忠犬と飼い主の非日常   作:herz

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 ――いいか?よく聞け。うちのチームに所属する上での心得を。

 ――心得、その1!

 ――赤井秀一の狂犬スイッチを、押すな!!

 ――フリじゃないぞ?絶対に押すなよ!?

 ――押したら最後……

 ――恐怖の時間が待ってるぜ?

 ――――とある古参の捜査官の言葉より、抜粋。




・オリキャラが登場します。

・スラング英語は―――――で表現しています。




狂犬、赤井秀一【後編】

「……ホー……そんな事が」

 

「あぁ。……本当に素直な良い子達だよ。母親も明るくて良い人だ」

 

 

 本部内の食堂にて。秀一と昼食を取りながら、ある日の休日の出来事について話した。

 

 

「あの日以降、たまにあの公園で会う事がある。時間がある時にふらっと散歩しに行くと、そこでよく遊んでいるんだ。兄弟だけの時や、母親も一緒にいる時。もしくは同年代の子達と遊んでいる時があってな。

 あの兄弟は俺を見つけると笑顔で"ソーマ兄ちゃん"って呼んで駆け寄って来る。……可愛い子達だ」

 

「……ふふ」

 

「……何だよ。そんな緩んだ顔して……」

 

 

 気が付けば、秀一が表情を緩ませて俺を見ている。

 

 

「いえ……微笑ましいなと思いまして」

 

「…………その目はやめろ」

 

 

 今にも"可愛い"とか言い出しそうな目だ。

 

 

「俺としては子供達よりも和哉さんの方が、」

 

「可愛いとか言うなよ。可愛いのは子供達だからな」

 

「っ、と……先手を打たれましたか」

 

「やっぱり言おうとしてたな。俺にそんな事を言う奴なんてお前ぐらいしかいない」

 

「それはそれは。光栄ですね」

 

「褒めてねぇ」

 

 

 顔が引き攣った。……40のおっさんが可愛く見えるなんて……節穴どころじゃないな。眼科行くか?

 

 

「……そうだ、子供と言えば。例の少年少女連続殺人事件についてですが」

 

「あぁ……あの事件か」

 

 

 最近、ワシントンの周辺で子供が殺される事件が3件あった。

 その3件にはいくつかの共通点があり、立て続けに起こっている事から連続殺人事件であると判断され、FBIが捜査に乗り出す事になった。

 

 しかし現在。俺達のチームは別件の捜査にあたっているため、この事件は他のチームが担当している。

 

 

「……あのチームに任せていいのでしょうか?功績を上げる事しか考えていない、ヘンリー・ベネットのチームに」

 

「……人の多い場所で滅多な事を言うな、秀一。誰が聞いているかも分からん」

 

「……すみません」

 

 

 謝っているが、秀一は不満そうな様子を隠そうともしない。……まぁ、気持ちは分かる。

 

 

 ――ヘンリー・ベネット。……俺達のボス、ジェイムズと同様に1つのチームを率いている男だ。確か歳もボスに近かったはず。

 奴は俺達のチームに対抗心を燃やしていて、何かと張り合ってくる。秀一が有名になってからはそれが顕著になった。

 黒の組織壊滅作戦で活躍した俺達に対抗するために、あの手この手で功績を上げようと躍起になっているのだ。

 

 ……何故同じFBIなのに功績で争わなければいけないのか。そう思っているのは俺だけではなく、ボスのチームに所属している全員がそうだ。

 だから、俺達はできる限りヘンリー・ベネットと奴のチームの人間達からのやっかみに反応しないようにしている。

 

 とはいえ、言ってしまえば非常に迷惑だ。奴らは時に俺達の捜査に口出しして足を引っ張る事もある。実に、腹立たしい。

 

 

 その後。昼食を食べ終わった俺達は、食堂から出て事務室に戻ろうとしたのだが……

 

 

「……和哉さん、あれは……」

 

「…………おいおい。うちの事務室が近いってのに、随分大胆な真似してるな」

 

 

 俺達の視線の先には……うちのチームの新人が1人と、ヘンリー・ベネットのチームに所属している3人の男がいた。

 新人……カイル・ウォーレスはキャメルが教育係を担当している、あの新人だった。

 

 男3人はカイルを囲んでおり、カイルは顔を真っ赤にしていて今にもキレそうだ。

 

 俺が動こうとすると……秀一に肩を掴まれた。

 

 

「秀一?」

 

「和哉さんの手を煩わせるわけにはいきません。俺が行きます」

 

 

