とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのは編)。 作:SUN'S
△月∩日
最近、八神さんと居ることが増えた。
私と一緒に居ても本を読んだり、私のコレクションを見せたりするだけの普通の交遊関係だけど。なぜか他の人と話してると「私のやのに、なんで他の人と話すんや?」など変なことを言うことがある。
そう言えばテスタロッサさんも同じようなブツブツと呟く癖があった気がする。まあ、最初に送ったビデオレターから返事も何も来てないけど。
ほんのちょっとだけ寂しい。
いや、嘘を言うのは良くない。ここはハッキリと会えなくて寂しいってビデオレターを送るべきかな?なんて考えつつ、お小遣いを貯めて買ったナイトティンバーを八神さんに渡したら「うっさいわ!?」と怒られた。
八神さんのキレるツッコミを見るためだけに購入したつもりはない。それでも八神さんのツッコミを鋭くキレるから凄く面白いのです。
その後は高町さん達みたいに頬っぺたを引っ張られ、鼻息を荒くして胸を押さえる八神さんを介抱したりと平穏とも言える一日を過ごした。
△月/日
今日は高町さんの魔法の練習を見るため、山奥の休憩所に来ている。ただ、どうしても崖下から此方を見上げる赤い通り魔に酷似した何かが気になって崖下から目を離せない。
じーっと崖下を見ていると何かは身体を動かし、両の手を前に突き出すと私達のいるところまで聞こえる声で「レッドファイッ!!」と雄叫びを上げ、私は高町さんを抱き上げて全力で逃げたことしか覚えていない。
あんな恐ろしいものが実在するなんて知りたくなかったけど。この世界とは違う場所には魔法だってある、あいつが居ても可笑しくない。
ただ、どうしても許せないのは私や高町さんを怪獣と認定したことだ。高町さんは魔法のビームで空き缶を撃っていただけで、私は赤い通り魔を崖の上から見ていただけだ。
それなのに赤い通り魔は私と高町さんを怪獣と断定して構え、いつものように怪獣を虐殺するために物凄い勢いで崖をよじ登ってきた。
たぶん、今日の恐怖を忘れられない。
むしろ忘れるのも不可能だ。
私の家に連れ込んだ高町さんは嬉しそうに頬を緩めてるけど。一歩でも外に出たら赤い通り魔に見付かり、惨たらしく殺される。
その日は高町さんのお母さんに頼んでお泊まりの許可を貰った。これで高町さんを赤い通り魔から守ることは出来るけど。
私だけで攻撃を防ぎ切れるかな…。
△月-日
早朝、私は昨日の出来事を高町さんに話したら顔を真っ青にして座り込んでしまった。幸いなことに今日と明日は休みだから一緒に居れるけど、一人で居る時に見たら全力で逃げてとしか言えない。
いくら魔法を使えても残虐非道な赤い通り魔を止めることは出来ない。私は赤い通り魔の残虐性を教えるため、パパの部屋からレッドマンのビデオテープを持ち出し、私の布団を被ってテレビを見ないように頭を隠す高町さんの隣に座る。
そして、テレビに映ったのは凄惨なる現場に残った怪獣の死体を崖下へ放り投げ、そのまま去ろうとする赤い通り魔の顔は正義完了と言わんばかりだ。
あと少しでも逃げるのが遅れていたら私達も崖下に投げ捨てられた怪獣と同じように誰にも気付かれず、ひっそりと忘れられていくことになっていた。
そう考えると怖くて仕方ない。
ふと視線を感じて窓の方を見ると身体を窓に押し付けながら私達を見下ろす赤い通り魔がいた。それから私は高町さんと一緒にお風呂に入り、何も見なかったことにした。
もう、赤い通り魔なんて見たくない。