「――じゃあもう少し話そうか。……あんた、誰かが和哉さんを傷つけようとしたら、その誰かを絶対に許さないだろ?殺したくなるぐらい許せなくなるだろ?それはね――自分以外の誰かに和哉さんを傷つけられる事が嫌だから、だよ。
和哉さんを精神的にも肉体的にも傷つけていいのは自分だけ!和哉さんを殺していいのも自分だけ!!……そんな傲慢な思いを抱いているだろ?素直になれよ、なぁ!?」
――そんな言葉を聞いて、俺は思った。
――あぁ、そうだな。確かにそれは最低でも一度は考えた事がある。認めるさ。
――でもな。
――それでも俺の存在は、荒垣和哉という男にとっての誇りなんだ。
――あの人がそう言って、俺の事を認めてくれた。
――――だからもう、俺は揺るがない。
・オリ主と赤井さんが目立ってます。
・前回に引き続き、風見視点。
SIDE:風見裕也
「FBIの英雄だなんて大層な名前で呼ばれてるけど、そいつの中身は僕と同じだよ。そうだな……執着って言えば分かりやすいかな。例えば、僕が執着しているのは"美しいもの"……特に、人間の"美しい"部位だ。そしてそいつが執着しているのは――荒垣和哉さんという、1人の人間」
執着……言い方は悪いが、確かに赤井さんはどこか行き過ぎたものを荒垣さんに対して向けている。師弟関係のはずが、飼い主と犬という関係になったからな。
「僕はね、"美しい"部位が欲しいから相手を殺してそれを奪っている……だけではなく、それが"美しくない"部位と一緒にされている事が許せないから殺しをやっているんだ。それと、"美しい"部位が全くない……それどころか"醜い"部位しかない人間を見ていると腹が立つ。
そういう奴は散々痛め付けてから殺してるよ。だって許せないもん。……そういえば、ジンさんから依頼された仕事のターゲットにはそういう奴らが多かったなぁ。そいつらを殺すのは良いストレス発散になったけどね!」
殺してストレスを発散する……?とんだ外道だ。まるでゲームのような言い方をする。
「僕には"美しい"部位と部位を合わせて、理想の"美しいもの"に近づけるっていう目的があった。冷凍室に大切に保存した"美しい"部位……あれらを上手く組み合わせるのは大変だったなぁ……
あ、話が逸れた。……それで、赤井サンの話なんだけど。――そいつ、いつかは必ず和哉さんを傷つけるよ。そんな奴が側にいたら危ない。僕の"美しいもの"が壊れちゃう」
キラーは、そう断言した。
「そいつは僕やジンさんのように、心の中に闇がある。……さっきも話したけど、和哉さんは闇側の住人を惹き付ける。だからそいつも和哉さんに執着してるんだ。そいつはきっかけさえあれば僕達側に転がり落ちる……そんな奴だ。
僕には分かるよ。そいつは和哉さんに対して並々ならぬ執着心を抱いている。もしも、和哉さんが本気でそいつを突き放したり、自分から離れようとしたら――殺してでも、それを止めようとするはずだ。それ程に強い執着心がある。もしくは、足を切り落とした上で監禁するとか?」
「…………」
「……黙ってないで、何か言ってよ赤井サン。みっともなく和哉さんに弁解してみたら?今、僕によってあんたの心の闇が暴かれてるんだよ?いいの?和哉さんが離れちゃうかもしれないよ?」
……赤井さんは俯いたまま、顔を上げようとしない。その表情が見えないから何を考えているのかも分からない。……キラーの言葉は、赤井さんにとって図星だったのだろうか?