 そう言って、秀一は俺の返事も聞かずにカイルの下へ向かった。……とりあえず俺も近づいて、会話だけは聞いておくか。

 秀一は奴らの背後に忍び寄ると、その肩を強く掴んだ。

 

 

「……うちの新人に何をしているんだ……?」

 

「あ、赤井秀一……!?」

 

「赤井さん……!」

 

「顔が真っ赤だな、カイル。頭を冷やしておけ」

 

「あ……すみません……」

 

 

 まずはカイルに冷静になるよう声を掛け、それから男3人に目を向ける。

 

 

「……で?カイルに何をしていた?」

 

「い、いやいや!特に何も…」

 

「嘘だ!さっきまで散々ボスの事もチームの皆さんの事も馬鹿にしてたくせに!」

 

「なっ、てめ、」

 

「ホー?……詳しい話を聞く必要がありそうだな……?」

 

「ひっ」

 

「痛っ、痛い痛い!」

 

 

 秀一の声がさらに低くなった。それから、肩を掴まれている男が痛みを訴える。掴む力が強くなっているようだ。

 

 

「特に荒垣さんの悪口が酷かった!日本人はアメリカから出ていけとか、女顔で童顔のくせに偉そうにしているとか、体を使っていろんな奴に取り入ってるとか――赤井さんの事も体を使って手懐けたんだとか!!」

 

 

 あっ、カイル馬鹿!!

 

 

 

 

 

 

「――あ"ぁ!?」

 

(――狂犬スイッチ、オン!)

 

 

 頑張れ、名前が思い出せない男3人。健闘を祈る!

 

 

「おいてめぇら……あの人が、和哉さんが何だって?聞き間違いじゃなければ散々侮辱していたようだが……!?」

 

「あ、いや、」

 

「その、」

 

「日本人はアメリカから出ていけ?偉そうにしている?体を使って取り入った……!?

 その上――和哉さんの唯一の弟子にして忠実な犬であるこの俺まで体を使って手懐けただと!?ふざけんなよ、この―――――――っ!!

 

 和哉さんはそんな真似をするような人じゃねぇ!そして俺も、和哉さんを慕っているのはあの人を心の底から敬愛しているからこそなんだよ!!」

 

 

 スラング英語が出た。カイルがぎょっとしている。あ、顔が青くなった。ちなみに、男3人はそれ以上に真っ青だ。

 

 そこへ、騒ぎを聞き付けたうちのチームの仲間達が事務室から出てきた。

 秀一を見て一度驚き、それから俺がいる事に気づくとジェスチャーで止めろ!と伝えてくる。……分かった分かった。今止めるから。

 

 と、その時。秀一が右手と左手でそれぞれ男2人の胸ぐらを掴み、持ち上げた。男達の足が浮く。

 余ったもう1人の男は腰を抜かして床に尻餅をついた。カイルはもはや半泣き状態だ。

 

 

「く、苦し……っ!!」

 

「は、離し、て、くれ……!!」

 

「すみ、すみません!すみませんすみません!!許して……!!」

 

「許して?今さら何を言ってやがる!?うちの新人にちょっかいかけて、俺の仲間を馬鹿にして……さらには俺の和哉さんを侮辱しておいて――無事に帰れると思うなよ……!!」

 

 

 激怒する秀一の下へ歩み寄り、口を開く。

 

 

「――赤井秀一」

 

「!!」

 

「――Stay(待て)。……良い子だから、それ(・・)を下ろしなさい」

 

「――――」

 

 

 俺がそう言うと、秀一は男達から手を離した。男達が床に崩れ落ちる。

 

 

「ん。……Come here(来い)

 

 

 素直に近付いて来た秀一は、黙ったまま俺をじっと見つめる。……あぁ、分かってるよ。

 

 

「――Good boy(良い子だ)。……よく手放したな。偉いぞ」

 

 

 そう言って頭を撫でると、両腕を伸ばして俺を抱き締めた。肩口にぐりぐりと頭を押し付けてくる。

 すり寄る犬をそのまま好きにさせておいて、俺は男達3人に声を掛けた。

 

 

「おい、そこの3人」

 

「「「は、はいっ!!」」」

 

「今回だけは見逃してやるから、今のうちに帰れ」

 

「はい帰ります!!」

 

「失礼します!!」

 

「すみませんでした!!」

 

 

 慌てて立ち上がった3人が立ち去ろうとした時、秀一が俺から離れようとした。

 

 

Stop(止まれ)!」

 

「っ、」

 

「……今回だけだ。見逃してやれ」

 

 

 ……すると、再び俺の背に両腕を回した。よしよし、お利口。

 

