今回は警察とのいざこざに決着がつく回になります。
歩み寄ろうとする仁に対し、宗吾はどんな決断をするのか。
仁が和解の証として手を差し出し、宗吾がそれをジッと見つめている。
2人に様子を茜が交互に見ていると、唐突に扉がノックされた。静まり返っていた部屋に響くノックの音に、全員の視線がそちらに向いた。
茜が即座に対応し、扉を少し開けて訪問者に返答した。
「はい? すみませんが今取り込み中で……って、小早川さん?」
訪問してきたのは茜達と同じS.B.C.T.の隊員の1人・
「ハッ! 実は先程、そちらの仮面ライダーを訊ねたいと言う人物が2人来まして」
「2人?」
「双星 亜矢と白上 源五郎と言う2人です」
慎司の口から出た名前に、仁と宗吾は揃って顔を見合わせた。
***
遡る事数十分前…………。
【さて……亜矢、そろそろ……】
「うん」
白上教授達が議論を続けている間に、紅茶を飲み終えた亜矢。
一息ついた彼女は、カップをシンクに片付けると研究室を出ようとする。
突然何処かへ行こうとする彼女の背に、白上教授が声を掛けた。
「ん? 双星君、何処へ?」
「そろそろ仁君を迎えに行こうかと」
まさかの発言に教授達の目が点になった。常識的な筈の彼女が、全く予測できない事を口走ったので理解が追いつかなかったのだ。
そんな中で真っ先に再起動したのは峰であった。
「ちょちょちょっ!? ちょっと待って双星さん!? 何がどうしてそうなったの!?」
亜矢にはファッジが出た時の対策として残ってもらったのだ。それに何より、仁が彼女を素顔も晒さぬ内に帰らせたのは彼女に負担を掛けない為。
その仁の想いを無視するかのような彼女の行動が信じられなかった。
「折角門守君が双星さんに負担を掛けないようにってしてくれたのに!?」
「大丈夫ですよ。仁君の事だから、私が着く頃には警察の人達ともある程度打ち解けてる筈です。少なくともこちらの事情は少しは理解されてると思います」
自信を持ってそう告げる亜矢からは、仁に対する強い信頼感が見て取れる。彼女は本気で、仁が宗吾達と和解できると考えているのだ。
亜矢の言いたい事は分かるが、警察を信用する事にまだ抵抗がある峰は渋い顔をしている。
それに対し、白上教授は何かを思案する様子を見せると、徐に立ち上がり身形を整えた。
「私も行こう。事情を説明するには、私が居た方が都合が良いだろうからね」
「「えぇっ!?」」
「教授もですか?」
「うむ。やはり門守君だけに面倒を押し付ける訳にはいかないだろう。元はと言えば、彼を巻き込んだのは私の方なのだし」
議論の中で、白上教授は仁が警察と繋がりを持とうとした理由に気付いたのだ。
今までは警察にはファッジに対抗する戦力が無かった。だから以前の状態で接触しては、警察側が仁達に必要以上に警戒して不協和が起こる危険があった。
だが今は違う。警察も独自のライダーシステムを手にし、彼らとこちらの立場はほぼ対等、組織力に関しては向こうが上となった。
事ここに至り、警察とこれ以上距離を取る事は逆に無用な諍いを生むだけと仁は判断したのだろう。何しろ警察は単純な組織力で教授達を上回っている。本気を出して警察が仁達に牙を剥けば、勝ち目はない。
そうなる前に、仁は向こうが余裕を持った瞬間を狙って和解へと踏み込んだのだ。
「門守君は警視庁に居るだろう。私の車で共に行こう」
「分かりました」
こうして2人は、仁を迎えにS.B.C.T.の本部がある警視庁へと赴いたのである。
そして現在――――
「教授、お茶です」
「あぁ、すまないね双星君」
白上教授は、先程仁が座っていた場所に座り亜矢に淹れてもらった緑茶の入った湯呑を受け取っている。
仁程ではないが、マイペースなその様子に対面の宗吾は眉間に皺を寄せ、その後ろに控えている茜と慎司は困ったような顔をしている。
一方、仁と亜矢は白上教授の後ろに控えていた。こちらは打って変わって、何処かリラックスした様子だ。今も(何故か)亜矢が新しく淹れたお茶の入った湯呑を手に、教授と宗吾の話し合いを見守っている。
「さて、ある程度の事情はこちらの門守君から聞かされていると思いますので手短に話そうと思います」
お茶を一口飲み、口を湿らせた白上教授がそう切り出した。宗吾は相変わらず眉間に皺を寄せているが、教授が口を開くと気持ちを切り替えたのか姿勢は正している。
「聞きましょう」
「端的に言えば、我々は民間協力者としてそちらと共闘したいと考えています。私達も貴方方も、目的は傘木社の暴挙を食い止める事。目指す先にあるのが同じであるなら、協力するのは当然の事と思います」
「門守 仁と同じことを言うんだな」
正直に言って、この提案はS.B.C.T.にとって渡りに船であった。スコープと言うファッジに対抗できるライダーの力を手に入れたとは言え、傘木社の戦力に比べれば力の差は歴然。例え民間人であったとしても、傘木社と……ファッジと戦える戦力が増えるのは彼らとしては歓迎すべき事であった。
