地底人迷宮譚~迷宮を差し置いて遺跡に潜るのは間違っている~   作:筆記者カレル

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執筆速度が上がるカレル文字とかありませんかね。見捨てられない程度には投稿間隔を維持したいところですが、週一ですらかなりギリギリな有り様です。
毎日投稿とか隔日投稿とかしてる方々の正体って、実は上位者なのでは? 地底人は訝しんだ。


勇者と地底人の呼び声

「──それで、何か申し開きはあるか?」

「ありませーん……」

「ごめん、なさい……」

 

 模擬戦から暫くして。観客の去った屋内訓練場の地面に、普段の黒衣に着替え直したカインと目を覚ましたアイズ・ヴァレンシュタインの二人が肩を並べて正座していた。

 そんな二人を氷のような眼差しで睥睨するのは、翡翠色の髪を靡かせる美貌のハイエルフ。

 

 ──ロキ・ファミリアの()()()、リヴェリア・リヨス・アールヴであった。

 

「見ろ、あの様を。あれほど頑丈に造った訓練場の壁が粉々だ」

「凄いよねぇ。まさか付与魔法(エンチャント)と剣技だけでこれ程の破壊力を生み出すなんて」

「ああ、我がファミリア自慢のエースだ。──お前が避けなければ、その力が建物を破壊することもなかったろうにな」

「え、ボクに死ねと仰る?」

「お前は死なんだろうが。仮にもLv.6が何を言っている」

 

 いや死ぬが、というツッコミを堪えてカインは見るも無残に破壊された壁を見る。そこには直径三M(メドル)にも及ぶ大穴が空いており、その先の中庭が丸見えになっていた。

 ちなみに訓練場の壁は厚さ四十C(セルチ)もあり、しかもベオル山地から切り出された上質な石材を使用している。怪力自慢のティオナですら素手で破壊するのは難儀するだろう。

 

 いや死ぬ。口には出さずカインは確信を深めた。こんなものの直撃を喰らえば狩人の身体など一瞬で細切れ(ミンチ)になってしまう。

 というかリヴェリアはカインを過大評価し過ぎている。確かに死んでも蘇るし、筋力・技術・血質・神秘のステータスを極めたカインの攻撃能力は常軌を逸しているが、その代償と言わんばかりに彼は耐久力がない。リヴェリアよりはマシといった程度か。完全後衛職の魔導士に耐久で勝ったところで何だという話だが。

 

「そりゃまあ、やってやれない事もないよ? でも規模が規模だったし、秘儀を使わないであれを相殺するにはそれこそ《千景》か《聖剣》でも使わないと……」

「つまり、相殺しようと思えばできたのにやらなかったと?」

「いや、まあ……で、でもそんな力技は“狩人の業”とは言い難い。ボクがアイズに見せたかったのは、もっと敏捷と技巧に優れた古い狩人の」

「ところでこれは壊れた壁の修繕費の見積もりなのだが」

「誠に申し訳ございませんでした」

 

 ペラリと差し出された書類に記された金額を見てカインは即座に五体投地した。スナック感覚で死んでは蘇る狩人の命とファミリアのお金、どちらが大事かなど論ずるに値しない。

 

「そしてアイズ」

「っ!」

 

 狩人を平伏させた【九魔姫(ナインヘル)】の鋭い一瞥が今度はアイズに向かう。その一睨みで【剣姫】と恐れられる少女は叱られた子供のように縮こまった。

 この期に及んで何とか退路を見出そうとオロオロするアイズの姿に毒気を抜かれたのか、リヴェリアは表情を緩めると困ったようにため息を吐く。

 

「お前のステイタスが伸び悩んでいることは知っている。それに焦りを覚えていることもな」

「…………」

「不安に思う気持ちは分かるが、お前はまだ若い。よもや齢十三でLv.5に至った才能がここで打ち止めということもあるまい。今は遅々とした歩みであれ、いつかは求める高みに辿り着くだろう」

「いつかじゃ……遅い」

「……だとしても、たかが試合で【エアリエル】を使うこともなかったろうに。煽ったカインもカインだが、お前とて屋内でアレを使うリスクは承知していた筈だろう」

「う……だ、だって……この機会を逃したら、もうカインと戦うことはないだろうなって……」

 

 降り積もった焦りが勝負を急がせたという面は否めない。だが何よりもアイズを【リル・ラファーガ】の使用に踏み切らせたのは、真剣を用いた限りなく実戦に近い試合をカインと行えるのはこれが最初で最後だろうという確信があったからだ。

 

 アイズが見る限り、別にカインは戦いを忌避しているというわけではない。先の遠征で嬉々として殿に残ったように、彼は必要とあらば自らの力を振るうのに躊躇はないのだろう。むしろ本人の意思ではなくそれ以外……ロキやフィンといったファミリアのトップの意向によって、カインはその実力を隠しているように感じられた。

