忠犬と飼い主の非日常   作:herz

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 ――某トリプルフェイスと某銀の弾丸は間違いなく超人。では、その某銀の弾丸と10分以上戦闘を続ける事ができる某飼い主は――

 ――Q.凡人よりも少し上程度ですか?

 飼い主「Yes。……と、思いたい!」

 忠犬「No。そんな評価はあり得ない」

 上司「No。間違いなく超人だ」






――後日。やっぱりこの駄犬は分かっていなかった【後編】

 ある日。俺は秀一と共にボスに呼び出された。ボスの執務室でその用件を聞く。

 

 

「――俺が、アカデミーで講義を?」

 

「うむ。……実は、以前から申し込まれていたのだ。かの有名な"FBIの英雄"に特別講義をしてもらいたいとね。

 しかし、2年前も去年も君の身辺はいろいろと騒がしかっただろう?これ以上君に負担を掛けたくないと思って、当時は断っていたのだが……最近は落ち着いてきたからね。そろそろお願いしたいのだよ」

 

 

 確かに2年前と去年。秀一の身辺はバタバタしていた。メディアに注目され過ぎて自由を奪われたり、パパラッチに狙われたり、多くの女性に迫られたり、とある犯罪組織の暗殺ターゲットにされたり……エトセトラ。

 

 …………本当に、散々だったな。

 

 

「……講義なんて、俺の柄じゃない」

 

「分かっているよ。だが、そこは心配しなくていい。名目上は講義となっているが、実際は君の実体験を研修生達に話して欲しいだけだそうだ」

 

「…………本当に、それだけか?それなら和哉さんも一緒に呼ぶ必要はないだろう?」

 

「それは俺も思った。……どうして俺の事も呼んだ?」

 

「……君達の言う通りだ。確かにそれだけではない。実は、アカデミー側からもう1つ頼まれている事があってね……

 

 ――2人による実戦を、見せて欲しいとのことだ」

 

 

 ……それはつまり、

 

 

「俺と秀一が模擬戦をするという事か?」

 

「いや。文字通り、実戦をして欲しい」

 

「――ホー?」

 

 

 秀一がニヤリと笑う。……あぁ、まずいな。急に乗り気になったぞこいつ……!

 

 

「……本気で戦っていいのか?」

 

「うむ。むしろあちら側はそれを望んでいるそうだ。……研修生達に"本当の実戦"とはどういうものなのかを、見せてやって欲しいと言っていたよ」

 

 

 ボスがアカデミー側から聞いた話によると、最近の研修生達にはどこか"緩み"が見られるという。

 あちら側はその理由について、おそらく黒の組織という強大な犯罪組織の壊滅が彼らに影響を及ぼしているのではないか……と推測しているらしい。あり得る話だな。

 

 世界中で活動していた悪の組織が2年前に壊滅した事で、多くの人間が安心した。これで、以前よりは平和になるだろうと。

 それはきっと、研修生達も同じだったのだろう。FBIだけでなく、世界中の警察組織が警戒していた凶悪な犯罪組織が壊滅し、以前よりも平和になったのだと――錯覚してしまった。

 例え強大な犯罪組織が壊滅したとしても、"犯罪"そのものが無くなったわけではないのに。

 

 

「アカデミーで教鞭を取っている者達は、赤井君の戦闘を見れば研修生達の目が覚めるはずだと考えた。……しかし、その赤井君と戦う相手を誰に任せるかが問題になった。

 あっさり負けてしまっては研修生達の印象に残らないだろうし、それでは意味がない。できる限り戦闘を継続できる相手……欲を言えば互角に戦える相手が必要だったのだ。……アカデミーには、それほどの実力を持つ者がいなかった

 

 そこで彼らは私に、現役の捜査官の中で適任はいないかと相談してきた」

 

「俺と互角、もしくは戦闘を継続できる相手は……和哉さんだけだな」

 

「そういう事だ。……荒垣君が赤井君の師匠である事を教えたら、あちら側も了承してくれたよ。それなら問題ないだろうと」

 

「教えたのかよ……」

 

 

 という事は下手な戦闘を見せるわけにもいかなくなったな……プレッシャーが掛かる。

 

 

「しかも事後報告じゃねぇか」

 

「すまないね。赤井君と互角に戦える者が君1人しかいない以上、拒否権は無いのだ……本当に、申し訳ない。

 そもそも、戦闘をある程度継続できる者も君だけだからな……」

 

「…………全力で辞退したい」

 

「和哉さん、そう言わずに……久々に手合わせしましょうよ」

 

 

 ……秀一の口元は笑っているが、目は笑っていない。ギラギラと獲物を狙う目で俺を見ている。

 本人は犬のように"遊ぼうよ"と誘っているつもりだろうが、俺にはどう見ても獲物に狙いを定めている猛獣にしか見えない。

 

 

「……どうせ俺に拒否権は無いし、これも仕事だからやる事はやるが……アカデミー側は俺達にどれぐらい戦闘を続けて欲しいんだ?」

 

「……荒垣君は、どれぐらい続ける事ができる?」

 

「そうだな……ヨーロッパの長期任務に行く前だったら10分未満ってところだったが……」

 

 

 今から8年前……秀一が黒の組織に潜入する1年前。俺はとある長期任務を遂行するためにアメリカからヨーロッパへ向かった。

 それから6年後に任務を完了させてアメリカへ帰国し、すぐにジェイムズの要請を受けて日本へ向かい、黒の組織壊滅作戦に参加した。

 そこで秀一と再会して……そのとんでもない変貌ぶりを目の当たりしたわけだが……

 

 ……おっと。それは置いといて、

 

 

