「ほら、ここよここ!雰囲気ええやろ?」
「おお、綺麗な所だな。広さも結構あるぞ」
「…………そうやな……」
「…緊張してるか?」
「……ちょっとな。こういう所は昔一度行ったきりで、それから全くやったからな…」
「大丈夫やジョゼ。何かあってもウチらがついてるから!」
「そうだぞ、心配するなよ。楽しもうぜ?」
「……ありがとうな、二人とも」
「すみませーん。予約してた山村ですけど~」
「へっ!?」
「いらっしゃいませ。ご予約の山村様ですね?少々お待ち下さいませ。」
「えっ!いや、アタイ…!……花菜ちゃん!?」
「……ごめんジョゼ、名前だけ借りたわ……」
「どういうことや!?」
「いやぁウチの岸本って名字やと、電話で間違われる事多くてなあ……」
「……いやそれは無理があるぞ……」
「…………いやいや絶対嘘やん!岸本間違わんやろ!?」
「あははっごめんな!ちょっとした遊び心でどんな反応してくれるかな~思て……ええ反応やったよ、ジョゼ!」
「サムズアップすな!」
「……お待たせ致しました。三名様でご予約の山村様ですね、ご案内致します」
「あぅっ……あ、ありがとうございます、お願いします…」
「こちらがメニューになります。御決まりになりましたら、こちらのボタンを押して御呼びくださいませ。」
「あ、ありがとうございます…」
「…大丈夫か?」
「う~……アタイ人見知りやから…」
「それも個性だ、無理に慣れる事もないだろ。最低限のやり取りでいいんだよ」
「……うん。ありがと、つねお」
「むぅ……信頼し合っとるな二人とも……」
「花菜ちゃん?なんか言ったか?」
「いやなんでもっ……ささ選ぼ選ぼ、ここほんま美味しいから!まぁ見ての通りイタリアンメインやけど、パスタだけじゃなくリゾットとかもイケるから!はいこれメニューな」
「ありがとな。……むむむ…………花菜ちゃん何にするん?」
「ウチは決まってん。これ!」
「トマトパスタ……美味しそうやな……つねおは?」
「うーーーん……俺はこのリゾットにしよう。ジョゼはどうする?」
「リゾットもえぇなぁ………つねおの少し貰ってもええかな…?」
「もちろん。好きに選べばいいぞ」
「ありがと。…ん~~、じゃあこのパスタにする!」
「決まりやな。ほいこれ、ボタン押したって」
「ぅえ?!……アタイが押すん?」
「経験や経験。大丈夫、爆発とかせぇへんから」
「んな心配しとらんわ!……押すで?」
「そんな恐る恐る触らなくても……諭吉かよ」
「ジョゼ可愛い……」
「可愛い言うな!……えいっ」
「ご注文は御決まりでしょうか?」
「はい。三人全てランチセットで、私はあさりと茄子のトマトソースパスタで……」
「俺はこれ。ジョゼ、ついでに言ってくれ」
「っ…う、うん。えと、この三種の茸とチーズのリゾットと……この、新鮮魚介と旬野菜のクリームパスタで!…お願いします」
「…はい、ご注文復唱致します。全てランチセットで、あさりと茄子のトマトソースパスタ、新鮮魚介と旬野菜のクリームパスタ、三種の茸とチーズのリゾット、ですね。セットにはお飲み物がついておりますが、如何なさいますか?」
「あかん忘れとった。私はホットのレモンティーで、二人は?」
「あー…俺はこのブレンドのホットを。ジョゼは?」
「あ、アタイもつねおと同じので」
「…はい、レモンティーと、ブレンド珈琲を2つ、全てホットですね。お持ちするのは食後で宜しいでしょうか?」
「…ええよな?」
「せやな。…えと……はい、食後で、お願いします」
「畏まりました。それでは少々お待ち下さいませ」
「……それにしても…」
「ほんと、綺麗で広いところだな。車椅子でこうもすんなり入れると、来やすいよな」
「よなっ。花菜ちゃん、事前に言ってくれてたん?」
「そうよ~。電話で予約したら、では一つ椅子下げときますね、席もテーブルをご案内しますってテキパキと。そういうの安心出来るよな」
「せやねっ、またいつか来ような!」
「まだ食事来てもないのに、気が早いっての」
「それもそか。しかしほんま広いなぁ……なんや絵画とか飾ってあるし…。何の絵やろ?…」