 フィンが模擬戦の前に、カインに対して秘儀の使用を制限させたというのが良い証拠だ。切り札(リル・ラファーガ)はともかく魔法(エアリエル)の使用に対してアイズは何も言われなかったのに、カインの魔法ばかりが制限を課されるというのには何やらきな臭いものを感じずにはいられない。

 

 案の定、アイズがそのように理由を告げるとリヴェリアはあからさまに難しげな表情をした。どう見てもアイズとカインが再び戦うことを歓迎しているようには思えない。

 

「……お前のせいだぞカイン。安易に言質を取られるからこうなるのだ」

「悪かったって。でも、どうせいつかこうなるとは思ってただろう? こと力への希求において、ともすればアイズはベート以上の執念を燃やしているんだから」

「ああ分かっていたとも。()()()()()お前とは関わらせたくなかったんだ」

 

 まあそうだろうなぁ、とカインはどこか他人事のように内心で呟いた。

 

 主神ロキを筆頭に、ファミリアの首脳陣はある程度カインの特異性について知っている。その正体についてまで理解は及んでいなくとも、彼の力──夢と現を自在に行き来し、定命の軛すら超克した不死不滅の能力。それが限りなく神の力(アルカナム)に近しいナニカである、というところまでは掴んでいた。

 あまりに異質な存在であると言わざるを得ない。神のようで神でなく、ましてや人では決してない。まるで……そう。神意を受け、英雄の導き手として天来した神の力(アルカナム)の端末たる超越種──精霊のような。

 

 無論、仮に近しい存在だとしても精霊そのものではないだろう。さりとて精霊の血を宿した半人半霊でもない。精霊の力というにはその性質は異質に過ぎた。どの神話体系にも該当しない、由来の定かならぬ力を振るうもの……()()()()()()()()()アイズと過度に接触した結果、どのような化学反応を引き起こすか知れたものではない。

 

 そのようにファミリアの首脳陣が判断していることを、カインは十分に承知していた。その上でアイズとの試合に臨んだのは……まあ、夢の主としての欲目が出たのは否定できない。かつて月の魔物がカインを見出したように、カインもまたアイズを有力な狩人候補の一人として認識していたからだ。

 (ロキ)がアイズを気に入っているように、上位者(カイン)も同様にアイズを気に掛けている。やろうと思えば強引に夢に誘い契約の『秘文字(カレル)』を刻むこともできたのだが、流石にそれは元人間としての良心が咎めた。青ざめた月や旧主とは違い、カインはまだ心ばかりは人間であるつもりだったからだ。

 

「そうだなぁ……じゃあアイズには少しばかりネタバレをしてあげよう」

「?」

「ボクは参考になればと思って狩人の業の一端をキミに見せた。それは狩人の哲学であり、《加速》に代表される獣狩りの技術だ。

 けれど、ボクがアイズに教えられるのはそこまで。それ以上は古の獣血と神秘に端を発する禁忌の業。叡智の徒たるリヴェリアすら理解及ばぬそれがキミの力になるとは思えないし、何より神の恩恵(ファルナ)との相性は未知数だ。法則が異なるのだから当然だけど、場合によっては尋常なランクアップの妨げにすらなりかねないだろうね」

 

 ロキ達のような神々がこの星に住まう超自然的存在だとするなら、カインの力の源たる上位者らは外宇宙から飛来した領域外生命である。宇宙が異なれば当然ながら法則も異なり、必然的に同じ超越存在(デウスデア)であっても流れる血の性質は違ったものになる。

 ロキに流れる神血(イコル)とカインに宿る遺志。ロキが授ける神の恩恵(ファルナ)とカインが行使する神秘。ただ交わるだけなら良い。神の恩恵(ファルナ)に加えて神秘の力も得られるならば文字通り鬼に金棒であり、アイズを更なる高みへ至らせるだろう。だがもし水と油のように、あるいは啓蒙と獣性のように反発しようものなら何が起こるか分からない。そのような博打をアイズの身体で行うわけにはいかなかった。

 

 アイズが知りたいのはカインの力の秘密。だがそれは血の遺志に関わる禁忌の力だ。彼女のためを思えばこそ、この秘密は明らかにするべきではないのだ。

 

「だから、はっきり言ってこれ以上アイズがボクから学べることはない。戦うことで一定の経験値(エクセリア)は得られるだろうけど、それなら何もボクである必要もなし。同じ経験値(エクセリア)ならダンジョンでコツコツ稼ぐのが最も健全で最短の道程になる筈だよ」

「……じゃあリヴェリアは? リヴェリアもカインから何か教わってるんでしょ?」

「っ!? ちょっと待て、何故それを知っている……!」

 

 アイズの指摘に狼狽えるリヴェリア。

 確かにリヴェリアは渋るロキとカインに無理を言い、神秘の探求の一端に触れている。だがそれは本当に触り程度であり、ビルゲンワースの基準からすれば初等学校も出ていないレベルの浅層に過ぎない。

 当然ながらその程度の理解で秘儀を体得できる筈もなく。リヴェリアは誰かの前でそういった神秘の技を披露したことなどないし、したくともできないので目撃者が生じる余地などない。

 

