「……落ち着いたか?」
「グスッ……うん…スンッ」
「まったく…俺の重荷にでもなると思ったのか?」
「うん……やっぱ心のどこかで、迷惑掛けてるんやないかって思っててん…それは嫌やなぁって…」
「迷惑なんて…寧ろジョゼと一緒に出掛けて、多くの事に気付かされたよ。如何に自分が周りに無関心だったか、思い知らされた。」
「…そうなん…?」
「ああ。初めて一緒に出掛けた時、スーツケース提げたおっさんがぶつかってきたろ?…あの時はホント頭に来たけど…改めて考えると、俺自身もしかしたら知らず知らずに同じ事をやってたかもしれない、ってな…」
「そんなん…」
「他にも、例えばエレベーターとかさ。自分が少し疲れてるからって、本当に利用したい人を差し置いて使うものでもないな、とか…」
「……このお人好し…そういうとこやぞ」
「…何の話だ?」
「そういうとこがホンマに好きやって言っ……ムギュ」
「…………素直なジョゼの破壊力はヤバいな……」
「ムグ~……プハッ!胸で窒息させる気かっ」
「はは、ごめんごめん」
グー…
「「あ…」」
「アカン、鍋…わっ」
「よっ…と。この体勢、辛くないか?」
「…うん。このお姫様だっこは、アタイの特権やな…♪」
「そうだぞ。ジョゼ以外の女の子でお姫様だっこなんてしたことないんだからな!…何の自慢にもならないけど…」
「自慢なるよ。一途な人はポイント高いで?」
「そんなもんかね……!っ痛てて…」
「っ管理人!?大丈夫か!?」
「大丈夫大丈夫。そういえばまだ松葉杖生活だった事忘れてたわ」
「無理せんと、降ろしてええから!」
「断る。」
「なんでや!」
「脚の痛みなんかより、ジョゼを抱っこする事の方が、俺にとって重要なんだよ。」
「っ……あほたれめ…。好きにしい…。」
「おう。…っと、鍋なべ……大丈夫そうか?」
「………♪…」
「…ジョゼ?」
「…ハッ、忘れとった。……ん~、ちょっと水飛び過ぎてるな…少し水足そうか。そこのグラスに寄ってくれへん?」
「すげぇ良い匂い……グラスこれか?」
「ありがとう。…多めに一杯くらいかな?…よし。また温まるまで、このまま少し置いとこか。」
「了解。」
「…鍋前で待つんもアレやし、部屋戻ろ?」
「そうだな、部屋の方が暖かいし」
「…この状態で往復頼んですまんな?」
「良いリハビリだよ、これくらい」
「……もう少し、このままでええか…?」
「…喜んで。」
「…うん。」
「…アタイは、重荷やないんやな……」
「…ああ。」
「…アタイはちゃんと、管理人を支えられてるんやな…?」
「…ああ。」
「…同情で言ってる訳や…ないんやろ…?」
「勿論。」
「本当に、何から何まで、ありがとう。」
「…もう充分、ありがとうは貰ったよ。」
「いいや、言い足りへん。アタイと出逢ってくれて、ありがとう。おばあちゃんを一緒に見送ってくれて、ありがとう。いつも傍で支えてくれて、ありがとう。背中を優しく押してくれて、ありがとう。…好きになってくれて、ありがとう。」
「ジョゼ…」
「ありがとうが、全然足らんよ…。アタイは何をあげたら良い?アタイの全てをあげても、足りひんよこんなん…。」
「…………じゃあ…」
「なんや?言ってくれ。アタイに出来る事なんて少ないけど……」
「……また、キス、してもいいか?」
「っ……そんなん…聞くまでもないわ……!っん…」
「…ん………」
「……んっ…」
「…………ハァ…」
「…ハァ…ハァ……!っんぁ……」
「…っ…………」
「っ…ぁ…んっ……」
「…んん………っ…ハァ…」
「……ハァ……ハァ……」
「……苦しかったか…?」
「ハァ……ハァ……息…出来んよ…こんなん……」
「…ごめん、夢中になっちまって……もう少しだけ」
「…え…?んむっ…~~…」
「…ん………」
「んんっ!………~ん…ぁむ……」
「!……んっ………」
「ん……んんっ………はっ…ハァっ…ハァ…ハァ…」
「…大丈夫か…?」
「…ハァ…ハァ……大丈夫やない…身体に力入らへん…」
「ジョゼが可愛過ぎるのが悪い。」
「…もう…何言うてんのん……」
「悪い、無茶させたな」
「………ええんよ……?」
「…?」
「…管理人がしたい事、全部…してもええんよ…?」
「っ!…それは…」
「…アタイ、管理人の事、心から大好きや。…管理人がしてくれる事も、大好きや。…アタイにしたい事、全部やって欲しい…それを、受け入れたいねん……」
「…ジョゼ………いいのか…?」
「……うん。きて…?」
