「はいはーい、ジョゼ子ちゃんも無事見付かった事やし、そろそろ解散しときましょうや!」
「え、折角皆さん揃っている事ですし、これからお食事でも…」
「まぁまぁ花菜サン…焦らんと、また近いウチにすぐ集まれるから。な!マーイ?」
「私に振るんですか!?……あー…そうですね、今日のところは止めときましょう。つねおさんも退院したばかりですし…」
「ん…今日…?………は、成る程……ごめんなぁジョゼ、そこまで気ぃ回らんかったわ」
「へ?なんや、なんのことや?管理人分かるか?」
「………さあなぁ…」
「なんや歯切れ悪いなぁ…」
「そういう訳でつねお、また近いウチにな!ほら二人とも行くで~」
「仕切らないで下さい!……それじゃつねおさん、身体お大事に!無理しないで欲しいですけど…たまにはバイト先に顔出して下さいね!」
「ジョゼもまたなぁ、風邪ひかんように。図書館で待ってるわ~」
「…う、うん!またなっ…………行ってもうた。なんやったんや?」
「…変に気遣われたみたいだな………ん?」
「気を?………なんや?茶髪またこっち戻ってきてるな」
「だな。…どうした隼人?」
「いやー、ちょーっとつねおに言っとかなあかん事あってな!」
「なんだよ?……って近ぇよ」
「…つねお、お前はまだ病み上がりや。あんま身体を酷使し過ぎるなよ…」
「…なんで小声…?…酷使ってなんの話だよ…」
「…送り狼なるな言うことや…意味、分かるやろ…?」
「……!なに言っ…アホ!ジョゼとはまだそんな……」
「…まだ……な。まぁジョゼ子ちゃん、めっちゃ可愛いからな……つねおの狼が暴走してもしゃあないけどな………魚が恋人やったお前にまさか先越されるとは思てなかったわ……」
「………ほっとけ…」
「…いやな、止めてる訳やないねん…し過ぎるな言うてるだけでな…」
「…あーもう!お前も早く帰れよ!!」
「ははっ!悪い悪い!いらんお節介やったな。言いたい事も言えたし、退散するわ~。ジョゼ子ちゃんも、またな!」
「…茶髪っ!」
「…?」
「……ホンマ、色々世話んなった。ありがとう。」
「………どういたしましてや。つねおの事、ヨロシクな。」
「…帰ってったな」
「…そうだな…俺らも帰るか。」
「…せやな。…送ってってくれるんやろ?」
「勿論。」
「よろしゅうな。………さっき、何ヒソヒソ話してたんや?」
「えっ!?あーーー、まぁ、身体を労れってのと、ジョゼに宜しくって事……かな?」
「なんで疑問系やねん…まぁええわ」
「…気にならないのか?」
「気にならん言うたら嘘になるけど、二人ともなんか楽しそう…てか、嬉しそうやったし。ならええかなって。違うたか?」
「……いや、合ってるよ。」
「やろ?ならええねん。」
「…たまにジョゼは大人になるから困るな…」
「たまにってなんや!アタイは立派な淑女や!せやからしっかりエスコートせぇよ、管理人。」
「はいはい、仰せのままに。」
「ってかジョゼ、今何処に住んでるんだ?おばあさんの家、もう荷造り後みたいだったけど…」
「あー、それも言うてなかったな…まだ荷物はあの家にいくつか置いてるんやけど、今はこの近くに住んでんねん。福祉課の人と相談してな、ばあちゃん死んだ後に車椅子でも住みやすい家探してくれててん。補助もちょっとやけど付いてるし、セキュリティもそこそこなんや」
「そうだったのか……言ってくれよ。…二度と会えなくなるかと思って……」
「…すまん。これ以上管理人に甘えるのはアカン思て…………アタイかてホンマは言いたかったんや……」
「あ…悪い、こっちの都合ばかり言って…。そうだよな、ジョゼの決意あっての行動だもんな………と、とりあえず家まで送るから!家まで案内してくれ。」
「……うん、ありがとうな」
「あー、新しい家での生活はどうだ?」
「…せやな、まだ住んで一週間も経ってないし、荷ほどきも終わってないねん。必要最低限のモノしかあらへん」
「見付けるの早かったな、さすが福祉課ってところか?」
「…いくら仕事とはいえな、今まであないつっけんどんな態度してきたんに、めっちゃ親身にしてくれてん……ホンマに感謝や。」
「そうだな…。事務の仕事も決まってるんだろ?」
「せや。正直右も左も分からんけど……アタイも夢、掴みたいから。」
「…応援するよ、絶対。」
「ふふ…ありがとう、管理人。」
「…感謝言うたら、茶髪にも、ホンマに感謝しとんねん」
「隼人な、いいやつだろ?」
「…もう少しこう、硬派な感じにならんもんかなぁ。チャラチャラしてる様に見えんねん。顔も悪くないのに」