しかし、宗吾にはおいそれと首を縦に振る事が出来ない理由があった。
今彼の目の前に居るのは、言ってしまえば彼の妻子の死因を作り上げた元凶とも言える人物。仇敵に等しい存在である。
そんな人物の手を借りねばならないという事に、頭はともかく心が激しく騒いでいるのだ。
白上教授は宗吾の葛藤に気付き、先んじて言葉を紡いだ。
「そちらの……と言うか貴方の事情は門守君から聞きました。なんでも、ファッジによってご家族を亡くされたとか。…………正直、申し訳なく思っています」
白上教授が頭を下げるのを、後ろの仁と亜矢は黙って見ていた。
対する宗吾は、教授が頭を下げると何を思ったのか机を強く叩いて立ち上がった。
「お前は――!? 謝る位なら、何であんなものを作ったッ!? あれの所為で俺の妻と娘は――!?」
「隊長、落ち着いてください!?」
「そこまでです、隊長!?」
激昂した宗吾を背後に控えていた茜と慎司が慌てて宥める。まだ手は出していないが、このまま放っておくと白上教授の首を絞めてしまいそうな勢いだったので、彼の部下2人は多少力尽くでも上官を落ち着かせ椅子に座らせた。
宗吾は部下2人に取り押さえられながら、今まで抑えていた感情を吐き出した。
「何でだ……何で、俺の妻と娘は死ななきゃならなかったんだ――!? あの日、娘の誕生日だったんだぞ……。帰ったら、娘の笑顔が待ってる筈だったんだ。それなのに――――」
1年以上前、彼が自宅に帰った時、彼を出迎えたのは愛する妻と娘の笑顔ではなく無残な姿となった2人の姿だった。彼が帰宅した時には既に事切れていて、物言わぬ躯を前に彼は絶望し涙を流した。
「返してくれ…………俺の妻と娘を……返してくれよ――!?」
「隊長……」
人前、まして部下の前だというのに、止め処なく涙を流す宗吾に慎司と茜の彼を抑える手から力が抜けた。2人もここまで詳しい事は知らなかったのだ。初めて聞いた、自分達の上官が抱えていた悲しい過去に何も言えなくなってしまった。
白上教授は慟哭する宗吾に、心の底から申し訳なさそうな顔をして机に両手を付き頭を下げた。
「本当に……申し訳ない。全ては昔雄成を止める事が出来なかった、私の責任だ。だからこそ、責任を取らせてほしい」
「責任?」
「今後、貴方達がファッジと傘木社に対抗する上で、私は貴方方への協力を惜しまない。それで許してくれとは言わないが、そうする事で少しでも私の不手際を清算させてほしいのです。どうか…………」
白上教授が頭を下げたのを見て、仁も頭を下げ、更に亜矢までもがそれに続いて頭を下げた。3人に頭を下げられ、宗吾は流れる涙を拭う。
「…………一つ、聞かせてくれ」
「何でしょう?」
「あんたは何で、ベクターカートリッジ……いや、超万能細胞なんてものを作ったんだ?」
「それが、多くの人々を助ける人類の新たな力になると考えて……」
「そうか……」
「ですが、その為に作り出した力が多くの人々を不幸にしてしまったのは揺ぎ無い事実。咎はいくらでも受けます」
そう言って改めて頭を下げる白上教授を見る、宗吾の目からはもう涙は流れていない。だがその顔には、涙を流す前に合った仁達に対するトゲトゲした感情も見られなかった。
暫し沈黙が室内を支配する。仁達3人は宗吾に頭を下げ続け、宗吾の背後に控える2人は事の成り行きを見守っていた。
どれだけそうしていたのか、宗吾が沈黙を破る言葉を口にした。
「正直に言う。俺はまだベクターカートリッジを認められない」
宗吾の言葉に彼の部下2人が何かを言おうとするが、それよりも早くに宗吾が言葉を続けた。
「だが、アンタらがそれを悪用しないだろうことは……何となくだが分かった。何より、そこの仮面ライダーは今までに何人も助けてるんだからな」
自分の事を言われ、仁が顔を上げると宗吾が手を差し出していた。
仁が差し出された手と宗吾の顔を交互に見ていると、彼はバツが悪そうに頬をかいた。
「その……この前は助かった。礼を言う。それと……一方的に敵意を向けたりしてすまなかった」
それは和解の証だった。仁の気持ちに、宗吾が答え彼の方からも歩み寄ってくれたのだ。
その事に気付いた仁は、笑みを浮かべるとまではいかずとも表情を柔らかくしてその手を握り返した。
仁から手を握り返され、宗吾は肩から力を抜き2人は改めて互いに名乗った。
「門守 仁、仮面ライダーデイナだよ。よろしく」
「権藤 宗吾だ。仮面ライダースコープ、力を貸してくれ」
ここに漸く、警察と仁達の協力体制が成立した。
「……あ、そうそう。そこに居る亜矢さんがもう1人の仮面ライダーだから」
「何ッ!?」
「そんなに驚く事です?」
「あ、すまん。何と言うか、そう言う荒事をするタイプには見えなかったもので……」
見ると慎司と茜も目を丸くしている。亜矢が仮面ライダーに変身して戦うとは思っていなかったらしい。
そんな彼らの態度に、真矢が表に出てきた。
「見た目で判断しないでもらえる? これでも1人でファッジ倒した事もあるんだから」
