忠犬と飼い主の非日常   作:herz

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 ――その囮捜査の様子を盗聴したモブ達が、一言。

「時計屋から服屋までのカズヤとシュウのやり取りを思い出してくれ。――どう思う?」

「すごく――恋人です」

「あいつら真面目に任務を遂行してるのか、真面目にデートしてるのか、どっちだ!?」

――なお、某師弟は至って真剣に任務を遂行をしているつもり




・途中からモブのFBI捜査官視点。

・普通の会話は「」、盗聴器越しに聞こえる会話は《》。

・オリ主と沖矢さんの距離が近い。※not腐向け




――決着の時は近い【前編】

 

「――囮捜査……か」

 

「あぁ。俺と秀一……いや。昴が餌になって、あの女を釣り上げるんだ」

 

 

 血塗れの悪魔が起こした殺人事件の捜査を始めた日。一度現場から本部に戻り、ジェイムズ達に俺が考えた作戦を伝えた。

 

 あの女は俺が自分以外の誰かと親しくしている事を良しとしない。しかし、秀一は例外だった。おそらく、あの女は秀一の方が自分よりも強いと判断し、手を出さないようにしている。

 逆に言えば、秀一ならあの女に勝てるという事。……これは昴に変装した秀一に、囮になってもらう作戦だ。

 

 

 まず、俺と昴が目立つ場所で待ち合わせをする。俺の事を観察……というかストーキングしているあの女は、その様子をどこかで見ているだろう。

 あの気味の悪い視線を感じたら、そいつがどこかにいるという事だ。

 

 きっと、あの女は俺と昴の後をつけてくる。その後は適当に街を歩いて遊んでいるように見せかけて、存分に嫉妬させればいい。

 その間。他の捜査官達には俺達が身に付けた盗聴器越しの会話を聞きつつ、待機してもらう。いくつか符丁を決めて置いて、何らかの異変があったらそれで伝える。

 

 次に、夜になったら俺と昴は別れ、昴には人気の無い道を歩かせる。

 今回の被害者は1人で夜道を歩いていた時に殺害された。昴が同じ状況に置かれたら、あの女は食い付くはず。

 

 最後に。昴があの女に接触したら逃げる振りをしながら指定したポイントまで誘導してもらい、そこで俺を含めた他の捜査官達が包囲網を作る。――これで、あの女は袋の鼠だ。

 もちろん、不測の事態に対処できるよう、他にもいくつものプランがある。

 

 

 俺が説明した作戦は、採用された。

 

 

 

 

━━━

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 ――そして、今。俺と昴は街中を歩きながら、どこの店に入ろうかと相談している。

 

 

「何か買いたい物はありますか?」

 

「そうだな……本と、新しい腕時計が欲しい」

 

「腕時計?」

 

「ん。……前に壊してしまってな。あれ、つけ心地が良くて気に入ってたんだが……」

 

 

 この間。ある事件の犯人を捕らえるためにちょっと無茶をして、その拍子に壊してしまったのだ。

 ……というのは事実だが、今日買い物に行く店は既に決まっている。仲間達が動きやすいように、数日前から場所を決めておいた。今頃、彼らはその近くで待機しているはず。

 

 

「次は頑丈な物が欲しいな」

 

「仕事が仕事ですからね……腕時計なら良い店を知ってます。その近くに服屋があるので、ついでにそっちも見ましょう。その後にゆっくり本を物色する……というのはどうですか?」

 

「そうだな……そうするか。時間が余ったら喫茶店にでも行こう。俺のお気に入りの店があるんだ」

 

「いいですね。楽しみにしています」

 

 

 俺と昴の会話通り、今日向かう場所は時計屋と服屋、本屋と喫茶店だ。そこで俺達は実際に物を買い、最後に喫茶店で休憩する。

 

 

 ……それはそれとして、鬱陶しい視線を感じるな。最近感じていた物と同じだ。

 

 

「……和哉さん」

 

「っ!」

 

「眉間に皺が寄ってます。……美人にそんな表情は似合いません。笑ってください」

 

 

 昴が指で俺の眉間を撫でた。それと同時に視線に嫌な物が混ざった気がする。……声を潜めて会話を続けた。

 

 

「…………お前、とことん煽るつもりだな?」

 

「ふふ……その方が私に殺意を抱くはずです。徹底的に煽って、奴の憎しみを私に集中させましょう」

 

