とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのは編)。 作:SUN'S
今日を含めて二ヶ月と二十五日ほど前に消息を絶った最愛の女の子を思い浮かべて、べつに頑張りたくもない仕事を淡々と繰り返す日々を抜ける算段を考えながら次元世界を揺るがす犯罪者を捕まえる。
今まで彼女と過ごせるという理由だけで、私は管理局の局員としてエース・オブ・エースと呼ばれるほど頑張ることが出来ていた。
それなのにミッドチルダを襲おうとした怪獣を落ち着かせて、ミッドチルダとは別の世界へと送り返した彼女を危険分子と決めつけ、彼女の子供を実験のために差し出すように命令した最高議会を名乗る脳ミソをフェイトちゃん達と一緒にお話しして彼女を迎えに行く許可をもぎ取ってきた。
私は彼女と取ったツーショットの写真を待ち受けにしている。いくら寝ても覚めても彼女の声を聞こえない、私もフェイトちゃんもはやてちゃんも目に見えて窶れているそうだけど。
私達は口を揃えて「そんなことよりも彼女の足取りを追うことを優先して」とジェイル・スカリエッティの事件を手伝ってくれた管理局の人達に指示を送り、彼女の残り香を纏ったものをジップロックから取り出して鼻を押し付けて吸引する。
最近、私は彼女の残り香を吸うだけじゃ自分の気持ちを落ち着かせることも出来なくなってきた。ずっと彼女の匂いに包まれていたいけど、私の居る個室トイレをノックする音が聴こえてくるのがムカついて仕方無い。
あと少しだけ記憶の中で微笑んでくれる彼女と触れ合いたいのに、なんで私の邪魔ばっかりするの?とレイジングハートを構えながら名前も知らない局員を問い詰めて、不機嫌という雰囲気を隠さず、そのまま管理局の通路に出る。
私の肩を掴んで引き留める人を見る。息切れを起こしているのか、何度も嗚咽を繰り返しながら私を見上げると「あの人が見付かりました!」と叫んで近くにいた局員の人に支えて貰っている。
そっと私は口元を押さえながらニヤニヤと吊り上がる表情筋を止めることが出来ない。そっか、そっか、やぁ~っと彼女が見付かったんだね。
レイジングハートを使って観測室へと高速で移動する間も「アハッ、フヒヒッ、ずいぶんと時間が掛かったけど。私は君のことを逃がすつもりは絶対に無いんだよ?」と叫びながら彼女を映し出す巨大な観測室のモニターを見上げる。
そこには目付きの悪い真っ黒な巨人と本当の姿へと変身した彼女が抱き合っている光景、私の足元ではやてちゃんもフェイトちゃんも気を失っているのか、いくら踏んだりしても動かなくない。
いや、それよりも彼女を抱き締める真っ黒な巨人は誰なのかを問い詰めないといけない。偶然にも私の傍に立っていた局員を捕まえて、あのムカつく真っ黒な巨人のことを聞けば彼女は「ベリアル」と呼んで抱き着いたとのことだ。
ふーん、あれが理子ちゃんとリクくんの本当の父親なんだ。あんな見るからに悪そうな巨人のどこが良くて、私をミッドチルダに残したのか、これっぽっちも分からないんだけど。
「そいつを倒せば戻ってくるよね?」