この素晴らしい世界に二人の探偵を!   作:伝狼@旧しゃちほこ

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今回文字数多いです。駄文垂れ流してますが我慢してください!


Wの真実/疾風とともに

 エクストリームメモリの力によって牢獄を脱出し、街中の路地裏に姿を現した。いきなり道中に現れるとなると怪しまれてしまう。

 

 エクストリームメモリは何事もなかったかのように自らの元を離れ飛び去っていく。本当なら呼び止めたいところだが状況が状況だ。この世界に残っていることが分かっただけでも御の字としよう。

 

 エクストリームメモリに搭乗している際に検索をかけたがいまいち引っ掛からない。決め手となる情報が欲しい。

 

 「探偵は足で稼げ、か」

 

 僕一人の事件処理。かつてのズーメモリの事件を思い出す。立ち止まっている暇はないと、路地裏を飛び出し駆け出した。

 

 今、手に持っている情報は小箱の魔道具ーーガイアメモリを持つ者にこの国が乗っ取られていること。アダプターがあったのだから絶対ないという可能性はない。

 

 そして内容はおそらく【ジーンメモリ】。遺伝子の記憶を冠するメモリ。でなければ普通の人間が合成キメラや魔獣など作れるはずがない。

 

 「問題はそれをいつどうやって手に入れたか……」

 

 それに加えて何かもう一つ、闇が隠れている気がする。なぜカルモアは第三王子のディシディアを残したのか。現国王ならまだしも、全員を残さず潰すはずだ。

 

 昼間の商人の話では上の二人が戦死、だがディシディアの話ではキメラに変えられてしまった。いや、そもそも戦争に行くなら国民にも知らせるはず……

 

 抱え込んでいると突然、背中を押すように強風が吹いた。酒の酔いを覚ます以上のそれは、まるで何を伝えるように。

 

 『考えすぎだ。ヒントはどこかに落ちてるはずだぜ』

 

 この場にいない相棒がそう言っているように思えた。解決へと導くヒントはどこかにーー

 

 「……鉱山業」

 

 いつから始まったかは分からないが、この世界にある道具はのはせいぜいツルハシだ。ドリルがあるところは翔太郎が働いていた土木作業でも見たことがない。

 

 しかもミラーストーンだけが鉱石だけじゃない。他にもあるはずだ。急に採れなくなったというのは不自然すぎる。

 

 『戦争が激化している』

 

 『薬草やポーションの提供を担っている』

 

 『激化しているとは聞いてないですけど?』

 

 『特別な手法をしている』

 

 『幻覚を見たように狂い始めた』

 

 結びつけるように考えていく。やがてーー一つ、可能性の答えが見つかった。

 

 懐からこの状況を打破出来るであろうアイテムを取り出す。本来あるべき形から一部がロストしてしまったそれを装着する。

 

 【Cyclone】

 

 翔太郎に使うなとは言ったが、まさか僕が先に使うはめになるとはね。まずは採石場で確認を取らなければ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 『侵入者警報並びに捕虜の脱走を確認!ただちに捕らえよ!』

 

 「侵入者……?」

 

 既に実験体として報復を受けていたウィズ。たが高い魔法耐性などのおかげで能力を受け付けず未だ姿が変わってしまった様子はない。

 

 だが、自分でも分かる程にリッチー特有の能力が失っているのが分かった。麻痺や毒といった追加効果が発動しない。

 

 「侵入者とは誰だ!」

 

 「分かりません!情報によれば動きが速い為、盗賊職ではないかと!」

 

 『一応、盗賊職とは対極の位置ではあるけどね』

 

 月光の反射でシルエットでしか確認できなかった。が、それは二本のマフラーを靡かせる者だった。もう一度しっかり確認すると、そこには獄中にいたはずのフィリップが立っている。

 

 「君は……どうして抜け出した!あそこにいれば」

 

 「下手な芝居は止めろ。この悪夢を作り出したのは君自身だろう」

 

 「……な、何を言って」

 

 「順番に紐解いていこう。最初は魔王軍との戦いだ。この国は戦争に参戦しない代わりに薬草の提供をしていた

 

 やがて戦争は激化。足りない兵を補わせる為に参加せざるを得なくなった……いや、激化とまではいかないか。少々苦しくなった程度だろう」

 

 ウィズが知らないのはその為だ。となると積極的に関与しているとは考えづらい。

 

 「効能はよいが特殊な製法であるが故に生産が難しい薬草を更に効率良く生産する為に出したアイディア。いわゆる農薬を使用した生産だ。それによって更なる向上を目指した」 

 

 「だがその農薬に問題があった。実験と称して行ったそれは地質汚染を発生させ、それは鉱山にすら影響を与えた。まるで山の神を怒らせてしまったように立ち入る者全てに呪いをかけ、やがて病や死に致るーー

 

 その結果、一部の鉱石ーー例えばミラーストーンも採取不能になった」

 