「……ジョゼ、慣れてきたかな?……」
「……だな、リラックス出来てるみたいだ……」
「……色んな所、連れてってやりたいね……」
「……全くだ……」
「…ん、なに二人でボソボソ喋ってんのん?」
「なんでもないよ~?そういえば二人って、」
「なんや?」
「ん?」
「結局付き合っとるん?」
「っ!……えと……その……っ」
「………?」
「…つねおくん?どしたん難しい顔して?」
「つ…つねお?」
「………いや、言われてみればそうだな……」
「ん?」
「俺とジョゼはまだ付き合ってはいないな。」
「っ!!」
「え」
「………そ……そうやな………」
「つねおくん……ジョゼに大人の階段上らせといて……!」
「いやええねん花菜ちゃん……アタイなんかが付き合えるとは思てないから……ぇぅぅ」
「待て待て二人共!何か誤解を……ってジョゼ泣いてる!?」
「ぅぅ……アタイだけ思い上がってたんか……スンッ」
「つねおくん失望したわ……」
「おい落ち着けお前ら!?……ってか大人の階段ってなんだ!?」
「しらばっくれんな!ジョゼの事本気やなかったんか!」
「本気に決まってんだろ!!」
「っ!」
「つ、つねお…?」
「……っすまん、熱くなった。いや付き合ってないってのはな、その…今日までの事を思い返して、お付き合いして下さい、みたいな話が無かったなって事でな」
「えっ?……そうなんジョゼ?」
「グスン…………ふぇ?」
「いつまで泣いとんねん!ってかつねおくんの話ホンマか?付き合って下さいって、言ったり言われたりしてへんのか?」
「うぅ~~………無い……です…」
「なんやねんソレッッ!?つねおくんの反応が正しいわ!ジョゼのスカポンタン!」
「ひぅっ!?だってそんなん分からへんもん…!今まで誰かと付き合うた事なんて無かったし……!」
「………5股掛けてたって言ってたけどな………」
「はなから信じてへんクセにー!!意地悪すんなやー!!」
「付き合うてへんなら話は早いなッッ!ほらつねおくん、男見せぇや!!」
「えぇ!?今!?…ここでっ?!」
「善は急げって昔の偉い人が言うてんねん!ほらジョゼ待ってるで!」
「うッッ…!」
「……つねお……?」
「ぅぐッッ……!?」
「………なんてあざとい上目遣い…!あれを天然でかますとは……恐るべし純朴乙女……!」
「………はぁ~~………ジョゼ?」
「っ……はい…?」
「…こんな場所だし、それも何故か花菜さんの前で、ほんとムードもへったくれも無いんだけどな…」
「……アタイは気にせんよ?」
「俺が気にするんだよ……だけどまぁ、ちゃんと言葉にするってのは大事だと思うから。」
「…うん。」
「同情とかそんなもの無しで、一人の女性として、ジョゼの事が好きだ。俺とお付き合いしてくれますか?」
「っ……アタイも、つねおの事、大好きです……こんなアタイで良ければ、喜んで…!」
「良ければ、じゃなくて、俺はそんなジョゼが良いんだよ。」
「…ふふふ、ありがとう。」
「こちらこそ。」
「…………キスは?」
「っ!!?」
「…えぇっ!?」
「今完全に二人の世界に入っとったよな?…キスは?」
「いやこんな公衆の面前でそんな事…!なぁジョゼ?」
「…………」
「…っ………そ、そんな顔しても駄目だからな?」
「……そう、やな……なんかすまんな……?」
「……そんなションボリするなよ……まぁその………後でな」
「…!……うんっ…!」
「はぅッッ!なんて眩しい笑顔や……!浄化されてまうぅ……!」
「ってか何言わせるんだよ花菜さん……人で遊ぶなっての」
「自分らだけの世界作っといてよう言うわ……これからご飯いうてるのに、もうお腹一杯やわぁ!」
「……ジョゼ、花菜さんってこんなキャラだったのか……?」
「……うん…せやね……割りと自分の欲求に正直と言いますか……」
「はぁぁご馳走様や!いぃなぁ甘いなぁ甘々や……濃いめのブラックとか飲みたいなぁ~店員さんっ!」
「エスプレッソのショット、お持ち致しました。ごゆっくりどうぞ。」
「店員さん!?まだ頼んでないと思うけど!?」
「………」
「………俺無視された!?」
