とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのは編)。   作:SUN'S

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第20話(シグナム)

夕焼けに染まる空の上に立つ仮面を被った二人組の男の睨み付け、主の腕の中で動かなくなった友の身体に散らばった青い結晶の欠片を握り締める。シャマル、ヴィータ、ザフィーラ、私と同じように青い結晶の欠片を拾い上げている。

 

我が主の生涯を共にしたいと願うほど大切な友人で、我らの正体を知って尚も共に在ろうと、我らの進むべき道を優しく照らす月明かりのような少女だった。我が主と彼女の未来のためならば、どの様な処罰を受けても構わないと思っていた。

 

その願いすら、その想いすら、貴様らは…!

 

「我らから奪うのかァァッ!!」

 

私の言葉に耳を塞ぐ二人の少女を押し退け、主の目の前に立つ男を斬るために駆け出した瞬間、主より放出される莫大な魔力の余波を浴び、別の建造物まで吹き飛ばされる。その最中にも彼女を抱き締めながら悲痛の叫びを上げる主の姿は我らの知らない者の姿へと変貌していく───。

 

私は今代の主も失ってしまうのか。

 

そんな後ろ向きな考えを追い払うように頭を振り乱し、我らを見詰めながら涙を流す彼女にレヴァンティンを突き付ける。まだ、我が主も友も失った訳ではない。今は彼女の中に囚われているだけだ。

 

ゆっくりとレヴァンティンを構え直し、彼女を取り囲むように陣形を作る。たとえ我が身が朽ち果てようと我が主を救うため、我が友を守るために命を賭す覚悟は出来ている。

 

「「この想いは我らが主のために」」

 

「「この願いは我らが友のために」」

 

ヴォルケンリッター、三人の魔力を私の持つレヴァンティンに集束する。かつて我が友の教えてくれた最強の技の一つだ。今となっては見せることも出来ないが、それでも闇の中に囚われている我らが主を取り戻すことの出来る可能性を秘めた一撃だ。

 

私の左手にある青い結晶の欠片が輝き、我が友と出会った時に持っていた魔笛封印剣ナイトティンバーへと姿を変える。お前は死んでも尚我らを助けてくれるのだな。

 

「お前達も友を失った主の心の痛みを分かっているはずだ。どうして、永久の夢の中で安らぎを求める主を傷つけようとする…」

 

私達を見下ろす彼女は涙を流しながら当たり前のことを問い掛けてきた。

 

「確かに我らはお前と同じく闇の書より生まれた。しかし、どれだけ取り繕おうと紛い物の友を求めるほど主は弱くない」

 

「シグナムの言う通りよ。いくら私達と意識や記憶を共有してもあの子は絶対に死なないって思わせてくれる」

 

「ああ、底抜けに優しいアイツがはやてを泣かせたまま死ぬなんて有り得ないんだよ」

 

ザフィーラ、シャマル、ヴィータ、私の背中を支えてくれる大切な仲間の希望を束ねたレヴァンティンの柄頭にナイトティンバーを押し付ける。

 

その姿はレヴァンティンの形態の一つボーゲンフォルムと酷似しているが、青色の鮮やかな色彩を含んでおり、私の手の中に現れた矢は三人の持っていた結晶の欠片を取り込む。

 

「ああ、そうだ。主と同じように彼女と出逢い。短くも楽しい時間を過ごした守護騎士よ、我らが友の願った主の幸せな世界を取り戻すぞ!」

 

レヴァンティンの魔力で作り上げた弦を引き絞ると矢じりの荒れ狂う炎は青い光を纏った静かで穏やかな炎となり、私達の前で静止している彼女のバリアに激しい電撃や炎を発しながらぶつかる。

 

「「「「届けえぇぇっ!!」」」」

 

我らの叫びと共に矢の放つ炎は強さを増し、バリアを突き破って彼女の体へと吸い込まれる。ヴィータが不発に終わったかと目を反らそうとした瞬間、彼女の体と分離するように同じ顔の女性が主と我が友を抱えて光の輪の中から飛び出してきた。

 

「た、ただいまぁ…」

 

ふにゃりと笑う主へと体当たりとも思える飛び付きを繰り出すヴィータと涙を流して喜ぶシャマルの傍らでザフィーラはいつもの仏頂面を外して笑顔を浮かべている。我が友を抱える彼女の目の前に近寄り、我が友を受け取って抱き締める。

 

「ありがとう、我が友よ」

 

もう、彼女は目覚めることのない。

 

そう考えるだけで目尻が熱くなる。他の者に悟られぬよう涙を拭い取り、胸元を掻き毟るもう一人の彼女を見る。まだ、我らの主を取り込もうと考えているのか。シャマルへと二人を手渡し、ザフィーラとヴィータと共に醜く身体を膨張させるヤツを倒すためにレヴァンティンを突き付ける。

 

「私も手伝おう」

 

私の肩に手を置きながら隣に立つ銀髪の彼女を視界の端に映す。どうやら彼女の外側と内側は別人と言えるぐらい性格が反転しているようだ。もっとも私は最初から手伝わせるつもりだったがな。

 

「剣の騎士、シグナム」

 

「鉄槌の騎士、ヴィータ」

 

「盾の守護獣、ザフィーラ」

 

私達は名乗りを上げて彼女の顔を見る。

 

「祝福の風、リインフォース」

 

クスリと笑った彼女は私達と並ぶように立ち、高々と宣言するように主に貰った名前を口にする。其々の武具や誇るものを構え、巨体を維持できずに地面に降りるヤツを追い掛ける───。

 

 

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