親の借金で素直じゃない幼馴染のペットになったけど、俺への好意が丸見えです   作:和鳳ハジメ

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第33話 リテイク

 

 

 罠にはめたつもりが、全てバレて。

 その衝撃からいち早く我に返ったのは、奏であった。

 彼女は、不敵な顔で笑うと。

 

「ふっ、安心したわ。――それしかバレてないのね」

 

「あら随分と余裕じゃない、まだ何かあるワケ?」

 

「おい竜胆聞いてるか?」

 

「いや、俺も初耳だ……」

 

「男共はこう言ってるけど? 口からデマカセみたいなつまらない真似はしないわよね?」

 

「まさか、この際ですもの敢えて言うわ。――偽装恋人で瑠璃ちゃんの本音を聞き出そうだなんて、手段に過ぎないのよ!!」

 

 嫌な予感がする、そう竜胆が直感するが時は遅し。

 制止する間も無く、彼女は竜胆の腕を掴み。

 そして。

 

「え、俺も!? 奏さん何を――」

 

「――――提案するわっ!! 私たち四人で恋人になりましょう!!」

 

「………………おい奏っ!?」

 

「奏さんッ!?」

 

「ちょっと奏? 何考えてるのアンタ?」

 

 両手に花もとい両手にバカ二人、奏は大きな胸を揺らして瑠璃姫を見据えた。

 

「本当はね、瑠璃ちゃんが偽装恋人に動揺した所で提案しようと思ってたんだけど、そうはならなかったから。――良い案だと思わない? 私は竜胆が好き、そして竜胆は瑠璃ちゃんの事がまんざらじゃない。瑠璃ちゃんは早乙女君に執着してるでしょう? そして早乙女君は私の事が好き、ね、これで丸く収まって文字通り大団円よ!!」

 

「聞いてないぜ奏さん?」

 

「…………成程、目から鱗だな」

 

「竜胆? 納得してないでテメーが止めろ?」

 

「分かってくれるのね竜胆!!」

 

「――――――ああ、確かに友情も愛情も壊さないでハッピーエンドを迎えるにはコレしかないな」

 

「愛してる竜胆!!」

 

「愛してるぜ奏!!」

 

「アタシ……今何を見せられてるのかしら?」

 

「え、何この状況ッ!? 理解が追いつかないんだがッ!?」

 

 いったい奏は何故こんな事を言い出したのか、そして竜胆も何故それに乗ったのか。

 戸惑う敦盛の頬に、柔らかい感触が一度。

 

「………………へ?」

 

「ちょっと奏っ!? アンタ今何して!?」

 

「おい敦盛こっち向け」

 

「は? 竜胆強引に――――ンンンッ!?」

 

「竜胆!? なんでアンタまで敦盛にキスするのよっ!?」

 

「ぬおおおおおおおおおおおおおッ!? な、なんでだテメェ!? なんで今キスしやがった!? 唇だったらブン殴ってたぞゴラァ!! 助けて瑠璃姫!!」

 

「ふっ、つれない事を言うな敦盛…………。奏がこう言い出した時、俺の心は決まった――奏を愛する様に敦盛と瑠璃姫さんを愛そう、とな!」

 

「この流れで瑠璃姫にキスしようとしたら、例え頬でも手の甲でもマジで殴るからな?」

 

「怒ってはダメよ早乙女君――いえ、敦盛君。私も瑠璃ちゃんと敦盛君も愛する覚悟は出来ているわ」

 

「何で二人ともアタシを巻き込むコト前提なワケっ!?」

 

「おい竜胆ッ!? テメェ、俺とセックス出来るのかよッ!?」

 

 どん引きする敦盛と瑠璃姫、二人は手を取り合い怯えながら距離を取り。

 逃がさないと手をワキワキさせながら奏がにじり寄り、竜胆は二人の後ろに回る。

 

(なんでこうなったッ!? つーかマジで四人で恋人になる気なのかッ!?)

 

(お、落ち着きなさいアタシ!! 惑わされるなっ! 全部ブラフに決まってるっ!!)

 

(――――…………いやでも? 案外悪く無いんじゃないか? だって瑠璃姫も奏さんも恋人で、竜胆の事も愛せるようになればワンチャン?)