「……大丈夫なのか?そんな事をしても」

 

「問題ありません。……あなたは、私が奴に負けると思っているんですか?」

 

「いや。それは無い」

 

 

 俺が即答すると、昴はきょとんと俺を見つめる。その顔が少し面白くて笑ってしまった。

 

 

「くくっ……!ほら、行くぞ。夜まではまだ長い」

 

 

 何故かさっきよりも嫌な視線を感じるが、関係ない。俺の愛弟子があんな女に負けるはずが無いのだから。

 

 

 

 

 

 

「――端から見ると、今のは仲良く顔を近づけて内緒話をしていたように見えるだろうな。……和哉さんが顔を近づけたのは無意識だろうが、」

 

「何してるんだ、昴。行くぞ!」

 

「はい!今行きます」

 

 

 

 

━━━

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SIDE:とあるFBI捜査官

 

 

 オレと、オレの同僚である2人の捜査官は今。ある喫茶店でカズヤとシュウ――今はスバルだったか?――の会話を盗聴器越しに聞いていた。

 オレ達がいる喫茶店は、2人が入って行った時計屋と次に行く予定の服屋の中間地点にある。

 

 2人で買い物をする場所は作戦を開始する前から決まっており、オレ達の待機場所もそれに合わせて決められた。オレ達はこの場所の担当で、他にはカズヤ達が向かう本屋での話を盗聴する奴らと、喫茶店での話を盗聴する奴らがいる。

 あとは、カズヤ達を尾行しながら会話を盗聴する奴ら。こいつらは特に、血塗れの悪魔に気づかれないようにしないといけない。気づかれたら作戦はパーだ。

 

 ……盗聴って聞こえが悪いな。傍受って言えばいいか?……それも変わらないか。

 

 

 で、オレ達はカズヤとシュウの会話――周りに聞こえないようにするためか、少し小声だ――を聞いていたわけだが……

 

 

《……あ、そうだ》

 

《どうしました?》

 

《いや。自分用の時計の他に、もう1つ買おうと思って》

 

《もう1つ?》

 

《プレゼント用を――おい、どうした?》

 

《誰ですか》

 

《は?》

 

《誰に、プレゼントするんですか?》

 

《…………誰でもいいだろ》

 

《私以外の誰かに?……嫌ですよ。絶対に嫌です》

 

《…………ホー――俺が馬鹿弟子にプレゼントするのがそんなに嫌か》

 

《えっ》

 

《そうか。昴がそう言うなら仕方ないな》

 

《ちょっ、待って。待ってください!》

 

《え?嫌なんだろ?》

 

《嫌じゃないです!むしろ喉から手が出るほど欲しがってます!》

 

 

 

 

「…………振り回されてるなぁ、シュウの奴」

 

「だな。……あの英雄様(・・・)を振り回せるのって、カズヤしかいないんじゃね?」

 

「面白い」

 

 

 同僚2人と顔を見合わせて、笑った。確かに面白い。

 

 基本的にシュウが誰かと話す時は、あいつの方がその相手を振り回す。しかしカズヤが相手になると、それが逆転する。実に愉快だ。

 

 

「……でもあいつら、今が任務中だって忘れてるんじゃ――」

 

 

 

 

《――鬱陶しいな》

 

《視線ですか》

 

《あぁ。相変わらず舐めるように見られてるぜ》

 

《私も、そうですね》

 

《振り返るなよ。奴にこっちが気づいている事を気づかれたら、面倒だ》

 

《はい》

 

 

 

 

「……忘れてなかった。さすが最強師弟」

 

「あの2人がバディ組んだら負け無しだからなー」

 

 

 シュウとカズヤはうちの現エースと元エース。こいつらが組んだ時の犯罪検挙率はFBI随一だ。

 

 

《うーん……昴にはこれが似合いそうだな。プレゼントしようか》

 

《あの、和哉さん……()には?》

 

《馬鹿弟子に贈るのは嫌だって言ったのは昴の方だろ》

 

《まだ引きずりますか!?お願いします、前言撤回させてください!》

 

《却下。……あ、この時計カッコいい》

 

《…………黄色、ですか。金髪青目の彼を思い出すので、やめましょう。こっちの赤と黒の時計なんてどうです?》

 

《それが似合うのは馬鹿弟子だな。プレゼントはしないけど》

 

