親の借金で素直じゃない幼馴染のペットになったけど、俺への好意が丸見えです   作:和鳳ハジメ

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第42話 ヤバい(確信)

 

 

 敦盛と瑠璃姫が休んでから早四日、クラスの皆は、特に竜胆達三人は物足りなさを感じており。

 セクハラ野郎とはいえ、彼はクラスのムードメーカー的なポジション。

 最近では、彼女からお仕置きを受ける姿も日常風景の一部となって。

 

(思ったよりクラスに影響が出てるね、いや良いことなんだけど……この拭えない不安は何なんだろ)

 

 彼の教師として、そして人としての勘が警告を発している。

 いざとなれば、二人の家に乗り込む事も辞さないつもりではあるが。

 そんな瞬間であった、円がガタっと立ち上がる。

 

「敦盛と溝隠さんのツーショット写真が来たっ!!」

 

「え、マジでっ!? ――じゃなくて授業中だからね? 自重しよう樹野君」

 

「あ、すみませんでした……。でも気になりません?」

 

「…………よし、気になる者は確認して良いよ。今から五分間だけ、そしたら授業に戻るからねっ!」

 

「よっしゃ先生話が分かるっ!!」

 

「それじゃあ俺も見てみるか」

 

「そうね、あれから一切の音沙汰が無いもの」

 

 担任が許可し、親友達もそのつもりなら他の生徒達もつられてスマホを手に。

 

「おい円? 何処でみれる?」

 

「敦盛のツイッター、鍵アカだけどクラスのみんなは大丈夫でしょ?」

 

「――――これか、…………?」

 

「あら、仲が良さそうで良いわね」

 

「けっ、上手くやりやがって」「そうか?」「羨ましい、アタシも恋人が……」「うーん?」「なんだこの違和感? 普通にも見えるんだが」

 

 反応は半々、羨ましがる者、素直に祝福する者。

 つまり素直に受け止めた者が半数。

 残りは。

 

「――――待って、みんな画像は見たね? ちょっと意見が聞きたい」

 

 脇部英雄は号令をかける、写真には二人が仲良さそうに寄り添ってハートマークでデコってある。

 だが、拭えない違和感があるのだ。

 

「先生? 私には普通のツーショットに見えますけど……」

 

「確かにそうだね福寿さん、普通の恋人に見える。……でも、そこが変だと思わない?」

 

「――俺には分かります、円もそうだろ?」

 

「…………やっぱり竜胆も分かる?」

 

「勿論だ」

 

 そして二人は声を揃えて。

 

「「バニースーツじゃない!!」」

 

 途端、男子は異常に納得し女子は冷たい視線を。

 

「ちょっと竜胆?」

 

「待て奏、これには理由があるんだ」

 

「女子は知らないだろうけどさ、ウチのクラスの男子は皆――お互いの性癖を知ってる」

 

「竜胆?」

 

「あ、それ僕も初耳だね。そんな楽しそうな事になんで呼んでくれなかったんだいっ!?」

 

「だって先生に漏らしたら、全校生徒巻き込みますよね? そしたら女子にバレるじゃないですか」

 

「うぐっ、冷静な指摘ありがと樹野君……」

 

 残念そうな脇部英雄はともかく、男子も女子もうんうんと首を縦に。

 人望のある教師で敬愛する担任ではあるが、生徒からしてみれば少し暴走過剰でもあるのだ。

 ともあれ。

 

「敦盛が瑠璃姫さんにも隠し通していた性癖、……それはバニースーツなんだよ」

 

「アイツ言ってたよな、将来はアメリカに行って本場のプレイガールのバニースーツ姿を拝むんだって……」

 

「ああ、早乙女の情熱は本物だったぜ」「そこだけは尊敬すべきだった」「そういや俺、黒のバニースーツ預かってたな」「ボクは赤色の預かってた」「バニーのエロ本預かってた」「バニーのAV預かってた」

 

「ここまで隠し通していたのなら、黙っているのが筋じゃないのかしら?」

 

「いや奏は理解してねぇ、この写真の意味を全然理解してねぇっ!!」

 

 ドンっと悔しそうに机を叩く竜胆、周囲の男子からは啜り泣きすら聞こえてくる。

 その異様な光景に奏達女子は戸惑い、脇部は思考を巡らせた。

 

「――――もしかしてさ、早乙女君って彼女が出来たらバニースーツでとか、エロい写真とか、趣味全開で自慢するって言ってたかい?」

 

「そうなんだよ先生!! 敦盛は……敦盛はセクハラ野郎の名に恥じない性欲野郎なんだ!! その敦盛が……あの溝隠さん相手に素直なツーショット写真を送ってくる訳がないっ!!」

 

「そうだぜ先生っ!! 最低でも俺のオンナだぜ的に胸を揉んだり、頬にキスぐらいはしてる写真を乗せる筈だっ!!」

 

「竜胆? 樹野君? 女子から早乙女君への好感度が無尽蔵に下がっていってるんだけ――――?」

 

 他の女子と共に呆れた視線を送っていた奏は、はたと気づいた。

 確かにこの写真には違和感が、というより無視できない要素がある。

 

