 

 交流会に出ないことの旨を伝えるとその言葉を聞いた瞬間、東堂さんは冷凍されたかのようにピキリと固まった

 そばにいた伏黒くんは「あっ」と声を漏らしていたので、もしかしなくてもこの返答はまずかったみたいです

 

 「なっ⁉︎Ms.羽衣!君ほどの力があってなぜ交流会に出ない‼︎」

 

 数秒間の沈黙の後、東堂さんは驚きが遅れてやってきたかのようでその顔は絵に描いたような驚愕と疑問であった

 

 『呪術師同士の争いじゃぞ?せっかくの余興…妾が幕を下ろすのは面白くない。それに今年の一年、この伏黒も合わせてこやつらは伸びるぞ』

 

 「なるほど後進の育成…か。それもまた正しい行いだ、だが…学生の本分は学ぶこと、君自身もまた学ぶことがあるということ!やはり君は交流会に出るべきだ‼︎」

 

 腕を広げ、抱擁の形で是が非でも交流会に誘おうとしている

 

 『くどい男じゃのぅ』

 

 「まったくですね」

 

 私たちが呆れていると東堂さんはその顔を怒りで染める。青筋を立て、その顔に笑みを浮かべながら攻撃的な視線を向ける

 瞬間その力んだ足で地面が抉れるかのような怒号を上げ、突撃してくる

 

 「君が交流会に出ないとなると、俺のこの怒りは収まらん。…今ここで闘うことに言葉は必要か?」

 

 東堂さんの拳を受け止めるため、私たちは黒く光る鉄扇を握っていた

 

◆◆◆

 

 バシンと鈍く鋭い音が響くが手応えはなく、彼女の手元には広げた鉄扇があった

 俺が突撃する瞬間カバンの中から扇子を取り出して咄嗟に防御しているのが見えたが、その鉄扇には傷一つ付いておらず体格差をものともしない(パワー)がこの一瞬でひしひしと伝わる

 こちらも本気で殴ったわけではないが、この手応えでヒビも入っていないとなるとあの鉄扇はかなりの業物となる

 

 「いい呪具を持っているな。いや…それが君の術式なのか」

 

 『ふむ…やはりおぬしの観察力はなかなかのモノじゃのう。これはおぬしらが言うところの術式、二尾の鉄扇』

 

 なるほど…戦闘中に術式の一部開示。いや…違うな、術式と見せかけて呪具の線が消えていない。本当の術式を隠しているブラフということもあり得るか…

 本当にあの鉄扇が術式であっても一部ではあるが術式の開示が出来ており、鉄扇が呪具で術式は別にあるとなればそちらに意識を削がねばならない。ハッタリの効かせ方が上手いな

 そしてあの華奢な見た目からは想像できない人間離れした膂力。鉄扇ごとその腕を殴ったつもりが、絶壁に拳を突き出したかと思わされる

 

 「Ms.羽衣、やはり君には交流会に出てもらう!」

 

 『ふふ…言葉は不要ではなかったのかえ?』

 

 ふっ…この血湧き肉躍る嬉しさのあまり、つい口数が多くなってしまうな

 ここは距離を取り、フェイントをかけながらあの鉄扇を掻い潜るしかない。膂力はともかくとして敏捷性(アジリティ)はこちらが上であると思うからな

 事実、Ms.羽衣の方が敏捷性が高ければこちらの初撃を受け止めずにカウンターを喰らわせばいいだけのこと。そうしなかったということは反応は出来ているが、受け止めるのが精一杯なのだろう

 

 となれば右手の鉄扇で防御しづらい左側を狙うのがベターだろう。どういうわけかMs.羽衣は常に左手にカバンを持っていて、実質右腕しかまともに使っていないからな。おそらく"戦闘中は常に左手にカバンを持つ"等の縛りを設けているのだろう

 ただ、Ms.羽衣ならそう思わせておいて左側の攻撃を誘っているとも取れる。ここは悩みどころだが、反撃覚悟で左側を攻める

 反撃が来ると分かっているなら対処は容易!真っ向から受けずに力を逃し、その流れで吹っ飛ばす

 

 俺はまずMs.羽衣の右側に肉薄すると想定した通り鉄扇を構え受け止めるように見定めるが、その意識を逸らすかのように瞬時に回り込み左側を狙う

 振りかぶった左拳を寸止めしてインパクトのタイミングをずらし、本命の右拳による打撃をお見舞いする

 純粋な力押しが出来ない相手は情報量を押し付けて隙を作る。ある意味での闘いの基本、原則的なことだがこれが戦いに慣れていれば慣れているほど深みにハマる

 

 完璧に虚をついた。そう思って疑わなかったが目に写るのは黒く、鈍く光る鉄扇であった

 

 『なかなかの速度じゃ、妾でなければ致命傷じゃのぅ』

 

 完全なる俺の"読み負け"…原因に対して思考を巡らせようとするがその暇すら与えさせてもらえず、俺の体は宙に浮く

 否…後方上空に吹っ飛ばされていた

 

 後ろを向かずとも、風を切る音からかなりの速度で飛ばされていることがわかる

 数秒ほど空の旅を楽しんだ後、大きな音を立てながら木造建築と思われる建物に衝突する。見た目だけなら京都の清水寺が近い造りだ

 

 『ホゥ…見たところ傷一つ付いておらぬとはおぬし、見た目通り頑丈じゃのう』

 