「ん? おぉ?」
突然真矢に切り替わった事で、宗吾達は変化に対応しきれず困惑する。
真矢の存在を知る訳がない彼らに、仁が軽く亜矢のもう一つの人格である真矢を紹介した。
「真矢さん、気持ちは分かるけどいきなり出てきたら皆びっくりしちゃうよ。こちら、真矢さん。亜矢さんのもう1人の人格だよ」
「だって失礼じゃない? 見た目で人を判断するだなんて」
【まぁまぁ真矢、仕方ないよ】
「そうは言うけど亜矢……」
流石に二重人格者は初めて見るのか、仁に紹介されても宗吾達は目を白黒させていた。
驚かれはしたが、しかしそこには畏怖や嫌悪の悪感情は見られない。
どうやら仁達は頼もしい味方を得る事に成功したらしい。彼らの様子を見てそれを確信した白上教授は、すっかり冷めてしまったお茶を満足そうに啜るのだった。
***
仁達が和解している頃、警視庁を見上げる人物が居た。シーアーチンファッジことグアニンである。
その近くには白衣を着崩し、軽薄そうな恰好をした男性のシトシンも居た。
2人が警視庁を見上げていると、シトシンがグアニンに話し掛けた。
「……で? 本当にここに仮面ライダー共が入っていったのか?」
「部下からの情報ではそうだ。仮面ライダー……ルーナだったか? に変身する女が、白上 源五郎と共に入っていくのを見たらしい」
彼らの目的は簡単だ。仁と亜矢、2人の仮面ライダーの排除若しくは戦闘データの収集である。現状のベクターカートリッジでは仮面ライダー達に有効な戦果を挙げられるか分からないという事で、他のファッジに比べて高い戦闘力を持つ2人が派遣されたのだ。
勿論念の為にアントファッジは連れてきているが、彼らは前座にしかならないだろうと2人は思っていた。
「そんじゃ、おっ始めるか?」
「そうだな。総員戦闘用意」
〈Sea urchin〉
〈Frog〉
〈〈Contamination〉〉
グアニンとシトシンがそれぞれシーアーチンファッジとフロッグファッジに変異すると、彼らの背後に控えていた傘木保安警察の隊員がアントファッジに変異する。
全員が変異したのを見ると、まずは露払いとアントファッジ達を警視庁に突入させた。
「行け。邪魔者を始末し、仮面ライダー共を誘き出せ」
シーアーチンファッジが指示を出すと、アントファッジが一糸乱れぬ隊列を組んで警視庁へと向かって行く。
迫るアントファッジの集団に気付いた警察官が何か叫んでいるが、それもすぐに銃声にかき消される。
忽ち悲鳴と銃声が周囲に響き渡る戦場となる警視庁に、シーアーチンファッジとフロッグファッジが悠々と向かって行くのだった。
***
和解が成った後、仁達は宗吾達と今後の連携について話を進めていた。
「とりあえずファッジが出たら俺らも現場には行くようにするよ」
「そうしてくれ。こちらも出来る限り迅速に駆けつけるようにはするが、如何せんこちらは出動までに若干ラグが出来るからな」
「関係各所には、仮面ライダーと連携ないし最低限邪魔はしないように通達しておきます」
「教授、宮野先輩のファッジ絡みの騒動に反応して警報を鳴らしてくれるシステムを警察の人達にも導入してもらっては?」
「ふむ、そうだね。後で宮野君に頼んでみよう」
あまり広くない室内で議論を交わしていると、不意に仁の耳が銃声を聞いた。外から聞こえてきたその音に、仁は話を中断し窓へと近付く。
「どうしました、仁君?」
「今銃声が聞こえた気がして……」
仁がそう呟いた瞬間、警視庁全体に警報が響いた。それと同時にアナウンスも。
『緊急事態! 緊急事態です! 現在警視庁が武装勢力からの攻撃を受けています! 繰り返します、警視庁が武装勢力からの攻撃を受けています!』
警報とアナウンスに、部屋の外が騒がしくなる。それと同時に何処からか何かの破壊音が響く。窓から外を見ると、何処からか煙が上がっているのが見えた。
警視庁に攻撃を仕掛ける武装勢力……それが傘木社のアントファッジ達である事に、室内に居た者は全員が気付いた。
宗吾は即座に慎司と茜に指示を出した。
「北村! 動ける奴らをすぐに迎撃に当たらせろ! 小早川は装備を整え次第合流!」
「「了解!」」
「門守君、双星君。頼むぞ!」
「はい」
「分かりました!」
茜からの報告で、騒動はエントランスで起こっている事が分かった。仁と亜矢、そして宗吾の3人は出来る限り急いでエントランスへと向かった。
3人がエントランスに到着すると、そこでは警官隊とS.B.C.T.の隊員が共同でアントファッジと激しい銃撃戦を繰り広げていた。
「撃てッ! 撃ち続けろッ!」
「負傷者は下がらせるんだ!」
相手が下級の兵隊ファッジだからか、普通の警官隊やS.B.C.T.の装備でもなんとか対抗できている。が、やはり奇襲に近い形で襲撃されたからか警察側の被害が大きい。広々としたエントランスは荒れに荒れ、警官が何人も入り口近くに倒れている。
その光景に仁は眉間に皺を寄せ、亜矢は男女問わず倒れて動かない警官の姿に目を伏せ、宗吾は拳を握り締めた。
