ある日、GIRLSのオーディオルームでザンドリアス達はいつものようにバンドの練習をしていた。しかし、ボーカルのザンドリアスとギターのノイズラーはいつも以上に練習に集中出来ていないのか音程を外してしまう。
「〜この星をまもっ・・・⁉︎」
「あ、ヤベ‼︎」
思わず噛んでしまったザンドリアスと弦を弾く指を滑らせたノイズラーは思わず音を止める。そんな2人にウサギの様な耳の黒い獣殻に身を包んだ硫酸怪獣の魂を継ぐ怪獣娘『ホー』が心配の言葉をかけた。
「ざ、ザンドリアスさんにノイズラーさん、大丈夫ですか⁉︎」
「あ・・・うん・・・大丈夫大丈夫。」
「悪い悪い!仕切り直しだ‼︎」
「待って2人とも‼︎」
気を取り直して再び演奏しようとした2人を白いメカニカルな獣殻に髪型をポニーテールにした四次元ロボ獣の怪獣娘『メカギラス』が引き止める。メカギラスは2人に歩み寄るとザンドリアスとノイズラーに向き合って問い掛けた。
「2人とも、最近ミスが多いぞ。一体どうしたんだ?」
「へ?あたしら最近そんなにミス多い?」
「自覚無かったのか⁉︎この1週間、音程を外すわ歌詞を間違えるわ・・・しかもこれ10回を超える頻度で起きているぞ‼︎」
「お、お二人とも・・・最近何かあったんですか?ここのところ、様子がおかしいですが・・・。」
メカギラスとホーに指摘され、2人は反論出来ずに黙り込む。そしてザンドリアスはマイクを、ノイズラーはギターを離してその場に置くと観念したように口を開いた。
「いや・・・ハルキの事なんだけどさ・・・。」
「ハルキ・・・ってガッツさんの幼馴染のあの?」
「ああ、あの人がどうかしたのか・・・。」
「ベゼルブの事件以来、ただでさえ近いガッツさんとハルキさんの距離が更に近くなって・・・あたしらが入り込める隙間があるのかなって思ってて・・・。」
「ガッツさん、ただでさえアタシらとは比べ物にならないくらいスタイルいいのに・・・ハルキの奴もあの事件以降ガッツさんの事意識してるように見えるし・・・このままだとアタシらハルキと何も距離感掴めずにいるから・・・。」
「あ・・・ああ、成る程・・・そういうことだったんですね。」
「何だ、まだ進展してなかったのか?」
実はこの2人がハルキに想いを寄せている事はホーとメカギラスも知っていた。しかし2人ともバンド仲間とハルキがどこまで距離を詰められたかまでは把握しておらず驚きと同時に2人の気分が落ち込んでいる理由に納得した。
「確かに・・・ガッツさんは凄く胸が大きいですね・・・メカギラスさんよりも大きいですし。」
「それは向こうの方が年上なのだから仕方ないだろう。」
「それを踏まえてもガッツさんのスタイルは物凄いぜ。・・・それにガッツさん元々明るい性格だし・・・。」
「しかもハルキとは元々幼馴染なのもあってかなり距離が近いし・・・このままだとあたし達ハルキを取られちゃうって・・・。」
「だったら早く告白するかデートに誘ったらどうだ?何もしないよりはマシだろ。全く・・・そんな事で悩んでバンドの練習に集中しないなんて・・・。」
「そんな事で・・・ですって・・・。」
メカギラスの言葉を聞いたザンドリアスが体を震わせている。ザンドリアスはメカギラスの顔を見据えると怒鳴り出した。
「何よそんな事って‼︎あたしにとっては重大な事なのよ‼︎恋をした事がないアンタには分かんないでしょーが‼︎」
「な、何だと‼︎気にしている事をよくも‼︎この色ボケ駄々っ子怪獣が‼︎」
「ふ、ふえええ⁉︎」
「お、おいお前ら・・・⁉︎」
「大体、アプローチをしないザンドリアスが悪いんだろ‼︎幾らガッツさんが恋のライバルだからっていつまでも関係を深めようとしなければ何も変わらないじゃないか‼︎」
「あのね‼︎アンタが思ってる程単純じゃないのよ‼︎あたしがハルキを見るたびにその横にガッツさんがいんのよ‼︎そんな状況でどうアプローチしろっていうのよ‼︎」
「だからって黙って見ているだけだったら何も変わらないだろ‼︎私から見てもハルキさんいい人っぽそうなんだからデートとか誘えるうちに誘っておかないと後悔するぞ‼︎」
「お、おいよせよ2人とも・・・。」
ノイズラーは口論を始めた2人の仲裁に回ろうとする。するとノイズラーが目に映ったメカギラスは彼女にも物申した。
「大体、ノイズラー‼︎どうしてノイズラーもそこまでハルキさんとの仲が進展しない⁉︎まさかザンドリアスと同じ理由じゃないだろうな⁉︎」
「なっ・・・アタシも⁉︎・・・・・・仕方ねえだろ、ハルキの奴・・・アタシが見かけるといつもガッツさんと一緒にいるんだから。」