「今だったら――10分以上戦える自信がある」

 

 

 6年間の長期任務は無駄にならなかった。その経験のおかげで昔よりは長く戦えるだろう。

 それに、ある事がきっかけで2年前からは徐々に鍛練の時間を増やしていったからな……年齢による体力の衰えは少し心配だが、昔のように10分未満で終わってしまう事は無いはずだ。

 

 

「…………充分過ぎるな。あちら側は5分持ってくれたらそれでいいと言っていたよ」

 

「ホー……?どうやら俺の唯一無二の事を侮っているようだな。これは10分以上戦って和哉さんの実力を見せつけてやる必要がありそうだ」

 

「必要ない。自分の事でもないのに意地を張るな」

 

「俺が敬愛する師匠の事を馬鹿にしているんですよ?それはつまり、弟子である俺への侮辱に等しい」

 

「俺は全く気にしてないから」

 

「俺が気にするんですよ」

 

「気にするな」

 

「気にします」

 

「あー、ゴホン!……話を進めていいかな?」

 

 

 そんな声を聞き、俺達は言い争いを止めてボスを見る。

 

 

「……とにかく最低でも5分戦ってくれたら、あとは君達の自由にしていい。……とはいえ、あまり長引かれても困るだろうから最大10分だな」

 

「…………10分」

 

「おい。不満そうにするな」

 

「できれば15分は戦いたいです」

 

「却下!」

 

 

 10分以上は戦えると言ったが、さすがに15分はきつい!

 

 

「降谷君だったら20分以上いけますよ」

 

「降谷と一緒にするな!俺はお前ら2人のような観覧車の上でも構わず喧嘩する超人共とは違うんだぞ!?」

 

「…………私としては荒垣君も赤井君も降谷君も、みんな似たようなものだと思うがね……」

 

「秀一と降谷は超人、俺は……凡人の少し上ってところだろう?全然違うぞ」

 

「君も超人に含まれていいのでは?」

 

「まさか!秀一と降谷には負けるよ」

 

「凡人の少し上程度の人間が、超人と10分以上戦えると本気で思うのかい?」

 

「それ、は…………」

 

「…………確か、日本ではこんな言葉があったな――五十歩百歩」

 

 

 ぐうの音も出なかった。……おかしいな。長期任務に行く前は確かに凡人だった……はずだ。うん。

 

 とりあえず、今度は俺が咳払いをして軌道修正を計った。

 

 

「……俺が超人か否かはさておき、」

 

「少なくとも凡人より少し上という評価はあり得ない」

 

「私のような凡人から見れば、まず間違いなく超人に含まれるな」

 

「さ・て・お・き!……その特別講義はいつやるんだ?」

 

「おっと、そうだったね。……一週間後にお願いしたいそうだ」

 

「一週間後だな、了解。……秀一」

 

「はい?」

 

「アカデミーに行くまでに、一度時間を作って軽く手合わせしてみるか。少し調節しておいた方がいいだろう」

 

「っ、はい!やりましょう、是非!!」

 

「……軽くだぞ?本気でやるのは特別講義がある当日だけだからな?」

 

「もちろん、分かってますよ?」

 

「本当に分かってんのか……?」

 

 

 

 

 

 

――後日。やっぱりこの駄犬は分かっていなかった

 

 

 

 

 

 ――っ、お、前なぁ!軽くって言っただろうが!!

 

 ――反省してます。しかし、後悔はしていません。

 

 ――腹立つ程に良い笑顔だなこの野郎……!

 

 ――ところでもう一戦、

 

 ――Stay(待て)!!

 

 ――む……Yes,master(はい、ご主人様)

 

 

 

 

 

 




・自分は超人ではないと信じたい飼い主

 朝っぱらから上層部の老害ゲフン、年長者達に呼び出されてネチネチと文句を言われていた。ついイライラして言葉でねじ伏せてしまった俺は悪くない。
 自分が女性捜査官達にとっての"越えられない壁"になっている事には、全く気づいていない。

 赤井と共にジェイムズに呼ばれ、FBIアカデミーでの特別講義を依頼された。というか巻き込まれた。何故俺が超人と本気で実戦しないといけないんだ……(´・ω・`)
 昔は違うが、今なら赤井と本気で10分以上は戦える40歳。充分超人だが本人は認めたくない模様。俺は凡人の少し上程度の実力だろう?……え?違う?
 ジェイムズの指摘にはぐうの音も出なかった。話を逸らすために軌道修正。それはさ・て・お・き!

 後日。ついテンションが上がってしまった駄犬もとい赤井のせいで、決して軽くない手合わせを行う事に。

 この駄犬め!軽くって言っただろうが!?


・テンション上がりっぱなしの忠犬

 "FBIの英雄"という肩書きが煩わしいと思っている。ちっ、上層部の老害共め……
 今のところ自分に近づいてくる女のほとんどが自分のステータス目当てだと分かっているため、それらの全てを追い払っている。

 特別講義の依頼について最初は乗り気ではなかったが、オリ主と本気の実戦ができると聞いて急にやる気になった。和哉さん、遊びましょう♪(眼光ギラギラ)
 過去に某水族館にて、観覧車の上で某トリプルフェイスと本気の喧嘩をしていた超人。戦闘狂というわけではないが、相手がオリ主であれば話は別。
 和哉さんが相手なら何でも楽しいし、戦闘中の彼のギラギラした目を間近で見られる機会は滅多に無いからな!

 後日。軽くやるつもりでいたが、久々の手合わせが楽し過ぎてテンションが上がってしまい、本気ではないものの軽くはない手合わせになってしまった。

 反省はしている!だが後悔はしていない!(`・ω・´)キリッ





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