通常の装備で奮闘する警官達を救うべく、3人は仮面ライダーに変身する。
〈BUFFALO + HUMAN Evolution〉
〈CAT Adaptation〉
仁と亜矢はデイナドライバーを装着し、仁はバッファローとヒューマンのベクターカートリッジを、亜矢はキャットベクターカートリッジをアダプトキャットに装填してドライバーに装着した。
一方、宗吾も自分のライダーシステムを用意する。単眼レンズが付いたドライバー『スコープドライバー』を腰に装着し、右腰のホルダーから長方形のプレート『キープレート』を取り出した。
「「変身!」」
〈〈Open the door〉〉
仁と亜矢がレセプタースロットルを引いてデイナとルーナに変身する横で、宗吾はキープレートをドライバーの右側から装填し、ドライバー左の円形のハンドルを回した。
〈Access〉
「変身ッ!」
〈In focus〉
2人がデイナとダイナに変身する横で、宗吾が仮面ライダースコープに変身する。ベルト中央のレンズ『アイピース』からスコープの姿が投影され、それが宗吾の姿にオーバーラップされるとその瞬間変身が完了していた。
3人は変身が完了すると、警官隊の前に出てアントファッジと戦い始める。デイナは拳を、ルーナはリプレッサーショットを構えた。
そしてスコープは再び右腰のプレートホルダーから一枚のプレートを取り出し、先程変身する時に装填したプレートと交換してハンドルを回す。
〈γ・Rifle Starting〉
スコープがハンドルを回すと変身する時と同じ要領でアイピースから一丁のライフル『ガンマライフル』が生成された。
各々戦闘態勢を整えると、3人のライダーが戦線に加わった。
警官隊相手には優勢だったアントファッジ達も、仮面ライダー3人相手には殆ど無力に等しかった。デイナの徒手空拳で、ルーナの2丁拳銃で、そしてスコープのライフルによる射撃で次々とアントファッジが倒されていく。
物の数分でエントランスに展開していたアントファッジの部隊は全滅し、そして倒されたアントファッジは隠蔽処置で焼け死んでいく。無事な警官の何人かが消火器で火を消して助けようとしているが、彼らの行動も空しく襲撃を掛けてきたアントファッジは全員が消し炭になってしまった。
ともあれすべてのアントファッジを倒し、一先ず安堵する3人のライダー。だがこれで終わりとは思っていない。態々警視庁に襲撃を掛けてくるという事は、こいつらの他に強力なファッジを用意している筈だ。
その確信を持ってデイナが周囲を警戒すると、突然ルーナが何かに首を絞められた。
「うぐっ!? な、何――!?」
「亜矢さん?」
突然苦しそうな声を上げるルーナだったが、デイナとスコープには何も見えない。
だが彼女の身に何か異変が起こっている事は確かなので、デイナが彼女を助けようと近付くと次の瞬間彼女は見えない何かに引っ張られて外へと引き摺られていった。
「亜矢さんッ!?」
「ッ!? 待てッ!」
慌ててルーナを追い掛けようとするデイナだったが、それを妨害するように無数の針が飛んできた事に気付いたスコープが彼の肩を掴んで引き留めた。
寸でのところで足を止めたデイナの足元に、無数の黒い針が突き刺さり爆発する。
ルーナはその爆煙に紛れて何処かへと連れ去られ、代わりに2人の前にはシーアーチンファッジが立ちはだかった。
「お前……前に大学で会ったな?」
「覚えていたか、仮面ライダーデイナ。そしてそちらは初めましてだな、警察の仮面ライダー?」
「スコープだ。俺はお前を知っているがな。何度か部下が世話になった」
まだスコープを手に入れる前に何度か相対した事のあるスコープが、怒りを押し殺してシーアーチンファッジに返す。
2人の因縁を無視して、デイナはルーナを連れ去った相手をシーアーチンファッジに訊ねた。
「亜矢さんを連れてったのは誰?」
「同僚のシトシンだ。あいつは粗暴だからな。弱い者を甚振る事を好む」
シーアーチンファッジの言葉に、デイナは拳を握り締める。下衆の相手をルーナがする事になった事に、彼の心中は穏やかではいられなかった。
だが彼はその気持ちに静かに蓋をした。今のルーナには真矢と言う頼もしい味方が居る。あの2人が力を合わせれば、下衆の1人や2人敵ではない。彼はそう信じていた。
だからこそ、今彼は自分に出来る事に最大限注力しようと荒ぶる心を鎮めた。
「権藤さん。こいつさっさと倒すよ」
「分かっている。こいつとは何度も戦ってきた。油断するな」
***
「あうっ!?」
デイナとスコープがシーアーチンファッジver.2と戦闘を始めた頃、ルーナは警視庁の向かいにあるビルの屋上に連れ去られていた。
首に巻き付いた何かが唐突に外れ、乱暴に屋上に放られて受け身も取れずに倒れるルーナ。
しかし彼女は即座に体勢を立て直し立ち上がると、未だ姿を見せない敵を警戒しリプレッサーショットを左右別々の方向に向けて警戒した。
(姿が見えない……何処?)
