とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのは編)。 作:SUN'S
あの自分こそ次元世界を調律する王だと誇示する評議会の脳ミソの寄越した遺伝子のオリジナルは私の知らない未知の稀少技能を使用して、光を纏った巨人へと姿を作り替えた。
しかし、この不規則な動きを続ける細胞はなんだ?私や彼女のものとは違った他者の遺伝子だが、人工的に作った彼女の模造品は色濃く、この細胞を受け継いでいる。
私の推測が正しければ彼女の巨人化する稀少技能は人工的に植え付けられたものであることは間違いない。だが、私を含めて稀少技能は意図的に発現させる科学者は一人もいない。
なにより研究所の転送装置を使い方を数分で理解するなど常人の思考速度を遥かに越えた模造品を作り上げてしまう自分の才能が恐ろしい。
私は模造品と隣接して配置していた培養槽のガラスを優しく撫でる。かつてベルカの大規模な戦争を終わりへと導こうとした聖王の遺伝子を組み込んだ模造品でも劣化品でもない完成品だ。
あの忌々しい脳ミソの考えていることなど微塵も興味はないが、彼女の力を得た模造品の行動は興味深いものだ。私の研究所のモニターに映る脳波を文章化したものを読めば本当に自分のことを彼女の娘だと思い込んでいるのだ。
これほど面白くて可笑しいことはない。
この場合は視線の先を見る特殊なカメラを右目の中に仕込んでいる。勿論、外観は普通の目だから肉眼で見ただけでは見分けることは不可能なのは確かではあるが、朝から晩まで模造品を愛しそうに見詰める彼女の思考を完全に把握できない。
まともに考えればコウノトリが赤ちゃんを運んでくる訳がない。今の彼女は性欲に関する知識を欠落しているということは考えるまでもなく分かることなのだが、彼女を育てた親はバカなのか?
また、特別なデバイスを使わないと変身するのも難しいとのことだが、そのデバイスを解析すれば私も使えるということか…。
ふと私の腰を優しく抱き締めてくる感覚に気付き、もう帰ってきたのか?と後ろを見たら数ヶ月ほど前に私の研究所の一つを潰した赤いやつがいた。
「レッドフォールッ!!」
「はがぁっ!?」
私はグンッと力任せに引き抜かれ、分厚い鉄の地面に叩き付けられる。なんとか致命傷は、頚椎へのダメージは減らしているが鈍痛が治まらない。
ジリジリと近付いてくる赤いやつの足元に煙幕を作り出し、首筋を押さえながら部屋を逃げるように出た瞬間、赤いやつと似た格好のやつが私の娘たちを追い掛け回していた。
「お前達、脱出ポットを使って逃げろ…!」
私の叫びを聞いた半数は足の遅いものを抱き上げ、研究所の奥に用意していた別次元の研究所へと繋がる脱出ポットに走っていく───。
私はガジェットを起動して、聖王の培養槽のある実験室に立て籠る。もしもの事態を想定して作っていた隠し通路を使うことになるとはな。だが、私の完成させた聖王を奪われる訳にはいかない。
激しい爆発音の聴こえる研究所は何日も経てば管理局の奴らに見付かるが、遠隔操作で研究レポートなど簡単に削除することは出来る。