親の借金で素直じゃない幼馴染のペットになったけど、俺への好意が丸見えです   作:和鳳ハジメ

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第15話 チチ

 

 

「あ、それじゃあオレ達はこれで。また明日ね敦盛!」

 

「これは逃げたんじゃない、戦略的撤退ってヤツだ敦盛。――悪く思うな」

 

「ごめんね早乙女君、料理は家に持ち帰って美味しく頂くわ。……瑠璃ちゃん、程々にしなさいな」

 

「分かってるってば、ばいばーいっ。――こらっ、動かないのあっくん!」

 

「ぬおおおおおおおおおおおッ、テメーら逃げるんじゃねぇッ!! 少しは俺の苦労をな、ああッ、ドアを閉めるなアアアアアアアアアアア!!」

 

 満面の笑みで彼ら三人はドアを閉じて、オートロックで鍵がガチャリと施錠される。

 そう、竜胆と奏でと円の三人は事態を重く見て撤退を選んだのだ。

 自分たちは人類には少し早そうな科学技術なんて見てない、何も聞いていない。

 そう、――敦盛の作った料理をタッパーに詰めて帰宅である。

 

「つーか何時まで俺の上に乗ってんだテメェ……、デブなんだから気を使えッ!!」

 

「『命令』今の気持ちを答えよ」

 

「そのケツ揉みしだくぞ、いちいちエロいんだよテメェ!!」

 

「…………アッレーぇ? ちゃんと動いてる筈なんだけどなぁ、それともそれが本音?」

 

 首を傾げる瑠璃姫は未だ敦盛の背中の上、あれは早業であった。

 彼が周囲の三人を押しのけて逃走しようと考えた瞬間、行動を読み切った彼女によって膝かっくんからのてこの原理で床に押し倒しフォークを首筋に突きつけ。

 そして敦盛は、泣く泣く三人を見送る事となったのである。

 

「さぁ~~て、奏達は帰ったし。――躾の時間よあっくん! 別名ドキドキわくわく生殺したぁーいむっ!! 変にストレスなんて溜めてないでペットとしてアタシの事だけ考えていなさいっ!!」

 

「誰の所為でストレス溜まってッ…………うむ? よく考えると、もしかしてテメェの所為じゃあ…………いやよく考えなくてもお前の?」

 

「何ワケわかんないコト言ってるのよあっくん、逃げないって約束するなら退くわよ?」

 

「逃げないから退け」

 

「『命令』本当に逃げない?」

 

「むしろこのまま押し倒して犯す――って、どうなってるんだコレッ!! エゲツないったらありゃしねぇぞッ!?」

 

「うわキモっ(うわキモっ)」

 

 これが世に出回ったらどうなるのか、そもそも視界が彼女に固定されるのすら危ない。

 何が危ないかと言うと。

 

(どんな技術で視界が動かせるんだよコレッ!? というか余りにいつもの風景で気づかなかったけどワザワザ着替えて来たなコイツッ!? そのゴス服、胸を強調してるし谷間だけ露出とか何考えて選んでるんだよッ!!)

 

 そう――、今の敦盛には瑠璃姫の白く大きな形のよい釣り鐘型の胸の、その窮屈そうな谷間が丸見えであった。

 下から上から斜めから、オマケにムニっとした臀部のラインが出るスカートもまじまじと見れて。

 

(だから体だけはエロいって毎度毎度言ってるだろうがッ!! なんでこんな時にこんな状態で二人っきりなんだよッ!! いつも以上に視線が行くだろうがアアアアアアアアアアアア!!)

 

(うわキモ……、あっくん絶対アタシの胸見てる、お尻も絶対見てる。調べなくても絶対に見てる)

 

(落ち着けェ、落ち着くんだ俺ッ、今更コイツをエロい目で見るなんて今更じゃねぇか、フラれた事と俺がコイツを意識してる事だけはどんな事をしても隠し通さないと地獄だぞッ!!)

