負け犬ヒロインの育て方 4   作:きりぼー

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こんな小説でも読んでくれてありがとうございます。




エピローグ

 ここは、とある海外の小さな島の小さな教会。

 安芸倫也と英梨々(旧姓澤村)は、家族と一部の親しい友人だけ招待した。

 

「ねぇ、どうかしら?」

 

 純白のウエディングドレスに身を包んだ英梨々は、童話のお姫様のように美しかった。

 

「ああ、綺麗だよ英梨々」

「べっ別にあんたのためじゃないんだからっね!」

「いや、そこは俺のためでいいだろ・・・」

「倫也のタキシードもなかなか似合ってるわよ」

「ありがと」

 

 少し沈黙の時間が流れる。

 

「ちょっと胸・・・盛りすぎたからしらね?」

「自分からそこに話題ふっちゃうの!?」

「いや、倫也が『何枚パット重ねてんだよ!』みたいにツッコンでくれるかと思ったから」

「あのなぁ・・・」

 

 英梨々はくすくす笑う。

 

「まっ、よく許したわよね」

「誰がだよ」

「嫉妬深くて、強欲で、細かいことまでこだわって、何事にも全力で、やる気なさそうにみえて誰よりも頑張って、それで」

「英梨々、まだ泣くのは早い」

「倫也っ・・・あたし上手くやれるかな?」

「大丈夫。きっと・・・上手くやれるさ」

 

 肩を揺らして泣くのを耐える英梨々を倫也がそっと寄り添う。

手をとり教会へ

 

 神父とともに待つ倫也は緊張していた。

 

「大丈夫かい?倫也くん」

「おまえが神父役かよ・・・」

「他に適任がいないからね」

「なんとかならなかったのか?」

「さぁね。ほら来たよ」

 

 扉が開いて音楽と共に英梨々が父親に手を引かれ入場する。ピアノを弾いているのは美智留だ。

 

「さぁ神に誓え安芸倫也!この英梨々を愛するということに!」

「おまえ、どんなテンションだよ・・・」

「ほら、さっさと誓いなさいよ」

「誓います・・・」

「病める時も側にいつづけますか?」

「いつづけます」

「締め切りが迫った時は手伝いますか?」

「手伝います」

「クライアントが怒った時は身代わりになって怒鳴られにいきますか?」

「いきます・・・英梨々、おまえ伊織買収したのか?」

「知らないわよ・・・」

「このリトラブの同人本の再発行を認めますか?」

「うわっ。ちょっとやめて、なんでここでその黒歴史あけるの??」

「なにそれ!」

「認めますか?」

 

 顔をしかめる倫也。

 

「認めまーす!」

 

 参列者から声を上げたのは、この本を倫也と制作した出海だった。

 

「あのなぁ・・」

 

 会場から笑いが起こる。

 

「まじめにやれよ伊織」

「僕はいつだって真面目だよ倫也くん?」

「次は?」

「小学校の時に英梨々を誘ったのはプロポーズだと認めますか?」

「なんで次々黒歴史暴くの!?」

「倫也、それ黒歴史ってどういう意味よ・・・」

「あっ、ごめん」

「こうして無事に結ばれているんだからね?」

「認めます!認めますよ!もう・・・」

「この世界が消滅するその瞬間も英梨々の側にいることを誓いますか?」

「誓います」

「絶対に?」

「誓うよ!」

「では英梨々さん、あなたも最後の瞬間まで倫也の側にいることを誓いますか?」

「誓わないわよ」

「英梨々っ!?」

「ツンデレがいいかなって」

「・・・」

 

神父伊織が英梨々にうなずく。英梨々もうなずく。

 

「今、さぁ契約は為された!二人で誓いのキスをして・・・この世界を滅ぼすがいいっ!!」

 

 倫也をみながら英梨々がうなずく。倫也が辛そうな顔をする。

 