 それなのに、何故アイズがそのことを知っているのか。既にその態度で語るに落ちているリヴェリアにジトッとした眼差しを送り、アイズはあっさりとその答えを口にした。

 

「……リヴェリアがカインの匂いをさせてカインの部屋から出てくるのを見たから」

 

 耳年増なレフィーヤあたりが聞けば一発で誤解を招きそうな発言だが、アイズの言う「匂い」とは神秘の残り香のことである。

 主に秘儀の実演と、その触媒に実際に触れることで神秘の一端を学ぶリヴェリアは、授業の後は決まってその身に神秘と月の香りを漂わせていた。その時の姿をカインの自室……即ち狩人の夢から出る際に偶然にもアイズに見られてしまったのだろう。神秘と魔力は近しい概念故に、精霊の血を引く彼女はその残滓を強く感じ取ったのだと思われる。

 

「うーん、でもリヴェリアがやってることは神秘の探求で、要するに魔法の授業と殆ど変わらないんだよね。実践より理論優先で、当然ながら座学中心。加えて得られるのは知識と思考次元の拡張だけだから経験値(エクセリア)の足しにもならないし、従ってランクアップには一切寄与しない。……それでもやる?」

「……やっぱり、やめとく」

「ん、それが賢明だと思うよ」

 

 カインがビルゲンワースから持ち出した学術書を取り出すと、その悪夢的な冊子の分厚さを見たアイズは血の気を引かせて意見を翻した。

 幼少の頃から剣ばかり振って生きてきたアイズは、座学というものを殊の外苦手としていた。何故なら文字は斬れないからである。

 

「よし、ならこの話はこれでお終い! まずは汗を流して、今日はもう休むといい。夕飯の時間になったら呼んであげるから、それまで自室で身体を休ませること」

「わかった」

「良い子だ。じゃあそういうことで!」

 

 ビッ! と指を立ててその場を後にしようとするカイン。トコトコとその後について歩くアイズ。

 だが、足早にその場を去ろうとするカインの肩に白魚のような細い指が食い込む。そんな拙い演技と誤魔化し方ではファミリアの財政を預かるエルフを誤魔化すことはできなかった。

 

「カイン。壁の修繕費は全額お前の給与から差し引いておくから、そのつもりでいろ」

「チクショウ!」

 

 

 

 

△▼△▼△▼

 

 

 

 

「お客様、お茶のお代わりは如何ですか?」

「──ああ、頂くよ。ありがとう」

 

 これといった気配もなく近付いてきた巨大な人影にフィンは一瞬肩を揺らすが、すぐに平静を取り戻すと笑顔でその申し出に頷く。

 巨大な人影──『人形』と呼ばれている彼女は淀みない手付きでティーポットを持ち上げると、空のカップに琥珀色の液体を満たしていく。その動作に生物的な揺らぎは存在せず、大きめのポットを保持する手には一切の震えがなかった。

 

 ティーカップに紅茶を注ぎ終えた人形は静かに一礼すると、ゆったりとした動作で部屋の隅(定位置)に下がる。

 そのままじっと微動だにしなくなった人形を横目に、フィンは落ち着かない気持ちを静めるように新しい紅茶を啜った。

 

(いやはや、どうにも参ったな……ボクともあろう者が、彼女と二人きりという状況に緊張しているらしい)

 

 その緊張に甘酸っぱい感情などは当然ながら存在しない。何故なら、彼女は無機物(人形)なのだから。

 彼をして気配を感じないのは当たり前だ。何故なら、彼女は命なき物(人形)なのだから。

 動作に人間味を感じないのも当然だ。何故なら、彼女は被造物(人形)なのだから。

 

 場所は『狩人の夢』。景色はいつもと変わらず、薄明の空には煌々と青白く輝く月が浮かんでいる。そしてランプの灯りと暖炉の火で柔らかく照らされた洋館の中にいるのは人形と、客人であるフィンのただ二人だけ。

 

(人形、か。完全な無機物がまるで魂が宿ったかのように動き回るというのは、どうにも慣れないな……害がないとは分かっているんだけどね)

 

 家主は客を置いて血晶石マラソンの真っ最中である。「性欲が抑えられなくなったからイズに行く」などと意味の分からないことを喚いて姿を消し、そろそろ半刻が経過しようとしていた。

 

 いよいよ居心地の悪さが限界に達しようとしていた時、狩人の夢のあちこちに存在する小さな『使者』達が騒めき出す。同時にこれまで用事がない限りピクリとも動かなかった人形が屋敷の外に顔を向けたことで、フィンは夢の主がようやく帰還したことを悟った。

 

 

「おッッッまたせー! いやー楽しかった! 久し振りのエブたそはやっぱり可愛かった! これで深淵血晶が出てくれれば言うことなかったんだけどなぁ!」

 

 

 開口一番やたら高いテンションで捲し立てるカイン。屋敷の向かいに立ち並ぶ祭壇の一つから滲み出るように出現した彼は、総身から噎せ返るような血臭を立ち昇らせつつ笑顔でフィンに手を振った。