 

(…………この様子、どんな手を使ってでも『命令』から逃れるつもりね? さぁて、どうしようかしら)

 

 敦盛としては、そもそもペットの条件に瑠璃姫へのガチ恋禁止が盛り込まれている故に。

 借金の事を考えても、幼馴染みとしても、奏への想いが残ってるからこそ、心は隠さないといけない。

 

 瑠璃姫としては、こんな絶好の機会は逃したくない訳ではあるが。

 そもそも彼のストレスの対象が自分である以上、慎重に動きた。

 今回ばかりは、本当に心当たりが無いのだ。

 

(ペット……いやペットは違うでしょ。アタシはコイツに救いの手を差し伸べたワケだし? だいたいコイツがそれぐらいでストレス爆発させるワケが無いもの、逆に利用してマウント取ってくるぐらいじゃない)

 

(やはりおっぱい、頭をおっぱいを――畜生、目を閉じてもコイツのおっぱいが視界に飛び込んでくるッ!!)

 

(…………となれば、昼の出来事ね。後でアレを確認しておかないと。今直接聞き出すのは悪手ね、自滅覚悟で力任せに来たら勝てないもの)

 

(あ、コイツなんかまた企んでるな? そうだおっぱいばかり見ないで顔だけ見れば――、いや改めて見ると睫長いな、んでもって可愛い……じゃねぇよ? え、なんでドキドキしてるんだ俺? なんで唇見ちゃうの俺? 意識してねぇからッ!! 絶対意識してねぇぞッ!!)

 

 ううっ、と顔どころか首筋まで赤くする敦盛。

 その湯気すら出そうな様子に、首を傾げるしかなく。

 

(――――もしかしてコイツ、アタシのコトが好き? いやいやまさかね、いやまぁこの美貌とスタイルで性格良し高収入のアタシなら惚れるのも無理はないけど? …………考えたらゲロ吐きそうなぐらいイヤなんだけど? ある意味僥倖って感じだけど本当に吐き気がしてきたんだけど?)

 

(拷問だ……、これは新手の拷問だ、――いや、逆に考えたらどうだ? むしろバレちゃっても…………ハッ!? 待て待て待てバレて笑われるのはまだいい、けどマジでごめんなさいされたら俺の心が死ぬゥ!?)

 

(あ、今度は青くなった器用ねコイツ。んじゃあまぁ……)

 

 瑠璃姫は首筋からフォークを離して自らも背中から退く、解放された敦盛はシュバっと立ち上がり彼女から距離を取った。

 それを感情の籠もらない目で眺めていた彼女は、『解放』の一言で特性メガネを外し。

 

「それ、捨てておいて。どうも壊れちゃったみたい」

 

「…………? 何を企んでる? というかマジで凄い発明――いや、粉々にしとく。人類には早すぎる」

 

「ま、このアタシという天才に世界が追いつけない以上、無用なトラブルはゴメンだわ」

 

「何処からツッコめば良い?」

 

「今のドコにボケがあったの?」

 

 真顔で問い返す瑠璃姫に、敦盛は溜息を一つ。

 

「んじゃあメシにすっか」

 

「そうね、あ、でもその変態プリンはアンタが全部食べなさいよ」

 

「………………一口ぐらい食べないか?」

 

「イヤ」

 

「しゃーなし、――いただきますッ」

 

「いただきまーす、…………そうだ、何かあったなら聞くわよ幼馴染みとしてね。少しぐらいは力になってあげるわ」

 

「へぇへぇ、一応覚えておくぜ」

 

(なぁーーんてねぇ、アンタの隠し事は丸裸にしてやるわっ! 精々油断してなさい!)

 

(後でコイツの部屋に突入して邪魔してやろ、絶対に諦めてねぇ、俺は秘密を守りきってみせるッ!!)

 

 ウマい美味しいと二人は表面上、和やかに食事をし。

 裏では、バチバチを火花を散らしあっていたのであった。

 

 

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