 ディシディアは図星をつかれたように目を伏せる。山の神や呪いと言っているが、科学的に見れば農薬によって起きた地質汚染が人体に影響を及ぼしているのだろう。実際、デンデンセンサーでそれらしき観測があった。

 

 「採掘を仕事としていた国民達に対しどう説明するかで悩んだ末、二つに分かれた。ありのまま話すか、採掘不可能になってしまったか。君の兄二人とカルモアは前者、君と国王は後者だろう?」

 

 「亀裂が生じていたその時に小箱の魔道具を手に入れたーーいや、拾ったという表現の方が正しいかな」

 

 アダプターでさえオークションで四億するんだ。本体を手に入れようとなるとそれ以上になるはず。加え、採掘業を仕事としていた国民への補填を考えると購入は難しい。

 

 残された道は人とメモリが引き寄せられた。つまり、あのメモリは【T2ガイアメモリ】の可能性が高い。

 

 そしてそれを最初に見つけたのがディシディア。使用した時に感じたその力に魅了され、障害であった二人の兄を合成キメラに変えた……つまり、変えてしまったのはディシディア自身。

 

 「いい加減な妄想だろう!第一、私がそれを使った証拠がどこにある!」

 

 「君は言ったはずだ。『幻覚を見るように狂い始めた』と」

 

 「それが一体ーー」

 

 「小箱の魔道具……ガイアメモリには禁断症状がある。初期症状としては幻覚を見たりなど、麻薬そのものと同じさ」

 

 「使っていないというのなら、幻覚を見るとは知らないはず。故に使用している可能性が高い」

 

 ディシディアは言葉を出さず歯ぎしりをする。

 

 「それを見て恐れた君は、唯一残ったカルモアに強引に起動させ手先にしようとした。が、メモリと引き合った適合者は君ではなくカルモアだった。自分より使いこなしてしまったカルモアはやがて自らの正義、そして陥れようとした君への復讐にとり憑かれてしまい現状に至る」

 

 「とどのつまり、自業自得さ」

 

 「……黙れ!第一、ここの奴らの頭がおかしいんだ!俺は兄どもより高いステータスを持って産まれ強いのに、生まれの速さなどという下らないことで王位を捨てなければならなかった!」

 

 「加えて魔王軍との戦いに参加しないなどとほざき……俺の全てを否定する!」

 

 「犠牲者を出さない平和な選択じゃないか」

 

 「うるさい!そのおかげで周りの貴族からは『腰抜け』などと呼ばれ侮辱される毎日!お前に分かるか!」

 

 ディシディアは剣を抜く。戦闘に入るか……

 

 「私だけ結界を無効にする札を持っている。低レベルのアークウィザードなど敵ではない。お前を殺せば今まで通りだ」

 

 「上に立つことも出来ずに自ら造り出してしまった怪物に怯えることが今まで通りか」

 

 「違う。そいつはもう半分は廃人だ。あとはゆっくりと都合良く扱っていくだけだ」

 

 「……どうやら間違っていたのは僕のようだ。本当の外道はお前だ」

 

 【Cyclone】 

 

 「変身」

 

 バックルーーロストドライバーに【サイクロンメモリ】を装填する。

 

 【Cyclone】

 

 暴風が吹き荒れる。ディシディアが目にしたのは人の姿ではない者。全身緑と赤い複眼。風に流されるように靡くマフラー。

 

 「仮面ライダーサイクロン。さぁ、お前の罪を数えろ!」

 

 生身の人間にこの力は使いたくなかった。けれどあのままみすみすとやられてしまえばこの街はまた暗黒に包まれる。

 

 手始めに風の刃を発生させディシディアの持つ剣を弾き飛ばす。それを見て焦ったのか、一目散に逃げ出していく。

 

 「呆れた腰抜けだね……カルモア。もしまだ意識が残っているのなら、そのまま動かないでいて欲しい」

 

 カルモアーー【ジーン・ドーパント】に言うと、彼は降参するかのように両手を上げた。

 

 【Cyclone Maximum Drive!】

 

 風に乗り素早い動きで急接近し、ジーンドーパントの首元に斜めから強い踵落としを決める。メモリが排出されると同時にカルモアはその場で倒れた。

 

 「ウィズ、ここは任せるよ」

 

 何が起こっているのか分からない表情をしていたけれど、僕の言葉を飲み込み頷いた。僕はジーンメモリを拾い、部屋を飛び出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 形跡を追ってたどり着いたのは地下の闘技場。観客席などはなく、まだ不恰好な作りをしていた。多分、キメラを戦わせて強さを検証する施設なのだろう。

 

 両サイドの鎖から一匹ずつ獣が姿を現す。右からは龍、左からはライオンだ。たが、明らかに持たないはずの部位があった。

 

 それに庇われるようにディシディアは立っていた。獣らは哀しい声をあげながら襲いかかる。

 

 身軽にそれを避け旋風を巻き起こす。しかし傷は浅い。風だけの力では押しきれないようだ。

 

 【Heat】

 

 三本の内の一本ーー【ヒートメモリ】を起動させマキシマムスロットに装填する。

 

 【Heat Maximum Drive!】

 

 熱風を纏いながらその場で高速回転し台風を巻き起こす。先程より遥かに効果は出ている。だが、こちらも負担が大きい。

 

 サイクロンは動くことによって風を吸収し体力の回復が出来る。しかし、さすがにツインマキシマムとなると足りなくなってくるか……

 

 着地して出方を伺う。最も、獣にそんなことを持っても……?