敵の姿が見えない事に、言い知れぬ恐怖に近い感情を抱くルーナだったが、そんな彼女の正面の空間が突然揺らいだ。
【亜矢、正面!】
「ッ!?」
一早く異変に気付いた真矢が警告を発した次の瞬間、ルーナが行動に起こすよりも先に姿を現したフロッグファッジver.2が彼女の首を手で掴んだ。
「うぐっ?!」
「いよぅ! 女の仮面ライダー! 初めましてだなぁ?」
「あ、あなたは――――!?」
凄まじい力で首を絞められ、ルーナは呼吸が出来ない事に苦しみながら何者かを訊ねた。
苦しみながらも気丈にしようとする彼女に、フロッグファッジは舌なめずりをしながら答えた。
「俺はシトシンってんだ。精々いい声で泣いてくれよ、仮面ライダー!」
「うあっ!?」
首を振り回されて放り投げられるルーナは、屋上の地面に叩き付けられるが今度は即座に立ち上がりリプレッサーショットを向け引き金を引く。
だが彼女が銃口を向けた時、そこには既にフロッグファッジの姿は無くなっていた。
「ッ!? また――!」
再び姿を消したフロッグファッジに、ルーナは周囲を警戒する。
下からはデイナ・スコープとシーアーチンファッジが戦う音が聞こえてくる。ルーナはそちらを気にしながら、周囲の異変を余さず捉えようと集中する。
だが彼女の努力も空しく、背後から迫っていたフロッグファッジの爪が彼女の背を切り裂いた。
「きゃあっ!?」
【亜矢っ!?】
「くっ!?」
背中を切り裂かれながら、体勢を立て直し攻撃された方に向け銃撃するルーナだったが銃弾は何もない空間を通り過ぎ屋上の入り口のドアに穴を穿つだけで終わった。
攻撃が無意味に終わった事に歯噛みしつつ再び周囲を警戒するルーナを、嘲笑うかのように再びフロッグファッジの攻撃が襲い掛かる。
今度は何と正面からの攻撃。胸元を思いっきり切り裂かれ、激しい痛みがルーナを襲う。
「ああぁぁぁぁぁっ?!」
「ヒャハァッ! いい声で泣くじゃねえか! オラ、まだまだ行くぞ!!」
【亜矢、代わって!】
追撃を掛けようとしてくるフロッグファッジに対し、ルーナは主導権を真矢に譲り対抗した。振り下ろされる爪を真矢のルーナは片腕で防ぎ、至近距離からの銃撃をお見舞いする。
「うおっ!?」
「舐めないでよね!」
そこからルーナが反撃した。ルーナはとにかく相手を逃がすまいと、蹴りと銃のグリップによる殴打、そして至近距離からの銃撃でフロッグファッジを釘付けにした。
しかし彼女に出来た反撃はそこまでであった。
「ハァッ!」
ルーナがここで勝負を決めようとフロッグファッジの首筋に蹴りを叩き込んだ瞬間、首の近くにあるイボから粘性のある液体が飛びルーナの複眼に掛かった。
瞬間、彼女の目を灼熱の痛みが襲った。
「あああぁぁぁぁぁっ?!」
【うあぁぁぁっ?! ま、真矢ッ!?】
痛みに思わず絶叫するルーナを、フロッグファッジが悠々と眺めながら口を開いた。
「どうだ、俺特性の毒液の味は?」
フロッグファッジが嗤いながら言う前で、ルーナは痛みに悲鳴を上げて蹲る。
「ひっひっひっ! 舐めるなだ? 舐めるに決まってんじゃねえか! お前みたいな旨そうなやつをよぉ!」
変身した状態なので、見た目ほどルーナは危険な状態では無いだろう。変身を解除すれば、少しの間は視界に異常を感じるだろうがそれもすぐに治る筈だ。
だが今視界が潰されているのは非常にまずい。何しろ敵に好き放題去れることになるのだから。
「ハッハァッ!!」
フロッグファッジは何も出来なくなったルーナを、敢えて致命傷にならない程度に攻撃する。
「あぁっ?! こ、このっ!? ぐぅっ?!」
見えない相手からの攻撃を、ルーナは出鱈目な攻撃で迎え撃つがそれは意味を成さない。
徐に足を引っ掛けられ、仰向けに倒されたところでルーナの腹をフロッグファッジが踏みつけた。そして身動きが取れなくなった彼女を、フロッグファッジは両手の爪で滅多切りにした。
「あっ!? うぁっ?! や、め……あぁッ?!」
徹底的に攻撃され続けて全身傷だらけにされ、動けなくなったルーナをフロッグファッジの舌が全身を締め付ける。
「うあ、あ……あぁ――!?」
猛烈な力で締め付けられ、徐々にルーナの意識が薄れていく。
あと一歩で意識を手放しそうになった瞬間、ルーナは内面に引っ込んでいた亜矢の意識も手伝って渾身の力を振り絞って右腕だけを拘束から引き抜き、自身を締め付ける舌を至近距離から撃ち抜いた。
「ぎあぁぁぁぁぁっ?!」
流石にこれは効いたのか、フロッグファッジは思わず拘束を解きルーナから距離を取る。