「…………皆、待って。よくこの写真を見て」

 

「何か気づいたみたいだね、福寿さん」

 

「先生……、瑠璃ちゃんの格好を良く見てください。気になる所があると思いませんか?」

 

「――――まさか、これか?」

 

「分かったの竜胆?」

 

「円もみんなも、良く見てくれ注目すべき点は瑠璃姫さんの首、それから手首とか。――普段なら肌が露出してそうな部分だ」

 

「………………なるほど。こういうコトなのかっ!?」

 

 脇部英雄の中で、違和感が一本の線となって浮かび上がる。

 二人の性格、告白の瞬間の違和感、それらから予想出来る――最悪の可能性。

 

(あわわわわわっ!? こ、これは不味いっ!? 今すぐ動かなきゃいけない案件だよねっ!? 杞憂だったり、予想もしてない異常性癖の持ち主だったらともかく…………っ!!)

 

 もはや授業をしている場合ではない、だが今あるこの写真、推測だけでは動くのには教師として不十分だ。

 ならば。

 

「――――よし、今から対策会議をするよ。授業は中断してみんな参加して」

 

「先生!? いえ確かに怪しいですけど、話し合う事ですかっ!?」

 

「その疑問はもっともだね福寿さん、でも僕の勘は。そして二人の性格や今までの不審点を考えると、今対策を考えておかないとダメなんだ」

 

「…………先生は敦盛と瑠璃姫さんの仲が怪しいって思うのですか?」

 

「その通りだよ入屋見君、みんな気づいたと思うけど――溝隠さんは包帯を多く必要とするぐらいの怪我をしているみたいだ」

 

 その言葉に、全員がはっと引き締まった顔つきになって。

 

「そしてもう一つ。……なんでこの写真さ、早乙女君の顔が写ってないんだろ。そりゃ鍵アカとはいえSNSだし用心するのは理解できるけど、ちょっと不自然じゃないかい? だって溝隠さんの嬉しそうな顔は写ってるっていうのに」

 

「…………先生は、瑠璃姫さんが敦盛に何かしていると?」

 

「君たちには残酷かもしれないけれど、はっきり言うね。――――二人は恋人関係ではないと思う」

 

「先生っ!? 先生も見たじゃないですか、あの告白シーンをっ!?」

 

「確かに僕を含めたクラスの半数がその場に居た、……でも不審に思わなかったかい? 違和感を覚えなかったかい? 確かに溝隠さんは少し素直じゃない性格をしているとはいえ、早乙女君をあんな必死になって告白させる必要があったのかな?」

 

「それは……」

 

 奏は反論出来なかった、それは彼女自身も不自然に思っていたポイントだ。

 確かに彼女の親友は素直とは言い難い性格をしている、俗に言うツンデレとも違う、もう少しひねくれた性格だ。

 ――だがそれが故に、そうする理由があったとするならば。

 

(符合していってしまう……! なんで私と早乙女君の仲を応援していたか、早乙女君の好意を素直に受け取らなかったかっ!!)

 

 同じ事を思ったのか、女子達は思わずお互いの顔を見合わせて。

 男子もまた、冷や汗を一つ。

 

「みんな早合点はいけないよ、確かに現状は溝隠さんが怪しいのは確かだ。……でも心配しなきゃいけないのは早乙女君の方だ」

 

「確かに、アイツが何かされてるって――」

 

「それは少し違うよ入屋見君、君の方が良く理解してるだろう? ――――本当に危険なのは、早乙女君が暴走するコトさ」

 

 担任教師の言葉に、クラス全員が今一つ飲み込めない感じで。

 ならばと彼は続ける、脇部英雄としては。

 

「溝隠さんは要注意人物だ、彼女は天才で行動力もある。――でもね、愛の重さという観点から見ると早乙女君の方が圧倒的に危険なんだよ」

 

「…………それ、オレは分かる気がします」

 

「どういう事なの樹野君!?」

 

「俺が答えるぜ奏、アイツは、敦盛はな……諦めないんだ絶対に、何に対しても絶対に諦めない、最終的に手段と目的がひっくり返っても諦めないタイプなんだ」

 

「つまりそれって……」

 

「全ては杞憂であれば良い、でもね、もし溝隠さんが早乙女君を罠にはめる為に告白を受け入れたのだとしたらさ…………彼女を愛する早乙女君は、彼女の行為に耐えきれなくなったとき、なおかつ彼女を諦めないのであれば何をするのかな?」

 

 重い沈黙が流れる、セクハラ野郎ではあるが誠実で破天荒な所がある敦盛。

 いかに瑠璃姫が天才だったとして、彼女が主導権を握っていたとしても。

 

「理解できました先生……、でも何を話し合うんですか?」

 

「うん、ある程度は方向性があるんだ。みんなも聞いて欲しい、特に樹野君と入屋見君。――――親友である君たち二人が鍵だと思うから」

 

「分かりました!!」

 

「敦盛の為なら何でもするぜ!!」

 

「よし、それじゃあ対策会議を始めるよっ!」

 

 敦盛と瑠璃姫の知らない所で、事態は動きだそうとしていた。

 

 

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