「…ジョゼっ…!」
グ~…
「「…あ…」」
「………ジョゼ、お腹鳴ってるぞ」
「おまえやっ!」
「オゥ!?…ナイス脳天チョップ…」
「………台無しや………」
「今だけはこの腹の虫が憎い…」
「乙女の覚悟をなんと心得るんや………っぷふっ」
「…道化に磨きがかかってるな俺。腹ペコ道化だ」
「くっふふふっ…この無骨者め…ふふふっ」
「…ッフフ…」
「管理人も笑てるやん…あははっ」
「アッハハ!なんか気抜けちまった」
「あはははっ…あーお腹イタ…。…ごはん、食べよっか。」
「おう、そうだな。」
「よしっ、俺鍋持ってくるよ。鍋敷きとかあるのか?」
「うん、あるで。そのコンロの下の棚開けたら戸の裏に掛かってるやろ?」
「…これ鍋敷きなのか…流石女の子、鍋敷きすらオシャレだ」
「女っちゅう生き物は日用品すら限りなく可愛くしたいモンや…取り皿や箸もその棚入ってるから、一緒に持ってきてくれるか?」
「はいよ。…ほいジョゼ、パスっ」
「あいっ。鍋敷きOKや、鍋持ってきてくれるか?」
「任せろ」
「…では、開けてもいいか?」
「はい、どーぞ」
「では…………おおぉ……!」
「すき焼き程度でえらい反応やな…?」
「今日まで入院してたんだぞ?それに一人暮らしで鍋はするにはするが、すき焼きはしないし、いつぶりか分かんねぇよ…!」
「あー、それもそうやな。アタイよそったるから器貸し。白ごはんもあるから、食べたいだけ食べや」
「サンキュな!ジョゼは白ごはん食べるか?」
「アタイはええよ。アタイめっちゃ少食やねん」
「りょうかい。欲しくなったら言ってくれ、俺やるから」
「ありがとな。……それでは手を合わせまして…」
「「いただきます」」
「……うまい……」
「……管理人、涙腺弱過ぎひんか?」
「…チズさんのご飯もうまかったけど、ジョゼのすき焼きは別格だ……うますぎる……」
「大袈裟やなぁ、大したもんやないよ」
「大したもんだって!こう見えて俺、味にはうるさいからな?」
「え~、ホンマに~?普段カップラーメンばっか食べてそうやけど?」
「ぐッッ…まぁそうなんだけど……」
「ほらぁ。でもまぁ入院してたもんな、病院食って言うんか?美味しゅうないって聞くし…」
「ん~…不味くはないんだけど、全体的に味が薄いんだよな。一見美味しそうなんだけど、見た目と味が一致しないというか…量も少ないし。なにより食事を義務化されてるって感じがな…」
「ああ、それは嫌やな…食べるなら好きなもの食べたいよなぁ」
「だよなぁ、身体の為とはいえ…。にしても本当にうまいわ…ずっと食えるぞこれ」
「ホンマ良い食べっぷりやなぁ…作った甲斐があるわ♪料理のレパートリー増やしとかなあかんな」
「作って貰ってばかりも悪いし、俺も自炊頑張るわ。そっちの方が安上がりかもしれないし」
「…管理人が作る料理、食べてみたいな…。いつか、作ってくれるか?」
「…ジョゼに言われちゃ、半端にやる訳にはいかないな?」
「期待してるで、管理人?」
「おう!」
「ふぅ……ご馳走様でした。」
「はい、お粗末様でした。…綺麗に全部食ってもうたな…見てて心配になるくらい食べてたで?」
「本当にうまかったから…あと好きなだけ食べられるっていう自由感があると尚更な」
「お口に合った様で何よりや♪」
「…ジョゼは少ししか食べてなかったけど、良かったのか?俺に気を遣ってとか…」
「ああ、気にせんと、ホンマにアタイ少食やねん。前にラジオか何かで聞いたんやけどな?人間の筋肉の多くが下半身に付いてるんやって。やからダイエットするなら下半身使えーいう話やってん、アタイの場合下半身使われへんから、多分カロリー消費少ないねん」
「…成る程…。ジョゼの分まで食い尽くしちゃったかもって、少し不安になってたわ」
「心配性やなぁ管理人は」
「むぅ…。その、脚って、どんな感じなんだ?全く感覚が無いのか?」
「ん~…ほんの少ーしだけ、骨の芯に痺れてるような感覚が有るような無いような……でもほとんど、感覚も痛覚も無いねん。昔、家の中移動してる時に知らん間に脚の指ザックリ切ってて、後ろ見て血痕が続いててびっくりした事あったわ…。」
「それは恐怖だ……脚の付け根って、どうなんだ?」
「………………この変態」
「えっ…あいや悪いそんなんじゃなくて…!」
「冗談や♪」
「っ……笑えねぇ……」
「すまんすまんっ、感覚有るんは太ももの付け根辺りまでや。そこから下にかけて、急に感覚が無い感じやな」