「じゃあもう少し話そうか。……あんた、誰かが和哉さんを傷つけようとしたら、その誰かを絶対に許さないだろ?殺したくなるぐらい許せなくなるだろ?それはね――自分以外の誰かに和哉さんを傷つけられる事が嫌だから、だよ。
和哉さんを精神的にも肉体的にも傷つけていいのは自分だけ!和哉さんを殺していいのも自分だけ!!……そんな傲慢な思いを抱いているだろ?素直になれよ、なぁ!?」
赤井さんは、何も言わない。……まさか。まさか本当にそんな事を考えているのか?ここに来て彼が否定しない事が恐ろしく思えてきた。
ジェイムズさん達も、降谷さんもそう思ったのか、表情が険しくなっている。では、荒垣さんは――?
(――おや?)
荒垣さんは何故か、赤井さんの後ろから彼の肩に額をくっつけて震え始めた。……何だ?
「―ーぶふっ!!」
「!?」
「えっ」
「ふふ、くく――っ、はははっ!あっはははははっ!!」
――大爆笑。……荒垣さんが何故か大笑いしている。一体、何が……!?というかこの人爆笑なんてするんだな!?意外過ぎる……
「……和哉、さん?何がそんなにツボに嵌まったんです?今、かなり重い空気だったんですが……」
「だって、っ、ふふ、だってさ……っ、あ、ダメだ。止まらな、くく、ははは……っ!!」
「…………とりあえず、それが収まるまで待ちますよ」
「くく、っ、うん、ごめ……っふは……!!」
「……あの。肩から離れてもらえませんか、くすぐったいです……!」
赤井さんにそう言われても、荒垣さんは離れなかった。むしろ頭をぐりぐりと押し付けている。赤井さんは慌てていた。
……良い意味で、空気がぶち壊された気がする。先ほどまでの重苦しい空気が和やかになっていた。皆が微笑んでいる。あのジンでさえもそうだ。
ただ1人、キラーだけが苦々しいと言わんばかりに表情を歪めていた。
「――その表情」
「っ!?」
「……やっぱりな。てめぇは秀一を追い込むために、わざと重い空気を作った。……それが上手くいかなかったから、面白くないんだろ?」
ツボに嵌まっていたはずの荒垣さんが、いつの間にか涼しげな表情に戻っていた。……もしや、あの大爆笑は演技か?
「……えー?何の事?」
「惚けるな。……理由までは分からないが、てめぇは俺の側から秀一を引き離したかった。そのために秀一が危険人物であると降谷達や俺に印象付けようとした。秀一が俺から離れようとしなくても、周りが無理やり引き離しに掛かる事を期待した……違うか?」
「…………確かに、赤井サンを引き離したかった事は本当だよ。それを狙ってた。……でもねぇ和哉さん。そいつの心に闇がある事も事実だよ?僕がさっき言った事は決して的外れじゃない!」
「――知ってる」
「……え、」
「そんな事、もう知ってるさ。それがどうした?」
……我々も、赤井さんも。荒垣さんの事を凝視した。
「俺が気づいたのは、2年前の例の作戦が終わってアメリカに帰って来たあたりか?その時にはもう秀一を観察する癖がついてたからな。こいつが俺に対して相当重い執着心を抱いていると、その時に気づいたんだ。
元々合同捜査に参加して、秀一と久々に会った時からその兆候はあったからな。あまり驚かなかった。まぁ、当時はその兆候に気づいていなかったが」
「気づいているのに……それなのに、なんでそんな近くに置いてるの!?いつかそいつが牙を向いたら、和哉さんが……僕の"美しいもの"が傷ついてしまうじゃないか!」
「……未來君。いや、キラー。てめぇは秀一が自分と同じだって言ってたな。それは違う。……秀一とてめぇには決定的な違いがある」
「違い?」
「……てめぇは"美しいもの"への執着心に囚われ、殺人を犯した。だが秀一はそれに囚われる事はあっても犯罪を犯す事はあり得ない。……それが、てめぇと秀一の違いだ」
