とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのは編)。 作:SUN'S
いつもと代わらず商店街とスーパーを往復して野菜やお肉を購入していると運悪く小石に車椅子の車輪がぶつかり、膝の上に乗せていた袋が地面に滑り落ちた。
はあ…と溜め息を吐きながら拾うために身体を折ろうとした瞬間、透き通った青色の目の女の子が散乱した品物を袋に入れ直して私に渡してくれた。
その子の見た目からして私と同じくらいやろか?と考えながらお礼を言うと「それ疲れない」と聞かれた。最初は意味も分からずに首を傾げたけど、私の顔を見ながら言うとるってことは笑顔のことなんやと思う。
まあ、ずっと他の人に悟られんように取り繕ってきた顔やし、無理しとるように見えたんかもしれんけど。私は初対面の相手に言うことや無いと思うよ?と言いながら袋を受け取り、何も言わずに車椅子を押してくれる彼女に家へ続く道を教える。
こんなこと知らん人に言ったらダメなんは知ってるよ?それでも私の心を見透かしたような目をする、その子を見とると上っ面やなくて、本当の私を見てくれてるような気がして少しだけ嬉しかった。
「なあ、明日も会える?」
たぶん、私は人生で初めての我が儘を言うたと思う。これが断られたら私は死のう。私のことを見てくれると思った女の子すら私と会ってくれへんかったら死ぬしかない。その時は出来るだけ痛くない死に方を探さんとダメやね。
そんなことを真剣に考えていると「じゃあ、明日は貴女の家に行く…」と答えてくれた。もし、もしも、その言葉が嘘やったらこの子を探し出して目の前で死ぬところを見せ付けて、ずっとこの子の記憶に居座り続ける。
「私は八神はやて、末長くよろしゅうな」
「うん、よろしく」
きっと、この子と私が出逢ったんは運命やと思うんよ。童話や小説に出てくる白馬の王子さま、それとは違うかもしれんけど。
この子は私だけを見てくれる。これから大人になっても、お婆ちゃんになっても、ずっと私の車椅子を押してくれる人になる。そう考えると煩わしくて仕方無かった足も役得と思えてきた。
「なあなあ、良かったら泊まっていかへん?」
「…聞いてみる…」
ああ、嬉しい。
いきなり家に泊まれって言うてるのに嫌なるどころか泊まるつもりで家の人に聞いてくれてる。きっと家の人も泊まって良いって言うてくれる。そうやなかったら可笑しいもん。
「泊まっても良いって…」
「ほんま、ほんまなんやな!?」
よしっ、よしっ、私の思いが通じた。
これからは、ずぅーっと一緒やで?
そんなことを考えていると気付けば家の前に着いていた。その子に鍵を手渡す行為すら幸福に、ニマニマと笑いそうになる頬っぺたを堪えるのに必死だ。
そっと私を傷つけないように抱き締め、私が怪我しないように身体を持ち上げ、優しく室内用の車椅子に乗せてくれる。
彼女と離れるのは名残惜しいけど。
何時間も抱っこしてもらう訳にもいかない。いつか私と暮らすようになって、大人になったら毎日のように抱っこしてほしい。ポッと頬を赤く染めながら彼女を見ると可愛く首を傾げながら私を見ている。
あかん、この子は可愛すぎる…!