「…まぁここ広い言うても、何故か今日空いてるし、声もそこそこ通るから……」
「っ!……くッッ……いやそれでも無視って…」
「いやあんたら自覚ない思うけどな……つねおくんはさておき、ジョゼは一般的に見ても超可愛いで?」
「っ…そんなこと無いて。なに言うてんの花菜ちゃん!なぁつねお?」
「…………黙秘します」
「すなっ!!」
「んで、そんな女の子にこんな公衆の面前で公開告白して?そんでOK貰て?二人の甘々空間作ると?……そんなん見せ付けられたら、並みの男ならその場で発狂して絶命するで」
「言い過ぎや!?」
「俺の評価がさておかれてるのが気になるんだが……って言わせたの花菜さんだろ…?」
「全く、油断も隙もあらへん!少しスイッチ入るとすぐ甘々になるんやから!はぁ~~エスプレッソ効くなぁ~ダブルでも良かったかもなぁ!?」
「……花菜ちゃん、オッサンみたいになっとる…」
「……てかこの人、中身オッサンなのでは……?」
「かぁ~!若いってえぇなぁー!!」
「お待たせ致しました。お先にランチセットのあさりと茄子のトマトソースパスタ、新鮮魚介と旬野菜のクリームパスタをお持ち致しました。」
「来た~♪トマトソースはこっちで!クリームパスタはその娘です」
「失礼致します。もう一品もすぐにお持ち致します、少々お待ち下さいませ。ではごゆっくりどうぞ。」
「二人とも、先に食べてていいぞ。俺のもすぐ来るみたいだし」
「悪いなつねおくん、ではお言葉に甘えて……ほらジョゼも」
「つねお……ええんか?」
「気にするなって。代わりと言っちゃ何だが、後で少しだけシェアしてくれ」
「…うんっ、もちろんや!ほなお先に…」
「「いただきます!」」
「ん~!やっぱここのパスタ好きやな~!生麺言うんか?それでもって少しだけきしめんみたいに平たいこのパスタが美味しいねん!アサリの出汁もよう効いとるんよ~♪」
「むぅ、旨そうだな……ジョゼはどうだ?」
「……っ!…っ!」
「美味し過ぎて声も出ないか、それは良かった」
「目ぇキラキラしてるもんな」
「……っんく……クリームソース旨あぁ…麺もモチモチやし、ペッパーも程良く効いとる……つねおっ、食べてみてや?」
「いいのか?じゃあ少しだけ、フォーク借りるな…あ、すげえ良い匂い…いただきます…」
「……流石に間接キスでソワソワする歳やないか………つまんな……」
「…前からなにか白けた空気を感じるが……うまいなコレっ!この葉っぱも……これ芽キャベツか?」
「やっぱそうやんな?!芽キャベツってあんま好きやなかったけど、これは違うな……どう調理したんやろ…?」
「お待たせ致しました。三種の茸とチーズのリゾットでございます。」
「おっ、来た。どうも」
「お飲み物は後程お伺いします。それではごゆっくりどうぞ。」
「わぁ……それも美味しそうやな……」
「だなっ、キノコとチーズの匂いが……では早速、いただきまー…」
「………………」
「…………そんなに見るなよ……食べにくいだろ」
「待てされた犬みたいになっとるな、ジョゼ」
「………アタイそんな見てた?」
「無自覚か……ほら、食べていいぞ」
「っいやそんな、一口目からは流石に…!」
「食べてみたいんだろ?俺もさっき貰ったし、気にすんな」
「ほら、つねおくんもそう言ってるし。ジョゼ食べたって」
「うぅ……すまんなつねお……」
「気にしてないっての。…フー…フー…ほらあーん」
「むぅ……また子ども扱いされてる気がするケド…これはアタイが悪いな………あ~~んム…」
「……なんとまぁさりげなくあーんに持ってったな……つねおくんもまさか天然ジゴロ……?」
「どうだ?旨いか?」
「…んん~ッッ♪……ンクッ……あんなっ!程よく火の通った茸の香りが口にふわぁって広がってな、チーズもめっちゃマッチしてんねん!そしてしっかり味の付いたお米がまた…」
「…っふ」
「ふふっ、ジョゼ可愛い♪」
「……はっ!?なんや視線が生暖かい!?」
「フー…フー…ほれ、あーん」
「餌付けすなやっ!?…………あーんム…」
「ぷっ!食べとるやん!」
「くくっ……大きくなれよ~」
「んむーーっ!!」