拘束を解かれたルーナは何とか一息つくが、それでも満身創痍である事に変わりはなかった。しかも未だ視界は塞がれているというおまけつき。傍から見ても彼女に勝機は見当たらなかった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
【真矢……ぅ、大丈夫?】
「は、はは……何とかね」
亜矢が真矢に問い掛けると、真矢は弱々しい声で答えた。感覚を共有しているので肉体的に辛いのはお互い様。今聞いたのは精神的な話だ。
心はまだ折れていないが、しかし肉体的には立っているのもやっとだ。事実、もうリプレッサーショットを狙った場所に撃つ事も難しい。恐らく今彼女に出来る事は、ノックアウトクラッシュを一発お見舞いする事だけだろう。
だが目が見えない中で、それは絶望的と言わざるを得ない。真矢はどうすればこの状況を打開できるかと必死に頭を働かせた。
誰が見ても打倒は困難と言わざるを得ない状況の、解決策を見出したのは亜矢の方だった。
【真矢、私を信じてくれる?】
「(亜矢?)」
【私はあのファッジを見つける事に全力を出すから、真矢には私が言った方向を攻撃して欲しいの。出来る?】
感覚を共有しているので、亜矢にだって目は見えない。彼女は視覚以外の聴覚や地面から伝わる僅かな振動で敵の位置を把握し、その方向を真矢に攻撃して欲しいと言っているのだ。
謂わば二人羽織りで必殺の一撃を敵に叩き込むと言っているのである。しかもチャンスは一回のみ。
常人であれば無謀としか言い様の無い策。しかし真矢はこれに乗った。
「(勿論よ。あいつに私達の力、見せてやろうじゃない)」
真矢は亜矢の提案を受け入れると、両手に持ったリプレッサーショットを落とした。どの道これからやる事には邪魔だし、敢えて銃を落とす事でこちらがもう反撃できないと相手に思わせる事を狙っていた。
その狙いは的中した。フロッグファッジはルーナが立ち上がりながらも銃を落とした事に、もう反撃する力はないと判断。
それでも念には念を入れてと、背後からゆっくりと近付いた。
全身が粘液で濡れたフロッグファッジは歩く度にペタペタと音がする。神経を集中させた亜矢はその音を聞き、僅かな振動と合わせてフロッグファッジの正確な場所を特定していた。
【真矢、敵は私達の後ろから近付いて来てる】
「(了解……タイミングは任せるわ)」
ルーナはフロッグファッジに気付かれないように慎重にレセプタースロットルに手を掛けた。
そして遂にルーナの背後にフロッグファッジが立ち、その爪で彼女の背を切り裂き自身の勝利で幕を閉じようとした。
瞬間――――
【真矢、今! 敵は真後ろ、6時の方角!!】
「ッ!!」
〈ATP Burst〉
「ハァァッ!!」
居合抜きの様な後ろ上段回し蹴りがフロッグファッジの頭を蹴り抜いた。フロッグファッジはこのタイミングで攻撃されると思っていなかったのか、思いっきり蹴り飛ばされ屋上のフェンスを突き破って下に落下していった。
「何だとぉぉぉぉぉっ?!」
フロッグファッジは訳が分からないと言う声を上げながら落下していく。決して高いとは言えないビルだ。変異したままならここから落ちた程度で死にはしないだろう。
とは言え、渾身の必殺技を喰らってただでは済まない筈だ。少なくともこれ以上の追撃は無いとみて良い。
ルーナはフロッグファッジの気配がビルの屋上から消えた事に安堵すると、体力に限界が来たのかその場に崩れ落ち仰向けに倒れた。それと同時に変身が解除される。
「はぁ……はぁ……亜矢、お疲れ。見事なナビだったわ」
【ふ、ふふ……真矢の方こそ】
真矢は疲れた体に鞭打って周囲を見る。視界はまだ大分ぼやけているが、それでも徐々に視界が戻ってきているのを感じる。この分ならあと数分か十数分で視力は元通りになるだろう。
だが体力の方は限界だった。意識に反して瞼が閉じようとしている。
【真矢、せめて教授に私達がここに居る事は伝えておこう】
「そうね。このままだと私達、なかなか見つけてもらえないかもしれないし」
亜矢の意見に同意し、真矢は震える手で携帯を取り出し電話を掛けた。視界は未だぼやけているので電話帳に表示された名前も碌に見ることは出来ないが、何処に誰の番号があるかは覚えている。
真矢が電話を掛けると、程なくして白上教授が出た。
『もしもし、双星君か? 今どこに!?』
「警視庁の真正面にあるビルの屋上です。取り合えず無事なんで、慌てずに回収に来てください」
