流石に直接成分を分析すれば解毒剤の開発は可能だと思いますし・・・。
ベゼルブはガッツ星人の背中に尻尾を伸ばし、その先に備えた毒針を突き刺していた。ベゼルブは倒れたフリをして彼女に毒針を刺す機会を伺っていたのだ。尻尾の毒針をガッツ星人に突き刺したベゼルブは彼女に毒を注入し始める。ガッツ星人は痙攣しながら呻き声を上げて苦しんでいた。
「う"っ・・・ああ"・・・‼︎」
「ミコ‼︎」
尻尾の針が抜けた瞬間、ガッツ星人の体は大きく崩れ落ちる。おまけに変身が解除され、元の印南ミコに戻った。ハルキは思わずミコの元に駆け寄り、彼女の体を受け止めた。
「ミコ‼︎おい、ミコ‼︎大丈夫か⁉︎」
「う"・・・う"う"う"・・・あああ"あ"あ"・・・‼︎」
毒に苦しむミコにハルキは呼び掛ける。ミコは毒の影響か目が赤くなっており、体を痙攣させながら呻き声を上げていた。そんな彼女の状態を見てハルキは素人ながら危険な状態だと認知した。
「これ・・・絶対ヤバいだろ・・・早く医者に見せないと‼︎」
「無駄だぁ‼︎その毒は普通どころか地球じゃ治せないからなぁ‼︎」
ハルキが声のした方を振り向く。するとベゼルブの横からカブラギがやってきた。ベゼルブはカブラギが敵ではないと認識しているのか彼を襲うそぶりはない。ハルキはその顔を見て先日の出来事や先程のトモミとの会話を思い出し、顔を険しくする。
「お前・・・カブラギ‼︎」
「お前がその名を呼ぶとはな・・・成る程・・・俺が乗っ取ったこの体の持ち主の事を調べたか。」
「乗っ取った⁉︎・・・じゃあ・・・あの時トゲトゲ星人が言っていたセレブロというのがお前の名前なのか⁉︎何のつもりだ⁉︎まさか・・・その怪獣はお前が⁉︎」
ハルキの問いにカブラギに寄生したセレブロは顔を大きく歪めてきみ悪い笑みを見せる。その顔に怒りを覚えたハルキは怒りを押し殺して問い掛けた。
「お前・・・何でこんな事を・・・。」
「何で・・・だと・・・決まってるだろ・・・お前が・・・お前が・・・俺が作った・・・俺の・・・俺のベリアルメダルを借りパクしたからに決まってんじゃねえかぁぁぁぁ‼︎」
「ベリアルメダルを・・・作っただと⁉︎」
「そうだ‼︎折角朝倉リクを捕らえて奴の膨大なベリアル因子が含まれた血液からベリアルメダルを作ったというのに・・・俺からメダルを取りやがって‼︎」
「あれもお前の仕業だったのか⁉︎」
「そうだ‼︎デビルスプリンターだけではあのメダルを作ることは出来なかった・・・しかし、この地球に朝倉リクの持つ新鮮なベリアル因子がやってきてくれたお陰で・・・ようやくベリアルメダルを作れたというのに・・・突然お前らが現れて奪い取っていきやがった‼︎この悔しさが分かるか‼︎」
「俺への仕返しが目的か・・・だったら俺だけを狙えよ‼︎ミコは関係ない‼︎」
「まぁ待て・・・この女を助けたいんだろ?知ってるぞ・・・そいつはお前にとって大切な幼馴染だもんなぁ・・・。」
セレブロは懐から試験管を取り出してハルキに見せる。試験管からハルキに視線を変えると歪んだ笑みを見せて口を開いた。
「こいつはベゼルブの毒の解毒剤だ。ベリアルメダルを返せ。そうすればこいつを渡してやる。」
「何?ベリアルメダルを⁉︎」
ハルキはセレブロからの選択に戸惑う。目の前の男は明らかに邪悪な意志を持っている。そんな相手にベリアルメダルを渡したらこの先、とんでもない事になると分かっているがこのままでは幼馴染である彼女を助ける唯一の方法が無くなる。そう思うハルキの顔に苦渋の表情が現れた。そんなハルキの様子を見たセレブロは更にハルキを煽る。
「いいのかぁ?このままだったらコイツは死んじまうぞ?悩んでる暇があるのかぁ?」
「ぐっ・・・ぐぐぐぐ・・・‼︎」
