とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのは編)。 作:SUN'S
私とスバルを残して昇格試験を受けようと百人近く集まっていた人達は居なくなっていた。昨日のジープを使った度胸試しで諦めたのか、あるいは最初から冷やかすために受けていた。
そのどちらかだと考える。
私の場合はお兄ちゃんが目指していた執務官の夢を引き継ぐため、この試験を受けようと決めていた。元々は私達を見てくれる試験官の護衛任務を言い渡されたことが原因だってことは本人から聞いてる。
あの人も何かと訓練校に来て実地調査や犯罪者を捕縛する方法など本来なら卒業した生徒に教えることを細かく話してくれたり、私が強力な魔法を撃てなくて悩んでいる時も寄り添ってくれた。
まあ、私のデバイスとの相性は良いとは言えない高圧縮した魔力の塊を弾き飛ばす魔法を教授してくれたこともあるけど、今は複数の魔法を同時に放てる「バルキーコーラス」という凄く高度な魔法を個人授業で教えて貰っている。
それに私がコンビを組んでるスバルにも彼女のスタイルと見合った魔法と体術を教えているけど、その体術の名前が気になって仕方がない。
いったい、スバルの習ってる宇宙拳法って、どういう格闘技なのよ。いきなりスバルのリボルバーナックルが燃え上がったり、錐揉み回転しながら燃え上がったり、色々と可笑しいところしか見ていない。
それとなくスバルに宇宙拳法のことを聞いたら「あはは、実は私も良く分かってないだよね…」と前髪を掻き上げながら困ったような笑顔を向けてきた。なんで習ってる本人が分かってないのよ…。
「そろそろ始めるけど、二人とも疲れてない?身体とか大丈夫?痛かったら言うんだよ?」
「私は大丈夫ですっ!」
「あんたは元気すぎるのよ…」
私はハキハキと試験官のお姉さんに答えるスバルを見て溜め息を零す。私と同じ訓練や特訓している筈なのに元気が有り余る理由が未だに分からない。
チラリとお姉さんを見ればクスクスと口元を押さえながら笑っている。私達より年上のはずなのに幼く見るのは仕方ないことだけど、なんだか子供を見守る母親みたいだった。
いや、まあ、本当にお姉さんは一児の母なのは知ってるんだけどさ。その相手がお兄ちゃんじゃないのが本当に残念で悲しい限りだ。
最初から望みは薄いとは思ってたけど。
まさか、異性とも思われていなかったとお兄ちゃんに聞かされた時は何も言うことが出来なかった。ただ、うん、お姉さんは旦那さんが誰なのか知っているとのことだ。
それにしてもベリアルという名前の人なんて管理局で見たことも聞いたこともない。お兄ちゃんもなのはさん達も知らないと言っていた。
はやてさんは納得したような表情を浮かべていたのも気になるけど、今はバルキーコーラスを使えるようになることだけを考えよう。
「そういえばティアナさんはウルトラマンノアって知ってたりする?」
「ウルト…なんですか?」
「ウルトラマンノア、聖王教会に御神体として奉られてる石像の本当の名前なんだけど。近頃っていうか、はやてさんと一緒に聖王教会に行った日から頭の中に語り掛けててさ…」
いったい、なんだろうか。とても聞いてはいけないことをお姉さんが言っているような気がするけど、お姉さんの話を要約して考える。
そのウルトラマンノアと呼ばれる神様はお姉さんの頭の中に語り掛けて、ミッドチルダを含む全ての次元世界の危機を伝えてくるそうだ。
なんでも次元の狭間に封じられていた邪悪なる暗黒破壊神が甦ろうとしている。その破壊神を倒す術を授けるため、お姉さんをバラージ神殿という場所に導こうとしているらしい。
とりあえず、この話は忘れるしかない。
いくらお姉さんの話でも現実味を帯びていない話を聞かされるのは無理だ。いや、お姉さんが光の巨人って呼ばれてるのは知ってるけど、そんな突拍子もない話を信じるのは絶対に出来ない。