親の借金で素直じゃない幼馴染のペットになったけど、俺への好意が丸見えです 作:和鳳ハジメ
早乙女家にやってきた奏の私服姿は、敦盛にとって新鮮に見えた。
彼が普段目にするのは、常時胸元を大きく開けた、或いは巨乳を強調するゴスロリ姿の瑠璃姫。
白いニットワンピースは、とても似合っていて。
――ともあれ、三人はソファーに座り。
「それで、話って何? 竜胆が呼ばれていない訳だし想像はつくけれど」
「話が早くて助かるわ、……というかあっくん、さっきから何をバカな顔して奏を見てるの? その緩んだ顔戻しなさいったら」
「あら瑠璃ちゃん、焼き餅?」
「冗談キツいわよ奏、ジェラるような関係じゃないってーのっ」
「ふぅん、まぁそういう事にしておいてあげるわ」
「勝手にそうしてなさい、それで本題に入りたいんだけど――」
私服姿に見惚れている敦盛を放置して、瑠璃姫は彼女を呼び出した用件を話そうとした。
だが。
「悪いけど、早乙女君と恋人になれってのはナシね」
「あれ? 俺処刑されてる?」
「は? あっくんの何処が不満なの!? 掃除洗濯料理全てパーフェクト! 顔は普通でファッションセンスも普通! 油断すると躊躇無くセクハラしてきてさっきも全裸土下座して童貞卒業しようとする欠点があるけどもっ!!」
「やっぱ俺、処刑されてるよな? つか俺の頭の中を勝手に読むなッ!! ちょっといい雰囲気になってただけじゃねぇか無駄に誇張すんなッ!!」
「早乙女君、本音は?」
「コイツ俺の事好きじゃねって思ったので、取りあえず――――はぅあッ!? 誘導尋問とは卑怯だぞ奏さんッ!?」
「へぇ~~、やっぱそんなコト考えてたんじゃない」
「早乙女君? ちょっと警察行く?」
「俺おうち帰る!!」
「残念、アンタのお家はココよ」
逃げようにも逃げ場はない、というか何故に敦盛はわざわざ休日にこんな辱めを受けなければならないのだろうか。
(マジでコイツは何考えてるんだよッ!! スケスケ眼鏡とはワケ分からん怪しげなモン作って――――いや待て、なんで奏を呼ぶ日に、俺にそんなモン見せたんだ?)
そもそも奏と会うなら外でも良いし、瑠璃姫の家でも良い。
わざわざ敦盛の家に呼び、その前に発明品を使わせようとした理由とは?
「…………」
「どうしたの早乙女君、難しい顔をして。あ、私と竜胆の仲を進展させる良い方法でも思いついたかしら?」
「アンタが何考えたって、バカの考え休むに似たりってね。どうせなら、奏を口説き落とす台詞でも考えたら?」
(コイツらは…………ッ!!)
敦盛の事が好きな筈なのに、何故か奏との仲を推す瑠璃姫。
竜胆第一で、敦盛の好意は瑠璃姫に向いていると決めつける奏。
この場には居ないが、何故か瑠璃姫に妙な忠誠心を持ち、奏の事を愛しているのが丸わかりなのに拒絶する竜胆。
(なんで俺の好意だけ行き場が無いんだよッ!!)
確かに、同時に二人の女の子を好きになってしまったという不誠実な所は自覚している。
同時に、性的にガッついてるみっともない所も自覚している。
だが、だけど、これは無いだろう。
恐らく瑠璃姫は、敦盛の奏への好意にテコ入れする為に彼女を呼んだ。
そして奏は、それを分かっていて利用する為にわざわざ来た。
ならば。
(俺にだって、役得があっても良いじゃねぇの?)
プチっと何かがキレた、直後彼は立ち上がって食卓に置かれたスケスケ眼鏡を手に取る。
「早乙女君?」
「ふーん、アンタそれ使うの?」
「――――ああ、使う。それがテメーの目的で、奏さんを呼んだ理由の一つだろう? ……いいぜ、踊ってやるよ」
「っ!? もしかしてソレ瑠璃ちゃんの発明品っ!? ちょっと貴女何のために私を呼んだ訳っ!? 早乙女君を押しつけようとする為じゃないのっ!?」
困惑する奏、ニヤニヤする瑠璃姫。
そして。
「ふおおおおおおおおおおお!! こ、これがスケスケ眼鏡くん!! 服の上から下着が丸見えになるという男の夢!!」
「瑠璃ちゃん!? ――ってコッチ見ないで早乙女君!!」
「ふふふ……隠すのが少し遅かったな奏さん。俺には黒レースの下着がばっちり…………うん? なんだコレ、経験人数の分かる……?」
「おおおおおおおおおおおおおおっ!? 今すぐ外しなさい早乙女君!!」
「うっそマジでッ!? これマジで経験人数分か「天誅!!&奪取!!」鳩尾ィ!!」
「ギャハハハハハ!! 残念ねぇこれでアンタに厳しい現実を教えてあげようかと思ったのに」
「いえ瑠璃ちゃん? 自爆覚悟で変な事しないでくれるっ!? 技術は凄いけど世に出す発明じゃないし、早乙女君に一番渡しちゃいけない発明よねコレっ!?」
敦盛が操作を戸惑った一瞬、距離を詰めた奏が重いボディブロー。
それがいい感じに入った敦盛は踞り、彼女は悠々と眼鏡を回収する。
「お、お前ェ……マジで何がしたいんだよッ!!」
「え? いつもの発明品テストだけど?」
