とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのは編)。   作:SUN'S

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第40話(シグナム)

私は彼女のおかげでザムシャー殿と話すことが出来るのだが、本人を前にしたら話そうと考えていたものが抜け落ちてしまった。どうにか重苦しい空気を瓦解する策を考えねばザムシャー殿が立ち去ってしまうかもしれない。

 

何度も呼吸を繰り返しながら高鳴り続ける想いを落ち着かせ、ゆっくりとザムシャー殿と視線を合わせる。あまりの凛々しさに叫びそうになる身体をグッと押さえ付け、ザムシャー殿に歩み寄る。

 

「その、はな、はなし合いを…」

 

「…死合いだと?」

 

「は、はい!」

 

「貴様も俺を取りに来たか…」

 

なぜかザムシャー殿は悲しそうに俯き、ゆっくりと惑星をも断ち切る名刀を、背中に佩ていた星斬丸を引き抜いて切っ先を突き付けてきた。

 

も、もしや、これはザムシャー殿からの私への「俺と恋仲になりたければ勝ち取ってみろ」という腕試しなのか!?

 

そんなことを考えながらザムシャー殿と向き合うようにレヴァンティンを引き抜いて構える。ナイトティンバーを使えば勝率は格段に上がるだろうが、これは私の乙女の矜持を伝える為の戦いだ。

 

たとえザムシャー殿に勝てずとも我が心の内に秘めていた想いを伝えるための戦いだ。彼女の身体を介しているとはいえ敗ける確率の方が遥かに高い。それでも烈火の将として、一人の女として、ザムシャー殿を射止めてみせよう。

 

「いざ、参る…!」

 

「はいっ!」

 

ザムシャー殿の掛け声と共に振り下ろされる星斬丸をレヴァンティンで往なし、互いに身体を捻って白刃を紙一重の間合いで避ける。

 

しかし、私はザムシャー殿に切り返すことも出来ないまま彼の一太刀を避けることが精一杯だった。

 

なにより往なした筈の一太刀の重さに堪えきれず未だに右手が痺れている。これほど重く鋭き剛剣を私に振るってくれるとは本当に嬉しい限りだ。

 

ジリジリと間合いを詰めるザムシャー殿の視線の先はレヴァンティン───否、あれは私の手首を狙っているのか。

 

やはり、大切なものを守る強さを手に入れたザムシャー殿は無益な殺生は好まない。その点は彼女と似ているように思えるが、彼女は出会った頃から誰だろうと助けるため、必死に動いていた。

 

「レヴァンティン、次で決めるぞ…!」

 

《Explosion!!》

 

「喋るとは…面妖な剣を持っている」

 

「はい、私の大切な愛機です」

 

私はレヴァンティンを鞘の中に納め、ザムシャー殿は身体の後ろに星斬丸を隠すような構えで私を迎え撃つ姿勢を取っている。

 

「紫電一閃ッ!!」

 

「ヌェリャアアッ!!」

 

私達の振り抜いた剣は耳の奥に残るほど嫌な音が怪獣墓場の岩山に響き渡る。

 

ゆっくりと私の纏った甲冑の脇腹を切り裂いた星斬丸を鞘の中に納めるザムシャー殿を見た後、剣身の真ん中から叩き折られたレヴァンティンを見詰め、苦笑いを浮かべながら「これでは戦いを続けることは不可能だな」とザムシャー殿に語り掛ける。

 

はあ、これが失恋というものか。

 

今にも泣きそうになる目尻を甲冑の袖で拭いながらザムシャー殿に頭を下げようとした瞬間、私と彼女のユナイトが強制的に解除された。

 

「若武者よ、悔いるな。俺の剣と渡り合える者など全宇宙を探しそうと容易く見つかるものではない。お前と相間見える日を楽しみにしている」

 

「そ、それは本当か!?」

 

「ああ、久方ぶりに善き戦だった」

 

これは、つまり、あれなのか…。

 

ザムシャー殿も少なからず、私のことを女として見てくれているということなのか!?

 

そういうことなのか!?

 

私の足元で目を回しながら気絶している彼女を揺さぶって確認しようとするが、先程の激しい戦闘を体験していたのなら気絶してしまうのは仕方無い。しかし、私は友の助言を聞かないと次に「恋の腕試し」を執り行う日を決められない。

 

 

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