《……っ、和哉さん!あなた、()で遊んでますよね!?》

 

《はっはっは》

 

《笑って誤魔化すな!》

 

 

 

 

「……遊んでるな」

 

「遊んでる」

 

「カズヤってさ、たまにお茶目だよな」

 

「いや、ドSだろ」

 

 

 大抵、その"ドSモード"の餌食になるのはシュウだ。あいつはカズヤに対しては素直だから、それで弄られるんだろう。反応がいちいち面白いから。

 

 

《……よし、決めた。これにする》

 

《……緑ですか。まぁ、それなら――》

 

《――そういえばこの色、馬鹿弟子の目の色とよく似てる》

 

《――――》

 

《まぁいいや。この色、気に入ったし。……あとは、この時計も一緒に買ったら次に行くか》

 

《…………それ、さっき私が勧めた時計ですよ?》

 

《さっき言っただろ。馬鹿弟子に似合うって。――後で渡す》

 

《――――》

 

《……昴?なんで上向いてるんだ?》

 

 

 

 

「――はい出ました。カズヤの十八番、無自覚たらし!」

 

「散々いじめられた後にこんな真似されたら、そりゃあ天を仰ぐよな」

 

「緑の時計を見てすぐにシュウの目の色と結びつけるとか……お前どんだけ弟子が好きなんだ」

 

「それさえも自覚無いんじゃないか?」

 

「なるほど、あり得る」

 

 

 普段はシュウの方がカズヤへの好意を前面に出しているが、実はカズヤも大概シュウに甘い。そして、アメと鞭の使い方が絶妙だ。……さすが飼い主。

 

 次に、カズヤ達は服屋に向かった。

 

 

《――気になるなぁ》

 

《気になりますねぇ……》

 

 

 

 

「……相変わらず、血塗れの悪魔に監視されてるみたいだ」

 

「さすがに人目がある場所でいきなり襲い掛かる事は……ない、よな?」

 

「……多分」

 

 

 

 

《そんな事より、和哉さん》

 

《何だ?》

 

《――今から和哉さんは私の着せ替え人形です。異論は認めません》

 

《は?》

 

 

 

 

「おっと……?」

 

「面白くなってきたぞ」

 

「おそらく、さっき遊ばれた事への仕返しだな」

 

 

 案の定。今度はシュウがカズヤを振り回し始めた。カズヤの慌てている声が聞こえる。

 

 

《お、おい。そろそろ終わりにしないか……?》

 

《いえいえ、まだですよ。和哉さんは素材が良いので、何を着せても似合います。いやー楽しいですねぇ》

 

《お前は楽しくてもな……!こっちは背後の視線がヤバイ事になってんだよ!お前だってそうだろ!?》

 

《えぇ。これは凄いですね……もしかしたら、私が和哉さんに服を贈るのは後で脱がせるためだと勘違いしている可能性が……》

 

《お前も俺もノーマルだろうが》

 

《――今の私達は、周りからどんな関係だと思われているんでしょうか?》

 

《意味深に耳元で囁くのやめろ、ぞわぞわする》

 

 

 …………さて。

 

 

「時計屋から服屋までのカズヤとシュウのやり取りを思い出してくれ。――どう思う?」

 

「すごく――恋人です」

 

「あいつら真面目に任務を遂行してるのか、真面目にデートしてるのか、どっちだ!?」

 

 

 

 

《――煽った効果は確実に現れていますね……これなら作戦通り、私をターゲットにしてくれるのでは?》

 

《だといいがな。……油断するなよ。煽り過ぎてあの女が逆上して一般人もいる場所で襲って来たらどうする?ここまで煽ったし、あとは小出しにする程度でいいと思うぞ》

 

《そうですね……では、ここからは友人らしい距離にしましょう》

 

《あぁ》

 

 

 

 

「…………真面目に任務遂行中だった」

 

「本当に抜かりない奴らだ……」

 

 

 その後。2人は適当に買い物を終わらせて、次の場所に向かった。オレ達は時間を置いてから喫茶店を後にする。作戦が次の段階に移るまで、別の場所で待機するのだ。

 

 

「……そうだ。後でカズヤ達のさっきの会話をネタにしてからかってやろうぜ」

 

「それはいいな!」

 

「楽しそうだ。他の奴らも巻き込んでやろう」

 

 

 

 

 

 






 後編は20時過ぎに投稿します!
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