 

 何故か、最低限の布地だけを身に纏った半裸姿で。

 

「……うん、お帰り。まずは服を着ようか」

 

 帰ったら真っ先に言ってやろうと思っていた文句やら皮肉やらを飲み込み、フィンは死んだ目でそう言った。

 同じ色白でも健康的な血色のアイズの肌とは異なり、まるで血の気が引いたように青白い肌。胸部を包むのは色気もへったくれもない黒地のチューブトップのみで、下半身も同色のホットパンツで覆っているだけ。ともすればアマゾネスのようにも見える露出度だが、彼女らが纏うのは見せるための「衣装」であるのに対し、カインが今身に付けているのはもろに「下着」である。そのため扇情的な色香のようなものは皆無で、ただ生々しさばかりが際立っていた。

 

 なまじ素材は優秀なだけに残念感も一入である。普段の微笑みとは全く違う、まるで花が開いたような笑顔を浮かべるカインを見てフィンは重いため息を吐いた。この半裸の狂人を見て、よもや数刻前に【剣姫】を試合で圧倒した凄腕の冒険者だとは誰も信じまい。

 

「いやーごめんね待たせちゃって! ちょっと定期的に宇宙カビの胞子とエブたその発狂エキスを浴びないと脳の震えが治まらなくなる持病があってさ!」

「わかったわかった、わかったからまずは服を着て……」

 

 フィンの声が聞こえているのかいないのか、カインは半裸のままずんずんと屋敷に入ってくる。平積みされた本を蹴倒しながら大きな保管箱に近付き、今回のマラソンの成果らしい血晶石を放り込むと、今度は用途不明の道具が山積みになった作業台に向かった。

 

「……そう言えば見慣れない武器を持っているね」

「これ? これは《教会の杭》っていう仕掛け武器だよ。確かにフィン達の前でこれを使ったことはなかったかもねー」

 

 ガシャン、と大きさの割に重々しい音を立てて作業台に乗せられる《教会の杭》。名前の通り重厚な鋼の杭に剣の柄を取り付けたような形状をしており、一見するとそれがどのように変形するのか想像がつかない。

 

「これは柄と杭の接合部に仕掛けがあってね。こんな感じでギミックを作動してやると……」

 

 フィンが興味を持ってくれたことが嬉しいのか、カインは一度作業台に置いたそれを再び手に取る。そのまま右手で柄を保持し、左手を杭に添え──勢いよく引き伸ばした。

 四十C程度だった柄は倍以上の長さに伸長し、杭は直角に可動する。果たして剣状だった鉄杭は、一瞬で長柄のウォーピックに変貌した。

 

「どうよ?」

「これは驚いた。まさかそんな仕掛けがあったなんてね……でもそれ、武器としての耐久度はどうなんだい? 特にその可動部なんかは過度な負荷が掛かると変形に支障が出そうだけど」

「これが結構頑丈なんだよね。教会の狩人にはルドウイークを筆頭に妙に脳筋(フィジカルエリート)が多い所為か、教会武器はやたら頑丈に作られてるのが多いのさ。むしろ『火薬庫』の方が複雑な機構を具える分構造的に脆弱な傾向にある」

 

 ガキン、と火花を散らして再び剣状に戻すと、今度こそカインは《教会の杭》を作業台の上に置く。何をするのかと興味深げに眺めるフィンの目の前で、カインは何か道具を手に取るでもなく指先で刀身をなぞり出した。

 仄かに赤い燐光を発する指先で鉄杭を撫でる。労わるように傷付いた箇所を丁寧になぞり……たったそれだけで作業は終了した。フィンの目には何をしたのか全く不明だったが、カインは満足げに頷くといつものように武器を虚空に消し去った。

 

「……今のは何の作業だったんだい?」

「武器の修理だよ」

「修理? 今のが?」

 

 鍛冶師(スミス)ではないフィンは専門的な鍛冶の知識など持っていないが、それでも今のが尋常な鍛冶でないだろうことは分かる。火も槌も用いず、ただ撫でただけで摩耗した武器の修理を行えるスキルなど聞いたこともない。

 

「狩人の武器は石状に凝固した死血……『血石』によって鍛えられる。血によって刃を研ぎ澄ます仕掛け武器は、同時に血の遺志によって往時の形を取り戻すのさ。たとえ見る影もなく無惨に破壊されようと、遺志は正しく刃のあるべき形を定義する。それがボクら狩人の『修理』なんだよ」

「あー……要するに、その特殊な修理が適用されるのは君の持つ仕掛け武器だけ?」

「その理解で間違いないよ。……もしかして修理代が浮くかもって考えた?」

「まあね。ファミリアが抱える武器防具は膨大で、維持費も相応に高額になる。とりわけ第一級冒険者(僕ら)が使うような一級品は、製作費のみならず維持費も馬鹿にならないからね。その点、今の特殊な修理は時間も手間もあまり掛からなそうだったから、あるいは大幅な節約になるかなって思ったんだけど……」