伝えたい事を伝え終わると、真矢は一方的に通話を切った。そこが彼女の限界で、真矢の意識は亜矢共々闇へと落ちていった。
意識を失う直前、2人は最後まで仁の事を想い続けていた。
***
一方その頃、デイナとスコープの2人はシーアーチンファッジを相手に手をこまねいていた。
その最大の理由は――――
「ふっ」
デイナがシーアーチンファッジに拳を叩き込むが、その瞬間シーアーチンファッジは全身の棘を伸ばした。伸びた棘がデイナの拳に突き刺さり、逆に彼にダメージが入る。
「ぐっ!? いっつつつ……」
「離れろ門守君!」
届いた声にデイナが距離を取ると、スコープがガンマライフルでシーアーチンファッジの全身の棘を撃ち抜いていく。棘はあっさりと撃ち抜かれ折れていくが、折れた先から次々と生えてきた。
そして新たに生えた棘を、シーアーチンファッジが自分で抜いて暗器か何かの様に投擲してくる。投擲された棘は、何処かに刺さると爆発するので回避しなければならない。
これが2人がシーアーチンファッジを攻めあぐねる理由であった。
「くそぉ、面倒な奴だな。攻撃が効いてない訳じゃないんだろうが……」
全身が棘に覆われている為接近戦は危険だし、距離を取っても爆発する棘を投擲してくる。しかも棘が無くても奴の甲殻は銃弾を弾くほど硬い。一見すると攻守において隙の無い相手だ。
そんな奴を相手に、デイナは内心で焦りを感じつつ冷静に相手を見極めていた。
ここまでで相手がウニの能力を持ったファッジである事は分かっている。であれば、弱点と言えるのは――――
「権藤さん、俺があいつの注意を引くからアイツの背中を攻撃してくれる?」
「何、背中?」
「背中のどこか。多分アイツ、そこが一番脆いだろうから」
幾らウニが全身を棘で覆われているとは言え、口と肛門の周りだけは穴が空いているものだ。特に肛門の周りは、精子や卵子を放出する為の生殖孔が空いている。全身を棘で覆われた中で、そこだけは確実に脆い筈だ。
見るとシーアーチンファッジの顔には口らしき部位がある。口があるなら、肛門もある筈だ。先程までの攻防の中で、デイナは尻にも攻撃を仕掛けたがそこも棘で防御されていた事は確認している。
人間で言う尻に肛門が無いという事は、腹か背中のどちらか。スコープが先程から腹にも攻撃しているが堪えた様子が無いのを見ると、考えられるのは背中の何処かしかなかった。
「頼んでいい?」
「よし、任せろ!」
スコープはデイナの提案に頷くと、右腰のホルダーから変身時に使用したプレート『パーソナルプレート』を取り出し裏返すと『ガンマライフルプレート』と交換しバックルに装填した。
〈Recognition〉
電子音が響く中、デイナはシーアーチンファッジに攻撃を仕掛ける。殴り掛かると見せかけ、前転して背後を取り背中に蹴りを入れようとした。
させるかとシーアーチンファッジは素早く背後を振り返り、棘を伸ばした拳でデイナに攻撃する。それをデイナは紙一重で回避していた。
デイナとシーアーチンファッジが戦う中、スコープは右足にエネルギーをチャージしながら狙いを定めていた。デイナの言う事を信じるなら、背中の何処かに防御の弱い所がある筈。
「ッ! あれかッ!」
果たして目的の部位は見つかった。背中の一点に、明らかに
「ハァァァッ!」
スコープは必殺技の『エンドスマッシュ』を放つ。デイナの相手に意識を割いていたシーアーチンファッジはそれに気付くのが遅れ、スコープの必殺の一撃を弱点部位に喰らってしまった。
「何、ぐあぁぁぁぁぁっ?!」
スコープの必殺技を喰らったシーアーチンファッジは大きく蹴り飛ばされ、地面に激突しその場で悶絶していた。
シーアーチンファッジはギリギリで耐えたのか、自力で立ち上がり変異も解除されない。だがこの戦いの勝敗はもう明らかだった。
「動くな! 貴様を逮捕する!」
「くぅ……」
スコープはガンマライフルを構えシーアーチンファッジを牽制する。逃げようにもデイナも居る現状、万事休すとしか言い様の無い状況にシーアーチンファッジの脳裏に諦めの文字が浮かんだその時、両者の間に黒い何かが撃ち込まれたかと思うとそれが一気に広がり辺りを黒い煙が覆いつくした。
「何だこれは!?」
「煙幕?」
デイナとスコープが突然の煙幕に警戒していると、煙幕の向こうではシーアーチンファッジがスクイッドファッジにより回収されていた。
「撤退するぞ、グアニン」
「アデニン? 助かった」
「気にするな。シトシンも回収済みだ。お前も退け」
「分かった……」