ハルキは目を閉じて更に頭を悩ませる。頭の中のリクのベリアルメダルを託すという言葉と目の前のミコの様子を見て悩み抜き、数十秒後決意を固める。それはハルキにとって苦渋の決断だった。
「・・・・・・分かった。ベリアルメダルを返す。だから解毒剤をくれ‼︎」
「ははははははは‼︎それしかないよなぁ‼︎そうだ、いいぞ‼︎ベリアルメダルをこっちに渡せ‼︎」
ハルキはセレブロを睨みながらベリアルメダルを投げる。セレブロがメダルを無事にキャッチした事を確認したハルキは解毒剤を催促する。
「ベリアルメダルは返した・・・だから解毒剤を渡せ‼︎」
「そう慌てるな。すぐ渡してやるからよ。」
セレブロはハルキに解毒剤を差し出した。ハルキは手を伸ばして解毒剤を受け取ろうとする。しかし、ハルキの手があと少しまで近づいて来たタイミングでセレブロは解毒剤から手を離した。解毒剤はそのまま落下していき、試験管が床に落ちて粉々になり、液状の薬が床に零れ落ちる。
「ああああ⁉︎解毒剤がぁぁ‼︎」
「おっと、悪いなぁ・・・ついうっかり手が滑って落としちまった‼︎はははははは‼︎」
「セレブロてめえぇぇ‼︎」
「おいおい、そんなに怒るなよ。手が滑っちまったんだから仕方ないだろ。」
「てめえ、しらばっくれんじゃねえぞ・・・今、わざと解毒剤を落としただろ‼︎」
「おいおい、俺に言い掛かりつけてる場合か?愛しの彼女を見てみろよ。」
セレブロの言葉でミコに目を向けると彼女は頭を押さえながら床で苦しそうにのたうち回っていた。幼馴染が苦しむ姿を見たハルキはすぐに彼女に駆け寄る。
「うう"う"うう・・・ああ・・・あ・・・がああああ"あ"ああああ‼︎」
「ああ‼︎御免、ミコ‼︎大丈夫か⁉︎ミコ‼︎おいミコ‼︎しっかりしろ‼︎」
「あーあ、残念だったなぁ・・・。折角愛しの彼女を治せるチャンスだったのに・・・まぁうっかり落としちまったもんなぁ・・・うっかりだから仕方ないよなぁ・・・。」
「てめええええええ‼︎」
「おいおい殴りかかる事ないだろ?だってうっかり落としちまったんだからよ。」
「ふざけんな‼︎さっきあからさまにわざと落としただろ‼︎てめえ、最初から解毒剤を渡す気なんか無かったんだろ‼︎」
「うあああ"あ"あ"・・・ああ・・・あああああ"!」
「ミコ、ミコ‼︎しっかりしてくれ、ミコぉ‼︎ミコぉ・・・。御免・・・俺のせいで・・・本当に・・・御免・・・。」
ハルキがセレブロに殴りかかろうとした時、ガッツ星人の呻き声を上げる。ハルキがミコの呻き声を聞き、彼女に寄り添って呼び掛ける中、セレブロは怪しげに笑う。ハルキの言う通り、実はセレブロは最初から解毒剤を渡すつもりはなかった。セレブロはベリアルメダルを取り返してハルキに仕返しするためにベゼルブを放ったのだ。自身が差し向けたベゼルブの毒をハルキの幼馴染であるミコに注入し、解毒剤とベリアルメダルの交換という名目を作り、ハルキがベリアルメダルを返したタイミングで解毒剤を彼の前で破壊し、ハルキを絶望させる。それがセレブロの目的だったのだ。
苦しむミコの前で涙を見せながら寄り添うハルキの前でセレブロは更に愉快なものを見るような笑い出した。
「そう、その顔だぁぁ‼︎その顔が見たかったぁ‼︎大切な人を救おうとしてあと一歩のところで絶望に叩き落とされるその顔が・・・キエテカレカレータ‼︎」
「ミコ・・・ミコ・・・。」
「もうお前の幼馴染は助からない‼︎彼女の命が尽きるのを指を加えて見ているんだな‼︎フハハハハハハハハ‼︎ハハハハハハハ‼︎」
セレブロはベリアルメダルを眺めながら姿を消す。セレブロが消えるとベゼルブも羽を広げて何処かへ飛んで行った。そこにいつもの仲間達が駆け付ける。
「ハルキ、ガッツ‼︎無事か⁉︎」
「レッドキングさん、それに皆・・・ミコが・・・ミコが・・・‼︎」
ハルキの言葉で全員が苦しむミコに目を向けると直ちに全員が駆け寄った。