 

 死血が凝固した血石だの血の遺志だのと、詳細を聞くにどう考えてもカインの特異能力に由来する外法の技だ。そう旨い話がある筈もなかった。

 

「まあ悪くない案ではあるね。幹部の武器だけって限定するなら大した手間にはならないし。でも、どのみちキミらの武器を“血の武器”に錬成しないことには狩人の修理は適用できないよ」

 

 ちなみにこれが強化素材ね、と言ってポンと手渡される赤黒い塊。それはカインの言葉通り石状に凝結した夥しい量の血の成れの果てであり、自然ではあり得ぬ形に歪み、今にも匂い立ちそうな程の呪いを帯びていた。

 

「…………少なくとも、これで僕の槍を強化しようとは思わないかな……」

「賢明な判断だね。血に親しむヤーナムの狩人は今更この程度じゃ何とも思わないけど、キミらにとってこれは冒涜だろう? それに、勝手に手を加えたりしたら武器を鍛えた鍛冶師が怒り狂いそうだ」

 

 確かにそうだ。鍛冶師にとって、己の手で鍛え上げた武器は我が子にも等しい。だからこそ「これは」と見込んだ第一級冒険者にしか最上級の武器を作らないのだ。

 フィン達が握る一等級の武具は、まさに我が子を預けられると鍛冶師達から認められた証である。にもかかわらず、鍛冶師()の与り知らぬところで語るも悍ましい血の冒涜が武器()に為されたと知られれば、彼らは二度とロキ・ファミリアのために武具を作ってはくれなくなるだろう。

 

「だからこそ、ここで逆転の発想を行うんだ」

「え?」

 

 ぐいっ、と唐突に顔を近づけてくるカイン。何やらきな臭いものを感じて一歩下がろうとするフィンだったが、悲しいかな小人族(パルゥム)とヒューマンではリーチの差が圧倒的だった。フィンは呆気なく下がった分を詰め寄られ、更に両肩をがっちりと掴まれてしまう。

 

「逆に考えるんだ、フィン。新しい“血の武器”を作ってしまえばいいさ、と考えるんだ」

「……はい?」

「ボクは常々思っていたんだ。キミ達は武器を持たなすぎる」

 

 カインは滔々と語った。フィンの『フォルティア・スピア』然り、ガレスの『グランドアックス』然り、いずれも狩人が振るう最大強化された仕掛け武器に勝るとも劣らぬ至上の武器だ。それは良い。だがそれだけではいざ戦いの中で破損してしまった時に戦うことが難しくなってしまうだろう、と。

 一応フィンは主武装(メイン)の他に短剣を副武装(サブ)に仕込んでいるが、それはあくまで保険に過ぎない。例えば深層でモンスターの群れと戦っている時に槍が折れてしまったとする。果たしてその状況で副武装の短剣一本で戦い抜けられるかと問われれば、確かに難しいと言わざるを得ないだろう。さりとて、一挺鍛えるのにも数千万~数億ヴァリスはかかる一等級武器を複数揃えるなど、ファミリアの財政的にも現実的ではない。

 

 それを解決するのが狩人の武器である、とカインは語る。『狩人証』と『血の遺志』を呼び水に、悪夢の底に沈んだかつての記憶を掬い上げることで、在りし日に工房が鍛えた仕掛け武器は狩人の夢に再び形を得る。それを水盆の使者を通して血の遺志で購入したのが、カインが手にする仕掛け武器であった。

 仕掛け武器は血の遺志がある限り幾らでも同じ物を得ることが可能である。そしてカインがその身に蓄えた遺志の量は膨大だ。ファミリアの幹部全員に行き渡るだけの仕掛け武器を使者から購入するなど容易いし、聖杯ダンジョンでひたすらマラソンに明け暮れていたカインは強化素材である血石も余るほど所有していた。

 

「ボクは常に三十以上の右手武器と十六の左手武器を携行している。勿論これは物質と虚構の境に立つ夢の狩人としての能力ありきのものだけど、キミ達ももう少し予備の武器を持っても良いと思うんだ」

「……確かに、一理ある。50階層の戦いでも、主武装のウルガに匹敵する副武装がもう一つあれば、ティオナは無手でモンスターに挑むなんて危険を冒さずに済んだだろう」

 

 フィンが今まで見たことのある仕掛け武器は、カインがLv.1偽装時代にダンジョンで使っていた《ルドウイークの聖剣》に、対闇派閥(イヴィルス)戦に使用した《千景》、先日の遠征で披露された《瀉血の槌》。そして今日の試合で使われた《慈悲の刃》と、ついさっき見せてもらった《教会の杭》の五種だけだ。

 そのいずれもがフィンやガレス、ベート、アイズ、ヒリュテ姉妹が使う一等級武器と同等以上の性能を具える業物だった。そんな武器の数々を、有り余っているらしい血の遺志──それが何なのかフィンにはさっぱり分からないが──で手に入れることができるとしたら。ただでさえ深層遠征直後で火の車なファミリアの資金には一切手を付けず、一級の武具に匹敵する副武装を全幹部が揃えられるとするならば……財政的にも戦力的にも、何より仲間の安全にとって大きなメリットになることだろう。