「だからといって見ているだけだったら何も変わらないだろ‼︎その程度で身を引くくらいなら諦めて練習に励め‼︎」
「な、何だと・・・‼︎」
「大体、中々いい相手に恵まれない私からしたら好きな人がいてその人に何もアプローチせずにいるのはどうかしてるぞ‼︎」
「仕方ねえだろ‼︎さっきザンも言ってたけど、アイツを見ると高確率でガッツさんの姿も見るんだぞ‼︎ガッツさんがいる前でデートに誘うとか勇気がいるだろうが‼︎」
「そーだそーだ‼︎あたし達の中で一番おっぱいが大きいメカギラスには絶対に分からないわよ‼︎」
「何だと⁉︎」
「えっ・・・あ、あのあのその・・・。」
メカギラスはザンドリアスだけでなくノイズラーとも口論を始めてしまう。3人の喧嘩を見てホーはオロオロと狼狽る事しか出来なかった。喧嘩は更にヒートアップしていき人見知りな彼女には止められない程になってしまう。
「お前、この間のベゼルブ事件でガッツさんがベゼルブの毒を解毒するためにハルキが口移しで飲ませたところを見てないからそんな事が言えるんだろ‼︎」
「そうよそうよ‼︎アンタがあたしらと同じ立場でも同じ事が言えるっての⁉︎」
「その件についても話は聞いたがハルキさんは毒の効果で暴れるガッツさんに確実に飲ませるために飲ませたんだろ⁉︎だったら医療行為って割り切れるだろうが‼︎」
「そんな事分かってる‼︎でもな・・・それでもアタシらの頭は割り切れねえんだよ‼︎」
「アンタにあたしらの気持ちは分からないわよ‼︎」
「止めて・・・3人とも・・・。」
更にヒートアップしていく3人に思わずホーが呟く。そしてホーは思わず大声を上げて涙を流しながら叫んだ。
「止めて下さい3人とも‼︎」
「ホー・・・。」
「これ以上・・・3人が喧嘩するところ・・・見たくないです・・・。」
ホーはポロポロと涙を流しながら口を開く。強酸の涙でオーディオルームの床が溶け始める中、3人は我に帰ると罰が悪い顔を浮かべる。そしてそのまま黙り込んだ。
「・・・今日の練習は中止だな・・・。」
ノイズラーの言葉を3人は黙りながら聞く。そしてこの後練習を中止した彼女達はそのまま真っ直ぐ帰路に着く。そんな中、ホーこと『芦原ルイ』は暗い顔をしていた。
「・・・私・・・どうしたら良かったんだろう・・・大切な友達が喧嘩して・・・止めなきゃいけないのに・・・何も出来なかった・・・。」
ルイは暗い顔で呟く。そんなルイの体から黒いオーラのような物が出てる。暫く落ち込みながら歩いていると彼女の目に本屋が映る。そしてルイは視界に入ったクッキーなどのお菓子の写真を見て何かを思い付く。
「‼︎・・・これならいけるかも‼︎」
ルイは駆け足でその場を走りながら去っていく。しかし、この時ルイの体からは黒い霧のようなものが出ていた。この霧が後に大騒動を起こす事など今の彼女は知る由も無かった。
そして翌日、オーディオルームに気まずい雰囲気のノイズラーとメカギラスがいた。根が真面目な彼女達はサボろうとせず予定されていた練習に来ていたのだ。2人とも一向に口を開こうとせず顔を合わせようともしない。そんな雰囲気の中、ホーはなけなしの勇気を振り絞って2人に紙袋を渡す。
「あ、あの2人とも・・・‼︎良かったら・・・クッキーでもいかがですか?」
「・・・クッキー?」
「・・・わざわざ作ってくれたのか?」
「ええ・・・もし良かったら・・・食べてくれませんか?」
「ありがと・・・。」
「・・・頂くぞ。」
ホーの折角の好意を邪険には出来ず、彼女達はクッキーを口に運ぶ。そしてクッキーを砕いて味わった時、2人はむせ返った。
「ゲホッ⁉︎ゴホゴホ‼︎・・・何だこれ‼︎」
「ゲホゲホ‼︎ホー、このクッキー何を入れた⁉︎凄くしょっぱいぞ‼︎」
「えっ・・・ええ⁉︎」
ホーは思わずクッキーを口にする。そして彼女自身もむせ返り、2人に謝罪しながら顔を青くする。
「ご、御免なさい・・・塩と砂糖を・・・間違えました・・・・・・。」
「ホー・・・お前・・・気を付けてくれよ・・・。」
「お2人とも・・・本当に御免なさい・・・。」
こうしてホーの手作りクッキー作戦は失敗に終わった。当然、更に空気は気まずい事になり、もはや練習どころでは無くなってしまったのは言うまでも無いだろう。
思わぬミスによって更にバンドの空気が悪くなったルイは帰り道の途中にある川辺のベンチで座り込んでいた。ルイは非常に落ち込んだ表情になっている。
