親の借金で素直じゃない幼馴染のペットになったけど、俺への好意が丸見えです   作:和鳳ハジメ

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第25話 交換する?

 

 

 翌日、敦盛は朝からボーッとしていた。

 瑠璃姫が何を言っても上の空、それでも家事洗濯などなど完璧にこなしているのは流石であった。

 ともあれ、それは登校後に教室に入って席に座っても続き。

 ――昼休みである、今この瞬間も。

 

「おい敦盛? 大丈夫か?」

 

「………………はぁ」

 

「敦盛? 大丈夫? 聞いてる?」

 

「なぁ瑠璃姫さん、コイツどうしたんだ?」

 

「そうそう、昨日までは普通だったよな」

 

「知らなーい、知ってても教えなーい」

 

 投げやりに聞こえる瑠璃姫の台詞を、竜胆は然もあらんと頷き。

 円としては眉を顰めたが、ともあれ彼女が話す気が無いなら本人に問うしかない。

 だが当人はこの有様で。

 

「どうする円?」

 

「どうするって言われても……、敦盛が元に戻るまで放置するしかなくない?」

 

「いやでも気になるだろっ、だってコイツあからさまに瑠璃姫さんと何かありましたってツラしてるだろっ!!」

 

「まぁ確かに、敦盛は一回も溝隠さんの顔を見てないけど」

 

「くぅ~~、なんて奴だ敦盛っ! 俺が瑠璃姫さんのペットならご主人様をこんな風に放置しないのにっ!!」

 

「あ、そこなんだ」

 

「――――今なんて言ったッ!!」

 

 円が呆れた視線を竜胆に送った瞬間であった、窓の外を眺めていた敦盛はぎゅるんと顔を竜胆に向けて。

 

「敦盛? お前ようやく」

 

「今、なんてッ、言ったんだ竜胆ッ!!」

 

「あー、ご主人様を放置しない?」

 

「その前ッ!!」

 

「俺がペットなら」「そうソコッ!!」

 

 ビシッ、と指さす敦盛に竜胆も円も、横目で見ていた瑠璃姫と観察に徹していた奏も。

 皆一様に、不思議そうな視線を彼に送って。

 果たして、敦盛は何を言い出すのか。

 

「――――竜胆、一日だけで良い。交換しよう」

 

「何をだ、言葉が足りてないぞ」

 

「ペットだよペット! 今日一日だけでいいからお前がアイツのペット! 俺がお前の代わりに奏さんの好きな人になる!!」

 

「あっくん!?」「敦盛?」「何を言い出すの早乙女君!? 竜胆、断りなさいっ!!」

 

 困惑の視線二名、思わず机を叩いて抗議した者一名。

 そして竜胆は重々しく頷いて。

 

「――――ダメだな」

 

「そうよそうよ! それで良いのよ竜胆!」

 

「もっと利益を寄越せ敦盛、――それで乗ってやる!」

 

「ちょっと竜胆っ!?」

 

「くッ、足下見やがって!!」

 

「はいはい待ちなさいって、何でアタシの意志を無視して話を進めようとしてるのよっ」

 

 待ったをかけた瑠璃姫、ふしゃーと戦闘態勢を取った奏。

 興味深そうにする円の前で、男二人の視線は交わり。

 

「――――良いだろう、交渉を始めるぞ竜胆」

 

「ああ、そうこなくっちゃな!!」

 

「あれっ!? アタシ達無視っ!?」「くぅっ、竜胆が……竜胆が瑠璃ちゃんのペットになってしまう……!!」

 

「うーん、見事に無視されてるねぇ」

 

 二人はアウトオブ眼中、苦笑する円が見守る中で交渉は始まる。

 

(ここは一日でも距離を置いて自分を見つめ直すッ!! その為に今俺が竜胆に出せる物ッ、それは――)

 

(何があったか分からんが……これは瑠璃姫さんに合法的にご奉仕出来るチャンスッ!! ついでに吐き出してもらうぞ敦盛ッ!! 貴様の瑠璃姫さんコレクションをッ!!)

 

(…………ふふッ、小出しにはしない。それでいて瑠璃姫に怒られないセーフラインを見極めたお宝……裏を行くか?)

 

(貰いすぎると後で禍根を残す、ここは敦盛にもリターンがある交渉を……、裏を行くぜ!)