「!……ジョゼ的には、結構タイプ…的な…?」
「ん?一般論や。悪くない言うてるだけで、タイプやない。アタイのタイプは………」
「…ジョゼ?」
「………秘密や」
「…そっか。」
「…管理人は…アタイのタイプ、気にならんのか…?」
「ん?俺はジョゼの事、信じてるからな。」
「…~~…生意気や…管理人のクセに…」
「はは……んで、隼人がどうかしたのか?」
「そ、そや、茶髪や。その、管理人を病院から連れ出してくれたり、アタイと二ノ宮サンの間取り持ってくれたり…色々な」
「…今度飯でも奢ってやるかな。てかその「茶髪」って…」
「茶髪は茶髪や。今になって松浦サン~とか隼人クン~は気色悪いしな……今言ってみても何か気色悪いわ…」
「ひでぇ…あいつも就活始めたら、茶髪じゃなくなるんじゃないか?」
「ええねんそれでも。アタイの中でアイツは「茶髪」や。愛称や。」
「愛称って言うと許される気がするな…不思議だ」
「せやろ?ええねん、それで。」
「車椅子も、特に壊れてないみたいで良かったよ……派手に倒れてたから」
「車椅子って意外に頑丈やねん。前のやつも、何だかんだ派手にやらかしたけど、大丈夫やったろ?」
「確かに。でもそれ良いよな、自動で動くタイプ」
「せやねん、かなり楽ちんやねん。…けど、腕の筋肉が鈍りそうでちょっと複雑や…」
「…でもさ、……」
「…っ、管理人…?」
「こうやって、手、繋げるから。」
「…ふふふ……管理人、手ぇ冷たいわ。」
「ジョゼだって。」
「…せやね。…ふふっ…」
「…そういえば、花菜さんとは連絡取ったりしないのか?」
「あーそれな……今の家になって、電話が無いねん。ほんでさっき少し花菜ちゃんと話した時にその~、スマートフォン?とかを持ったらええ言われて…」
「そうだな、確かに最近じゃ持たないと不便だもんな……俺も連絡取りたいし……」
「なんや~管理人?四六時中アタイの声が聞きたいってか?しゃあないなぁ買うたるわスマートフォン!何処で買えんのや?」
「くっ……否定出来ねぇ……てか予備知識無しで買いに行くのは結構ハードルが高いな…」
「そうなんか?適当でええねん」
「いやそういう訳にも……今度、一緒に買いに行くか?」
「……ええのか?」
「なに遠慮してんだよ。…言ったろ?俺が「管理人」でいたいんだよ。」
「…うん、ありがとうな。管理人。」
「ああ。……そういや花菜さん、ジョゼ見付けた時すごい泣いてたな、…ジョゼも」
「…う、うっさいな……花菜ちゃんにもえらい心配かけてもうたわ」
「花菜さんも、凄い良い人だよな」
「アタイには勿体無いくらい…けど、アタイの初めての、一番の親友や。」
「…そうだな。今度またちゃんとお礼に行かないとな」
「せやな。これからも、付き合っていきたいわ」
「大事にしないとな。…あと花菜さん、大人の女性って感じもあるよなぁ」
「…なんやアタイが子供っぽい聞こえんな…」
「まぁ、ジョゼは小柄だから。」
「否定しろや!シバくぞ!」
「ははっ冗談だって!…俺にとってジョゼは、充分過ぎるくらい、魅力的だから。」
「っな、ん……~~…生意気や……」
「…そっ、そういや管理人!管理人はなんで訛り無いんやっ?」
「唐突だな…俺は元々関東出身で、海洋系に力を入れてるって事で今の大学選んだんだよ。周りが関西弁だと訛りが移るって聞いてたけど、俺はそうはならなかったな…」
「はぁ成る程な。…いつか管理人の地元にも行ってみたいわ」
「…機会が在ればそれも悪くないな。ジョゼの眼にはどう見えるのか、俺も気になるしな」
「約束やで?いつか連れてってな♪」
「ああ。…訛りって言うと、まいも標準語じゃないか?」
「……あぁ~…二ノ宮サンな……」
「…なんだか含みがあるな…?」
「色々あんねん、あの女とは。…てかあのコも関西弁やろ?」
「え?そうか?…ああ、俺には敬語だから気にならないのか…?」
「んなアホな…………あぁ、そういう事か…………あの女どんだけ管理人の事好きやねん……」
「ん、なんか言ったかジョゼ?」
「なんでもない。納得しただけや」
「納得?」
「あの女が猫被ってるいう事や」
「猫?まいが?」
「せや。…あの女、女豹みたいに色気出してるから、少し管理人の事が心配や…」
「女豹って……これから多分、まいから何か言ってくる事は無いと思うぞ?」
「分からんで?女の武器全部使ってくるかも分からん!」
「大袈裟だな……俺、まいから告白されてるし」
