取るに足らないロドスの日常集   作:サークル 銀の蛇

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登場人物

ズィマー
ラップランド
ドクター

 ドクターとラップランド、ズィマーはトンネルの崩落により、本隊と逸れてしまう。ズィマーは瓦礫に埋まったドクターを引っ張るが抜けず、ラップランドに手伝うように頼むがラップランドは言い訳をし手伝わない。それどころか、ズィマーとドクターを脅すような発言をするが……。



窮地、狼が喰らう。

 

「みんな!危ない!」

 

  誰かがそう叫ぶ。すると爆発音が響き、トンネルの天井が崩落する。大きな音と土煙を立てて、コンクリートが崩れてくる。何者かの咳の音が聞こえる。

 

「あークソ。最悪だ……。敵との戦闘中に、よりにもよってこんなことになるなんて……。おい、大丈夫か?ドクター。」

 

 茶色の熊耳に赤いウィッグがあるウルサス族の少女。ズィマーは悪態を吐きながらドクターの安否を確認する。ドクターは親指を立てて大丈夫だとサインをする。それを見たズィマーは下半身が瓦礫に埋まったドクターを腕を引っ張り出そうと腕を掴み、引く。しかし、いい具合にドクターが挟まっているのか、ドクターはうんともすんとも言わなかった。

 

「ケガはねえのに何でこんな綺麗に嵌るんだよ……私の力でもびくともしねぇ。なあおい。アンタも見てないで付き合ってくれよ。」

 

 ズィマーは腕を後ろに組み鼻歌を歌っている人物に頼む。しかしその人物はズィマーの頼みを断った。

 

「え〜ボクじゃ力不足だよ。だから無理無理。キミ一人でやったら?」

 

 白髪に白肌、特徴的な武器を持つ剣士。ラップランドはズィマーに対して笑みを浮かべながらそう返す。

 

「はあ?お前コイツがどうなってもいいのかよ?良いからさっさと付き合ってくれよ。」

「……ねえ。この状況さ……。結構楽しいと思うんだよね。」

「は?」

 

 ラップランドはそう言うと暗い笑みを浮かべ双剣を交差で前に構える。それを見たズィマーは危機感を感じ、ドクターを守るように消火斧を構える。

 

「……おい、アンタ何のつもりだ……?気でも狂ったか?」

 

 ズィマーは低くラップランドに問う。

 

「ねえ、キミさ。ドクターの座を狙ってるんだよね。だったら今はいいと思うんだよね〜。」

「事故に見せかけて殺すのか?私はそんなのには興味がない。実力で取りたいんだよ。それに何で今になってドクターを狙うんだ?もっとチャンスはあっただろう?」

「まあ〜タイミングだよタイミング。色々兼ね合いがあるからさ〜。」

 

 ラップランドが一歩前に歩み出る。それと同時にズィマーが下がる。ズィマーの冷や汗が頬を伝う。不気味な威圧感を全身で感じ取り、呼吸が速くなる。ズィマーは自身を落ち着けようと深呼吸をするが、意識しても浅い呼吸しかできなかった。

 

「おい、止まれ。仲間同士殺し合うのは良くないだろ。」

「うーん。キミはそう思うかもしれないけど、ボクは違うかな。」

 

 二歩、三歩とラップランドが詰める度、ズィマーは自身の鼓動が速くなるのを感じる。今まで感じたことのない恐怖が彼女の全身を包む。

 

「本当に本気か?やめろ!速く!」

「嫌だね〜。」

 

 ズィマーは二度に渡って警告するが、ラップランドは止まらない。そして、どちらが駆け出したらすぐにお互いを斬り合う距離でラップランドが止まる。ラップランドはズィマーを挑発し始めた。

 

「ねえ。いつまで突っ立てるの?速く来なよ。ボクから始めたらつまらないからさ。」

「テメェ……!クソ!」

 