「⁉︎ガッツ⁉︎おい、ガッツどうした⁉︎何があった⁉︎」
「うう"う"う"う"・・・あああ"あ"・・・あ・・・あ"・・・。」
「ハルキさん、ガッツに何があったの?」
「怪獣の毒に・・・。」
「詳しい話は後で聞くから今はガッちゃんを‼︎」
そして全員でミコを医務室に運び、ベッドに寝かせる。ベッドの上でも彼女は苦しそうにのたうち回っていた。
「う"う"ううう・・・ぐああ"あ"あ"・・・‼︎」
「・・・という事になってしまって・・・。」
「くそ・・・最悪の状況になっちまった・・・。」
ピグモンはヘビクラにハルキから聞いた話の全てを報告していた。無論、ヘビクラが既にハルキの正体を知っているとは思っていないのでその辺りは隠している。ベゼルブの毒の恐ろしさをその身を持って知っているヘビクラは今の状態のミコを見て苦虫を噛み潰した顔をして呟いた。
(ベゼルブの毒『ググツ』を治せる唯一の手段である命の種は・・・俺が趣味で始めた盆栽で全部使っちまった・・・このままじゃコイツの命は・・・くそ‼︎どうする⁉︎どうすればいい⁉︎)
ヘビクラは血が滲むほど握り拳を作り、今までにない険しい表情をしていた。そのヘビクラの顔が今まで以上に怖い顔だったのかピグモンは少し怯えた顔を見せる。
「ヘビクラ隊長・・・少し顔が怖いです・・・。」
「ああ悪い・・・その後、奴の行方は?」
「分かりません・・・ただ、この基地の全ての出入り口を封鎖したので建物の中には確実にいます。」
「絶対に逃すな!何がなんでもとっ捕まえるかもしくは殺せ‼︎これ以上犠牲者を増やす訳にはいかねえ‼︎分かったな‼︎」
「は、はい‼︎」
ヘビクラは焦りで怒鳴りながらピグモンに指示を飛ばす。ピグモンもヘビクラの怒鳴り声に戸惑いながら彼の指示を通達するために走っていった。ピグモンが完全に去るとヘビクラは舌打ちして小さく呟く。
「セレブロ・・・あの野郎とんでもねえことしてくれたもんだ・・・キッチリ落とし前つけさせてもらうぜ。」
その頃、ハルキは廊下の壁を殴り、怒りを抑えていた。そんなハルキをアギラが咎める。
「ハルキさん、ここ医務室だよ‼︎」
「ああ、悪い・・・あの野郎への怒りと奴の作戦にまんまと引っかかった情けなさで頭が一杯になってて・・・。」
「お前の気持ちは分かるけど・・・今1番辛いのはガッツだ。お前が当たってどうする。」
「御免なさい・・・。」
ハルキは医務室で苦しむミコを見て表情を曇らせる。そんな彼にゴモラが優しく話しかけた。
「ハルちゃん、こういう時だからこそ落ち着こう。」
「ゴモたんさん・・・。」
「ここで焦ってハルちゃんまでやられちゃったらますます敵の思う壺だよ。ガッちゃんなら大丈夫‼︎だって怪獣娘なんだもん‼︎そう簡単にはやられないよ‼︎」
「けど・・・このままじゃミコはアイツの毒に・・・‼︎」
「大丈夫だよ‼︎解毒剤が無いんだったら直接怪獣から毒を手に入れて解毒剤を作ればいいじゃない‼︎」
「は?ゴモたんさん、本気で言ってますか⁉︎そんな事出来る訳」
「で・・・出来るわ・・・アンタなら・・・出来るでしょ・・・うが・・・。」
ゴモラの言葉を否定しようとした時、後ろからマコが変身したガッツ星人が声を掛けてきた。今の彼女はミコのダメージを共有しているため、息と声が絶え絶えで苦しそうな顔をしているが、足をしっかり踏みしめながらハルキを睨む。
「アンタは・・・相手が・・・どれだけ強くても・・・力を振り絞って・・・一生懸命戦っ・・・てたじゃない‼︎そんなアンタが・・・そんな事を言わない・・・でよ・・・。」
「マコ・・・。」
「あの子が・・・わたしが・・・知ってるハルキは・・・頭は悪くて少し・・・おっちょこちょいなところがあるけど・・・命を守るために・・・自分の身も顧みずに・・・危険に立ち向かって・・・誰かを助けるために・・・戦う・・・それがアンタでしょ‼︎ハルキ‼︎」