「最後くらい笑いなさいよ」

「ああっ・・・」

 

 倫也がひきつった笑いをする。

 

「あっ、ちょっとまって。やっぱり心残りがもうひとつあったわ」

 

 

「波島・・・じゃない神父さん、ブーケ投げだけしていいかな?」

「別に構わないよ澤村さん」

「安芸英梨々ですことよ?」

 

 自分でいって顔が赤くなる英梨々。

 

「さぁ、並んで並んで」

「一言もしゃべってないと思ったら、あんたなんでそんな泣いているのよ?霞ヶ丘詩羽」

「だってぇ・・・だってぇ・・・」

 

 英梨々が詩羽の手をとる。

 

「別にあなたのせいじゃないわよ」

「でも、これは全部解決してから行うイベントのはずよ・・・」

「不確定な未来に縛られてもしょうがないわ。霞ヶ丘詩羽、あなたもわたしも強くなって物語を進めるしかないのよっ・・・」

 

 ブーケ投げを用意する英梨々。もっとも参加者は3名。詩羽、美智留、出海である。

 

「なぁ英梨々、このまま投げたら霞ヶ丘先輩は絶対に取れないぞ?」

「なんでよ」

「運動神経抜群の美智留と、都合よく世界をフォローする出海だぞ?」

「そうね。どうしたらいいかしら?」

「もう直接渡してこいよ」

「・・・そうね、そうする」

 

英梨々が階段を降りる。

 

「ごめんね氷堂美智留、波島出海。これ霞ヶ丘詩羽にあげてもいいかしら?」

 

 うなずく二人。

 

「はい、これ」

 

 ブーケを詩羽に渡す。

 

「こんな情をかけてもらっても嬉しくないし・・・、だいたいあんたからブーケもらうのってなんだか腹立たしいわねっ・・・!」

「あんたに受け取って欲しいのよ・・・ここまでありがとう霞ヶ丘詩羽」

「次こそ勝ちましょう・・・安芸英梨々さん・・・」

「泣きすぎよ・・・」

 

 世界が暗転し、暴風雨に包まれる。

BGMが『The curse of the main heroine』に変わる。呪われた絶望の歌。

 

「いよいよね」

「美智留!BGM変更だ。教会のピアノでこの音楽を消してくれ」

「曲名は?」

「結婚行進曲、ワーグナーで!」

「OK」

 

BGMが変更される。

 

「出海ちゃん!」

「はい!」

「ここだけ都合よく晴れ間にできるかな?」

「天気の子ですね!まかせてください!」

 

 出海が両手を天に掲げる、倫也と英梨々のところだけ晴れる。

 

「伊織、詩羽先輩!恵の・・・加藤恵の最後の痕跡は?」

「あなたの部屋でコーラを飲んでいた痕跡がかろうじてある程度ね」

「ここには?」

 

 詩羽が首を振る。この結婚式に加藤恵の痕跡はまったくない

 

「時間がないよ倫也くん」

伊織も心配そうに二人を見つめる。

 

 倫也が英梨々を抱き寄せる。

 

「ごめん英梨々。世界で一番お前を愛している」

「うん」

「子供の頃からずっとお前のことが好きだ」

「うん」

「こんな俺と結婚してくれてありがとう」

「ほんとよね・・・結局、最後まで恵がいない世界のふりができてなかったわね?」

「ごめん」

「もう次からは恵を泣かせないでよね」

「英梨々っ!!」

 

 英梨々がつま先をあげて倫也にキスをする。

 

 世界が白くなって消えていく。二人だけを明るく照らしながら。

 倫也は手を伸ばす。

 そして世界が消滅し、物語は終わる。

 

 

 

 倫也の伸ばした手の先に加藤恵はどこにもいない。

 

 

 

(了)

 




必ず納得するラストに向けてがんばるから・・・
評価・感想等いただけると助かります。

短編の『健気な後輩の癒し方』に続きます。
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