「うう・・・・・・失敗した・・・・・・。しかもあんなクッキーをノイズラーさんとメカギラスさんに食べさせてしまうなんて・・・。」
ルイは俯きながら地面を眺める。そんな彼女の雰囲気に道行く人は誰もが近づき難くその場を離れていく。
「うう・・・このままじゃ・・・2人に嫌われちゃう・・・・・・このままじゃ・・・1人ぼっちだったあの頃に・・・・・・。もうあの頃には戻りたくない・・・・・・。」
実は彼女、依存癖があり人との距離感を掴むのが下手である。今でこそある程度は改善されたが、以前にこの性格のせいでクラスメイトから拒絶された事もあり、その悲しみから怪獣娘の力に目覚めたのだ。
そんな彼女は打ち解けられた大切な友達が喧嘩してしまい、自身の居場所が無くなる事を恐れていた。それで何とか自分が仲直りのきっかけになろうと彼女なりに努力したのだが、その必死さ故に単純なミスをしてしまい、更にバンドの空気が悪くなってしまった事で落ち込んでいるのだ。
「どうしよう・・・・・・私のせいで・・・・・・バンドが解散なんて事になったら・・・・・・。・・・嫌だよ・・・私の居場所がなくなっちゃうなんて・・・・・・。」
ホーはソウルライザーに写ったサチコ達バンドの仲間と撮った写真を眺めながら涙を浮かべる。そしてそんな彼女の体からは黒い霧のような何かが浮かび上がる。その霧はホーから離れると街の中に浮かび上がる。そして霧の中で何かが蠢いた。そしてその霧は数十分経つとその場から消えていった。
(一体・・・どうすればいいのかな・・・こういうの初めてだから・・・分からないよ・・・。)
その翌日、頭を冷やすまでは練習が無くなり、GIRLSの休憩室で俯いていたルイはバンドの仲間達との事を考えていた。そんな中、ランとレイカが話しながら通りすがる。
「エレキングさん、この間の謎のエネルギーの事ですが・・・やはりそのエネルギーが観測された場所では黒い霧がたっていたそうです。」
「またね・・・それで・・・やはり霧の中には?」
「はい、霧の中で何かが動いていたそうです。」
「一昨日の目撃証言と同じね・・・他に何か証言はあるのかしら?」
「ええ、霧が目撃された場所が一昨日と違う事ですかね。一昨日がA区のXX町だったのに対して昨日はB川の近くですから。」
「え?」
ルイは顔を上げてランとレイカの姿を見送る。実は一昨日と昨日、ルイは帰り道に2人が話していた霧の発生箇所にいたのだ。元からネガティブな彼女は2人の会話を聞いてまさかと思わずにはいられなかった。
「黒い霧・・・・・・まさか・・・私のせい・・・・・・ううん・・・違うよね。」
ネガティブになってしまったルイは思わず自身の考えを振り払うように首を振る。するとラン、レイカと入れ替わったようにハルキとミコが話しながら歩いてきた。
「ミコ、どうだった?」
「うん、全然覚えていないって・・・。ゲネガーグが地球にやってきた日からの記憶がないらしいよ。」
「ベータスマッシュ、ガンマフューチャー、デルタライズクローの事だけじゃなくキングジョー・GIRLSカスタムの事も知らなかったもんな。・・・長い間、GIRLSにいてGIRLSカスタムの事まで知らなかったとなるとやっぱり何かに体を乗っ取られていたみたいだね・・・。」
「セレブロって奴か・・・カブラギさんの体から出ていったみたいだけど・・・一体どんな奴なのか・・・。」
「うん、まずは正体を探らなきゃね。どんな奴なのかとかどんな風に人間を乗っ取って活動するのかとかさ。」
「それだけじゃねえよ。カブラギさんの体を捨てた奴の行方も追わなきゃ。きっとまた誰かの体を乗っ取って何かを目論んでいる筈だ。」
「うん。」
「あ・・・あの・・・ハルキさん。」
「ん?」
ハルキの言葉にミコが頷いた時、ハルキの後ろにいつの間にか来ていたルイが話しかける。ハルキとミコは後ろを振り向いてルイに気付いた。
「あれ?君は確か・・・。」
「ホー、だよね・・・。ザンドリアスとノイズラーのバンド仲間の。」
「は、はい・・・。あの、実はハルキさんに頼みがあって・・・。」
「俺に?一体どうしたの?」
「あ・・・あの・・・ハルキさん・・・。」
ルイは年上の男であるハルキに対して緊張していたのかモジモジしている。そして彼女は言葉足りずのために更に自身の首を締める事になる発言を口にする。
「あ・・・あの・・・今度・・・一緒に遊びに行ってくれませんか?」
今月からガメラの新作が始まりますね。
バルゴン以外の昭和怪獣がリメイクされて登場するとは・・・しかも皆カッコよくなっちゃって・・・非常に楽しみです‼︎