 ズィマーは埒が開かないと思い、素早く相手の懐に潜り込むようにダッシュした。そして、ラップランドの首めがけて斧を振るう——

 

 その瞬間、ドクターの右の瓦礫の山が起き上がり、何者かが叫ぶ。

 

「今しかねぇ!死ねぇ!ロドスのクソ野郎!」

 

 何と、そこにはクロスボウを構えた弩士がいたのだ。彼は好機が訪れるのを待ち、ずっと瓦礫の山に潜んでいたのだ。ボロボロで血に濡れた体だが、彼の相貌はドクターを殺さんとばかりの殺意が籠っていた。そして今。その殺意が弩から放たれた矢に乗り、標的に真っ直ぐ飛んでいった。

 

「やっぱり!」

 

 ラップランドは歓喜の声をあげ、左手の剣でズィマーの斧を軽くいなし、右手の剣を振るう。すると刃の先から剣撃が飛び、とてつも無い速さで矢を弾く。絶体絶命だと思われたドクターの命をラップランドは一瞬で救った。

 

「え……?」

 

 弩士は矢が当たるとばかり思っていたのか驚く声を上げる。しかし、すぐに次の矢をつがえ弩を構え、再びドクターを殺すべく行動を開始する。だが、それは自身の両前腕が吹き飛ぶことで強制的に中断されてしまう。

 

「え……?」

 

 彼は二度目の声を上げるが、一度目に比べより驚愕の度合いが強く感じられた。そして、その後両前腕が吹き飛んだ痛みが弩士を襲い、彼はそれに耐えられず、絶叫をあげようと無意識に息を吸い込む。しかし、その瞬間、ズィマーの前から一瞬で風の如き速度で移動したラップランドが弩士の口に足を突っ込んだことにより、弩士は口を塞がれ、絶叫がトンネル内に響くことはなかった。

 

 ラップランドは驚嘆と恐怖で限界まで見開かれた弩士の目に自身の顔を近づけ、口元で指を立て、静かにする様に促す。ラップランドの口は笑っていた。

 

「ねえ?痛い?」

 

 弩士は一瞬何を言われたのか理解できず、目を開けたままじっとラップランドを見続ける。ラップランドは足をより突っ込む。すると弩士は涎と涙を撒き散らしながら必死にこくこくと頷く。それを見たラップランドは笑い、次の質問を投げる。

 

「腕直せるけど……直したい?」

 

 ラップランドは口から足を抜く。そして、弩士はしばらく咳き込んだ後質問に答える。

 

「痛い!いいから治してくれ!何でも話すから!」

「んじゃあ、君達の計画を手短に話して?」

「わ、わかった!」

 

 それから弩士は自分達がどのようにしてロドスを襲うのかと、その首謀者について話した。ラップランドはその間、ドクターを片手で引っこ抜き、安否を確認していた。ズィマーはその間、ただじっとラップランドを見ていた。

 

「こ……これ位だ……。俺が知っているのは……。は、はやく治してくれ。」

 

 弩士は痛みを必死に堪えながら、計画を語り終えた。そしてラップランドに約束を果たすようお願いをする。

 

「ああ、分かったよ……。」

 

 ラップランドは剣を取り出し——

 

——弩士の首を切断した。

 

「……今までのは全部演技で……コイツを出し抜く為に私らは付き合わされたのか。それにしても、オマエがイカれてんのは元からかよ。」

 

 一部始終を見ていたズィマーは呟く。ラップランドはそれに笑って応えるとトンネルの先を剣で指し示す。

 

 その先には暗闇から幾つもの足音が響いてきた。皆がそれぞれ何が起こるのかを察すると戦闘準備をする。

 

「アハハ。イカててもいいよ。それが楽しいならね。それにもっと楽しくなりそうだ。キミもドクターとボクと一緒の遊ぼうよ。」

「……遠慮しとく。」

「そう?残念。じゃあ、踊ろうか?」

 

 ラップランドはそう言うと、双剣を構えて敵陣に突っ込んでいった。

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