 

(はぅあっ!? このバカ揺れてないっ!? もしかしなくても揺れてないっ!? こんなバカな話を信じようって言うのっ!?)

 

 ピタっと止まり考え込む敦盛の姿に、瑠璃姫はショックを隠せない。

 慌てて彼の腕にしがみつくと、大声で。

 

「おバカっ!! 昨日アンタ達は何で喧嘩してたのよっ!! 奏と竜胆を応援するって決めたんじゃないのっ!? だからアタシはアンタが傷ついてると思って朝か――――ぁ」

 

「…………瑠璃姫? お前………………?」

 

「だとよ敦盛、瑠璃姫さんはお前を心配してたみたいだぜ?」

 

「ふふっ、ですってよ早乙女君」

 

「しまったあああああああああああっ! アタシとしたコトがああああああああああ!!」

 

 頭を抱えてしゃがみ込む瑠璃姫に、敦盛は目を疑いながら。

 

「マジで俺を心配して?」

 

「…………そうよ、なんか文句あんの?」

 

「ドゥー、ユー、ラブ、ミー?」

 

「何でアタシが言わなきゃいけないの? アンタなんて大嫌いなんだからっ!! 勘違いしないでっ!!」

 

「あら残念ね早乙女君、で、どう? 形は違ったけど瑠璃ちゃんの本音は」

 

「お、俺は……ッ」

 

「男を見せろ敦盛!! 俺はお前を信じてるぜっ!!」

 

 明らかに誘導されている、けれど悪い気はしなくて。

 敦盛は真っ赤に染まった頬をぽりぽりとかきながら、瑠璃姫に右手を差し出して。

 彼女は無言で手を受け取ると、立ち上がる。

 静寂。

 朝のコンビニの前、学校の近くで生徒達が騒がしく通り過ぎているというに、何故かとても静かに。

 

(あーもう、奏さんにしてやられた……。最初から二段構えの作戦だったんだな? 偽装恋人にコイツが動揺すれば良し、四人で恋人発言に俺が動揺すれば瑠璃姫がボロを出す)

 

 敦盛が知らなかったからこそ、竜胆が即座に合わせてくれると確信している絆があったからこそ成功した奏の企て。

 

(やっぱり瑠璃姫は俺の事を……、そうだよな? だから今この場でウヤムヤにしないし逃げもしないんだよな?)

 

 つまりは脈アリ、この幼馴染みは敦盛の事が好きで。

 奏と彼女で揺れている状態が嫌で、彼女なりに決着を望んでいたのだろう。

 ――彼が、自分だけを見てくれる事を信じて。

 

「………………なんか言いなさいよ」

 

「ちょっと待て、後十秒待ってくれ」

 

「早くしなさいよ、十、九、八、七――――」

 

 カウントダウンを始めるその声は、少し震えていないだろうか。

 その唇は、笑っていないだろうか。

 

(覚悟、決めないとな)

 

 早乙女敦盛は、溝隠瑠璃姫が好きだ。

 それは福寿奏より強く、きっと距離が近すぎたから気が付かなかったのだ。

 彼は、大きく深呼吸して。

 

「――好きだ瑠璃姫、俺の恋人になってくれ」

 

「やり直し、全然心がこもってない。リテイクよリテイク、必死さが足りないわ」

 

「…………え?」

 

「…………え?」

 

 一瞬、敦盛は何を言われたか理解出来ず。

 瑠璃姫は、敦盛が何を不思議に思うのか理解出来ず。

 

「ちょ、ちょっと瑠璃ちゃん? それは幾ら何でも……」

 

「奏は黙ってて、これはアタシとあっくんの問題なんだからっ」

 

「あー、瑠璃姫さん? 何処にやり直す必要が?」

 

「竜胆はバカなの? だってあっくんはアタシと恋人になりたいんでしょ? ご主人様とペットのルールを破って、幼馴染みっていう関係を越えて、恋人になりたいんでしょ? ――なら、もっと必死になって告白するべきじゃないの?」

 

 さも当然の様に述べる彼女に、敦盛はあんぐりと大口を開けた後。

 気づかずに握っていた拳を、わなわなと震わせて。

 

「リテイクって何なんだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 思わず、膝から崩れ落ちたのであった。

 

 

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