倫也のベッドの上で布団にくるまって号泣している英梨々。
天井をぼんやり見上げる倫也。
ギターをせつなく奏でる美智留。
「トモ。だからいったじゃん。あんまりシリアスすぎるのはよくないって」
「シリアスだったか!?」
「もうどうしようもないぐらいシリアスだったよ!」
「加藤との距離を測ってることが?」
「そこじゃないよ!その直前だよ」
「ん?」
「だいたい、こういう説明は霞ヶ丘詩羽の役目でしょ?」
「ああ、そうかもしれない」
「どこいちゃったのさー?」
「伊織も詩羽先輩も加藤を探しにいったよ」
「相当怒ってたもんね」
「ああ」
「出海ちゃんは?」
「あんまり負け犬シリーズが暗いので次回に短編をはさむ準備をしている」
「出海ちゃんらしいねぇー」
「なぁ美智留。俺、間違ってたか?」
「間違ってたかどうかでいえば、間違ってたんだろうけど」
「だよなー」
「ただ、問題は間違えたことじゃないと思う」
「?」
「うーん。あたしは上手くいえないなぁ。だから倫也がシリアスすぎるというか、劇中劇を認識しすぎている。大人びているというか、作品全部を通して大人になった倫也みたいになっているんだよ」
「なるほど」
「あの時だって、正門の脇で英梨々と楽しく会話していればよかったと思うよ。アニメの話でもいいしさ。なのに突然、『告るから』なんていったらさ・・・英梨々にだって失礼だけど、加藤ちゃんだって本気で答えたくなるんじゃない?あたしが言うことじゃないかもしれないけど」
「真剣さが真剣な対応を生んだと?」
「そういう面もあったんじゃないかな。それにさ、もっと根本的な問題があるよね?」
「ん?」
「加藤ちゃんは倫也を好きだってことだよ」
「ちょっと違うけどな」
「え、それは作中の倫也がにぶくて気が付いていないだけじゃないの?」
「そこだ美智留。加藤恵は安芸倫也と恋をしてメインヒロインになるために生み出されたキャラクターだ。個性というよりは宿命だな。一方で俺、安芸倫也も加藤恵に恋をしてその魅力を引きだすために生れている」
「むぎゃー。ちょっとあたしには難しいよ・・・飲物とってくる」
美智留がキッチンへ向かう。
「なぁ、英梨々。大丈夫か?」
倫也がベッドの英梨々をゆする。泣き声はもう聴こえない。そのまま眠ってしまったのだろう。
美智留がコーラを4ついれて戻ってくる。
「おまたせ」
「ありがとうってなんで4つなんだよ」
「ああ、あれ・・・まぁ二杯飲めばいいじゃん?」
「お前も疲れてんだな」
「澤村ちゃんは?」
「寝てしまったみたい」
「泣いたまま寝てしまうなんて子供みたいだね」
「ああ、まったくだ。ずっと子供のままなんだよあいつはさ・・・」
コーラを飲む二人。
「で、話の続きなんだけど、その話って、『つまるところ俺はただの活字なんだ』とか言っちゃうやつ?」
「まぁイデアだな」
「うわぁ、ややこしいやつだ?もっと気楽なの書いたほうがいいんじゃないの?」
「気楽なのを書きたいから苦労してるんだよ。きっと」
「で、そのイデアって何さ?」
「それは美智留が一番体験しただろ?」
「負け犬2の?」
「そう、お前の設定が変更されても・・・」
「あたしはあたしだ!ってやつだね?」
「うん」
「あれってさ、あたしが主人公だったのに、最後はなんで倫也が殺されているの?」
「ついでに説明しておくのかぁ・・・」
「これもややこしいの?」
「あれは加藤恵の自殺だ。自殺っていうと重たいからボツシナリオだな」
「うーん?」
「そう。加藤は自分の中で葛藤しながらメインヒロインを演じているんだよ」
「でも、それは原作者が決めているんじゃないの?」
「そこでイデアだよ。先にメインヒロイン像があって、それは時代や状況によって変わっていく。そこに加藤恵をあてはめたのは原作者かもしれない。でも、アニメ版の作画や演出や声優はどうだ?すべて原作者の意思どおりか?まった100%あの加藤を生み出した?」
「そんなわけないね。あれはみんなで作った」
「そういうことだよ。ゆえに加藤恵は加藤恵のものである。まだまだ弱い存在だけど」
「弱いって?」
「サザエさんやドラえもんのように同じ時空間を繰り返していれば、キャラは強固になる。それでも時代の洗礼は受けているけれど・・・でも加藤や美智留は一つのアニメの中しかいない、しかも成長しているからね。キャラがそこまで固定されない」
「なるほど。加藤ちゃんはメインヒロインであろうとして、メインヒロインらしくない行動をとるとそれはボツになると?」
「そういうことだな」
「そんな堅苦しい生き方しなくてもいいんじゃないの?ましてやこんな同人で」
「こんな同人だからこそ、愚直なまでにがんばる加藤恵が魅力なんじゃないか」
「惚気・・・?それとも作者が病気???」
「・・・」
「でも、そんなに真面目ならプロット通りに進めて、あんな打ち切りみたいな終わり方はしないんじゃないの?」
「・・・わかってねぇなぁ・・・(ため息)」
(つづく)
次回もプロローグ