親の借金で素直じゃない幼馴染のペットになったけど、俺への好意が丸見えです   作:和鳳ハジメ

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第55話 真心を君に

 

 

 どうして信じられるのだろうか、瑠璃姫が敦盛の事を大好きだ等と。

 彼女は敦盛を憎んでおり、その憎しみが解消するのだ。

 わざわざ引き留める理由なんて――。

 

(――まさか、俺の事をもっと苦しめる為にッ!?)

 

 まさか、まさかである。

 彼女はまだまだ憎み足りないのだろうか、それとも敦盛を苦しめる事に人生を捧げる快楽を得てしまったのか。

 

「ねぇあっくん、お願いよ……大好きなの、アンタが居ないと生きていけないの…………」

 

「………………今更しおらしくしたって無駄だぞ、テメェの魂胆は分かってるんだ」

 

「っ!? ちがっ、違うのあっくん!!」

 

「かわいこぶっても通用しねぇって。――な、この際だから本音を言ってくれよ」

 

「だからアンタの事が好きなんだってばっ!! 前に言ったでしょう、アタシはアンタの告白に愛してるとも好きだとも返してなかった、でもっ!」

 

「初めての愛の言葉だから信じろって?」

 

「…………今までの事を考えたら、疑うのは無理も無いわ。でも…………、信じてくれないのなら一緒に死ぬ、否定しても一緒に死ぬ」

 

「そこは信じてくれなくても良い、何度でも言い続けるとかじゃねぇの?」

 

「は? なんでそんな迂遠な事を言わなきゃいけないの? 第一、言い続ける間にアンタが死んじゃうじゃない」

 

「いま一緒に死ぬって言ったのお前だろうがッ!? ああもう訳が分かんねぇよッ!? 鬼の形相で追いかけてきたと思ったら次は愛の告白だァ? テメェ頭打ったんじゃ――――――ッ!?」

 

 敦盛は思い至った、彼女の事は完全に守ったと思っていたが。

 あの瞬間に間に合ったのが奇跡、それに落下の衝撃は強く、最後まで抱きしめていた筈だが。

 

「………………すまん瑠璃姫。俺はお前を守りきれなかったんだな、だから頭を打ってそんな事を……――病院に行って精密検査を受けよう、頭の打撲は危険だからな」

 

「そっくりそのままアンタに返すわよっ!? どうしてそんな勘違いしてるのよっ!?」

 

「いいか瑠璃姫……お前の気持ちは本物だ、けどそれは頭を打った衝撃が産んだ一時の幻。……さ、病院に行こう、明日になれば自分の言葉に後悔する筈だ」

 

「んもおおおおおおおおおおおおおおっ!! 断言するわよっ、アンタはアタシを完璧に守った!! 最後まで頭を抱えてくれて、しかも下敷きになってくれたおかげで傷ひとつ、打ち身ひとつ無いわよっ!! なんなら今この場で全部脱いで確認するっ!?」

 

「ちょッ!? 脱ぎ出すんじゃ――――ッ!? 痛ッ、あだだだだだだだッ!? ちょっと動いただけでスッゲェ痛いッ!?」

 

「急に動かないであっくんっ!! アンタの方が重傷なんだからねっ!!」

 

 敦盛の怪我の状態を、慌てて確認しはじめる瑠璃姫。

 その心配溢れた瞳に、甲斐甲斐しい労りの手つきに。

 

(…………コイツ、マジで俺の事を心配してんのか?)

 

 解せない、彼女にとって今は絶好のチャンスだ。

 もし今後も監禁するつもりなら、二度と立ち上がれないぐらいに骨折を悪化させるぐらい出来る筈だ。

 

(頭は打ってない、そして本気で心配してる。――なら、さっきの言葉は?)

 

 敦盛への感情に、憎しみ以外の何かがあるとして。

 それが発揮されるのは、どんなタイミングか。

 

(ま、まさか…………、そうなのか俺ッ!?)

 

 血の気が引く、まったく情けない限りだと心の冷静な部分が溜息を。

 でも仕方がない、いざ目の前にしてしまえば、その時までの余裕があるのならば、きっと誰だって少しは。

 

「大丈夫あっくんっ!? 何処が苦しいのっ!? 顔が凄く青ざめて――――」

 

「…………なぁ、瑠璃姫。お前は優しいんだな」

 

「え、いきなりどうしたのよ? それより痛む箇所を」

 

「良いんだ、……もう、そんな優しい嘘は付かなくて良い」

 

「は? 嘘? ………………あっくん?」

 

 言葉の意味が分からない、否、分からないフリをしてくれているのだろう。

 その優しい姿に、敦盛の目から涙が一筋。

 

「もう……助からないんだな俺…………」

 

「え? いやあっくん?」

 

「やっぱりお前は素敵な女の子だった……、さっきの言葉、もうすぐ死ぬ俺の為に言ってくれた言葉なんだな?」

 

「もしもしあっくん? あっくん?」

 

「――――ありがとう瑠璃姫、お前の愛の言葉……嬉しかった。これで思い残す事なく死ねる」

 

「いやあっくん? 右肩から落ちたから、そこはかなりヤバイ事になってるだろうけど。多分、頭はたんこぶ程度よ? 別に意識の混濁もないし、目に異常も出てないし、呼吸だって落ち着いてるわ」

 

「………………ふッ、下手な嘘は止めろ。俺はもう長くないんだろう?」

 

 ありがとう、と繰り返す敦盛に瑠璃姫は戦慄した。

 好意が伝わってない所の話じゃない、己が好意を抱く事すら信じられていないのだ。

 

(嗚呼、……嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼、嗚呼――――)

 

 自業自得、因果応報、そんな言葉が脳裏にぐるぐると。

 どうすれば良い、このままだと病院に運ば入院したとして。

 

(結局死んじゃうじゃないのコイツっ!?)

 

 今度こそ、と敦盛は自分勝手な満足して死を選ぶだろう。

 瑠璃姫の為と、瑠璃姫の輝かしい幸せな未来を信じて、死ぬ。

 

「………………あっくん」

 

 今この瞬間、彼女の中で何かがポッキリ折れた。

 

 

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