 

「悪くは、ないかも。その話が本当なら、多少の不気味さや得体の知れなさを補って余りある」

「さっすがフィン、話が分かるぅ! じゃあまずはこれ!」

 

 言うや否や、カインは虚空から一挺の槍を取り出した。

 それを見たフィンの第一印象は「武骨」であった。黄金の穂先を持つフォルティア・スピアのような華やかさはその槍にはなく、穂先から柄頭まで全てが鈍色の鋼で構成されている。どうやら刃の鋭さよりも全体の頑丈さに重きを置いているようで、布が巻かれた肉厚の刃は重々しい迫力を醸し出していた。

 

 槍としての分類は短槍になるだろうか。ヒューマンの基準としては小振りだが、小人族(パルゥム)であるフィンにとっては十分大きい。取り回しの良さでは愛槍が、一撃の威力ではこの槍にそれぞれ軍配が上がるだろう……などと考えていると、フィンは鍔の根本に奇妙なパーツが付いていることに気が付いた。

 

「……引鉄(トリガー)? とするとそれを覆うのは用心金(トリガーガード)か。もしや、その槍は銃としての機能も持っているのかい?」

「ご明察! この仕掛け武器の名は《銃槍》。狩人武器の工房の一つ、『火薬庫』が手掛けた武器の一つさ」

 

 カインが鍔の辺りを操作すると、穂先が柄の横にスライドし隠されていた銃口が露わになる。

 手槍から銃口を具えた突撃槍に。見掛けには穂先が少し移動しただけながら、全く異なる機能の武器へと変貌する。一連の変形動作を見たフィンは、己が僅かな興奮を覚えていることを自覚した。

 

「何と言うか……男心を擽るね」

「おっ、フィンはこれの良さが分かってくれるんだね。そう、火薬庫にしては手堅く纏まってる《銃槍》は派手さや爆発力には欠けるけど、これはこれで別種の良さがある。燻し銀的な浪漫(ロマン)と言うべきか……とにかく使っていて楽しい仕掛け武器なんだ!」

 

 理解を得られて嬉しいのか、カインは満面の笑顔で《銃槍》をフィンに手渡す。愛槍とは比べ物にならない重みが両手に圧し掛かるが、Lv.6のステイタスを持つフィンならば十分に扱いこなせる範疇の重量だ。

 

「是非試し撃ちをしてほしいかな。屋敷に向けなければどこに撃っても構わないから」

「良いのかい?」

「勿論! 《銃槍》の一番の特色は変形後の銃機能だからね。まずはその使用感を味わってもらわないことには始まらないよ」

 

 そこまで言うならばと、フィンは槍を腰溜めに構え引鉄に指を掛ける。

 実は先の模擬戦で目にして以来、フィンはカインの持つ銃に興味津々だったのだ。既存の銃にはない威力と取り回しの良さを兼ね備えた獣狩りの銃器……その機能を持つ仕掛け武器、実に興味深い。フィンは期待を胸に銃口を空に向け──銃爪を引き絞った。

 

 ドンッ! と《獣狩りの短銃》とは比較にならぬ重々しい火薬の炸裂音が響き渡る。フィンの予想に反し、銃弾は前方に大きく拡散するように放たれた。てっきり一発分の弾が真っ直ぐ飛び出るものと思っていただけに、流石の彼もこれには驚愕し目を見開く。

 

「《銃槍》は槍と散弾銃の性能を併せ持つ。変形前はシンプルな手槍として、変形後は散弾と絡めたトリッキーな銃剣術が可能な突撃槍として機能する。玄人好みの逸品さ」

「……悪くないね。いや、むしろ良い。最初は槍としては重めだと思ったけど、逆にその重量のお陰で銃撃の反動が威力に反してとても軽い。加えて前方に大きく拡散する弾は敵の足止めに最適だ。これで長物の最大の弱点である至近距離への接近を抑制できる」

 

 勿論欠点はある。槍の鍔に変形機構と銃機能の両方を詰め込んでいるために、重心が穂先に偏ってしまっているのだ。これは遠心力を活かした薙ぎ払いの威力を高めてくれる反面、全体的な取り回しの悪さに繋がってしまっている。

 槍として見ると扱い辛く中途半端。しかし変形後の散弾銃を活用した運用は独創的で、実用性も十分。あくまで副武装として割り切って使うならば先に挙げた欠点も大きな問題にはならないだろう。何より、変形機構というものにはフィンをして抗い難いロマンがあった。

 

「僕個人としてはかなり気に入ったよ。ロキも交えて相談する必要はあるだろうけど、幹部への仕掛け武器の支給は良案だと思う」

「本当!?」

「ああ、少なくとも僕は支持するよ。アイズに渡したいんだろう?」

「……バレてた?」

「今の君は表情が分かりやすいからね」

 

 フィンがそう指摘すると、図星だったのかカインは恥ずかしげに頬を掻いた。

 