 男達が立ち去ると、カイルがその場にしゃがみ込んだ。

 

 

「あかいさんこわい……あかいさんこわい……!!」

 

「か、カイル……!」

 

 

 キャメルが彼に駆け寄り、必死に励ましている。残りの仲間達は俺と秀一の下へやって来た。

 

 

「どういう状況だ?何があった?」

 

「俺と秀一が事務室に向かっていたらカイルがあの3人に絡まれているのを見つけて、それに秀一が介入したんだが……カイルの口から、」

 

「あいつらがお前らの事を馬鹿にして、さらには和哉さんを侮辱する言葉を……日本人はアメリカから出ていけだの、女顔で童顔のくせに偉そうにしているだの、体を使っていろんな奴に取り入って俺の事まで体を使って手懐けただの……そんな事を口にしていたと聞いたから本気でキレた」

 

「あ、それはキレて当然だな」

 

「あいつら有罪」

 

「うむ。赤井君は怒っていい」

 

「むしろあいつらをぶん殴ってもOKよ!」

 

「煽るな煽るな」

 

 

 俺に秀一を止めろと言ったのはお前らなのに、煽ってどうすんだよ……

 

 

 

 

 

 

狂犬、赤井秀一

 

 

 

 

 

 

 ――荒垣君。例の件について話したい事があるのだが……

 

 ――了解、ボス。……秀一。落ち着いたならそろそろ離れろ。暑苦しい。

 

 ――嫌です。

 

 ――ま、そうなるよな。……誰かーこいつを捕獲してくれー。

 

 ――はいよ。

 

 ――はいはい飼い主のお仕事の邪魔しちゃ駄目だぞー。

 

 ――おい、何をする!?離せ!

 

 ――良い子にお留守番してろ、秀一。すぐに戻るから。

 

 

 

 

 

 




・子供のヒーロー、な飼い主

 休日にジョギングしに行った先で子供を助けた後。アクロバットに弟君の帽子を回収。良い子は真似するなよ!
 その結果、懐かれた。3人家族とはたまに公園で出会うと立ち話したり遊んだりする仲。特に、弟君がお気に入り。……一人っ子だから、昔はこんな弟が欲しいって思ってたんだよなー。
 なお。弟君の目が赤井に似ているという点もお気に入りになった理由の1つ。(無自覚)

 後日。最近起こった殺人事件と、それを担当するチームについて赤井と話した。子供を狙った殺人……リアンとウィルが心配になるな……
 ヘンリー・ベネットのチームについて。少なくとも上層部以上に煩わしいとは思っていないが――?

 2年前とは違い、赤井の狂犬モードにも動じなくなった。あーあ、御愁傷様(棒読み)。
 新人は可哀想だと思っていたが、今のうちに狂犬モードを一度は知っておいた方が身のためだろうと考え、放置。ごめんな、カイル。これも社会勉強だ。


・狂犬モードの忠犬

 休日にオリ主からジョギングに誘われてご機嫌……のはずが、急に仕事が入ってテンションだだ下がり&不機嫌。おのれ恋人(デスクワーク)……!!
 その日仕事場にいた捜査官達は、赤井の不機嫌オーラに揃って胃を痛めた。急募:飼い主!!

 後日。オリ主から休日の出来事を聞いて、ほっこり。可愛い和哉さんは俺の癒し(節穴)
 ヘンリー・ベネットのチームについては不快感しか無い。今のところオリ主が放置しているため、赤井もそうしているが……もしもゴーサインが出たらすぐにでも潰すつもりでいる。

 絡まれている新人を助けてさっさと追い払おうと思っていたら……新人の言葉によって狂犬スイッチ、オン!ふざけんじゃねぇぞこの―――――――っ!!
 そして飼い主によってスイッチ、オフ。オリ主にすり寄るのは狂犬モードの反動。

 モブ3人は赤井に敵認定された。今後は赤井に発見される度に殺気を向けられることでしょう。


・飼い主に懐いた兄弟

 ソーマ兄ちゃん遊んでー!!♪ヽ(´▽`)/

 最近起こった物騒な事件のせいで、そのうち公園に顔を出せなくなるかもしれない……ソーマ兄ちゃんに会えない(´;ω;`)


・とばっちりを受けた新人

 仲間達をモブ3人に侮辱されてキレる寸前だった、仲間思いの新人。先輩達を馬鹿にすんな!
 しかし赤井の狂犬モードのとばっちりを受け、恐怖の時間を味わう事になった。

 あかいさんこわい……((( ;゚Д゚)))ガクブル





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