 

 そう、彼ら二人。

 もとい円を含めた親友三人組のルール、重大な頼みごとする時は物々交換で。

 ちなみに、円が婚約者の火澄から一日逃げた時は過激なIVとグラビア写真集がトレードされていた。

 そして今回は。

 

「――――オメーの好きな黒髪ロング巨乳の子の水着写真!!」

 

「こっちはテメーの好きな銀髪ロングの子の町中スナップショット!!」

 

「なんで早乙女君が私の写真を竜胆に渡そうとしてるのっ!?」

 

「は? なんでアタシの写真をあっくんにっ!?」

 

「いや君らなんで自爆してるの?」

 

「…………中々やるな竜胆」

 

「へっ、お前こそ……」

 

 外野を無視して、二人はお互いの差し出した写真を同時に懐に入れる。

 まだ交渉は終わらない、これは前哨戦である。

 

「こんなもんじゃねぇぜ竜胆ッ!」

 

「俺もだ敦盛っ!!」

 

 貴重な奏のスク水写真と、これまた貴重な瑠璃姫の外出時の写真。

 彼らの感性としては、同等の価値。

 

(チッ、これは長引くと自爆ダメージがデカいッ!! 後で瑠璃姫に付け込まれる隙が出来てしまうッ!!)

 

(不味い流れだ……、確かに好みの写真ではあるし奏のなら俺が持っておくべきだ。――だが、これではアイツが言い寄る機会を与える事になる)

 

(どうする? 瑠璃姫の写真……いや取っておきの……ダメだッ、俺が下手にアイツの物を渡すと……)

 

(コイツに効果的なのは奏の私物っ! 持ってはいる、持ってはいるが……)

 

 火花をバチバチと飛ばし苦悩する二人、一方で瑠璃姫と奏もお互いの顔を見て。

 

(――――もしかして、これは話に乗る流れね?)

 

(何だかんだ言って竜胆は私の事……いえ、今は無邪気に喜んでいる場合では無いわ)

 

(あっくんは奏とアタシを天秤にかけている、……その今どっちに傾いてるの? ――試してみるべきね)

 

(主導権を握るなら今、竜胆と早乙女君の決着が付く前。…………そうね瑠璃ちゃん)

 

 二人は手と手を差しだし握り、頷きあって。

 そうとは知らない敦盛と竜胆といえば。

 

(――――――――よし、覚悟を決める。アイツの未使用パンツを出そう。瑠璃姫が買った、それだけで竜胆には価値がある筈だ。その後のダメージは未来の俺に任せるぜッ)

 

(出すしかないのかっ、奏が未使用のままなくしたリップクリームっ! なんでか俺の部屋に落ちてたけどっ! ちょっとその意味考えたくないがっ、ともかく未使用でも価値はある筈だっ!! 気づかれたら俺は終わりかもしれないが――――これは逃せないチャンスなんだっ!!)

 

 男二人、壮絶な覚悟を決めて静かに鞄に手を。

 その瞬間であった。

 

「別に良いわよ、取りあえずこの昼休みだけなら」

 

「そうね、昼休みだけなら面白いんじゃないかしら」

 

「…………へッ!?」

 

「うん?」

 

「………………竜胆?」

 

「仕方ない、今回は無効試合で」

 

 男二人は鞄の中身に気づかれないように、そーっと戻し。

 

「あ、そうそうあっくん? 新しく買ったアタシのパンツ返しなさいよ、先週アンタんチに置いて来ちゃったヤツ」

 

「竜胆、そういえば私が買ったリップ。貴方の部屋に忘れたのを思い出したわ。後で返してくれないかしら?」

 

「あッ、はい……」

 

「も、勿論大丈夫だぜっ!!」

 

「つかぬ事を聞くけどさ、竜胆? 敦盛? 君たち次は何を出そうとしてた? 冷や汗が凄いけど……」

 

「それは秘密だぜ円!! 男の友情の秘密ってヤツだッ!!」

 

「そうだぜ円!! トップシークレットだぜ!!」

 

 ひきつった笑みを浮かべる二人に、女性陣は肩を叩く。

 

「出せ、今なら許すわ。今はアンタはペットじゃないし? 気の迷いにしてあげる」

 

「私の好きな人じゃないんでしょう? 返すつもりで持ってた事にしてあげるわ」

 

 どうして気づいたのだ、なんで知っているのだと男二人は戦々恐々としながら恭しく献上し。

 ともあれ、瑠璃姫のペットは昼休みの間だけ竜胆となったのだった。

 

 

 

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