「そんなの分からないだろ!?いつかあんたを殺しに掛かるかもしれない!!」
「あり得ない」
「どうして!?」
「――俺が、そう信じているからだ」
荒垣さんはそう言って、不敵に笑った。……自信に溢れたその笑みに、誰もが目を奪われる。
「赤井秀一は――俺の誇りは、その信頼を裏切らない。絶対にだ。……万が一。牙を向かれたとしたら、それは俺に不手際があった時だろう。そうなったらしょうがない。
ま、それでも秀一は俺の自慢の愛弟子で、俺の誇りのままだけどな。例えこいつに何をされてもそれは変わらない。さっきそう言ったばかりだろうが、秀一」
「……えぇ、分かっています。あなたが本当に、キラーの言う俺の心の闇に気づいていた事には驚きましたが」
「分かってるなら、何で反論しなかったんだ」
「いえ――子供のような癇癪に対して、どう言葉を返せばいいのか迷っていたんです」
「子供……?」
どういう事だ?……会話の流れからして、赤井さんの言う子供の癇癪とはキラーの言葉の事だと予測できるが……
「……赤井も気づいたのか?」
「……ジンも、そうか」
「あぁ。……何せ俺は、今のキラーが抱いている感情と似たようなものを2年前に抱いていたからな。今はてめぇと和哉の関係を間近に見た事で諦めがついて、割り切れるようになったが」
「ふっ……どうだ。羨ましいだろう」
「殺すぞてめぇ」
「おい、貴様らは何の話をしている?」
降谷さんが2人にそう聞いた。私にもよく分からない。
「ふん……どうって事はない。陳腐な感情さ――嫉妬という名前の、な」
「嫉妬?」
「キラーはただ、和哉さんの側にいる事を許されている俺に、嫉妬していただけだ。俺を責める事ができれば、追い込む事ができれば、その理由は何でも良かったんだろう。
前もって和哉さんの言葉を聞いていたおかげなのか、キラーに何を言われてもあまり動揺せずに済んだよ」
「っ、違う!僕は嫉妬なんてしてない!!僕は、僕は"美しいもの"を守りたかっただけで――」
「見苦しいぜ、キラー。……素直に認めろ。和哉が赤井の心の闇に気づいてもなお、そいつを側に置いている時点で――てめぇの負けだ」
「―――――っ!!」
……ジンが言った言葉が止めとなったのか、キラーは口を閉じる。そして苛立ちのままに床を蹴り、八つ当たりをしていた。確かに、子供の癇癪のようだな。
「……嫉妬、ねぇ……一体どこに嫉妬する要素があるんだ?」
そう言って、荒垣さんが首を傾げる。……自分への好意に鈍感なところは相変わらずのようだ。赤井さんとジンが深くため息をついた。
その絆は、揺るがない
――"俺の自慢の愛弟子"。"俺の誇り"。"俺の誇りはその信頼を裏切らない"……か。ふふ……
――その笑みはなんだ、赤井。はっきり言って気色が悪いぞ。
――いや、何。和哉さんが人前で堂々と俺が自分の所有物であると認める発言をしてくれた事が嬉し、
――荒垣さーん!馬鹿犬が世迷い言を口にしていますよー!
――秀一、ハウス。1人で自分の家に帰れ。
――そんな!?
・気づいていた、飼い主
赤井に喝を入れた後、降谷達と合流。面会室にて、殺人鬼と元幹部のポエミーな会話を聞き、なんとなく内容を理解した。しかし……俺がニュートラル、か。そうかな?
キラーに対して殺意を剥き出しにしたジンを止めた。こいつなら本気で脱獄するかもしれない。もう罪を重ねないでくれ。
キラーに狂気を向けられ、内心で少し怯える。赤井が庇っていなかったらもっと怯えていた。
その後。再び自分と赤井が同類であると言い出したキラーのせいで、表情が抜け落ちる。しかし、勝手にいろいろ語り出した事に呆れる。……はぁ?何言ってんだ、こいつ?