「っなんやて!?告白っ!?聞いてないそんなん!!いつや!なんて答えたんや!?何処でや!!」
「痛い痛いっ!手!力入ってる!」
「っは、スマン、つい…けど今のは聞き捨てならんわ!」
「本当は言っちゃ駄目かもしれないけど…ジョゼに隠し事は嫌だしな。……俺が入院してる時、ちょっと落ち込んでた頃があってさ…。その時、まいが外の空気吸いに行こうって、連れ出してくれて。…まぁその時に、な」
「……なんて、言われたんや?」
「…ストレートに「好きです」って…。その場ですぐに返事しようとしたんだけど、「返事はいらない、わかってるんで」って遮られちゃって…」
「……なんて応えるつもりやったんや…?」
「…そうだな…急だったし、頭真っ白になったからな…けど、遮られなくても、俺は断ってたよ」
「……そうなんか…?」
「ああ。…今思うと、あの頃にはもう、ジョゼの事で頭一杯になってたから。」
「…!」
「意識が戻った時も、正直訳分からなかったけど、ジョゼの事が心配で……雨も降ってて見通し悪かったから、もしかしたらケガしてるんじゃないかって……。本当にケガが無くて良かったよ」
「……あの時はホンマ生きてる心地せぇへんかった……ホンマにごめんな…?」
「なにしおらしくなってんだよ。あれはジョゼのせいじゃないだろ?」
「せやかって…!」
「…医者に「二度とまともに歩けないかもしれない」って言われて、夢を手放さないといけないって思った時…「ああ、ジョゼはこんな気持ちだったんだ」って、そればかり思ってた。……俺、ジョゼの事、何も分かってなくて…勝手な事ばかり言ってたんだなって…」
「……管理人…」
「…でも今思うと、結果として轢かれて良かったかな、って思うんだよな」
「…?」
「あの読み聞かせ……俺の為に、絵も、お話も、全部作ってくれたんだろ?」
「あ…まぁ花菜ちゃんにも色々手助けして貰たけど…」
「それでも、一度夢を手放そうとしたジョゼがまた描いてくれた事が嬉しくて…話の中でも俺を励ましてくれて……今までのどんな出来事よりも嬉しかったし、心が震えた……」
「…管理人、泣いてんのか…?」
「スンッ…あんなの、泣くなってのが無理だ……まぁ、きっかけは事故でも、それがジョゼの夢を後押しする形になったし…怪我の功名ってやつだなっ」
「……身体張り過ぎや、アホ管理人…」
「…あ…ここや、アタイの新しい家。」
「おお…ここが…。キレイな処じゃないか」
「せやろ?オートロック付きで、付いとるエレベーターの広さも車椅子で充分乗れるくらいあるんやで」
「…俺が住んでる処よりずっと良いな…」
「そ、そうなんか…」
「お、おう…」
「「…………………」」
「っ管理人!」「っジョゼ!」
「な、なんや!?」「な、なんだ!?」
「「……えっと……」」
「……あー、ゴホンッ」
「…っ!」
「その、ジョゼ…?」
「な…なんやねん…?」
「あー…無理に、とは言わないけど、さ……」
「………はよ言え、管理人。」
「お、おう……その…………今夜、家にお邪魔しちゃ駄目かな…?」
「…邪魔するだけか…?」
「…え?」
「……泊まってったり……せぇへんのか…?」
「…良いのか?」
「……………ん。…」
「…ありがとう、ジョゼ。」
「…管理人が言わへんかったら、アタイから言うつもりやったから。」
「…そうなのか?」
「せや。ただし、この朴念仁~とも思っとったやろうな」
「…ご期待に添えられて光栄です。」
「…それでこそ、アタイの管理人や。」
「…じゃあ、俺少し準備して来ていいか?」
「…うん、ええよ。待ってる。」
「…っ……すぐ戻る!…あ、何か要るモノあるか?ついでに色々買ってくるよ」
「…ああ、せやな…なら、適当な食材買うてきてくれんか?管理人程の大食いが来る事は想定して無かったから、心もとないねん」
「了解。ジョゼも身体冷えてるだろ?先に家に入っててくれて良いから!……部屋の番号、聞いても良いか?」
「…へ、部屋は、二階や。二階の角部屋、204や。」
「204な、覚えた。…少し手が寂しくなるけど……行ってくる!」
「あ………うん。気を付けて…雪で転ばんようにな!」
「ああ!」
「……待ってる、か。」
「…前は、ホンマにただ、ただ待ってるだけやった。」
「…何かを、自分を変えてくれる何かを、待ってるだけやったんや。」
「…けど、今。」
「今こうして、つねおの事を、求めてくれるつねおの事を、受け入れるために、待ってる。」
「…誰かの為に待ついうんは、こんなにも……幸せな事なんやな。」
「……はよ帰って来てや、つねお…。」