「ほら、さっきの模擬戦でアイズの剣が壊れちゃっただろう? あれの修理代を稼ぐのにまた別の剣を借りなきゃだけど、それだって【不壊属性(デュランダル)】がない以上はまた破損する危険がある」

「確かに、借金を返したいのにまた借金を作ってしまう恐れがあるのでは本末転倒だね」

「でもその点、血で鍛える狩人武器ならたとえ壊してしまっても修理するのは簡単だ。デスペレートの代わりとしては最適なのさ。

 ただ、狩人の業に関するボクの能力は極力秘密にするってのがロキの方針だろう? そのまま仕掛け武器をアイズに渡すんじゃ問題になると思って、まずは団長の同意と協力を得ようと思ったというわけさ」

 

 なるほど、とフィンはその説明に納得する。ロキの方針によってカインの特異能力は幹部にすら秘密にされてきた。それを踏まえると、確かに血石によって強化された仕掛け武器を渡すことは秘密の漏洩に繋がる可能性がある。

 とはいえ、所詮は武器である。どれだけ特異な来歴と能力を具えていようと、それが直ちにカインの秘密に繋がるわけではない。勘の良い者なら気付く可能性もあるが、よほど大っぴらに使わない限りは問題にならないだろう。少なくとも衆人環視の中で秘儀を使われるよりはよっぽどマシだし、最悪神の恩恵(ファルナ)を持っていないという最大の爆弾がバレなければ良い。

 

 それが分からないカインでもあるまいに、わざわざこうして迂遠な手法を取ったのは……まあ、ちょっとした見栄だろう。カインは普段は飄々としていて掴み所がなく、特に血晶石が絡むと途端に変人と化すが、妙なところで子供っぽいところがあった。要は面と向かって「剣を壊してしまったアイズに代わりの武器をプレゼントしたい」と言うのが恥ずかしかったのである。

 それを悟ったフィンは小さく笑みを零す。どれだけ異端の力を持っていても、こういう妙に普通の人間らしい一面があるからどうにも憎めないのだ。

 

「構わないとも。既存の武器に血石の強化を加えるのはともかく、最初からそういうものである仕掛け武器を渡すだけなら大した問題でもない。……よほど変なものじゃない限りはね」

「それは良かった! 大丈夫大丈夫、アイズに渡す予定なのはデスペレートと同じレイピアで、《銃槍》のモデルになった武器だからね」

 

 《銃槍》のモデルになったレイピア……ということは、銃の機能を併せ持った細剣ということなのだろう。《千景》や《瀉血の槌》のようなゲテモノでなかったことにフィンは安堵する。

 

(いきなり狩人の夢に連れてこられた時は何事かと身構えていたけど、大したことじゃなくて良かった。……しかし)

 

 しかし、親指の疼きが依然治まらないのはどうしたことか。

 確かに血石は不気味だったが、それで強化された武器そのものからは特に変なものは感じない。見せてもらった仕掛け武器も秘儀と比べれば全く常識の範囲内であり、取り立てて問題があるようには感じないのだが──

 

「あ、そうだ」

 

 ふと、さも今思い出しましたと言わんばかりにカインが声を上げる。その声色はあまりにも白々しく、不穏なものを感じ取ったフィンは反射的に身構えた。

 

「その《銃槍》もそうだけど、幹部に配ろうと思ってる仕掛け武器はまだ完成していないんだ」

「……それは、血石の強化が不十分ということかい? 勿論これ程の武器をタダで支給してもらおうだなんて思ってないよ。生憎血の遺志とやらは用意できないが、ヴァリスで良ければ強化に掛かる正当な額を支払う。何なら僕のポケットマネーから出しても……」

「ああ、違う違う。血石は塊も岩も有り余ってるし、仕掛け武器の良さを布教するためなら支給も整備も無料で構わない。そんなことよりもっと大事なことだよ……その武器には最も重要なものが欠けている。

 

 

 ──血晶石だ

 

 

 その瞬間、親指の疼きが過去最高を記録した。

 

 

「画竜点睛を欠く……血晶石の嵌っていない仕掛け武器なんて、魔石のないモンスターみたいなものだ。文字通り魂が宿っていない。血晶石を捩じ込むことで初めて獣狩りの武器は完成を見る」

「いや、そんなことは……この《銃槍》は今の時点でも十分に優秀じゃないか!」

()()止まりじゃダメなんだ!! ()()じゃなきゃ意味がないんだよ!!」

 

 カインの態度が豹変する。目は血走り、息は荒く、フィンがこれまで見たことのない凶相で狂える地底人はその本性を露わにした。

 マズいと思い逃走を図るが、時既に遅し。《加速》すら使用して背後を取ると、カインは一瞬でフィンを羽交い締めにしてしまった。

 