 

 そういえばマキシマムドライブを当てた時も避けようとする動きがなかった。今も反撃の瞬間があるのに動かない。自然の直感というものか、もしくは……

 

 僅かな可能性を信じ、ジーンメモリを起動させスロットに装填する。

 

 【Gene Maximum Drive!】

 

 合成キメラらにレーザービームを放つ。それが直撃しまるで分かれていくように出てきたのは二人の男性だった。多分、兄達だろう。

 

 耐えきれなかったようで変身が解除される。二度目の変身は暫く出来ないだろうが……

 

 「あ、あ……」

 

 ディシディアは蛇に睨まれた蛙のように二人から睨まれ動けなくなってしまう。

 

 「……ディシディア。お前がしてきたことは分かっている。お前がどれだけの屈辱を浴びてきたのかもな」

 

 「やり方は間違っていたとはいえ、お前に手腕があることは認めている。父上にも一度、お前が王位を継ぐべきだと抗議したこともある」

 

 「今さらそんな嘘信じるか!だったとしてもどうせ面倒事を押し付けるためだろ!」 

 

 「いや、その話が出たのは鉱山の件が出る前からだ。私達が公表すべきだと言ったのは、私達の責任にすればお前への非難は少なくなると読んでだ」

 

 どうすることも出来なくなってしまったディシディアはその場で膝から崩れ落ちた。

 

 「ありがとう。この街の英雄よ。私達だけでなく、暗闇から街を救ってくれて。何が出来るわけでもないが、せめて表彰だけでも……」

 

 「いや、僕はちょっと事情が……」

 

 「フィリップさん、大丈夫ですか!」

 

 息を切らしながらウィズが割り込んだ。それを見て僕は妙案を思い付く。

 

 「ウィズ。最後にやって欲しいことがあるんだ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 翌日。二人の王子は今まで起きていたことを国民に説明し、ディシディアは既に他国の警察に身分を確保されたことを通達した。

 

 彼にどういう審判が下されるかは分からない。けれどこの二人の王子なら易々と死刑にするなんてことはしないだろう。しっかり罪を償わせて欲しいところだ。

 

 そしてーーこの街を救った人物としてウィズは表彰された。彼女ならこの状況を打破出来てもおかしくはないと無理やりこじつけ、僕の代役を頼んだのだ。

 

 「ささやかだが、賞金の方も贈らせて貰おう」

 

 その言葉を受けウィズはこちらを確認する。人の好意は受けておくべきだ。

 

 

 

 「では、戻りましょうか」

 

 「テレポートは止めてくれ。帰るまでが旅行らしいからね……それとウィズに聞きたいことがある」

 

 受け取った賞金を抱えホクホクしていたウィズの様子が変わった。

 

 「今、アクセル付近の古城で幹部が来ているらしい。君が内通者じゃないかと僕は疑っている。一応、幹部なのだろう?」

 

 「……私、その話しましたっけ?」

 

 「小耳に挟んだだけさ。最も道中に聞きたかったけれど、タイミングを失ってしまったからね」

 

 実は翔太郎よりも先に古城に幹部が潜んでいるという情報は僅かながら掴んでいた。だが確証がない為に伝えるのを控えていた。そうでもしないと一人で行ってしまうのが翔太郎の性だ。

 

 ウィズを選んだのも幹部であることを本棚で掴んでいたから。内通者である可能性も高いからすぐさま行動に移した。僕がいなければWになれない。

 

 「警戒しなくても、私は結界の維持だけ頼まれてる置き物幹部ですから」

 

 笑顔で答えるウィズ。実際、戦況を知らなかった彼女は積極的に侵略活動をしているとは断言しがたい。

 

 だが、元々人間であったにも関わらずリッチーになったのは何かしら理由があるわけだ。……それを問い詰める権利を僕は持ち合わせていない。

 

 「一先ずは君を信じよう。あの姿を見せたのも君がもし下手な動きを見せたら、その為の予防線だ。身勝手を言うが、なるべく広めないで欲しい」

 

 「……分かりました。でもどうしてフィリップさんがあの魔道具を?」 

 

 「それは……僕が造ってしまったからだ。犯してしまった罪を償うために、あの力が必要だ」

 

 少し儚げに述べるフィリップ。そんな彼の背中をウィズはただただ見ることしか出来なかった。




次回から原作に戻ります。

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