途中でキラーがわざと赤井を追い詰めようとしている事に気づき、半分は演技だが半分は本気で爆笑。重い空気をぶち壊した。……いや、だって。さっきまで俺達を振り回してた奴がなんか焦ってるんだぜ?滑稽だろ?ざまぁ。
赤井の心の奥底にある闇には気づいていたが、それでも赤井への信頼の方が勝った。何故秀一を側に置いているのか、だって?――秀一の事を信じているからさ(ドヤ顔)
キラーは心の闇に呑まれて一線を越えてしまったが、赤井ならばそれがあっても一線だけは越えないのだと、オリ主は確信している。
・気づかれていた、忠犬
面会室でのジンとキラーのポエミーな会話を聞き、その内容にこっそり共感した。……危うく何度も頷いてしまうところだった。そう、和哉さんは闇側の住人に好かれる。腹が立つ程にな!
キラーの狂気に怯む事なく、オリ主を守るために立ち塞がった。だからその気色の悪い目を和哉さんに向けるな!
その後。キラーが勝手に語り出した内容を聞いて僅かに動揺するも、オリ主に喝を入れられた事を思い出し、冷静になる。――俺は揺るがない。
だが、赤井はキラーが言っていた事を最低でも一度は想像した事がある。全てが的外れというわけではない。
キラーの子供のような嫉妬に気づいてどう反応すべきか迷っていたら、突然オリ主が笑い出してびっくり。和哉さん、くすぐったいです!
そして、オリ主が自身の心の闇の存在に気づいていたと聞き、納得。その後のオリ主の信頼Maxな言葉を聞いて、ポーカーフェイスを保つのに必死になった。気を抜いたらニヤニヤしてしまう……!!
しかし最後にはそれが表に出てしまい、飼い主に自主帰還命令(ハウス)を言い渡される。そんな!?1人は寂しいです!
・忠犬に嫉妬した快楽殺人鬼
理想の"美しいもの"に出会い、ジンに会う事がどうでも良くなってしまった殺人鬼。せっかくだから会いに行くし、約束も守るけど。
あ、しまった!その代わりに和哉さんの全裸を要求すれば良かった!?理想の"美しいもの"をじっくりねっとりと見る機会を逃したぁ!!※変態はお帰りくださいby作者
オリ主について、ジンと語った。いやー、やっぱりジンさんとは話が合うなぁ(ポエマー仲間)しかし、そのジンに本気の怒りをぶつけられて冷や汗を流す。
いろいろと語って赤井を追い詰めようとしたのは、オリ主の側にいられる赤井に嫉妬したせい。しかし、それを認めようとはしなかった。認めたら負けだと思っていた。
最終的にジンの言葉で止めを刺され、嫉妬した事を認めざるを得なかった。
・詩ジン
久々にポエマー心が疼いて、ついキラーの話に応じてしまった。それがオリ主の話だったので、尚更乗ってしまう。何故かこいつとは話が合う……解せない。
オリ主冷凍保存発言に、プッツン。もしもキラーがオリ主に手を出したら脱獄して地の果てまで追い掛ける気満々。しかし、オリ主にお礼を言われて毒気を抜かれる。べ、別にあんたのためじゃねぇし!
オリ主と同様に赤井の心の闇には気づいていたし、一線を越える事もないと確信していた。
言葉にはしないが赤井の事は認めているし、オリ主の赤井に対する信頼Maxな言葉を聞いても驚かなかった。今じゃ嫉妬する気もほとんど失せたぜ……(遠い目)
最後に、キラーに止めを刺した。ふん、てめぇじゃ赤井には敵わねぇよ。俺でも負けたからな!
・今回の語り手(公安部下)
降谷さんよりもセリフが多い!やったぜ!
降谷に振り回される苦労人だが、今回は自分自身も部下にいろいろ押し付けてきたので、人の事は言えない。
オリ主と赤井の関係性に、ちょっとだけ憧れがある。あそこまで行き過ぎなくても、彼らのような強い信頼関係を降谷さんとの間に築き上げたい……
キラーの目的があっさりと解決し、脱力感を感じた。降谷さん、日本に帰ったら絶対に飲みに行きましょう!そうしましょう!
オリ主は赤井の心の闇の存在を知って怖いとは思わなかったのか……そんな疑問を抱いている。