 どう答えたものかと考えながら前を見据えた時、俺は自身の目を疑う光景を目の当たりにする

 目の前のMs.羽衣は平然と宙に浮き、飛んで来てはふわりと着地した

 飛んでいる人を初めて見たというわけではない、俺と同じ京都の高専三年生の西宮なんかは箒を用いて飛べる。そういう術式だからだ

 それと例外ではあるが、"最強"五条悟も飛べる。なぜかは知らんが飛べる、多分最強だからだろう

 だがMs.羽衣の場合どのような意味を示すのか、その謎について思考を巡らせていると不意にどこからか声が聞こえた

 

 「動くな」

 

 直後、体をガチリと固定されたように動かせない不快感が襲う

 

 「何!やってんのー!!!」

 

 どこからともなく現れたパンダの右ストレートが、俺の左頬を捉える。バキッと音を立て、しこたま力の入ったいいパンチだ

 

 「ギリギリセーフ、怪我はないか!羽衣!」

 

 「ええ、大丈夫ですよ」

 

 「おかか!」

 

 「うんまぁ、一戦交えちゃってるからアウトか」

 

 なるほど、二年狗巻の呪言で動けなかったのか

 それはそうとあいつらは平然と会話をしているが「おかか」だけで意味が伝わるものなのか?

 

 「なんで交流会まで我慢できないかね。帰った帰ったそろそろそこの羽衣が大きい声出すぞ、いや〜んって」

 

 「名残惜しいが帰る所だ。Ms.羽衣が推す一年の連中に期待が持てそうだからな」

 

 あぁ、あれほどまでの力を持ったMs.羽衣が推す一年なんだ。どんな強者となって俺の前に立ち塞がるのか、今から楽しみで仕方がない

 

 ただ、今は真依を拾って早く帰り支度をしなければならない

 高田ちゃんの個握(個別握手会)が俺を待っているのだからな。全く、今回に限っていつもの京都が外れるとはツイていない

 

◆◆◆

 

 「夜蛾はまだかのぉ。老い先短い年寄りの時間は高くつくぞ」   

 

 呪術高専京都高学長[楽巌寺 嘉伸(がくがんじ よしのぶ)]は京都姉妹校交流会の打ち合わせのため、東京高まで足を運んでいた

 

 「夜蛾学長はしばらく来ないよ。嘘の予定(スケジュール)を(伊地知を脅して)伝えてあるからね」

 

 五条悟は引き戸をガラガラと音を立てながら開け、楽巌寺に対面する形でソファにドカッと座る

 

 「その節はどーも」

 

 「はて…その節とは」

 

 長く携えた髭を撫でながら首を傾げる。側から見ても三文芝居もいいところであった

 

 「とぼけるなよジジイ、虎杖悠二のことだ。結局未遂で済んだが保守派のアンタも一枚噛んでんだろ」

 

 「やれやれ、最近の若者は敬語もろくに使えんのか」

 

 「ハナから敬う気がねーんだよ。最近の老人は主語がデカくて参るよホント」

 

 口論とまではいかずとも、湿気を含んだ陰気な会話が続く。お互いがお互いを目の上のたんこぶと考えているのだから当然といえば当然であった

 

 「ちょっと、これは問題発言ですよ。然るべき所に報告させてもらいますからね」

 

 楽巌寺の付き添いとして同じ空間にいた京都高二年[三輪 霞(みわ かすみ)]は自身の立場上、五条悟に口を出さないわけにはいかなかった

 

 「ご自由に、こっちも長話する気はないよ」

 

 しかし彼女の内面は"最強"と名高い五条悟と顔を合わすだけでも舞い上がっており、言葉を交わしたのならばそのテンションは有頂天まで上り詰めていた

 

 「昨晩、未登録の特級呪霊2体と遭遇した」

 

 「それは、災難じゃったの」

 

 「勘違いすんなよ。僕にとっては飲み屋街でキャッチに捕まる程度のハプニングさ」

 

 "遭遇"とは名ばかりで特級呪霊に強襲を謀ったのは羽衣妖子の方であったが、彼女の要望により筋書きでは「五条悟が遭遇した」となっていた。口約束のみであったが友好的な関係を築くため、五条悟は必要以上に彼女のことを喋るつもりはなかった

 

 「その呪霊達は意思疎通が図れたし、同等級の仲間もまだいるだろう。敵さんだけじゃない秤に乙骨そっちの東堂、生徒のレベルも近年急激に上がってる。去年の夏油傑の一件、そして現れた宿儺の器」

 

 「何が言いたい」

 

 「分かんないか。アンタらがしょーもない地位や伝統のために塞き止めてた力の波が、もうどうしようもなく大きくなって押し寄せたんだよ。これからの時代は"特級"なんて物差しじゃ測れない」

 

 東堂、乙骨、虎杖と五条悟の頭の中では彼らがその波を起こしていると考えており例外として羽衣妖子もその中に加えられていた

 

 「牙を剥くのが五条悟(ぼく)だけだと思ってんなら、痛い目見るよ…おじいちゃん‼︎」

 

 牙なんて生優しいものではない爆弾。五条悟は一人の生徒を想起していた

 

 「ふぅー、言いたいこと言ったから退散しよーっと。あ、夜蛾学長は2時間位でくるよー」

 

 引き戸からそそくさと帰っていった五条悟を眺めながら二人は、どう時間を潰すか思い耽っていた

 

 




 お疲れ様です
 東堂パイセンは書いててめちゃくちゃ楽しいです

 最後の場面は正直省くか迷いましたが、三輪ちゃんが可愛いので入れることにしました。(嘘じゃないですがちゃんと他に理由はあります)
 三輪ちゃんすごく可愛いですよね

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