「ちょっ、何を……!」

「《銃槍》に嵌める血晶石には幾つか候補がある! まず一つは基本中の基本、三デブ産の27.2%物理乗算血晶だ! これを三つ嵌めれば実に二倍以上もの劇的な攻撃力上昇が見込めるだろう! 最高だね! しかしそう単純にはいかないのが《銃槍》の難しいところ……実はモーション値が低いせいで物理乗算血晶では散弾の威力が伸び悩むんだ。血質血晶で散弾の威力に特化させるという手もあるけれど、そうすると今度は槍自体の物理攻撃力が犠牲になる。さりとて貞子産の愚者血晶と幽霊産の貧者血晶は癖が強いしマラソン難度も高く初心者にはお勧めしにくい……そこでボクがお勧めするのは首あり獣血の主が落とす24.8%+15の物理乗算加算深淵血晶! この加算というのがミソでね、これはモーション値にかかわらず加算値に応じた固定ダメージを与えることができるんだ! 三デブ血晶と比べ乗算値は下がるけれど、獣血血晶の強みは槍と散弾の威力を両立できることにある! 変形後の運用が最大の魅力である《銃槍》にとってはまさにうってつけの血晶石ってわけさ!」

 

 驚くべきことに、カインはこの台詞の最中に一度も息継ぎをしなかった。

 すぐ耳元で囁かれる言葉の洪水。あまりに内容が意味不明過ぎてフィンには何が何だか分からなかったが、ともかくこのままでは良くないことになるということだけは確信できた。

 

 逃げなければ。この地底人の呼び声から、何としても逃れなければならない……!

 

「まずは落ち着こうカイン! 君の目的はあくまでアイズに代わりの武器を渡すことなんだろう!?」

「それはそれ、これはこれだよフィィィン……! 地底人は常に新たな同志の参入を求めている! さあ、キミも地底人になって更なる高みを目指そうじゃないか!

 まずは手始めに《銃槍》用血晶石マラソンだ! 聖杯文字は『biviu2ih』! ボス部屋が油沼になってるから、炎属性武器でマラソン効率大幅アップだよ!」

 

 事ここに至り、フィンはようやく自分が狩人の夢に呼ばれた理由を悟った。

 冷静に考えれば、今回の話は何も狩人の夢で行う必要はなかった。人に聞かせたくない話ならフィンの部屋でやっても良かったし、わざわざ夢の領域にまで赴かなくともカインに割り当てられた自室でやれば十分である。確かに《銃槍》の試し撃ちは狩人の夢でなければできなかっただろうが、それだけが理由ではない。ここには()()があるのだ。

 

 そう、地下遺跡に繋がる入り口となる聖杯の祭壇が。

 

「カイン……! 君は最初からこのつもりで……ッ!」

「アッハハハハ! 今更気付いたってもう遅い! 如何に【勇者(ブレイバー)】とて、この驚異の筋力99には敵うまい!」

 

 羽交い締めにされたフィンは必死に抵抗するが、元より不利な体勢な上に体格差が圧倒的で、ジタバタと暴れる足は虚しく空を彷徨うばかり。加えてカインの筋力は途方もなく、第一級冒険者たる彼のステイタスを以てしてもビクともしなかった。ティオネよりパワーないかこの半裸。

 

 抵抗虚しく、フィンはズルズルと無数に立ち並ぶ祭壇の一つへと引き摺られていく。親指の疼きがなくとも分かる。あれは良くないものだ。

 特に祭壇に安置されたあの『聖杯』というのは一等()()()。瘴気にも似た冒涜的なオーラが絶え間なく噴出している。あんなものを使って開くダンジョンなんて絶対碌なものではないだろう。

 

「暴れてもムダ……ワタシ地底人……強いね……」

「ぐうっ……や、やめろ……離せっ……離せぇええええ!」

 

 心なしか光量を増した蒼白の月が見守る中、【勇者(ブレイバー)】の半ば本気の悲鳴が狩人の夢に響き渡る。

 

 

 結局、フィンはあわや聖杯ダンジョンに押し込まれる寸前というところまで追い込まれ、最終的に切り札たる【ヘル・フィネガス】を使うことで何とかカインの拘束を振り切ることができたのだった。

 




以下、設定捏ね繰り回すの大好きマンの戯言。


神の端末たる精霊、神意とアルカナムの代行者
上位者の端末たる狩人、血と神秘の代行者

神と眷属の物語だけあって、つくづくダンまちとブラボって相性が良いですね。強引なこじ付けは多いですが、逆に言えばこじ付けができる程度には名前と世界観の共通点が多いと思います。

何話か前に書いた設定の補足になりますが、オラリオで活動している人間の姿をした主人公は、神々が天界からアルカナムの代行者として地上に遣わした精霊と役割上は同じ存在であると解釈して下さって構いません。
精霊の主たる神々が住まうのが天界ならば、それに相当するのが狩人の夢であり、狩人の主たる上位者(カイン)もまたそこに存在しています。要するにファミリアの仲間の前で動き回ってるのはあくまで端末に過ぎず、本体がいるのは常に狩人の夢ということ。

そんな所にホイホイついていくとか、これはもう襲ってくれと言っているようなものですよね団長?(地底人並感)
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