「そうか……だから座る分にはそこまで大変そうじゃないのか…。いや、きっとジョゼが沢山訓練したお蔭なのかもしれないけど」
「…そんなに気遣わんでええよ。アタイの身体の事を労ってくれてること、ちゃぁんと伝わってるから。」
「…そっか。」
「そうや。……つまりアタイのおしりまではしっかりと感覚あるから、コソっと触ってもバレるからな?」
「んなことしねぇよっ!?」
「ふふっ…管理人やったら、してもええねんで…?」
「だからっ…………………考えとく。」
「このへたれ♪」
「奥手と言ってくれ……っさて、お片付けしますかね」
「片付けなら、鍋だけ持ってってくれればアタイやるで?」
「これくらいやらせてくれ。水周り仕事…と言えるかアレだが、まぁ慣れてるし割と好きだからな」
「ほうか?ならお願いするわ。それ片したら、お風呂入りいや」
「先に入っちゃって良いのか?」
「勿論や。シャンプーや何やらは好きに使って構へんから。脚はもう包帯とか外れてるんか?」
「助かる。包帯はもう外れてるよ、腫れも引いてるしな。んじゃとっとと洗っちゃうわ」
「ありがとな、頼むわ」
シャー…カチャカチャ…
「っし……ジョゼ~、終わったからお風呂貰う…何してんだ?」
「管理人、これなんや?着替え入れにしては丸いけど…?」
「あーそれ寝袋だ。引っ越して間もないし、荷物もまだ少ないから布団も一人分しかないと思って持ってきたんだよ」
「……出してみてもええ?」
「いいぞ。なんだ、興味あるのか?」
「色々と無縁な生活送ってきたからなぁ…寝袋もその一つや。……おおぅ、これが…結構大きいもんやな…思いの外ふかふかや…」
「ジョゼの身体には少し大きいかもな。それは封筒型ってやつだな、入ると首から上が出るタイプで…入ってみるか?」
「ええんか!?」
「食い気味だ……ジッパーを下げて、開いた状態で置いて上に寝て…そうそう」
「…これでまたジッパーを上げれば…」
「…ほい、蓑虫ジョゼの完成だ」
「だれがミノムシや。……ほおぉ、暖かいなこれ」
「家の中で寝袋ってのも変だが、結構気持ちいいよなそれ」
「……管理人の匂いする……」
「えっ、……もしかして臭う?」
「…っいやくさい言ってる訳やないねん、…落ち着くな~って…」
「…なんかこそばゆいな……じゃあ風呂貰うな」
「あい~…あ、タオルも置いてるから適当に使ってなぁ…。ほなごゆっくり~…」
「…お互いにな」
「……病院のシャワーは最後まで慣れなかったけど…ジョゼの家の脱衣場ってのもまた落ち着かないな……」
「……おお…そこそこ広くて綺麗な…うちのアパートとは大違いだ……」
「……これが普段ジョゼが使ってるシャンプーか……」
「……やばいめっちゃ変態っぽいぞ俺…自重しろ…!」
「………丹念に洗っとこう………」
「…ふぃ~スッキリした…タオルはこれか…」
「……ジョゼのいい匂いがする……」
「っ!…オイ全然自重出来てないぞ俺…!」
「……がっつくな俺…深呼吸だ…!」
スゥー~……ハァ~…
「………何処も彼処もいい匂いがする………」
「ジョゼ~、お風呂ありがとな……寝ちゃったか?」
「……んぁっ…?…あかん、微睡んどった…」
「もう大分おねむだな…寝るか?」
「…ん~、入る……」
「そっか、じゃあ起きないとな……ジョゼ髪柔らかいな…」
「…ふぁ~…なでなで気持ちい……」
「は、このままだと堕ちる…ジョゼ起きろ~、風呂入るんだろ?」
「…ん~………………んっ!」
「うおっ!?急に起きたな!?」
「…こうせんと起きれんねん……よし、お風呂いってくるわ!……覗いたらアカンよ?」
「ばっ…覗かねーよ!」
「うそうそっ、…管理人やったら、ええで…?」
「……あほ、早くいってこい」
「ぶぅ、つれへんなぁ♪ならちょっと待っててな。さくっと入ってくるわ」
「はいはい、待ってるよ」
「……あかん、アタイかなり気緩んどる……」
「……でも誰かと一緒に居てこんなに楽しいの、ほんま初めてや……」
「……ふふ、さっさと入ってまおう…一人の時間が勿体無いわ……」
「………いつもと匂いが違う………」
「……さっきまでここに、管理人居ったんやな……」
「……あかんっ、煩悩退散や……」
「………………」
「……流石に覗きには来いひんか…管理人のヘタレ……」
「……アタイに満足させられるんやろか…おっぱいも小っちゃいし、チビやし……」
「…いや、ここで怖じけたらアカン…!多少はそういう知識もあるんや…!」
「………いつもより丁寧に洗っとこ………」