「マコ・・・。」
ハルキはガッツ星人(マコ)の言葉を聞いてこれまでの自分の事や病室で苦しむミコの事など様々な事を思い起こす。そして決意を固めると拳を握りしめ、ガッツ星人(マコ)に向き合った。
「そうだよな・・・ここで諦めたら駄目だ‼︎・・・マコ・・・御免‼︎それとありがとう、大切な事を思い出させてくれて‼︎」
「べ、別に・・・お礼なんていいわよ・・・。」
ハルキはガッツ星人(マコ)からアギラ達に顔を向けると決意して頼み込む。
「皆、頼む・・・力を貸して下さい‼︎」
「へへ、やっといつものお前に戻ったか。」
「その言葉を待ってたよ、ハルちゃん‼︎」
「力を合わせてガッツを助けよう‼︎ボク達が力を合わせればきっと出来るよ‼︎」
ハルキの言葉を聞いて笑顔になった怪獣娘を代表してレッドキング、ゴモラ、アギラが口を開く。ハルキは3人の声を聞いて思わず彼女達に頷く。彼女達とハルキが同じ意思を固めると彼らは前に向かって進み始めた。そしてヘビクラが物陰から姿を見せると静かに呟いた。
「まさかググツを直接採って解毒剤を作るとはな・・・奴の脅威にどう立ち向かうか・・・俺に見せてくれよ。」
その頃、ベゼルブは地下室に身を潜めていた。息を潜めているベゼルブの目にベゼルブの捜索をするミクラスが写る。ベゼルブは彼女を新たな標的と認識すると気配を殺して彼女に背後から迫る。そして天井にへばりつきながら尻尾を伸ばして彼女の背中に毒針を刺そうとした時、アギラが大ジャンプからの頭突きでベゼルブを叩き落とす。
「やあああああああ‼︎」
「キイイイイイイイイ⁉︎」
「危なかったね、ミクちゃん。」
「ありがと、アギちゃん‼︎」
ベゼルブはアギラに気付くと彼女に向かって火球を放つ。ミクラスがその前に立ちはだかり、拳で火球を弾くと、大きくジャンプした。ミクラスの右腕からの拳がベゼルブをぶっ飛ばす。勢いをつけた拳に思い切り吹っ飛ばされたベゼルブは大きく壁に激突した。
「キイイイイイイ‼︎」
ベゼルブは羽を広げて飛び上がると一目散に彼女達に背中を向けて逃げていく。2人はベゼルブを追うも曲がり角でベゼルブを見失う。
「アギちゃん、怪獣は?」
「・・・見失ったみたい・・・。」
2人が辺りを見渡す中、ベゼルブは後ろから毒針を彼女達に向けて迫ってくる。そのまま2人に毒針が突き刺さると思った時、ベゼルブにとって予想外の事が起きた。
「2人とも危ない‼︎」
「「ハルキさん⁉︎」」
ハルキが2人の前に立ちはだかったのだ。ベゼルブの毒針がそのままハルキの胸に刺さる。確かに毒針を刺した感触を感じたベゼルブはそのまま毒を注入する。
「ぐうっ・・・‼︎」
そして毒を注入し終えるとベゼルブはそのままハルキから離れる。その時、後ろからゴモラがやってきて尻尾をベゼルブの脳天に直撃させる。
「どりゃああああああああああ‼︎」
ベゼルブはゴモラの尻尾の一撃を受けて脳震盪を起こし、フラフラしながらその場から飛び去っていく。ミクラスとアギラは今のうちにハルキに駆け寄った。
「ハルキさん‼︎、大丈夫‼︎」
「もう、無茶しすぎだよ‼︎こっちがヒヤヒヤしたって‼︎」
「悪い悪い‼︎でも何とか、毒も採取出来た‼︎早くミコに届けるぞ‼︎」
ハルキがボタンを開けてジャケットを開くと中からベゼルブの毒が入ったパックが見えた。実はこの時、ハルキは自身の体のあちこちに空の輸血パックを備えていた。ベゼルブが自身の何処を刺しても毒を注入し、確実に採取出来るよう採取していたのだ。そのためベゼルブはハルキに毒針を刺せたと勘違いして毒を与えてしまったのだ。ベゼルブの毒を確実に手に入れた彼らはミコがいる医務室に向かった。
ベゼルブだけでは幾ら何でも戦いがすぐに終わってしまうため、次回はベゼルブ以外にも別の怪獣を出します。