スクイッドファッジの言葉に、シーアーチンファッジはやや項垂れながら答えその場を離れた。今回の攻撃は失敗だと、その事に暗鬱な思いを抱きながら。
そして煙幕が晴れた先にシーアーチンファッジが居ないのを見て、デイナとスコープはまんまと逃げられた事を悟った。
「くそっ!? 逃がしたか」
「まぁ仕方ないよ。それより亜矢さんは……」
デイナが周囲を見渡すと、向かいのビルの入り口から担架に乗せられた亜矢が運び出されてきたのを目にした。
それを見た瞬間彼は変身を解除しながら彼女に駆け寄った。
「亜矢さん!? 大丈夫?」
「落ち着きなさい、門守君。双星君なら大丈夫だ。少し視力に異常があるようだが、それも直に治る。心配はいらないよ」
白上教授にそう言われ少しは安堵する仁だったが、その顔にはまだ不安が残っている。
そのまま彼は亜矢と共に救急車に乗り、病院へと向かった。
その道中、亜矢は目を覚ました。
「ん……ここは?」
「亜矢さん、大丈夫?」
「仁君……?」
「ここは救急車の中だよ。気分はどう?」
仁の言葉に、亜矢は自分が何処に居るのかを理解した。そして大分元通りになった目で仁の顔を見る。まだ彼の顔が少しぼやけて見えるが、それでも彼の顔が見れて亜矢の口から安堵の溜め息が零れた。
実を言うと、もう彼の顔を見る事も叶わなくなるのではないかと少し不安だったのだ。
「亜矢さん?」
「え? あ、あぁ、気分ですか。大丈夫です。思ってたより良いくらいですね。まだちょっと目が霞んでますけど……」
「それならその内治るみたいだよ。安心して」
うっかり仁の顔に見惚れていた亜矢は、それを悟られないように慌てて答えた。
亜矢からの答えに、仁は彼女を安心させるように優しい声で話し掛ける。
「そうですか、それを聞いて安心しました」
仁からの答えに別の意味で安堵すると、唐突に真矢が出てきた。
「あ、勘違いしないで欲しいんだけど、私達負けた訳じゃないからね。ちゃんと敵倒してから気を失っただけだからね?」
真矢の答えに仁は驚いた様子を見せた。
チミンとのやり取りから、シーアーチンファッジ即ちグアニンが敵の幹部である事は想像出来た。そのグアニンの同僚と言う事は、シトシンも幹部であるという事は容易に察せれた。
亜矢と真矢は、ルーナだけでその幹部の1人を退けたのである。デイナが前回チミンを1人で退ける事が出来たのは、エレキテルの能力があってこそのもの。彼女は一切の強化無しに幹部を退けたのだから、仁からすれば十分驚愕するに値した。
「ホントに? 凄いじゃん」
「私も亜矢も頑張ったんだから。という事で、何かご褒美欲しいな~?」
【ま、真矢? 何言ってるの?】
突然の真矢の言葉に亜矢が狼狽える。こう言う時、真矢が何を言い出すかは彼女でも分からないのだ。
そんな亜矢の動揺を他所に、仁は真矢からの言葉に首を傾げた。
「ん、何か欲しい物でもあるの?」
今回は本当に亜矢と真矢は頑張った。自分に出来る限りの労いであれば喜んで聞こうと仁が先を促した。
「今度買い物に付き合って」
「ん? そんなので良いの?」
「それが良いの」
「良いよ。それ位ならお安い御用」
「それじゃ、今度の休みの日にね」
仁は真矢からの頼みを快く聞き受けたが、分からないのは亜矢の方であった。亜矢は真矢の意図が読めなかった。
【真矢? 何考えてるの?】
「(何って、分からない? デートよデート。仁君とのデ・ー・ト。このデートで仁君と一気に距離を近付けるのよ)」
【ちょ、えっ!?】
思いもよらない真矢の考えに、動揺を隠せない亜矢だったが彼女の意識が内面に引っ込んでいる為表面上は変化が無い。
仁に亜矢の動揺を気付かせないまま、真矢はそのまま仁との雑談を続ける。
最初こそ内面で動揺して騒いでいた亜矢だったが、次第に仁とのデートの日を心待ちにし当日着ていく服を何にするかなどを楽しみながら考えたりするのであった。
と言う訳で第22話でした。
白上教授が誠意を見せたこともあって、和解はすんなりと相成りました。かなり初期の案では、警察と一戦交えて亜矢が逮捕されたり~、何てのを考えてましたが、仁の性格なんかを考えてこうなりました。
今回亜矢と真矢を痛め付けたフロッグファッジことシトシン。コイツは良いヒール役になってくれそうです。
そして次回は二度目のデート回!ブラックコーヒーをお忘れなく。
執筆の糧となりますので、感想その他宜しくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。