「なんで私を呼んだのよっ!?」
「だってアタシだけだと矛先がアタシに向くし、あっくんに下着なんて見られたくないじゃない」
「私も嫌よ!! 私の下着を見ていいのは竜胆だけ!!」
「アタシはノーダメージ、それにあっくんは奏相手だとセクハラ攻撃は言葉だけでしょ。――ほら、今日こそはアタシの勝ちってねっ!!」
形の良い大きな胸を張って揺らす瑠璃姫は、ほら、と奏に眼鏡を渡すように手を出す。
だが彼女は呆れた顔をして、その眼鏡をポケットへとしまい拒否。
「奏? 返してほしいんだけど?」
「そーだそーだ奏さん! それは俺が責任を持ってコイツへのセクハラに使うッ!!」
「ダメよ、早乙女君に渡すと私にまでセクハラ被害が来るし。――何より、こんな便利な物を手放すなんて出来ないわ」
それは彼が今まで見たことが無い、暗い笑顔だった。
くつくつ、と不気味な声を漏らし。
情念深い女の姿、そのものである。
「いや奏? アンタに使い道ないでしょ」
「は? これがあれば竜胆を監視出来るのよ? ――それは凄いアドバンテージじゃない」
「奏さん? 男相手に使うのか? アイツの下着を監視してどうするんだ?」
すると彼女は怒気を孕みながら、瑠璃姫の両肩を掴んで問いつめる。
「…………経験人数よ、これは経験人数や回数が分かるのよね瑠璃ちゃん」
「ま、まあ、直前数時間ぐらいだけど」
「いつもながらどんな技術使ってるんだ? 未来に生きすぎてるぞ?」
「そう……ふふっ、分かるのね? これで、これで私が優位に立てる!! あはっ、あははははははははっ!!」
高笑いする奏に、瑠璃姫は恐怖と困惑で顔が歪む。
そしてそれは敦盛も同じで。
だからこそ、理由を聞かなくてはならない。
「その……なんだ? なんで竜胆の経験人数を監視する必要があるのか教えてくれないか?」
「そ、そうねっ。あっくんなら下心だけだろうけど、なんで竜胆に……」
「……………………竜胆はね」
すると、奏は座った目でぎょろりと二人を見て。
幽霊も裸足で逃げ出す威圧感に、幼馴染みコンビは震えた。
「竜胆はね、今――――私と妹で取り合ってるの」
「え? どゆことです奏さん?」
「だからね? 今現在、竜胆と肉体関係を持っているのは二人居るの。私と妹。そしてどちらも恋人じゃない。――――理解した?」
「ちょっと理解したくないんですがッ!?」
「何なのっ!? アンタ達、尋常じゃないぐらい爛れてないっ!? え? 死んだ双子の姉と竜胆が付き合ってて、今度はアンタと妹が取り合ってるのっ!?」
「正確には、あの子が生きている時からよ。――まったく、思い出になってしまったら勝ち目が無いじゃない! 生きていたら諦めきれたのにっ!! だから私だけの竜胆にするには…………この眼鏡で出し抜くのよっ!!」
(あ、コレもしや俺にマジで百パーセント脈ナシなパターンじゃね? いやまだワンチャン、ワンチャンあるから!!)
(コイツっ!? 四角関係でも動じないと思ってたら、もっとヤバい修羅場をくぐっていたというのっ!?)
ゲームセット寸前でも諦めきれない敦盛、戦慄する瑠璃姫。
二人は戦意喪失したと見て、奏はそのまま立ち去ろうとし。
「ていッ」
「ちょっと早乙女君っ!? それを返しなさいっ!! おっぱいぐらい揉ませてあげるからっ!!」
「それで揉んだら、俺への好意が今の友達以下のゴミ屑になった挙げ句に一生利用すんだろテメェ!!」
「当たり前じゃない! ああもう待ってっ! 待ちなさい早乙女君!!」
「バカ野郎俺は奏さんが好きなんだぞそれ以上に竜胆には幸せになって欲しい気もするんだ後悔するだろうけどもっと後悔しない為に――――――」
狭いリビングの中で逃げる敦盛、追う奏。
そして、彼は血の涙を流し。
「最後に瑠璃姫の下着を確認して…………ってテメェ!! なんで何も履いてないんだよッ!!」
「ああ、見ちゃったわねあっくん。それ、アンタがアタシを見ると三秒後に自爆するから。いやぁ念のために用意してて良かったわ」
「テメェ!? うおおおおお間に合えエエエエエエエエエエ!!」
敦盛は慌ててゴミ箱に投げ入れて直後、ドカン、と小さな爆発音。
数秒間、誰もが無言で。
「――――ちょっと奏さんや、俺、瑠璃姫のおっぱい揉もうと思うのだが」
「奇遇ね早乙女君、でもそれは私に任せてくれないかしら。妹を行動不能にする秘技、瑠璃ちゃんにも試そうと思って」
「あ、アタシ家に帰るわ」
「逃がすかテメェ!!」「逃がさないわよ瑠璃ちゃん!!」
「ぬおおおおおおおおおおおっ!! 頑張れアタシ!! ちょっと予想以上に奏が強敵で貞操がヤバイけどきっと乗り越えられるわっ、この天才であるアタシならっ!!」
狭いリビングの中、今度は瑠璃姫を二人が追いかけて。
三十分後、彼女は逃げ切ったかに思えたが敦盛の策により、自室に奏と二人っきり。
何か色々と、揉まれてしまったらしいのであった。