時刻は11時30分、ほぼ開園と同時の9時から来た俺にとっても一大イベントであるピキピキの主催ライブ、それの公演時間だ。俺は貰ったチケットを受付の生徒に渡して観客席へと入る。受付の子が「あの人、ピキピキさんに招待されたの!?一体何者……。」と後ろでコソコソしてたのが少し恥ずかしい。
ガヤガヤ……。
辺りの席は既に満員に近いぐらいの人が座っており、ますますこの学園内でのピキピキらの知名度を理解させられる。それに俺の席……真ん中の最前列って予想以上に豪華過ぎないか?ちょっといい席って言ってたが、まさかここまでとは……。
「みんな、今日は来てくれてありがとう!」
急に音楽が流れだし、響子さんたちが舞台袖から出てきた。その瞬間、観客の黄色い声でステージは埋まってしまう。
「ライブを始める前に今日陽葉祭に来てくれた人達に自己紹介をしようか。」
「まず最初に、私たちの最強のDJ、DJクノイチこと犬寄しのぶ!」
「……よろしく。」
「次、ピキピキ唯一のラブリー担当、清水絵空!」
「みんな〜サンセットステージ前にこのライブで体力を使い果たしちゃダメよ?」
「次は、私たちのライブをさらに盛り上げるVJ、笹子・ジェニファー・由香!」
「今日は最高に上げていこうね!」
「最後は〜?我らPeaky P-keyの無敵のボーカル、山手響子〜!」
「絶対に後悔させないから、みんな着いてきてね。」
さっきまで目の前に居たはずなのに自己紹介の合間の「響子さ〜ん!」などの歓声もあってか、いつもとは別人みたいだ……。何も変わってないはずの彼女らを見て少し呆然としていると、響子さんが俺の顔を見て微笑んだ気がする。こ、これか!ネットとかで噂になってる、女も惚れる微笑み。確かに今のはドキッとした……。
「それじゃあ、そろそろ始めようか。」
自己紹介も済ませ観客も落ち着いたタイミングで響子さんがそう言う。
「まず一曲目、聞いて下さい。電乱★カウントダウン。」
その一声と同時に曲のイントロが流れ始めた。
……………………
「め、めちゃくちゃ楽しかった……!」
ライブの終了後、空いてる席に座り一人で感銘を受けて一人で呟いていた。電乱★カウントダウンからの無敵☆momentへの繋ぎで観客も盛り上がったし、あの後のハピアラさんやフォトンさんも最高に楽しかった。とにかく言葉で表しきれない興奮だ。これ以上のものをサンセットステージで見れるんだろ?楽しみすぎるだろ!
「あ、あのすみません。ちょっと良いですか?」
「へっ!?な、なんですか?」
後ろから不意に話しかけられてついびっくりしてしまう。
「って、Photon Maidenの……。」
「はい、出雲咲姫です。知っててくれたんですね。」
「そりゃあさっきのライブ見てましたし……。あ、俺の名前は……。」
「藤原和也さんですよね?」
俺が答えようとすると割って入るように、咲姫さんが答えてしまう。
「なんで俺の名前知ってるんですか?まさか、ストーカー!?」
「ち、違います!さっきライブが始まる前、ピキピキとハピアラとお話してたのをたまたま耳にしてしまって……。」
「それでですか。あぁ!そんなに凹まなくていいですよ!全然気にしてないので。」
しゅんとしてしまった咲姫さんを必死でなだめるように全力でフォローする。
「そ、それでなんですか?咲姫さんが、俺に用って?」
「はい。私、和也さんがライブを見ていたのを知っていたのでピキピキの番の時、舞台袖から見てたんです。そしたら他の人達とは違う色が見えて。」
「い、色?」
「他のお客さんは楽しいを表す様な綺麗な黄色に光ってました。だけど、和也さんだけ黄色だけじゃなくてどこか儚げのあるピンク色が見えたんです。初めて見る色だったから、どんなことを表しているのかわからなくて……本人なら何か知ってるかと。」
「は、はぁ……。」
何を言っているんだ?色?そんなこと言われても色なんて俺には見えないし。どういうこと?と頭がこんがらがって言葉を詰まらせていると、もう一人少女が俺に説明をするかのように現れる。
「咲姫ちゃんはね〜共感覚って言う特殊な感覚を持ってるんだよ。」
「乙和さん!どうしてここに?」
「やっほー!和也くん。咲姫ちゃんを探してたら和也くんと話してるとこを見つけたからね〜。」
「なるほど……。それで、咲姫さんが持ってる共感覚って……?」
「そうそう、咲姫ちゃんは音に色が見えるんだよね。」
「お、音に……色……?」
「その色を見ることで人の感情を知ることができるんだよ。」
なんだその能力……。咲姫さんってそんな凄い感覚を持っているのか。だから音に関係のあるDJをやっているのかな?理由はどうであれ凄いことは確かだ。
「それで!咲姫ちゃん、一体何色が見えたの?」
そこからかくかくしかじかと咲姫さんが説明をする。
「へぇ〜ピンク色かぁ……。それは初めて見る色なの?」
「はい。今まで見た事がないです、あんな儚げのあるピンク色は……。」
「うーん、見えてない私たちからしたらさっぱりだね。」
「ですね……。」
ピンク色、儚いピンク色……。その時、何故か一瞬だけショッピングモールでの響子さんの言葉を思い出す。
"本当はしのぶのこと好きなんじゃない?"
それを思い出すと、少し心の奥がざわめいた。ピンク色って……。
「どうしたの?さっきから黙り込んで?もしかして、分かった!?色の正体。」
「い、いえ!さっぱりですね……。」
つい分からないと誤魔化してしまった。いや、実際これが本当なのかも分からないけど。
「これじゃあ埒が明かないね……。咲姫ちゃん、どお?」
「はい。私もさっぱりです。けど時期に分かりそうな気がします。」
「そっか、じゃあその時までゆっくり考えよう。和也くんもありがとね!一緒に考えてくれて。」
「私からもありがとうございます。」
「そんな!平気ですよ。困った時はお互い様ですし。」
「和也さんは優しいんですね。……そう言えば、乙和さん私のこと探してたって何を……?」
「あぁ!そうだった!屋台でやってるクレープ屋さんが本格的で美味しいんだって!だから一緒に食べようって探してたんだった……。衣舞紀とノアに並ばせてるの忘れてた……。これは怒られるやつだ……。」
乙和さんは思い出したかのように咲姫さんを探してた理由を話す。実質的に約束事をすっぽかしたみたいになってるけど大丈夫なのか……?
「という事で、和也くんごめんね!もう少し話してたいけど私たち行かないと。」
「私も、和也さんと話してると楽しいからもっとお話したかった。」
「そんな、メンバーさんとの約束の方が大事ですよ。気にせず行ってください。」
ほんとごめんね!と手を振りながら咲姫さんを引っ張って走って行った。ライブの感想、言えなかった……。まぁまた会えた時に言えばいいかな。また会えるか分からないけど。
俺もお昼食べに行くか、少し喉に突っかかるものもあるけど取り敢えず今は忘れとこう。いずれ分かるはずなんだ。
今回はフォトンメインっぽくなりましたね。咲姫が見た儚げのあるピンク色とはなんなのか……乞うご期待ですね。